平成12年度 「全国発芽マップ実践企画」
実施報告書


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3.2 参加校を対象とした調査

    3.2.1 調査の目的と問題の所在

       2000年度の全国発芽マップの活動について評価するため,ここ3年間は,毎年12月に参加校を対象としたメーリングリスト調査を実施している。

       これは,当該年度の全国発芽マップの活動について,参加校からの意見という形での評価を行うためである。また,一年間の活動を踏まえて次年度への希望を集めることで,活動内容を改善する目的がある。

       そこで,今年度も,従来のやり方に倣って,すべての参加校を対象とした電子メールによる調査を実施することにした。

    3.2.2 調査方法

       調査はメーリングリストを利用して実施した。すべての参加校の教師が加入しているメーリングリストに,質問内容を配布し,無記名式の回答を指定したメールアドレスに返送するよう,依頼した。

       質問事項は,次のような事項である。

        I.
        学校等について
        II.
        全国発芽マップへの参加が児童・生徒や教師にもたらしたものについて
        III.
        メーリングリストについて
        VI.
        今後について

       回答形式は,選択法と自由記述法である(資料3-2)。資料3-2のような質問内容を,2000年12月20日に,参加校の教師用メーリングリストに流した。この際,調査は宮崎大学の4年生から流すという形式を取り,集計結果は卒業論文とプロジェクト報告書の両方に利用されることを明記した。

       調査項目配布後,調査への回答の催促を12月24日,12月31日,2001年1月7日の3度にわたってメーリングリストに流した。

    3.2.3 調査対象

       調査対象は,2000年12月20日の時点で「全国発芽マップ」の教師用メーリングストに登録されていた教師である。この時点で加入校数は161校であった。

       多くの学校の3学期が始まって1週間が経過した時点まで回答の受付を続け,2000年1月15日に終了した。この時点での回答数は,37件であったので,この37件の回答を有効回答と見なし,集計対象とした。

    3.2.4 調査結果と考察

      I. 学校等について

        (1)学校名等

           有効回答をよせてくれた学校種の内訳を,表3-2-1に示す。

          表3-2-1 メーリングリストによる調査への
          回答者の内訳(回答件数:37件)

          小学校

          32

          中学校・高等学校

          4

          その他

          1

           小学校が32校と,大半を占めている。「その他」は,学校外で小学生を集めた「クラブ」である。

        (2)学校等の規模

          次に,表3-2-2に回答者が所属する学校規模を示す。

          表3-2-2 学校の規模

          児童・生徒数

          10人未

          10〜49

          50〜99

          100〜199

          200〜299

          300〜399

          400

           校数

          3

          4

          3

          8

          3

          3

          13

          質問項目では,400人以上のを一つの選択肢にしたため,400人以上の学校が13校と多くなっている。しかし,その次に多いのは,100人から199人の学校で,小学校でいえば各学級1学級程度の比較的小規模の学校である。

          また,10人未満が3校,10〜49人が4校といったように,かなり小規模な学校の参加が目立つ。今年度の活動で,一つの中心になった北海道の鵡川小学校も,児童数10人未満の学校である。

          過去に活躍した学校にも,このような超小規模校がいくつかあり,小規模校の参加と活躍が目立つことは,全国発芽マッブの一つの特色と言える。

        (3)全国発芽マップへの参加年数

           回答者の,「全国発芽マップ」への参加年数の内訳を表3-2-3に示す。

          表3-2-3 全国発芽マップへの参加年数

          年数

          1年目

          2年目

          3年目

          4年目

          5年目

          6年目

          校数

          24

          7

          2

          2

          0

          1

           回答者のうち24人は全国発芽マップへの参加が1年目,7人が2年目である。全国発芽マップが,6年目の企画であるにもかかわらず,長年参加している教師からの回答は非常に少ない。企画開始当初からの6年間参加している教師からの回答は1件であった。

           全国発芽マップのメーリングリストで交わされる対話を6年間見続けると,年度毎に活躍する教師の交代が見られる。最初から継続して参加している教師もいて,要所要所で登場するが,ずっとアクティブなままで活動を続けている人はいない。

           今回の調査の回答者の大半が,参加1年目の教師であることは,この傾向を顕著に反映している。

      II. 全国発芽マップへの参加が児童・生徒や教師にもたらすもの

        表3-2-4〜表3-2-11に,,全国発芽マップへの参加が児童・生徒や教師にもたらすものとして掲げられた事項への,回答者の賛否の分布を示す。

        植物成長の地域差については,表3-2-4のように37人中31人が「そう思う」と回答している。

         全国発芽マップで,児童・生徒から立ち上がってくる問題解決活動の一つのきっかけとして仕組んでいる「植物成長の地域差への気づき」には,多くの教師が賛成している。

         しかし,3校の教師が「そうは思わない」と回答していることは,かならずしもすべての学校の児童・生徒が,このことに気付くとは限らないことを示している。ケナフの成長は,単純に地域の緯度や気温によって決まるのではなく,土や日照条件など多様な条件の組み合わせで決まる。したがって,植物成長の「地域差」が表れにくい場合があるのも事実のようである。

        表3-2-4「1. 児童・生徒が植物成長の地域差を認識する」への回答

        そう思う

        そうは思わない

        わからない

        31

        3

        3

         児童,生徒が観察をする習慣ができたかどうかについては,表3-2-5に示すように37人中30人が「そう思う」と回答している。

         植物の成長を根気強く観察することは,簡単なように見えてなかなか継続できないことである。全国発芽マップで,一つの植物の同時栽培を全国で実施していることのねらいの一つは,児童・生徒に他校のとの比較という目的意識を持たせることで,意欲的に観察ができるようにすることがあった。

         今回の結果は,それが多くの学校で成功していることを示している。ただし,すべての学校でそうなるというわけではないことも,同時に示された。

        表3-2-5「2. 児童・生徒が観察をする習慣ができる」への回答

        そう思う

        そうは思わない

        わからない

        30

        2

        5

         表3-2-6から,児童の学習意欲に変化が生じたのは,37校中26校であったことが分かる。

         37校中26校という数字は,当初想定した数字よりも少ないものであり,今後さらにその実態や原因について検討しなければならない。

         ただ,もともとこういった協同的な学習への取り組みが盛んな学校では,今回の企画による変化があったかどうか分からないのも事実である。

        表3-2-6 「3. 児童・生徒の学習意欲に変化が起こる」への回答

        そう思う

        そうは思わない

        わからない

        26

        2

        9

         表3-2-7から,児童の学習に変化が起こったとの回答のあった学校は,37校中24校である。

        全国発芽マップへの参加が,児童・生徒に従来とは異なった学習方法を学ばせる効果のあることを示唆している。全国発芽マップでは,総合的で幅広い学習内容を取り扱うだけでなく,他校の児童・生徒との協同的な学びを促すというねらいが生かされていることを示している。ただし,学習方法の変化が,学級単位で起こったものか個人単位で起こったものか分からない。また,どのような変化が起こったのかは不明であり,これらについては個々の事例についての検討を待たなければならない。

