1.日本列島を走るトラック

(小学校第5学年 社会科)

2.授業のねらい

 第5学年では,前単元までの学習で,第1次産業,第2次産業での「物」の生産を通して,働く人々の努力や工夫をとらえてきた。したがって,稲の成長や自動車の組み立てなど,子どもの目にも比較的とらえやすい「物」を学習材として扱うことができた。
 それに対して,通信や運輸などの第3次産業の学習では,目に見える生産物としての「物」がないため,学習材の工夫が求められる。
 本単元では,子どもたちに身近な「運輸」の例として,宅配便から入り,物を運ぶ仕事にたずさわる人々の工夫や努力を学習する。さらに身の回りの物の産地と輸送ルートに目を向けさせることで,人々の生活と産業を結び,支える運輸業のはたらきに気づかせる。

3.利用ソフトについて

(1) 利用ソフト名

「データマップ[JAPAN]」 創育

(2) 利用ソフトの概要

 データマップ[JAPAN]は,日本全国および県別の基本的な地理情報が収められた「電子地図帳」である。県別の面積や人口,各種生産統計,ごみ収集量その他の情報が含まれている。主要都市の気温と降水量の年変化を示すグラフなどもある。
 さらに,これらの地理情報を活用して,県別に色分けした地図をつくり,その地図の上に棒グラフを重ねたり,県別の情報の全国比を帯グラフや円グラフで表現するなどの様々な作業をすることができる。
 また,「自分マップ」という機能があり,工夫しながら自由自在にカラフルな地図を作成することができる。

4.コンピュータ利用の意図

(1) 利用場面

 運輸業の学習では,宅配便を扱った授業が多く見られる。宅配便は近年大きく成長し,児童にもなじみの深いものであるが,それだけでは,人々の生活と産業を結び付け,支えている運輸業の重要な意義は十分理解されないと考えた。そこで,児童の身の回りの具体的な品物の産地を地図上に記入し,交通網と重ねてみることで,生活と産業のつながりに着目させたい。
 しかし,児童にとって,白地図に複雑な情報を記入させる作業はかなり困難である。そこで,コンピュータを活用すれば複雑な情報も地図上に表示でき,その上に書き込んだり,訂正したりが簡単にできると考えた。
 本時ではデータマップ[JAPAN]に収められている地理情報の中の「交通網」を活用し,「自分マップ」の機能を使って,交通網と品物の産地を一つの地図に表現することで,品物の輸送ルートを具体的にとらえられるようにした。それにより,自分たちの生活と産業が運輸業によって結び付けられ,支えられていることに気づかせたい。
 また,コンピュータを活用してつくった地図は,そのまますぐにモニターで提示でき,発表にも利用できる。それらの利点を生かせば,児童が収集した情報を自分の目的に応じて加工し,考察し,発信するといった情報処理・伝達能力を養うことにもなると考えた。

(2) 利用環境

1) 使用パソコン NEC PC9821Ce2 11台(教師・提示用1台)
2) 周辺機器 マウス(11) 画像コンバータ(1)29型TV(1)
 児童数  男子11名 女子10名
利用教室 パソコンルーム
・パソコンは壁に向けて配置し,教室中央は広く空いている。
・2(3)人1組につき1台使用

5.実践

(1) 指導計画 (5時間扱い)

第1時 たく配便の送られ方のひみつ第2時 たく配便を運ぶ人々
第3時 トラックターミナルの仕事
第4,5時 品物の産地とルート (本時)

(2) 本時の目標

 品物の産地とルートマップをつくることを通して,身の回りの品物が各地からトラックや鉄道,船などで運ばれてきていることを知り,運輸の仕事が人々の生活を結び付ける大切な働きをしていることに気づく。

(3) 本時の展開

◎は使用ソフト名
学 習 活 動 活動への働きかけ 備 考
1.調べてきた品物と産地を発表する。
2.品物がどのようにして運ばれてきたか疑問をもつ。
○自分の調べてきた品物と,その産地を何人かに発表させる。
○宅配便についての学習と関連付けて考えさせる。
 
「 品 物 の 産 地 と ル ー ト マ ッ プ 」 を つ く ろ う
3.学習活動の方法を知る。 ○ソフトの立ち上げ方,操作方法について実演しながら解説する。 ◎データマップ
[JAPAN]
4.ソフトを立ち上げ,交通網図の上に品物の産地を記入し,品物が産地から運ばれてくるルートを考えてワークシートに記入する。
交通網上に「自分マップ」機能で品物を記入する
○机間指導
○地図づくりができたらデータをフロッピーに保存させる。
○つくった地図を見て,産地からのルートを具体的に考えさせる。
・画像コンバータ,29型
TV
5.つくった地図から,品物がどこからのように運ばれてくるのか発表する。
作った地図を29型TV上に提示し,発表する
○つくった地図を見て,産地からのルートを具体的に考えさせる。  
6.発表や調べたことから気づいたこと話し合う。
・トラックは必ずどこかで使われる。
・ぼくらの住んでいる町と産地は,道路や鉄道や船で結ばれている。
・品物や目的などによっていろんな運び方がある。
・身の回りのものは,みんなどこかから運ばれてきたんだ。
・物を運ぶ仕事をする人がいなかったらたいへんだ。
○様々な輸送方法とその割合のグラフを提示しトラックと船の割合が多いわけを考えさせ,輸送手段や方法と,輸
送目的の関係に気づかる。
○阪神・淡路大震災で交通が麻痺したときの様子を取り上げ,運輸業のはたらきを具体的に考えさせる。
 
7.学習してわかったことや,それについての自分の考えをまとめる。    

5.今後の実践のために

(1) コンピュータを活用した地図づくりについて

 従来,地図づくりの活動は,白地図や地図作業帳に,色鉛筆などを用いて色を塗るものが多かった。しかし,作業にかかる時間や正確さの個人差が大きく,細かい作業の苦手な子どもには,苦痛の伴う活動だった。また,失敗したときのやり直しや,作業の途中での手直しが容易でなかった。そのため子どもが自分なりの工夫を盛り込むことなく,指定されたとおりに作業せざるを得なかった。
 本時,子どもたちは,失敗したら何度でもやり直し,できあがった地図を見てさらに手直ししたり書き加えたりと,思い思いに地図を作成し,のびのびと活動していた。

(2) 作成した地図の読み取りについて

 与えられた地図を読み取るのではなく,自分の作った地図を読み取ることで,子どもは意欲的に取り組んでいた。しかし,子どもが作った地図の正確さによって,読み取れる情報の的確さが大きく左右され,場合によっては誤った情報を読み取ってしまうおそれがある。また,自分の作った地図は子どもにとって親しみやすい反面,読み取りに客観性が損なわれる可能性もある。今後,支援の方法を検討していく必要がある。

(3) コンピュータを活用した発表について

 発表の場でコンピュータを活用することに子どもたちはたいへん興味をもち,意欲的に発表した。従来,子どもの作品(地図,表,グラフ,新聞等)は,OHPなどで提示したり,印刷して配布したりすることで,全体化されていた。コンピュータを用いて大型モニターで自分が作成した地図をそのままみんなの前に提示することができると,時間の節約や発表の効率化に役立つ。さらに,コンピュータを活用した効果的な発表の仕方を追求することで,プレゼンテーション的な表現の方法を身につけていくこともできると考える。そのためには,今後,マルチメディアに対応したソフトと,大画面モニタが必要となってくるであろう。
(実践者 大田区立大森第五小学校 前田武彦)


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