4.幹事校の活動

 以下に3地区の参加校の取りまとめを行った幹事校の活動を報告する。

4.1東京校

東京幹事校の活動            神奈川大学附属中高等学校 小林道夫

4.1.1はじめに

 国際交流の継続的実践企画はインターネット上にバーチャルスクールを開校し、世界中の子どもたちが集まって、異文化交流を含めた様々な研究活動を実践する企画である。この企画には全国24の小中高等学校が参加しており、大阪、名古屋、東京の3地域に分かれ活動していくことになった。大筋の流れはワーキンググループで検討され、具体的な実践を各地域の幹事校が中心となって参加校と共に行うこととなった。本校は東京校の幹事校として、6校の小学校、中学校、高等学校と活動を行った。各学校での実践は10月からスタートし、12月には中間発表会において東京校の活動報告を行った。

 本稿では、今年度東京校で実践した活動を報告する。

4.1.2実践を行うための準備

 インターネットを活用した国際交流としてまず考えられるものは、海外の子どもたちとのメール交換である。相手校を見つけ、英語でメールを書けば、子ども同士、または教員同士のやりとりも可能である。しかし、このような活動を継続的に行うとなれば難しい問題が数多くでてくる。まず考えられることは、個人メールのやり取りでは、全体の活動の流れが見えないと言うことである。交流の進行や情報を共有できなければ、活動は進まなくなってしまう。

 そこでまず整備しなければならないこととして、交流を続けるためのしくみを確立することである。それには何が必要なのか、まず交流を行うためのバーチャル会議室の構築である。バーチャル会議室では、教員同士で子どもたちの活動の打ち合わせや問題点、解決方法を検討したり、子ども同士で具体的な話し合いや研究活動を行うことができる。

 そしてもう一つ重要なことは、交流を行う上で具体的なテーマを設定することである。子どもたちが活動しやすいテーマを設定し、そのテーマを中心に交流や研究活動を展開することができる。

4.1.3東京校の参加校

東京校では、次の6校が参加して活動を行った。

 小学校が3校、中高等学校が1校、高等学校が2校とまさに東京校そのものが小中高の異文化体験ができる場となった。

4.1.4東京校の目標

 東京校では、海外の子どもたちと交流する前に、日本を紹介するwebページを制作することとなり、題材として「日本のアニメとゲーム」「日本の昔話」を選ぶこととなった。それとともに、参加している子どもたち、教師が打ち合わせができるバーチャル会議室を構築することとした。

(1)日本のアニメとゲーム

 ここ数年の間に日本のアニメは世界中でテレビ放映され、映画化され公開されている。またゲーム機やゲームソフトもアジア各国、アメリカで爆発的な人気を得ている。実際に活動を行う子どもたちにとって、アニメやゲームは最も興味・関心が高く、言葉の壁を越えて交流を行うには最も適していると考えた。

 そこでWebページを制作し、アニメ、ゲームの作品紹介、日本社会に与える影響、発展の歴史などをまとめるとともに、見た人からのフィードバックが得られるような掲示板を設置することにした。

(2)日本の昔話

 

図1 はなさかじじい

 世界の人々に日本を理解してもらう手だけとして、代表的な昔話である「はなさかじじい」や「桃太郎」をはじめ、地域に伝わる昔話を紹介することにした。紹介する方法として、単にWeb ページとして、英文とイラストで表現するより、音楽や英語の読みを入れたアニメーションを制作し、インターネットで配信する方法をとることとなった。具体的には、マクロメディア社のFLASHというソフトを使ってアニメーション絵本を制作することになった。まず、小学生がイラストを描き、それを中学生、高校生がコンピュータに読み込み、英語の読み、BGMを入れ、アニメーションとして動きのあるマルチメディアコンテンツとして制作した。

(3)会議室の構築

 個人メールのやりとりやメーリングリストでは、継続的に交流を行ったり、テーマにそった話し合いを進めることが難しいため、子どもたち、先生が自由に使えるバーチャル会議室を構築することになった。Web X(ウェブクロッシング)というサーバーソフトを使って会議室を立ち上げ、ユーザはブラウザを使って
会議室に入れるシステムを作った。