        表3-2-7「4. 児童・生徒の学習方法に変化が起こる」への回答

        そう思う

        そうは思わない

        わからない

        24

        5

        8

         全国発芽マップへの参加が,自分自身が環境問題を考えるきっかけとなった教師は,37人の回答者中31人である(表3-2-8参照)。今年度の活動で栽培に取り組んでいる「ケナフ」が,環境保全,及びそれに関する議論と深い関わりのある植物であるために,このような結果が表れていると考えられる。

        表3-2-8「5. 教師自身が環境問題を考えるきっかけとなる」への回答

        そう思う

        そうは思わない

        わからない

        31

        5

        1

         しかし,表3-2-9によると,児童・生徒が環境問題を考えるきっかけとなった学校はね37校中26校に留まっている。

         児童よりも教師の方が環境問題について考えるきっかけとなったケースが多いことは,全国発芽マップの特徴をよく表している。全国発芽マップでは,教師用のメーリングリストを用いた情報交換や対話が行われているため,教師間での問題意識の共有が起こりやすい。

        その一方で,児童・生徒の方は,必ずしもすべての話題を共有するとは限らない。環境問題は,全国発芽マップを通してかかわることのできる一つのテーマであるが,必ずしもすべての学校の児童の活動が環境教育と関係しているわけではないことの表れである。

        表3-2-9「6. 児童・生徒が環境問題を考えるきっかけとなる」への回答

        そう思う

        そうは思わない

        わからない

        26

        8

        3

        表3-2-10によると,他の学校との交流があった教師は37人の回答者のうち32人である。教師の交流は,継続して活発なようである。

        表3-2-10「7. 教師が他の学校の教師と交流する」への回答

        そう思う

        そうは思わない

        わからない

        32

        1

        4

         ところが,表3-2-11によると,児童・生徒が他校の児童・生徒と交流した学校は,37校中23校であり,教師ほど学校間交流は多くない。これまでの全国発芽マップの児童・生徒間の交流は,TV会議かface to faceの交流にほぼ限定されている。すなわち,交流のための適当な手段に乏しい状態である。

         今年度のプロジェクトでは,児童・生徒用のWeb上での対話を支援するための専用掲示板を開発したが,今年度の実践にはまにあわなかった。

         これについては,来年度以降に児童・生徒用の電子掲示板が導入されたときに,交流する学校数が増加するかどうかに注目したい。

        表3-2-11「8. 児童・生徒が他の学校の児童・生徒と交流する」への回答

        そう思う

        そうは思わない

        わからない

        23

        6

        8

        (2)児童・生徒の具体的な学習意欲の変化

           表3-2-12は,児童・生徒の学習意欲の変化があると答えた教師から寄せられた,具体的な変化の内容である。

           ここには,明確な目的意識,継続的な観察の実行,自ら取り組んでいるという自信,メールの積極的な返信などの具体的な意欲の表れが記されている。

           これらの意欲は,教師の適切な関わりによって生じていることはいうまでもない。しかし,ここには,決められた活動にルーチンワークとして取り組んでいるという気持ちではなく,「自らの意志で,自ら考えたやり方で」取り組んでいるという児童・生徒の姿が描き出されている。

          表3-2-12 児童・生徒の学習意欲の変化についての具体的な回答

          発芽マップに積極的にかかわる子どもは,ケナフの栽培からケナフの細かい観察,環境問題,ケナフの利用価値等学習が広がっていきました

          地域差による発芽や開花の変化,成長率等

          異学年でとりくんだせいもあり意欲的に取組んだ子どもが多かったが教師のかかわりがうすくなると当然活動が弱くなりますね。 

          観察する子は観察をするがしない子はしなかった。

          成長の過程がとらえやすいので,観察学習に意欲的になる。他の学校との 交流ができるので,学習に広がりができ,意欲的になる。

          植物の成長や特徴に興味を示し、テレビや新聞の報道にも関心を示していた。

          小2ですが,いろいろなところでケナフの使ってある物を見つけるようになった。

          次時への期待感が大きい。自分のアイディアをすすんで出す。

          他校の発芽の様子や成長の様子に興味をもちながら、自校のケナフの栽培・観察に意欲的に取り組んでいた。

          自分たちが作り出していくという自信

          観察が日常化する,植物ケナフの世話を自分から行うなど

          ケナフへの初めての出会いが、生徒の学習意欲への刺激となる。

          例えば、ケナフの栽培については参考書をみても書いてないことがいっぱいあった。ケナフの葉が夜閉じ、朝開くことを利用して作った、ケナフ時計は自分の観察から目盛りを刻む以外に方法がなく、自分で文字盤のおおきさを予測して、検証するなど興味をしめした。

          他校の様子が分かるので、子どもたちもがんばろうという気になった。

          地球環境に興味を持つ。インターネットを積極的に活用しようとする。

          栽培に対する意欲が昨年よりも高まった

          デジカメをもって自主的継続的に観察記録を撮ったり、気温や背丈の変化をグラフに表したりするようになった。季節の変化や新聞記事等に敏感に反応するようになり、発芽マップ参加校の身近に感じ、自分たちと比較するようになった。

          対象に進んで関わろうとする、他地域との違いを意識する

          夏休み中にも水かけなどの世話や大きさをはかるために登校した

          周囲のことに関心をよせ、皆で取り組むことによって意欲が高まった。

          他の地域と児童の地域を比べてどうかと言うことで、自分の地域を見直すきっかけとなった

          北海道のケナフの様子についてのメールなどがきた時,積極的に返信をする。

          他校の発芽の時期や成長の様子に興味をもちながら、自校のケナフの成長に興味をもった。

          自分たちで育ててみて、疑問に思ったことなどをメールを通じて自分たちの力で調べようとしたり、メールで知った事をもとにして自分たちでさらに新しい物を創りだしていこうとしたり大変意欲的の取り組むようになった。本校の場合は1,2年生が参加しているが大変有意義な一年間になったと思う。子どもたちの学ぶ意欲は、素晴らしく高まったと思う。

          自分たちがケナフを育てて、いろいろな活動に取り組んでいく上で、他校の取り組みを参考にしながら、自分たちの活動に取り込んでいくことができた。つまり、自分たちの活動を広げることにつながった。例えば、紙漉、クッキー作り、料理、薬作り、地域のお年寄りと一緒にケナフを育てた取り組み、料理作り、学校間交流、電子メールの活用、TV会議システムの活用など

          自分たちで課題を持ち、取り組んだ

          自分たちで調べようとする

        (3)児童生徒の学習意欲の変化の原因

           表3-2-13は,児童の学習意欲の変化の要因として,回答者の教師が掲げた事柄である。

           ここには,学習意欲の変化の原因として,以下のような事柄が含まれている。

          a. 学習活動を自分たちでつくり出している
          b. 他県や他校と比較を日々行うことができる
          c. 同日同時刻に開始するという一体感
          d. 成長の速さなど,ケナフという植物自体の持つ魅力
          e. 地域差や距離感
          f. インターネットや様々なコミュニケーション機器の活用
          g. 問題意識があること
          f. 全国的なプロジェクトへの参加
          h. その他

