1.1 調査の概要

1.1.1 調査の条件

(1)ねらい

 インターネット上のコンテンツには、児童・生徒・学生にとって有害と思われる情報が あり教育の場における自由な閲覧は好ましくないことが指摘されている。  本調査の目的は、情報の選択的閲覧を支援するレイティングシステムについて、主として小・中・高等学校の教師を対象に、教育的な観点からフィルタリング・レベルやシステムに求められる仕様、有効な運用方法と利用方法、運用効果および課題について調査・研究することである。

    (1) ニューメディア開発協会のセンターに構築されたPICS準拠のラベルビューロを使ったフィルタリングシステム等の運用上の効果や課題について調査する。

    (2) フィルタリングについて平成10年度に試作した教育用ヒナ型(詳細は平成10年度新100校プロジェクト成果報告書に記載)の有効性等を評価する。

    (3) 調査結果を利用した授業実践事例を行い、運用上の効果や課題について調査する。

(2)概要

 本企画では教育上不適切な情報( 暴力等) のフィルタリング( 制限) と「有益な情報」( 教材等) の抽出を共存させる仕組みの研究を目指した。そして、様々な運用形態に対応して情報の選択的閲覧を支援するレイティングシステムについて、アンケート協力を行う参加校を、コンピュータ教育開発センター(CEC) が公募で集めたり、積極的な参加校が口コミや研修会で集めた(添付資料の参加校の公募要項、応募者一覧を参照)。  具体的には、インターネット接続校でありかつ自らサーバを有する積極的な参加校が代表校となり、ワーキンググループの委員として、教育的な観点から「有害情報のフィルタリング」と「有益情報の抽出」を同時に行う仕組み、利用方法、効果や課題について調査研究を行った。

1.1.2 実施体制

 コンピュータ教育開発センター(CEC) が事務局となり、「教育用レイティングシステムを利用した実践研究」ワーキンググループ( 以下、WGという) を設置し、実践研究する上で発生した課題をWGで検討し、実施結果の評価を行った。

(実施体制図)

(役割分担)

  • WGグループ:
企画の推進、調査結果のまとめ方法・提示方法の検討・作成、報告書の作成。メンバーは参加校の代表校。
  • 参加校:
アンケート調査活動の実践、調査結果を活用した授業を実践。
  • 事務局:
調査方法・調査項目の検討・基本案作り、参加校募集、WGグループの設置・運営、参加校への支援、報告書の作成。

 

(実施スケジュール)

             

(1)ワーキンググループ委員構成( 敬称略)

主査 苗村 憲司( 慶応義塾大学環境情報学部 教授)
委員 石原 一彦( 大津市立平野小学校 教諭)
  上谷 良一( 兵庫県立教育研修所 指導主事)
  宇佐美東男( 愛媛県立新居浜工業高等学校 教諭)
  折田 一人( 前橋市総合教育プラザ 指導主事)
  国分 明男( 財団法人ニューメディア開発協会 理事)
 

清水紀久雄( 山梨県総合教育センター 研修主事)

  鈴木 二正( 慶應義塾幼稚舎教諭)
  高橋 邦夫( 東金女子高等学校 総務部長)
  芳賀 高洋( 千葉大学教育学部附属中学校教諭)
  長谷川 元洋( 松阪市立中部中学校教諭)

(2)ワーキンググループの活動

  平成11年10月末までの調査方法・調査項目の検討・基本案作り、参加校募集を経て、以下のWG活動を行った(詳細は1.1.3項と添付資料のWG会議資料・議事録を参照)。

(3) メーリングリスト

 メーリングリスト(rating@cec.or.jp)を開設し、参加校の代表校、ワーキンググループの委員、事務局をメンバーとし、各々からの実験に関する情報提供および情報交換を行った。また、参加校の代表校に対する情報提供もこのメーリングリストで行った。

1.1.3 調査の実施

 「先進的実践研究報告書」で記載した通リ、6月まで調査方法の検討を行い、事務局が策定したテーマ選定方針に基づき、6月25日までテーマのアイディア募集行った。8月末までテーマ選定を行い、応募いただいたアイディアを企画化した。主として小・中・高等学校の教師を対象に、教育的な観点からフィルタリング・レベルやシステムに求められる仕様、有効な運用方法と利用方法、運用効果および課題といった調査項目を洗い出した。参加校の募集は、基本案作りが終わった9月から実施した。

 本企画では、上記のようなワーキンググループを設置し、他の学校が実施する際の利用手引き書を作成し、参加校での実験結果を持ち寄ると共に、評価シートによる評価および参加校へのアンケート調査を実施した。

(1) 運用実験の参加校の募集:

 インターネットを利用する環境が整っている学校および教育関連機関を対象に、Web 等を利用して参加校を募集した。代表校ともいうべき参加校は小・中・高でそれぞれ2校、および教育センター1センターなどにおいて実践研究を行った。その他の参加校には、アンケートへの協力をお願いした。

(2) ワーキンググループの設置:

 ワーキンググループを設置し、協議しながら利用手引き書、運用実験の評価シートを作成し、アンケートを実施し、評価を行った。

(3) 利用手引き書、評価シートの作成:

 他の学校が実施する際の利用手引き書を作成し、以下のような評価に対する項目を確認するための項目を検討し、従来の評価シートを見直し、修正した。

(4) 運用実験の実施:

 参加校に評価シートを配布し、参加校の運用実験の支援を行うと共に、評価シートに従ったアンケート調査を行い、評価データの収集を行う。同時に、レイティングシステムの運用に付随して発生する課題について把握した。

(5) アンケート調査および評価:

 110校が参加したアンケート調査による評価データの分析を行うと共に、レイティングに関する今後のあり方についても研究した。

(6) 推奨フィルタリング・レベルの作成:

 学校現場におけるアンケートの実施を踏まえて推奨フィルタリングレベルを作成した。

(7) 利用手引き書、報告書の作成:

 報告書にまとめた。


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