図2 Web会議室

会議室の参加者はIDとパスワードを入力してログインし、「参加校紹介」「昔話の部屋」「アニメとゲームの部屋」「みんなではなそう」「はじめましての部屋」「先生の部屋」の6つの小会議室に自由に書き込みができるようになっている。ただし、先生の部屋のみは教員だけがアクセスできる。会議室に書き込みを送信すると、文章とともに書き込んだ人の顔写真も表示されるので、書き込んだ人の顔がわかる、と子どもたちにも好評であった。なお、このサーバの管理は神奈川大学附属中高等学校の高校生が行っている。

図3 子どもたちの書き込み

 

 

4.1.5活動報告

 活動のほとんどはネット上で行うこととなるが、中間発表会を含め3回の会合が開催された。

(1) 第1回ミーティング(10月23日)

  開催場所 コンピュータ教育開発センター会議室

東京校の参加校の教員が初めて集まり、この企画の内容や活動方針について検討を行った。東京校では、海外の子どもたちと交流する前に、日本を紹介するwebページを制作することとなり、題材として「日本のアニメとゲーム」「日本の昔話」を選ぶことが確認された。具体的な活動方法は小学校、中学校、高等学校では異なってくる。小学校では、授業での取り組みが中心となるため、地域学習とからめた形で、地域に伝わる昔話の紹介を行うことになった。中学、高校では、授業での取り組みが難しく放課後、休み時間に活動し、Webページやアニメーションなどのメディアコンテンツ制作とバーチャル会議室のサーバ立ち上げと管理を行うこととなった。

 活動方法は違っても、小学生から高校生までが協力して楽しみながら活動を行うことが確認された。

(2) 第2回委員会、講習会(11月7日)

  開催場所 神奈川大学附属中高等学校

 この講習会には、神奈川大学附属中高等学校から7名、早稲田高等学院から7名、つくば市立並木小学校から3名の合計17名の子どもたちと参加校の教員8名の25名が参加し、この場で初めて参加校の教員、子どもたちと顔をあわせた。講習会では、NetMeetingを使ってのビデオ会議の方法や、バーチャル会議室のユーザの登録や使い方の説明、FLASHアニメーションの作りなどの技術講習会を行った。

図4 講習会の様子

 NetMeetingを使ってのビデオ会議の説明では、実際に名古屋校の講習会場である西陵商業高等学校と結び、ビデオ会議を行った。バーチャル会議室の使い方、FLASHアニメーションの作り方などは神奈川大学附属中高等学校の中学生、高校生が講師となって講習会を行った。また、早稲田高等学院の高校生がこれから制作する東京校のWebページの構想が提案され、白熱する議論が展開された。12時からスタートした講習会は、予定時間を大きくオーバーし18時を過ぎるまで行われた。

(3)中間発表会(12月12日)

   開催場所 愛知県女性総合センター

 名古屋で開催された「教育とインターネット活用発表会」において、国際交流の継続的実践の東京校の中間報告を行った。発表では、神奈川大学附属中高等学校の高校生が日本語と英語で司会を行った。早稲田大学高等学院の生徒たちで「日本のアニメとゲーム」の発表を行い、本校の生徒と東林小学校の児童たちで「はなさかじじい」のFLASHアニメーションと日本語の読みと英語の読みの発表を行った。どの発表もすばらしく、特に子どもたちが自分たちの活動を自分たちの言葉で発表できたことはすばらしい経験であるとともに、これからの活動の大きな自信となった。

図5 子どもたちの発表

4.1.6おわりに

 国際交流の場として企画されたバーチャルスクール構想は、Webサーバやメールの設定というハード面の整備と、実践を行う子どもたちがどのような活動を行っていけば交流が続けられ、学習成果として残すことができるかという実践のソフト面の整備が必要であった。その第一歩が踏み出され、このような実践を行うことができたことは、大きな成果をあげたと言えるだろう。

 これから本格化する海外の子どもたちとの交流のためには、今年とりかかったメディアコンテンツを完成させなければならない。それとともにこれから英語でのやりとりが頻繁に行われる中で、その活動をいかに支援していくか、そのしくみを構築しなければならない。また、メールを中心としたテキストベースのやりとりだけでなく、NetMeetingやReal Videoに代表されるビデオ画像配信システムを作り、子どもたちの活動に使えるよう整備する必要がある。


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