          表3-2-13 「その変化の原因はなんだと思いますか。」についての回答

          ケナフについて学習すること自体が,自分や自分たちのクラス,学校,全校の小学校というふうに広がっていくこることを理解しているからではないでしょうか。

          地域差を認識し,栽培方法を考え直す

          かかわらせかたでしょうね。あと教師の連帯感 

          授業としての位置付けを年度始めの年間計画の中にいれていなかった。

          ケナフという植物の特性 インターネットによるコミュニケーション 環境問題を考えるきっかけになり,学習に主体的に取り組むようになる。

          ケナフという未知の植物を全国各地の自分と同世代のなかまたちが育て観察しているという認識があること。

          半年かけて,ケナフの成長をみつづけてきたからだとおもう。

          ケナフの無限の可能性 

          他県・他校との成長の差や開花などの差を毎日確認できるため

          今までの,一方的な教師からの指導体制

          ケナフを通して目的(交流など)を持ったから

          種をまく日を統一したことによる一体感

          ケナフが急速に成長する様子や利用方法の多様性への驚き。

          成長を目にし植物の成長に関心を持った生徒がいた

          だれもしらないことに自分で仮説をたて検証するおもしろさからだとおもう。

          他校の詳しい情報がわかるため。

          ケナフという植物自体が持つ魅力。インターネットを活用しているという実感

          他の都府県のケナフと比較で子どもたちの意欲が喚起されたと考える

          同じものを育てているという共同学習から生まれる連帯感や相手意識 参加校が北海道から沖縄まで全国各地にあること

          地域差がある、成長・変化がある、発展的学習が期待できる、今日的な話題と関連がある

          他校との比較を通して、自分のケナフに愛着がでてきていた

          インターネットの利用・ケナフ自体注目され情報が豊富であったこと

          他地域からのたくさんの参加と情報発信

          発芽マップの参加校であるという意識ではないでしょうか

          他県・他校との成長の差や距離的な違いを意識化できるため

          メールやテレビ会議システムを使って双方向的に情報の交換ができたことだと思う。

          コンピュータおよび、様々な機器を活用できたため。

          従来の授業のように教師が知識を教えるのではなく、子どもが捜す、求める活動が主になるから

          全国規模での調査だから

        (4)児童・生徒の学習方法の具体的な変化とは

           表3-2-14には,児童・生徒の学習方法の変化の様子が掲げられている。

           ここには,次のような事柄が含まれている。

          a. パソコンやインターネットの使用の日常化
          b. 教師に頼らず自ら調べる姿勢
          c. 観察の活性化
          d. 観察事実や記録のデータ化
          e. 道具的としての教育機器の活用
          f. 新聞や図書などの資料へのアクセスの増加

          表3-2-14 「児童・生徒の学習方法の変化とは、具体的にどのような変化ですか。」への回答

          教育器機を意欲的に活用しはじめたこと。継続的な観察学習に取り組んだこと。

          観察する観点,栽培方法の変化

          何をどのようにしたらよいのかよくわかっていないようです。教師の方もどうすればいいのかわかってない

          教室内だけの授業が,インターネットを通して他校や他県の学校との交流ができるようになった。

          新聞記事や図書室などの書籍を自主的に見る児童が増えていたこと。

          学習方法の変化の内容云々より、多様な学習形態、方法が許される。

          HPをみせていたので,分からないことがあったら先生に聞くのではなく,インターネットで調べる。人と言う意識が出てきた。

          インターネットに興味をもちはじめた。他校との交流が積極的になった

          情報を知りたい時に、いつでも確認できること。

          自分達でやってみようとする

          観察日記の記入,ケナフの変化に対する興味関心の持ち方,ケナフの世話の継続

          デジカメで撮影したり,他校の児童とテレビ会議で交流する

          収穫に生徒を関わらせたのですが、樹皮をむく時、ケナフの構造が理解できたようです

          未知のことを調べるおもしろい学習手順を身につける
          1)不思議なこと「ケナフは葉を閉じたり,開いたりする。」を見つける
          2)なぜ、そのような運動をする植物を本でしらべる (ねむの葉の開閉運動、蒸散作用などから)
          3)2の理由から「○時から閉じはじめ、○時ころにに閉じ終わる」と予測をたててみる
          4)実際に観察記録する
          5)予測があったっていたか評価する。なぜ違っていたかを考える。光の明るさで開閉がおこるのか?気温の変化で開閉がおこるのか?
          発展学習 ケナフの葉は真っ暗なところでもちゃんと朝ひらき、夜とじるのか?真っ暗なところでも温度が上昇すれば葉はひらくのか?つぎつぎに、植物生理についてのおもしろい実験観察をたくさんしてみたくなる。

          デジタル機器の活用、環境教育の実体験

          高さや幹の太さ、葉の枚数、大きさなどをデータとして調べていくこと

          情報の収集・伝達・表現の手段として積極的にコンピュータを活用するようになった。地域に出てインタビューしたり、専門家や交流校とテレビ会議をしたり、人とかかわる手段も多様化した。

          観察・記録を進んで行う、新しいことを進んで見つけようとする

          WEBにアップし、他校と比較した

          パソコンにふれる機会が増え、興味をよ持つことができた。

          みんなで地道に観察し、記録するが、それをみんなにわかりやすい視点でやろうとした

          他の参加校のwebページを閲覧する時間が長くなる。

          ケナフの観察だけでなく、インターネットの活用も積極的に行ったこと。

          教えられるまで待つのではなく、自ら疑問を持ってその疑問解決のために自分たちなりに考えることや、解決手段を見つけだそうと努力するようになった。

          情報機器を、自分の使用目的に合わせて、学習道具として活用できた。

          身の学習ではなく、自分が主体的に取り組む学習

          デジカメでの監察記録

        (5) 学習方法の変化の原因

           表3-2-15は,児童・生徒の学習方法の変化の原因を掲げたものである。

          a. 同じ対象を調べる仲間がいること
          b. 他校の情報が参照可能なこと
          c. 植物を育ているという責任感
          d. インターネットや,情報機器の普及
          e. コミュニケーションがあること
          f. その他

          表3-2-15 児童・生徒の学習方法の変化の原因についての具体的回答

          学習課題が自分のものになったから。

          情報交換や新しい栽培方法の情報入手

          させられ学習からの脱皮,教師はやらせ学習からの脱皮

          インターネットの普及  

          未知の植物に関する興味と、自分たちと同様の経験をしている全国各地の仲間に対する興味があること。

          学習内容のオープン性、多様な考え方が提供される環境

          リアルタイムに各校の様子が分かるネットを利用したからかなとおもう。

          同じ物を育てているという連帯感

          情報を知りたい時に、いつでも確認できること。

          他の学校の取り組みを参考にして、できるので

          生き物を育てているという責任感 

          その様な環境が整備されたり,機器のおもしろさを知ったから

          目で見る植物と解体したときの変化があったから

          ケナフの栽培観察という、ひとつの事例を通して実験観察のおもしろさを学ぶことができたからだと思う。

          定期的にデジタル機器をさわる機会がある。地球のためになるのではないかというポジティブな環境教育ができる

          ホームページで記録を発信するため

          発芽マップがネットワークを生かしたプロジェクトであることと、遠く離れた学校間の情報交換がインターネットの活用によって身近に感じられるようになったこと

          成長・変化がある、発展的学習が期待できる(社会科・理科など)、今日的な話題と関連がある 

          条件の異なる地域と比較しようとすることで、メディアの活用が自然にできた

          パソコンが学校や家庭で普及していること

          見てもらいたいという意識だと思います。

          交流する相手がはっきりしているから。そのつながりが「ケナフ」であるから。

          自分たちの活動と同時進行で情報を得ることができるから。

          発芽マップという仲間の力が、自分たちの疑問を解決するために有効であると言うことを子どもたち自身が実感したからだと考える。

          自分たちのケナフに関する取り組みについて、同じ全国の仲間に知らせたいという気持ちが強かったからだと思います。全国にいる仲間がいるということが支えになったようです。

