1章 校内LAN構築の目的と意義

1.1 学校の情報化の現状

 学校へのコンピュータ整備が計画的に進むなか、文部省の「情報化の進展に対応した初等中等 教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議」において情報化の方向、課題、推 進策の検討が行われてきた。そうした中、平成9年1月に教育改革プログラム(平成10年4月改訂) が政府の行動計画として発表され、情報教育の更なる推進が政府の方針として掲げられた。海外に おいても情報化は国の競争力の源泉となるものと捉え、将来の国を担う人材の育成という観点から 学校教育の情報化を国家的規模で推進している。

 一方学校の情報化は、通産省が文部省の協力のもとで行ってきた100校プロジェクト等が行わ れ教育現場での情報技術を活用した教育の可能性を実証してきたが、インターネットに接続してい る学校数も3800校(平成10年3月現在)を越えるなど、学校におけるインターネットが試行期から普 及期に入ってきていた。また、平成11年度末を目処に学校へのコンピュータの整備に関する整備計 画が進められると共に、平成13年度末までに全ての中学校、高校、小学校がインターネット接続す るように計画が進められてきている。

 また、バーチャル・エージェンシーの「教育の情報化プロジェクト」では、今後の教育においては情 報化の「影」の部分にも十分配慮しつつ、情報化によるメリットを最大限に活かせるような環境づくり の必要性が報告されている。

 その中では、平成17年をめざして、すべての教室(コンピュータとインターネットの整備)、すべて の教科(教育用コンテンツの整備)、すべての教員(研修の充実)をキーワードに教育の情報化が推 進されていくように提言している。

 すべての教室にコンピュータとインターネット、校内のLANを整備することによって、子どもたちの 日常の学習活動で活用できる環境が提供される。

 次ページに学校における情報教育の実態等に関する調査結果 (平成10年度: http://www.monbu.go.jp/special/media/00000019/)の一部を掲載する。

 学校における情報教育の実態等に関する調査結果 (平成10年度)抜粋

表1.インターネット接続学校数   (上段:9年度、下段:10年度)

学校種別 学校数(A) インターネット
接続学校数(B)
割合B/A(%)
小学校 23,811
23,686
3,230
6,499
13.6
27.4
中学校 10,475
10,432

2,375
4,461

22.7
42.8
高等学校 4,162
4,161
1,557
2,651
37.4
63.7
特殊教育諸学校 盲学校 68
68
20
28
29.4
41.2
聾学校 105
104
32
46
30.5
44.2
養護学校 745
748
149
260
20
34.8
小計 918
920
201
334
21.9
36.3

合計 39,366
39,199
7,363
13,945
18.7
35.6

 表2.コンピュータの購入方法別設置台数


インターネット接続学校数(A) ガイドラインがある学校数 (B) 割合B/A ホームページ がある学校数 (C) 割合 C/A 月平均インタ ーネット利用時間数(D) 割合 D/A
小学校 6,499 2,316 35.6 1,908 29.4 74,422 11.5
中学校 4,461 1,497 33.6 1,290 28.9 77,783 17.4
高等学校 2,651 1,210 45.6 1,465 55.3 107,806 40.7
特殊教育諸学校 盲学校

28 14 50.0 17 60.7 1,685 60.2
聾学校

46 26 56.5 28 60.9 956 20.8
養護学校

260 144 55.4 134 51.5 5,996 23.1
小計 334 184 55.1 179 53.6 8,637 25.9
合計 13,945 5,207 37.3 4,842 34.7 268,648 19.3

表3.LANを設置している学校
    (LANにはコンピュータ教室内LANのみの場合も含む。)


コンピュータを設置する学校数(A) LAN設置校(B) 割合B/A
  小学校 23,140 6,411 27.7
  中学校 10,426 6,739 64.6
  高等学校 4,161 2,718 65.3
特殊教育諸学校 盲学校

68 18 26.5
聾学校

103 41 39.8
養護学校

739 178 24.1
小計 910 237 26.0

合計 38,637 16,105 41.7

1.2 校内LAN構築の意義

1.2.1 日常の道具としてのコンピュータ/ネットワーク

 教育の情報化を進める上で、子どもたちの日常の学習活動にいつでも、どこでもインターネットにア クセスでき、ごく身近な道具として利用できる環境が提供できることが望まれる。そのために有効な 手段としてLANを構築し、職員室、各教室、その他有効と思われる場所にPC端末を配備すること で可能になる。

 LANの機能として、サブネットという単位を利用し、サブネット単位での情報の遮断が可能となる ため、子ども用(教室等)と教員用(職員室)とサブネットを分けることにより、有害情報の排除や学校 業務文書等の配信先指定が有効に機能させることが可能になる。

 インターネットでは現実社会と同様の規範が必要になる。そのため、学校内において疑似現実社 会を実現、いうなれば自動車教習所としての情報交換、情報発信を訓練する場とし、メールの活用 によるコミュニケーション能力を訓練することが有効でなる。

 また、情報収集の場面においては、インターネットは子どもたちにとって有益な情報が存在すると ともに有害な情報も存在する。有害情報を遮断する機能を組み込むことにより、子どもたちが安心し て情報収集や分析などを行う場を提供できる。

1.2.2 構築の進め方と活用のための方策

 現時点での校内LANの構築事例は、力のある教師たち個人の手作りやネットディボランティア等 による構築が数多く報告されている。

 一時避難的な方法としての構築例としては認知すべき事例ではあるが、運用の問題を含めて、構 築および運用は学校あるいは行政で行うことが望ましいと考える。

 コンピュータあるいは校内LANを活用するには、必要なときに、その場所で利用できることが望ま しい。その都度、コンピュータ室に移動し、コンピュータ室の空くのを待って、利用する形態は思考が 途絶し、利用の意欲をそぐことになりかねない。コンピュータあるいは校内LANの理想的な配置は教 室や子どもの集まる場所に配置するのが望ましい。

1.2.3 運用問題の重要性と課題

 運用に関しては、常時利用可能な状態に保持されている必要がある。また、有害情報の遮断や 外部からの不正アクセスに対処する事が必要である。

 また、学校校務と授業での利用との切り分けは個人情報保護の立場から明確に切り分けられる 必要がある。この切り分けが不十分な場合は学校業務のネットワーク上での運用してはならない

1.3 校内LAN構築の取り組みと現状

教育の情報化を進める上で、平成6年以降、いろいろなプロジェクトが展開されてきた。


 次へ →