3. 活用に至る事前検討知識


3.1.準備段階

 学内で利用されるモバイル・コンピュータ機器を導入する為の事前準備として、それを3つの分野にしぼり、実証実験に必要な機能の検討や、その目的に合致するかを評価しました。モバイル・コンピュータ機器の運用性を高める為に、通信機能、環境、事前知識についても報告します。

(1) モバイル機器の検討

以上の項目で事前検討を行い、その結果について報告します。

1) 目的に添ったモバイル・コンピュータとしての機能評価

 モバイルコンピューテングの利用目的により、機器の機能は大変重要な検討項目です。クライアント側のモバイル機器に注目するのは当然ですが、インターネットを通じた送信相手側(学内サーバ、やインターネットサービスプロバイダ等)の環境に関しても事前に検討が必要です。3.1(2)リモートアクセスサーバの構築方法を参考にして下さい。

 モバイル・コンピュータに必要な機能と言えば、ノートパソコンはモバイル用途を想定している為、商品出荷時に付属している基本ソフトを含む、モバイル関連ソフトが充実していると評価できます。但し用途が特定される業務等においては、都度検討が必要です。主なソフトウエアとして、個人のスケジュール表、簡易電子地図、ペイント、メモ帳等があります。通信関連ソフトとしては、インターネットアクセスのためのWebブラウザ、インターネットアクセス用のメールソフト、等が最低限必要となります。

  モバイル・コンピュータを利用した今回の実証実験では、PHSや携帯電話との接続が必須項目となりますので、その事前準備が重要です。

 具体的には、ノートパソコンとPHS(携帯電話)を接続するための接続カードやケーブル類が必要となります。更に重要なこととして接続のためのドライバーソフトをノートパソコンにインストール(接続用ドライバーソフト等をパソコン本体に移植する作業)することができないとPHSや携帯電話との通信ができません。ソフトをインストールするためのメディア(ここでは、FDDやCD−ROMを指す)が使用可能な機器の選択も忘れてはならない検討項目となります。

2)ノートパソコンのユーザインタフェース機能

 モバイルであれ、屋内で利用する為のコンピュータであれ共通してユーザインタフェースは重要な要素です。ノートパソコンはPDAと比較して、有利な仕様と言えます。

  今日のノートパソコン画面は、大きさが12インチ以上の液晶画面が採用されていますので、メールやWebの内容を確認するには支障が無いと評価できます。

 液晶の機能により表示品質や視野角度が狭い仕様の商品もありますので、留意して検討する必要があります。導入時の経費に応じて結論を出して下さい。

 入力作業で利用するキーボードやポイントデバイス(マウスや本体上のロケ−タ、スティック)等においては、利用頻度を含め目的によっては、オフィスや学内利用とは当然ながら異なります、外出先の環境等に依存した利便性を考えて下さい。

 キーボードは全体の幅やキーストロークにより、利便性に差があります。モバイル用途ではノートパソコンの持ち運びを優先することから、キーボードの機能が犠牲とならざるを得ません。一方ポイントデバイスであるマウスは利便性に優れますが、屋外では逆に利便性の悪いデバイスです、それに変わる機能としてロケータやスティックがありますので利用者の馴れを含めて良いものを選択すればよいでしょう。

3) 通信頻度や可動時間等に関する評価

 モバイル・コンピュータの理想的な運用を考えれば、長時間連続して安価な費用で利用できることがベストですが、連続使用時間には制約(ノートパソコンでは通常2-3時間)があります。

 携帯運用性を重要視するために、バッテリー容量に限界があることが時間制約上の大きな理由です。制約を克服する為に各種技術面での挑戦がなされていますので、将来長時間利用可能なノートパソコンが開発されると思います。

 通信頻度と運用性に関して、通信の利用環境、費用、速度と言った側面で、予め理解しておきたいことがありますので、次に内容を記します。

イ)PHSや携帯電話を利用したデータ通信では、電波の強弱により、データ通信には不利な側面があります。電話の電波受信レベル表示が2本以上であれば良好な通信が可能ですが、1本以下では万全とは言えません。音声の場合は電波が弱くても会話は理解できるのですが、データ通信ではそうは行きません。電波が微弱であればデータ伝送上エラーが発生し、再送信しながらデータを送る必要があります。従って通信に時間がかかったり、全くデータが正常に送れないことがあります。

ロ)モバイル通信では高額な通信費用が気になることと思います。電話交換時間に比例した料金体系とデジタルパケットタイプの料金体系に分かれます。要約すると目的とする通信内容に応じた選択がベストですが、一般的には通信データ量が少ない場合はパケット通信が有利といえます。PHSは携帯電話に比べて有利なコスト体系ですが、使用エリアに難があると言えます。

ハ)通信速度はPHSで64Kbps、32Kbpsですが、携帯電話はモデルにより4800bpsもしくは、9600bpsで、パケット通信では28.8Kbpsとなっています。

4) 導入の為の事前教育について

 コンピュータシステムの導入後の教育について

モバイル利用に限らずベストな運用を実現するためには、事前教育が重要で、要約すると下記の内容に整理できます。

イ)個人の利用は、個人が各々試行しながら操作方法や運用を決定すれば良いのですが全体でシステムを運用する場合には、全員が同様の能力で使用できなければ、運用に支障をきたす場合があります。

ロ)全員が同様の環境で利用するための、事前教育としてコンピュータの操作以外に、運用システム全体の概要や、必要な環境全般の知識が求められます。
(例:コンピュータの歴史は浅く、利用される概念が新しいと言ったことから、最低限必要な概念は習得すべきです。例えばユーザインタフェースの表現として、アイコン、ツールバー、メニュー、ファイル、マウスといった言葉や概念を習得することが重要です。)

ハ)特定のツールやソフトを使用して、特定の業務を運用する場合は、事前教育がきわめて重要です。

5) その他

 持ち運びの運用性に関して、ノートパソコン本体付属品と他の荷物等のことを考えたキャリングツールも重要なことです、事前の準備を怠らないことです。

<今回採用のIBOOK>

<今回採用のソニー バイオC1 PCG-C1EX>

<今回採用のシャープ PC-PJ2-X4>


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