          課題が明確で、取り組まざるを得ないから

          情報発信するため

      III. メーリングリスト

        (1)メールチェックのサイクル

           表3-2-16は,参加校教師のメールチェックの頻度である。

           ほぼ毎日メールチェックしている参加教師が大半である。しかし,中には,週に1度程度という,頻度の低い教師もいる。

          表3-2-16 メールチェックのサイクル

          サイクル

          ほぼ毎日

          週に2〜3回

          週に1回くらい

          もっと少ない

          校数

          31

          3

          3

          0


        (2)メーリングリストへの投稿

           表3-2-17は,メーリングリストへの投稿回数である。今年度は,爆発的に参加校数が増加したため,従来と比較すると一人の教師の投稿頻度が下がっている傾向がある。

           表から,1回だけの教師が7人,一度も投稿したことがない教師が4人いることが分かる。このことは,全国発芽マップに参加している教師が,かならずしも活発な交流活動をしているとは限らないことを示している。

           しかし,たった1回しか投稿したことがない教師や,一度も投稿したことがない教師が,このような調査には回答してくれていることは注目に値する。

           つまり,メンーリングリストを読むだけのメンバーも,こういった活動に無関心なわけではなく,常に関心を持ち続けていることを示している。そして,本当に必要な場合になれば,登場する可能性を秘めていることが推察される。

           このように,ROM(Read Only Member)に徹している会員が一定割合で存在していることは,全国発芽マップの層の厚さと,活動の可能性の深さの源になっているのであろう。

          表3-2-17 メーリングリストの投稿経験

          回数

          2回以上

          1回だけ

          一度も投稿したことがない

          校数

          26

          7

          4

        (3)メーリングリストが何の役に立ったか

           表3-2-18は,メーリングリストが何の役に立ったかについての質問に対する回答である。それによると,やはり情報交換をあげた教師が多い。

           さらに,教師同士が,学習指導について教え合い,助け合っていることが分かる。これは,全国発芽マップのメーリングリストを立ち上げたときには,想定していなかったことであるが,「教師の支援」という意味で,メーリングリストが非常に重要な役割を果たしていることをしめしたけっかである。

           こういった,同じ教育実践を共有する教師によるメーリングリスト上では,経験の豊富な教師からの助言が得られたり,試行錯誤の苦労の様子が共有されたりする。そのため,教師は,一人で悩むことなく,お互いに助け合い,連帯感をもって学習指導に取り組むことができる。

           ここには,教師たちの「教え」と「学び」の共同体ができつつあることを,この結果は示しており,今後の教師教育や教師支援の一つの方向性として注目可能である。

          表3-2-18 「メーリングリストは、何の役にたちましたか」に対する具体的回答

          参加意識を高めていたと思います。

          情報収集

          全国の状況把握や新しい情報,人との出会い

          本校では,初めてケナフを育てました。○各地の生育状況,これは読んでいて楽しかったです。○ケナフの活用 ケナフの紙づくりで参考にさせていただきました。 

          情報交換や各地の気温や気候の変化をしるため

          他の学校との情報比較,ケナフ活用方法等の情報収集

          各地の状況やケナフに関する知識を得ること。

          情報収集

          情報が得られた。

          他校の取り組みを知る

          会員同士の素朴な疑問から始まったやりとりの様子などを見て、改めて考えさせられることがよくあったこと。

          情報収集

          日本全国のケナフの成長の様子の把握,ケナフの世話のさまざまな方法の収集

          現在の各地の状況,情報交換,困ったときのお役立ち

          教師が指導する上での参考となった

          各地の成長の過程や、ケナフを利用した試みを随時知ることができるし、 実験をする場合の重要な資料とすることができる。

          花が咲かないときや、紙にする方法などを教えて貰った。国内の状況を見るのが楽しかった。

          プロジェクトの流れ

          わからないことを教えてもらう場 ミニ、プレゼンテーションの場 子どもたちの交流相手を見つける場 プロジェクト提案の場

          ケナフを育て方や、育てた後のことを学校で生かせた。

          情報の窓口として 各地の成長の様子を知る手がかりとして

          情報交換、交流のきっかけ

          ケナフの栽培が初めてだったので、栽培の方法や紙漉きのやり方などを参考にした。

          各校の取り組みを知り、自分たちの活動の参考にする 分からないこと、困ったことがあったときに相談する

          ケナフ情報を得る、学習への生かし方を知る、他地域の同時期の様子を知る 

          情報交換 やや専門的な内容の知識など

          わからないことには多くの方からお答えをいただくことができ不安や悩みが解消された

          自分の知らない情報が入ってくる。意見交換が出きる

          他校の取り組み状況、成育状況を知ることができた

          生きた情報源として[「ケナフ」について以外にも

          ほかの学校の活動の様子を知ることができた。

          他校の様子を知るのに役立った

          交流する学校を選択するときや、自分たちの疑問を解決するとき そして、ときどき、自分たちのケナフの成長を自慢するとき

          他校の取り組みの様子、ケナフの生長の様子を子どもたちに伝えるのに役立ちました。そのことが、さらに子どもたちの学習の支えになりました。

          情報交換

          全国の成長の情報を得るため

          資料収集、連帯感


        (4)メーリングリストに期待すること

           表3-2-19に,メーリングリストに期待することを示す。

           これによると,やはり情報交換への期待が多い。

           次に,交流を期待する声が多い。それに付随して,投稿に対する反応を期待する声がある。投稿への積極的な反応は,参加校数の増大によって下火になりやすいので,今後とくに期待されることであるし,その活性化の手立ても必要になりそうである。

          表3-2-19 メーリングリストに期待すること

          みなさんの意見や報告(私自身,あまり積極的ではありませんでしたが_)

          広い地域での情報収集

          連帯感と共有感と共創感

          各地の状況,活用方法

          開花状況や各地の気温気候のお知らせ

          情報交換,交流を深めること 

          ケナフに関する情報や各地の様子及び交流への発展。

          情報の供給

          情報提供

          投稿したメールに必ず誰かが反応してほしい。相手によって差があるように思う。つきあいの深さの差であろうが新しく仲間になった者にとっては受け入れられているのかとさみしい気持ちになることもある。

