知的財産を大切に

 私たちは、自動車、エアコン、冷蔵庫やTV、オーディオ機器などの様々な発明によって、便利で快適な生活を送っています。そして、映像や音楽を楽しみ、本やインターネットからは役に立つ情報を得ることができます。

 これらの創造的な活動の成果は人類共通の資産であり、将来に渡って人間社会に豊かな生活をもたらします。しかし、苦労して創造した新しいアイディアや表現をすぐに他人にマネされたのでは、新しいものをを創造しようという意欲が失われてしまいます。

 そこで、知的で創造的な活動については、その創作者に一定期間の権利保護を与えるようにしたのが、知的財産制度です。

 知的財産にはいろいろありますが、このうち、特許権実用新案件意匠権商標権の4つを工業所有権といいます。
 工業所有権制度は、それを考えた人に対して、独占的に使用させる権利を与え、模倣されることを防止すると共に、研究開発を奨励し、仕事や商売のルールを保ち、産業の発展を目指しています。

○特許権について

 特許法では、みなさんが行った「発明」の権利を保護しています。この「発明」とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの」と定義されています。この為、自然法則を利用していないもの(ゲームのルール等)や、絵画・彫刻等の美術的作品、新しい物質や法則の発見等は、「発明」では無いため、特許にはなりません。
 では、特許になる「発明」とは、どのような条件を満たしていれば良いのでしょうか?

特許法では、次の条件を挙げています。
  • 特許上の発明であるか
  • 産業として実施できるか
  • 新しいかどうか
  • 容易に考え出すことができないか
  • 既に他人が出願していないか
  • 反社会的な発明でないか
  • 見栄最初の記載は規定通りか

 特許庁では、みなさんが申請した「発明」が、これらの条件を満たしているかどうかを審査し、「特許権」を認定し、その権利の保護を行っています。

○実用新案件
 我が国では、特許法の他に実用新案法というものがあります。特許制度は技術的に高度な発明を保護の対象としてますが、日用品や玩具のような分野では、ちょっとした工夫を加えただけでヒット商品になるようなものがあります。

 このような技術的に高度ではない小発明ともいうべき「考案」を保護するために設けられているのが実用新案制度です。 実用新案法では、保護の対象を「物品の計上、構造または組合せに係わる考案」に限定しています。

 特許制度では、発明の新規性及び進歩性等を厳格に審査してから特許を付与する審査制度を採用し、権利の安定性を追求しています。
 これに対して、実用新案制度では早期登録の観点から形式的な審査のみを行う無審査主義を採用しています。

○意匠権
 意匠は物品の美的な外観を求めて創造されるデザインです。使い心地の良い優れた意匠は人々の購買意欲を刺激しますが、模倣するのも容易です。意匠制度は、新しく創作した意匠を登録して創作者の財産として保護するとともに、その利用も図ることを定めて、優れた意匠の創作を奨励し、産業の発達を保護しようというものです。

 意匠法で保護される意匠は、美しさや独自性のある物品の形状・模様・色彩などの「デザイン」です。このデザインは、人間の創造的な活動の成果としての創作であると点では、特許法や実用新案法と共通しています。しかし、発明や考案が自然法則を利用した技術的思想であり、特許法・実用新案法がその面から保護しているのに対して、意匠法は美感の面から創作を把握し、これを保護しようという点で異なっています。

 特許の場合と同じように、意匠登録を受けられる意匠には、新しさや容易に創作できないことが求められます。ただし、工業上利用できるものが対象となるので、芸術品のように量産されないものは意匠登録されません。
 また、公序良俗に反するものの他に、他人の業務に係わる物品との混同を生ずるものも意匠登録されません。
 なお、意匠登録の保護期間は登録から15年です。

○商標権
 特許法、実用新案法、意匠法の3法が、人間の創造的活動の成果である「創作」を保護することを目的としているのに対して、商標はそれ自体として創造性を必要とするものではなく、商標を使用する者の業務上の信用を維持を図ることを直接の目的としています。このように、目的が大きく違うため、商標制度の仕組みは、他の3つの制度と大きく異なっています。

 商標は、文字、図形、記号、もしくは立体的形状によって構成されるものでこれらを単独で用いたり、組み合わせて用いたり、あるいは色彩と結びつけた標章(マーク)であって、業者がその商品または役務について使用する標章をいいます。

 例えば、商標の製品を買おうと思って電気店に行った時、商標のマーク(商標)がついたものを購入したところ実は、他社が勝手に真似をした偽のマークだったとしたらどうでしょう。商標のマークを信用して買った人の利益が阻害され、その偽の商品の品質が劣っていた場合、商標を使用された商標の信用も傷つきます。
そうしたことがないように、商標を保護する目的で定められたのが商標法です。

 特許法では一定の期間、特許をとった人に対して独占的な権利を与えますが、その期間が過ぎれば、一般の人に開放して、社会の共有財産とします。
 商標法は、商標の存続期間を10年と定め、この間に使われなくなった商標にを整理する一方、繰り返し使用され続けている商標については10年を経過した後でも、何度でも更新申請を繰り返せることととして、永久的に権利を認めるようにしています。
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