          会員同士のやりとりにおける多面的な見方や考え方を知りたい

          情報

          情報把握

          情報交換,活動の広がりを行うための支援など

          いろいろな先生方の取り組み方や考え方を知ることができる。

          今のままでよいと思う。

          情報交換ほか

          MLのよさを生かした*子どもたちあるいは教師の共同学習の場*子どもたちあるいは教師のミニ発表の場* 詳しい方を迎えてのML上の講演会と質疑の場*テーマを決めて子どもたちあるいは教師の共同作業・研究・調査の場

          いろいろな最新情報や、交流を期待しています。

          交流、情報交換の場

          情報交換、交流のきっかけ、指導者同士の交流

          栽培から得られた情報交換をする場

          密なる情報交換  レスの速さと確実性:誰かのなげかけに必ず応える

          ケナフ情報を得る、学習への生かし方を知る、他地域の同時期の様子を知る、他校との交流の機会を得る

          今年度のような形はよかった

          今までのように情報交換しながら話題にのぼったことについてメール上で 意見交換や交流ができること

          意見交換をする

          情報交換

          多くの方々の意見交流・論議

          先生方の交流だけではなく、児童生徒の交流がほしい

          多様な活動展開を知り合うことに役立つ

          双方向性

          困ったときの相談、よい情報を得る場としての活用

          情報交換、相互交流

          情報交換

      IV.全国発芽マップの参加校数

        (1)参加校の数について

           全国発芽マップの参加校数が,適度かどうかについては,表3-2-20のように,「ちょうど良い」という回答がある一方で,「多い」という回答も多い。前の問いのメーリングリストへの投稿への反応も,参加校数が増加することによって確かに鈍くなっている。

          一方「少ない」という回答も7件あり,この質問への回答者の判断は分かれている。

          表3-2-20 参加校数の適切さについて

           

          多い

          少ない

          ちょうど良い

          よくわからない

          回答者数

          12

          7

          16

          2

          (2-1)現在の参加校数160校が「多い」または「少ない」と答えた人の理由

             参加校数の適切性についての回答者の判断が分かれていることから,その根拠を表3-2-21に整理した。ここには,参加者一人ひとりの切実な思いが表れている。

             まず,参加校数がもっと多い方がよいと考えている教師は,参加校数が多い方が広範囲からの多様な情報を得やすいことを理由に挙げている。「全国発芽マップ」が「全国」にネットワークを広げていることの強を強調する見方である。

             一方,学校数が多すぎるのでもっとすくない方がよいと考えている教師の理由は,主として一体感や交流の深まりを期待している。これについて,一つひとつ検討する。

             まず「現状では、1つの論題に対し、2,3名の会員による討議であるが、これが10名、20名という規模になった場合、どの程度の内容まで投稿してよいか。つまり、多数の会員による討論が行われた場合、収集がつかなくなるおそれがある。」という指摘がある。これは,メーリングリスト上でのやり取りのテーマ制に注目した意見である。一つのテーマについての議論する参加者が数名ならばまとまりのある協議になるが,10名以上になると,投稿する方もどの程度の内容を書いて良いか判断しにくくなり協議が成立しにくいことを指摘している。

             これに近い意見として,「それぞれの思いで取り組んでいてまとまりがない」という者がある。メーリングリストで,すべての意見交換を行うことの限界であるのかもしれない。

             また,「162ではやはり、こんなことぽすとしたらとーーー書きかけても途中でやめてしまことがある。」「お互いのつながりの意識が薄まるのではないかと思う」「呼びかけたことに対する反応が得やすくなるが,一体感が減ってくるのではないか」などのように,メンバーのつながりの意識や一体感が低減するため,投稿にも自己規制がかかる状況が生まれている。

             さらに,「情報が多すぎてしまうことがあり、メールを読みきれないことがあった」というように,情報過多も問題になっている。参加校数の増加で情報量が増大することと平行して,一人の教師にとっての情報の密度が低下するおそれがある。

             次に,「多いことは悪いことではないと思うが、運営が難しい。特に、ML上で共通理解するにも時間がかかるだろうし、ケナフ栽培の経験にもかなり違いが出てきているので、参加校の中でも温度差があるように思う。」「2年目,3年目以上の参加校の担当者の意見が出しにくくなる。」という意見が出ている。全国発芽マップの参加の経験の違いによって,知識の量や質,そして問題意識にも違いが出ている。そのことが,長年の参加者にとって活動しにくい状況を生みだしていることが分かった。こういった問題を解決するには,少人数の掲示板や,その掲示板に付随したメーリングリストなど,全体のメーリングリスト以外に,少人数の意見交換の場が必要であることを示している。

             最後に,「科学的データが取りにくい」という意見もある。科学的な調査を実施したい場合には,条件コントロール厳密に行う必要があり,全国の160校では実施しにくい。そういう場合には,小グループを作る必要があることを指摘した意見である。 

            これらについては,来年度から本格活用する専用掲示板の活用への期待がかかる。

            表3-2-21 現在の参加校数160校が「多い」または「少ない」と答えた人の理由

            より広範囲の情報を得るため多い方がよい

            各地の情報が確実に手に入らない。

            問題はない

            現状では、1つの論題に対し、2,3名の会員による討議であるが、これが10名、20名という規模になった場合、どの程度の内容まで投稿してよいか。つまり、多数の会員による討論が行われた場合、収集がつかなくなるおそれがある。

            多いほど色々な情報が得られてよいと思う。

            これからの参加数が増えて,詳しい全国ネットの企画になるだろう。

            それぞれの思いで取り組んでいてまとまりがない

            特に問題はない。

            どんな、小さな疑問でも、気軽にポストできるのがMLもよさだと思う。162ではやはり、こんなことぽすとしたらとーーー書きかけても途中でやめてしまことがある。

            情報が多すぎてしまうことがあり、メールを読みきれないことがあった

            これだけの学校が気軽に参加できるプロジェクトはそうないと思う。多くの学校と交流を持てるチャンスが広がるすばらしいプロジェクトだと思う。

            多いことは悪いことではないと思うが、運営が難しい。特に、ML上で共通理解するにも時間がかかるだろうし、ケナフ栽培の経験にもかなり違いが出てきているので、参加校の中でも温度差があるように思う。

            お互いのつながりの意識が薄まるのではないかと思う

            科学的データが取りにくい

            2年目,3年目以上の参加校の担当者の意見が出しにくくなる。

            呼びかけたことに対する反応が得やすくなるが,一体感が減ってくるのではないか

            情報量が少ない

          (2-2)現在の参加校数160校が「ちょうど良い」と答えた人の理由

             表3-2-22に,現在の参加校数160校が「ちょうど良い」と答えた人が書いた根拠を掲げる。これによると,特に問題はないという考えがある一方で,多すぎる場合の問題点と少なすぎる場合の問題点の両方を併記した上で,現状くらいがよいと判断している教師もいる。

             現実に参加校が多くなってくることで,メーリングリストに投稿される電子メールの本数が増加している。そのため,これらにすべて目を通したり,そのつど返信したりしようとすれば,参加教師の負荷はかなり高くなる。ところが,参加校が少なくて全国的な広がりがなければ,広範囲のデータを得ることもできず,参加することのメリットが低くなる。

             さらに,「また,影で発芽マップを支えている人物がいるということを忘れてはいけないでしょう。規模が大きくなればなるほど,組織を支える人の仕事量は莫大になります。」という意見が出されているように,参加校数が増えた場合の幹事校の負担は計り知れない。

             こういった問題点を考えると,参加校数が増えた場合には,現在のように一つのメーリングリストに頼るのではなく,テーマ別の掲示板とか,テーマ別のメーリングリスト,そして,テーマ別の幹事が必要になるであろう。

            表3-2-22 現在の参加校数160校が「ちょうど良い」と答えた人の理由

            意識が希薄になるのではないでしょうか。また,影で発芽マップを支えている人物がいるということを忘れてはいけないでしょう。規模が大きくなればなるほど,組織を支える人の仕事量は莫大になります。そこが,重要だと思います。

            多くても少なくてもあまり関係ない。参加学校が主役で,各学校の交流学校や情報を取捨選択すればいいこと

            多すぎるとMLでも,情報を把握しきれなくなってしまいます。現在でもメールが集中する時には,読むのに精一杯ということがありました。少なすぎると各地の生育状況が偏ってしまう恐れがあると思います。

            少なすぎると情報が偏りがちになる。

            情報の過多、不足

            よく分かりません。

            その年その年でその規模にあった取り組みができればよいのでは

            メールのチェックが大変になるためとほぼ日本の中を北から南まで網羅していると思うため。ただ参加校は増えることに反対はしていない。

            少ないと交流校を探すことができないと思います。多すぎれば、メールを見切れないかな。*もしかすると、ちょっと多いのかなと感じている面もあります。自分とは関係ないメールが多いように感じてしまうような気持ちを持っています。自分でも変だと思うのですが。

            少なすぎると参加しない地域が出てくるので望ましくないと思う。

            多すぎると形だけのものとなる恐れがあるし、少なすぎると全国で比較するためのデータが集まらない

            校数はそんなに問題ではない

            お客様的な立場になってくる

            今のところわかりません

            もっと多くてもよいと思うが、160校もあれば、各県において取り組むことができて全国的な活動になると思う。

            名前だけ登録して、参加したことにしているところがでてくるのではないかなあ

            中身の濃い交流、情報交換ができにくくなるのではないでしょうか。

            多すぎると比較対照が不明確になる。少なすぎると比較対照が見つけにくい

      V.取り組みについて

        (1)今年度の全国発芽マップで取り組んだこと

           2000年度の全国発芽マップで,調査に応じた各校が取り組んだことを,表3-2-23に示す。それによると,今年度の取り組みで多いのは,植物の成長比較,植物を使った紙作りが37校中30校と最も多く,電子メールのやり取り(27校),ホームページの作成(24 校),植物を使った食べ物づくり(23校)がこれらに続いている。

          表3-2-23 今年度の全国発芽マップで取り組んだこと

          1.植物の成長比較

          30

          6.電子メールのやりとり

          27

          2.植物を使った食べ物づくり

          23

          7.手紙のやりとり

          14

          3.植物繊維を使った紙作り

          30

          8.テレビ会議

          10

          4.植物繊維を使った布作り

          7

          9.直接会っての交流

          7

          5.ホームページの作成

          24

          10.その他

          8

          その他

          海外とのケナフの共同栽培 2校と,
          工作・染め物等の活用,
          作品、製作物の交換 、環境教育への発展(調べ学習),
          染め物,  
          植物での実験,
          薬作り、地域のお年寄りと一緒にケナフを育てた取り組み、TV会議システムの活用

        (2)来年度の全国発芽マップで取り組みたいこと

           表3-2-24に,来年度の全国発芽マップで取り組みたいこととして各項目を選択肢か学校数を掲げる。

           この表の数値は,「今年度の全国発芽マップで取り組んだこと」に対する回答とは異なった分布になっている。

          表3-2-24 来年度の全国発芽マップで取り組みたいこと

          1.植物の成長比較

          28

          6.電子メールのやりとり

          30

          2.植物を使った食べ物づくり

          22

          7.手紙のやりとり

          23

          3.植物繊維を使った紙作り

          28

          8.テレビ会議

          25

          4.植物繊維を使った布作り

          14

          9.直接会っての交流

          24

          5.ホームページの作成

          29

          10.その他

          14

          その他

          ケナフ収穫後訪れる多面的な活用の情報交換をもっと活発に
          学校が休校になるので予定なし
          来年度のことについてはまだ考えていない
          まだ決まっていない
          来年度のことについてはまだ考えていない
          栽培する植物によって考えられるいろいろな活用法作品、製作物の交換、環境教育への発展(調べ学習)、新しい○○づくり)
          今年度できなかった部分中心。やったものに関しては向上を図りたい
          具体的には、まだはっきりとしていませんが、今年と同じような取り組みをしていく中に、「学校間交流」と「食とケナフを絡めた取り組み」に挑戦したいと考えています

           「取り組んだこと」と「取り組みたいこと」の比較をするため,表3-2-25を作成した。

           表から,「4. 植物繊維を使った布づくり」「7. 手紙のやり取り」「8. テレビ会議」「9. 直接会っての交流」に関して,来年度取り組みたい学校が多いことが分かる。 これらの個々の項目について自由度1の独立性に関するχ2乗検定を行ったところ,「8. テレビ会議」と「9. 直接会っての交流」において,1%の棄権率で有意差が認められた。したがって,「8. テレビ会議」と「9. 直接会っての交流」は,今年度に実際に実施した学校数と,来年度に実施を希望している学校数の間に有意な差がある。テレビ会議や直接会っての交流を規模する教師は多いが,なかなか実施できない実態を反映している。

          表3-2-25 全国発芽マップで今年度取り組んだ内容と来年度取り組みたい内容の比較

           

          今年度取り組んだ

          来年度取り組みたい

          1.植物の成長比較

          30

          28

          2.植物を使った食べ物づくり

          23

          22

          3.植物繊維を使った紙作り

          30

          28

          4.植物繊維を使った布作り

          7

          14

          5.ホームページの作成

          24

          29

          6.電子メールのやりとり

          27

          30

          7.手紙のやりとり

          14

          23

          8.テレビ会議

          10

          25

          9.直接会っての交流

          7

          24

          10.その他

          8

          14

      VI.今後について

        (1)インターネットを利用する教育への見通し

          表3-2-26「「全国発芽マップ」への参加によって、インターネットを利用する教育についての見通しを持てましたか。」への回答

           

          はい

          いいえ

          どちらでもない

          回答者数

          25

          0

          12

        (2)来年度に育てたい植物

          表3-2-27 「来年度の全国発芽マップに参加するとしたらどんな植物を育てたいですか」
          への回答(二つまで回答可能)

          ケナフ

          24

          大根

          1

          4

          香川のドングリ

          1

          綿

          4

          小麦

          1

          そば

          3

          千成ヒョウタン

          1

          大豆

          2

          アサガオ

          1

          ひまわり

          2

          食べられるもの

          1

          ブルーベリー

          1

          その他

          5

          スイカ

          1

          未記入

          2

          ブルーケナフ

          1

           

           

          その他

          縦から横への変換
          よくわからない
          特別な考えはない
          特に思い浮かばない
          特にないがそろそろケナフ毬以外

        (3)今後の展開についてのアイデア

           表3-2-28に回答者によって提案された今後の展開へのアイデアを掲げる。

           ここには,多様な交流の工夫に関する提案がある。たとえば,プロジェクト形式での活動,目的別・学校種別・地域別の活動,地方毎の「集い」,各校の記録交換をしやすくする工夫などがそれに相当する。

           プロジェクト形式や目的別などの活動の場合,従来から取り組んでいる全体のメーリングリストを中心とする交流の他に,小規模な企画を平行して立ち上げることになるであろう。その際には,それぞれの活動の幹事を引き受ける学校あるいは教師が必要になる。そういったことを積極的な引き受ける教師や学校が出てくるかどうかに,今後の展開はかかっている。

           また,子どもたち自身によるメーリングリストによる交流も提案されている。児童・生徒用のメーリングリストは,数年前に設置されたが利用がほとんどなかったという経緯がある。来年度は,児童用掲示板での直接対話を促す試みに着手するが,教師による対話促進の取り組みがいっそう重要になる。

          表3-2-28 今後の展開についてのアイデアへの回答

          これまでの実践を継続すること。(継続は力なり)(2)についても試行的に実践すること

          全国紙創り企画

          観察記録はフォーマットをもう少し工夫したいと思います。本校では,3年生が観察をしました。児童の記録用として記録用紙を作成しましたが,種の収穫まで記入できるようにしたので,どう記入してよいかが児童にわかりにくいものになってしまいました。わかりやすい記録用紙を全国統一で作成すれば,比較もしやすいのではないでしょうか。

          TV会議を企画してやれる機会が欲しい。教科書の地域や外国と行いたい。

          浮かびません。

          冬場も活発な交流が続くように、ケナフの多面的な活用を交流する企画 

          (電子メールなど)児童が主となってやりとりできるような場 

          各地やグループごとに行う

          特になし

          特にありません プロジェクト形式をとるのでしたら、共同研究のための共通テーマを部屋ごとに決め、10校程度で展開するところと、これまでのMLのように全体の動きがわかるよう2本だてがいいとおもいます。

          特別ありません

          ケナフで環境教育ができたように、その植物を育てることにより児童に何かを考えさせることができるということがすばらしいと思います。もみの木(クリスマスツリーの木)で福祉問題とか・・・・

          すいません今はこれといって思いつきません

          先生方のML上での交流が盛んなように、子供たち同士がもっと気軽に話し合うことができるような掲示板の活用を期待。

          各校のテレビ電話や交流希望の有無を知りたい

          成長記録を同じような形式でつけていき、比べるということがしたい。

          小学校と中学校に分けて活動を行う。目的別プロジェクトを行う。その時にコーディネーターの先生を決定し,円滑に進めれるようにアドバイスを行う。何とか児童主体のプロジェクトにつなげていきたい。

          子供同士が直接やり取りのできるメーリングリストなどがあればよいと思う。

          1種類だけでなく、育てる植物ごとに、この指とまれ式にして、分かれてはどうだろうか

          発芽マップの集いが地方事にあるといいです。広島の場合は、安浦でのイベントがあるのですけれど・・・・、。

          参加校が共有できるサーバーを幹事校におき、FTP操作で参加各校がデータを更新させて、各校のケナフウェブページをつくって情報交換する・・・というのはどうでしょうか?

          特になし

          特になし

        (4)協同プロジェクトを行う上での弊害

           表3-2-29には,協同プロジェクトを行う上での弊害として回答者からあげられた事項を掲げた。ここには,全国発芽マップなどのようなプロジェクトに参加する教師の苦労がにじみでている。

           まず,情報通信機器や回線のハード的な制約が指摘されている。これらが解決されるのは,地域差や学校差があるものの,時間の問題であろう。しかし,ハードウエア環境の学校間格差,教師の機器使用能力の格差などの解決には,かなりの時間を要しそうである。

           一方,主として教師の努力によって解決しなければならない,学校間での課題も指摘されている。たとえば,次のような事柄である。

            ○共同作業のための時間の確保と調整
            ○会って実際に打ち合わせをしたりする時間がない。時間がないまま企画を実行すると計画が不十分に終わってしまう。
            ○各学校の取り組み、思惑、時期のずれ
            ○事務校になったら、協力体制が取れないかも知れない
            ○共同プロジェクトテーマの設定のむずかしさ。
            ○HTML共同編集作業などで映像を校外使用のプライバシー問題
            ○適切な共同作業を進めるためのリーダー、アドバイザーがいるか子どもたちの直接書き込みなどの参加をどのように認めるか
            ○自分のところの事が忙しく、時間のかかる、他校との共同プロジェクトを希望する学校がどれだけあつまるか。
            ○指導者の意図することが各校で微妙に違っていること

          さらに,校内にもたくさんの問題が指摘されている。たとえば,以下のような事柄である。

            ○学校内でのとりあつかい。全職員への提案の仕方,連絡調整,など
            ○担当者だけの仕事になるとその人のあとを受け継ぐ人がいないこと、校内・地域に広げて行かねば本物にならない。
            ○畑の確保・担当学年内の共通理解・時間の確保
            ○プロジェクトへの意欲の温度差
            ○教師間の共通理解
            ○教員のやる気
            ○上司の理解
            ○担当教師の学年が変わることによる継続の困難さ

          これらについては,継続した取り組みの中で少しずつ解決していくことになるであろう。

          表3-2-29 協同プロジェクトを行う上での弊害についての回答

          自分の根気のなさと計画の見通しでしょうか。植物を通しての研究になるでしょうから,生き物を扱うと言う非常に繊細な意識が必要になってきます。これは,難しい問題です。パソコン画面を見ているだけでは,植物はそっぽをむくでしょう。

          学校内でのとりあつかい。全職員への提案の仕方,連絡調整,など

          会って実際に打ち合わせをしたりする時間がない。時間がないまま企画を実行すると計画が不十分に終わってしまう。

          回線速度の遅さ,(テレビ会議などを実際に行おうとしても回線が細いと難しい)

          通信環境、及び交流に関わる経費。

          時間の調整。機械の整備(テレビ会議),転送速度

          担当者だけの仕事になるとその人のあとを受け継ぐ人がいないこと、校内・地域に広げて行かねば本物にならない。

          パソコンや周辺機器の充実・時間的な調整

          回線の太さ,スピード

          特にない,今後制約がつくと困る

          各学校の取り組み、思惑、時期のずれ

          事務校になったら、協力体制が取れないかも知れないのでできたら、無責任で申し訳ないのですが私に回さないでくださいね 

          ネット情報の有無

          一般的にですが
          1)共同プロジェクトテーマの設定のむずかしさ。
          2)HTML共同編集作業などで映像を校外使用のプライバシー問題
          3)共同作業用のサーバー確保の困難性。
          4)共同作業に適した利用しやすいシステムが提供できるか。
          5)適切な共同作業を進めるためのリーダー、アドバイザーがいるか。
          6)子どもたちの直接書き込みなどの参加をどのように認めるか。
          7)共同作業のための時間の確保。
          8)技術力の格差,例えばHTMLの共同編集などの困難性 
          9)成果の利用(著作、発表などの)上の問題
          10)自分のところの事が忙しく、時間のかかる、他校との共同プロジェクトを希望する学校がどれだけあつまるか。

          パソコンや周辺機器の能力の差

          わかりません

          校内で解決しなければならない問題の方が多いように思います。・畑の確保・担当学年内の共通理解・時間の確保

          プロジェクトへの意欲の温度差

          教師間の共通理解  時間の確保

          機器の有無、教員のやる気、上司の理解

          学校間の通信手段の相違。たとえばTV会議の有無など

          本校では学校全体の取り組みにはなっておらず、私が今年5年の担任でこれを行ったが、来年、私が6年に持ち上がれば、来年度は参加できないかもしれない=次の5年の担任がどう考えるかという問題になる

          援助体制の不備

          指導者の意図することが各校で微妙に違っていることではないでしょうか

          今年度の様子だと子どもたちはホームページを通して交流している印象が強かったが、ネットワーク環境のない学校ではそれだけでは協同プロジェクトに参加しているという意識付けが難しいようなきがする。

          直接交流:テレビ会議やメールなどの際,時期的な調整や,共通の土俵づくりが大変である

          お互いのハード面での均一化ができにくいので、情報を発信するとき容量に制限があること。

          各校の情報機器の環境の違いが大きな障壁だと思います。

          分かりません

    3.2.5 調査結果の全体的考察と課題

       2000年度の全国発芽マップの参加者に対するメーリングリスト調査結果から分かったことを質問分野別に整理する。

      3.2.5.1  学校等について

         全国発芽マップの参加者で,今回の調査に回答を寄せた教師の勤務する学校には,小規模校が多いことが分かった。

         全国発芽マッブでは,以前から小規模校や都会から離れた学校が目立った活躍をするケースが多い。これは,この企画が,特定の教科や学年に縛られず,児童・生徒の発想を生かしながら自由に活動を進めるようになっていることと関係が深い。

         全国発芽マップでは,一つの植物の同時播種だけが全体の約束事で,以降は,成長記録の比較や,ケナフの場合なら紙作りなどの活動が想定できるが,固定された教育計画を持たない。

         これは,異学年が協同で学ぶことが日常化していて,各学年や学級の授業時間を柔軟に変更できる小規模校にとっては,非常に好都合な企画である。

         さらに,全体での教育目標は特に定められていないため,個々の学校の担当教師の教育上の目的を自由に設定できることも,一人の教師の裁量の大きい小規模校が,自由な活動を行うことを容易にしている。

         ところが,大規模校では,多くの学年や学級が連携して動かなければならないめ,全国発芽マッブのように,あまりにも柔軟な企画には参加しにくい場合がある。実際の個々の状況を聞くと,比較的規模の大きい学校が,学校を上げてこの活動に取り組んでいる例は少なく,関心のある教師や,その学級,教科などでの取り組みという場合が多い。

         このように考えると,全国発芽マップは,大きな学校が学校ぐるみで参加を前提とするよりも,小規模校とか,学級裁量の大きい学校の一つの学級の参加を前提とした方が良さそうである。つまり,実質的な参加の単位は,学校または学級である。

         全国的な協働学習プロジェクトを企画するとき,これからは,こういった観点が必要であろう。

      3.2.5.2  全国発芽マップへの参加が児童・生徒や教師にもたらしたもの

         全国発芽マップへの参加は,児童・生徒や,教師に学習意欲や学習方法などの,多様な変化をもたらしている。

         しかし,環境問題を考えるきっかけとなったかどうかや,他校との交流については,児童・生徒と,教師の間では違いがある。表3-2-30と表3-2-31で,これらについて児童・生徒と教師を比較する。

        表3-2-30「環境問題を考えるきっかけとなる」についての児童・生徒と教師の比較

         

        そう思う

        そうは思わない

        わからない

        教師自身

        31

        5

        1

        児童・生徒

        26

        8

        3

        表3-2-31 「○○が他の学校との交流をする」についての児童・生徒と教師の比較

         

        そう思う

        そうは思わない

        わからない

        教師自身

        32

        1

        4

        児童・生徒

        23

        6

        8

         これらの表によると,全国発芽マップへの参加が環境問題を考えるきっかけとなったり,他校との交流につながったりしたのは,児童・生徒よりも教師の方が多くなっている。

         教師自身が学ぶことは,全国発芽マップの文化として以前から指摘され来たことである。しかし,他校との交流を,まず教師自身が行っていることは,この企画が教師の教育支援という役割を伴っていることを示している。

         今後は,児童・生徒の学びを支援することと同時に,教師の支援という意味での存在意義に注目しながら組織やシステムの改善を図る必要がありそうである。

      3.2.5.3  メーリングリストについて

         メーリングリストの利用は,参加校数が増加したことによって,昨年までとは違った状況が生じている。

         まず,参加校が全国的に増加したことで,情報源としての価値は再認識されている。ところが,その一方で,参加教師の経験年数や関心の違いから,投稿しても反応が返って来にくかったり,投稿自体を躊躇したりする現象が生じていることが分かった。これは,参加校が少なかった頃にはなかったことである。

         これについては,来年度以降に使用する専用掲示板で,教師がテーマ別や地域別など,多様な単位での対話を行う試みをしながら,適切な方法を模索しなければならない。とくに,どのような単位を作ればいいのか,また,人数の規模はどのくらいなのかは,未だに不明であり,今後の課題として残っている。これは,様々なやり方での取り組みを通して適切な方法を編み出すことになるであろう。

      3.2.5.4  今後について

         今後については,従来,取り組みの少なかったTV会議や直接会っての交流に取り組みたいという意見が多かった

         TV会議については,設備の整備が進むにつれて実行する学校が増加するであろう。しかし,直接会っての交流は,近くの学校間でないと困難であし,逆に近いと協働学習の意味が薄れてしまう。おそらく,直接会う試みは,一部の学校に限られるであろう。

         来年度以降に栽培する植物については,ケナフが大きな支持を得ている一方で,その他の植物栽培への希望もあることが確かめられた。従来は一つの植物に限ってきた取り組みを,会議室別に別の植物に取り組んでみることが来年度の課題である。

         学校内の調整の大変さと同時に,他校との時間的な調整の必要があるため,学校間の協働学習には障害が多いことが,調査の回答から明らかになっている。しかし,それでもなお,全国発芽マップのような企画を通して,他校といっしょに協働な学習に取り組みたいという教師や児童・生徒が多い。 

         調査結果は,様々な課題が存在することを示したとともに,教師と児童・生徒がそれを乗り越えて学校間の協働学習に取り組んでいることを明らかにした。



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