1.[マイコンドリルを使った2年生引き算の学習]

第2学年算数科「ひきざん−1」

2.授業のねらい

 「全員に引き算の計算をできるようにさせる。」これが第一のねらいである。さらに突き詰めていくと,量的な学習のねらいと,質的な学習のねらいがある。

(1) 量的な学習のねらい。

 電卓を活用することが日常化している今日,入門期の児童には計算練習をできるだけ多く積んで,速く,正確に計算を自分のものにさせることが大切である。年令が進むにつれて,機械に頼る計算の傾向はますます進むと考えられる。

(2) 質的なねらい

 速くかつ正確にというねらいは,ある意味では児童にとっては具体的で,活動しやすいねらいである。ただ,競争化しやすい(あるいはさせやすい)ねらいであると,質的なねらいがぼやけてくる可能性がある。ゆっくり計算に浸っていると,色々なことを発見することができる。32−16であれば, (12-6=6 20-10=10 10+6=16)(32-30=2 30- 16=14 14+2=16)(32-20=12 20-16=4 4+12=16)色々なところから答えを発見する道筋を自分でつかもうとする。1問解く中で,何問にも匹敵させる質的向上をねらうことができる。

3.利用ソフトについて

(1) 利用ソフト名

「マイコンドリル 小学算数シリーズ 算数2年」給ウ育ソフト研究所

(2) 利用ソフトの概要

「マイコンドリル 算数2年」の特徴として,給ウ育ソフト研究所の説明には,以下の項目が記されている。
1) コンピュータが問題を作る。
2) 成績がディスクに保存される。
3) 低価格ソフト
4) 学習者の名前が入る。

4.コンピュータ利用の意図

(1) 利用場面

 ここでは,主に3−(2)−@について利用者の立場から,述べてみる。この時期の児童には,一度できたので合格,修了を確定するわけにはいかない。漢字練習,計算練習というように,繰り返し行うことが不可欠といえる。また,計算力だけでなく,根気強さを養うためにも,繰り返しの練習は授業の中に取り入れていかなければならない。
 教員の作成する練習プリントは,同じ物を何度も使うことが難しい。できてしまった児童に,同じプリントを2度3度と与えた場合,答えを暗記されてしまい,計算を行おうとせずに解答を書くことだけに専念してしまう。それならば,複数プリントを用意すれば良いわけであるが,それらには必ず「NOナンバー」が付けられる。児童は暗黙のうちに競争しているわけであり,誰がナンバー○○かを意識してしまう。一枚目でじっくり考えている子,落ち着いて考えようとしている子は,少なからず自分が量では劣っていることを心配せざるをえない状況を作ってしまうのである。そこで,問題が常に変わる計算ドリルは,自分が何回目であろうと,「問題」そのものが他人と違うので,解き方に疑問が生じた場合,何か法則やきまりを発見した場合でも,落ち着いて立ち止まって考えることが可能になる。違う(同質の)問題を練習していることになる。

(2) 利用環境

計算練習のところが主になるので,プリントと併用してパソコン2台
児童数31名

5.実践

(1) 指導計画

第一次 繰り下がりなしのひきざん 2位数−2位数 2時間
第二次 繰り下がり一回のひきざん 2位数−1位数 2時間
第三次 繰り下がり一回のひきざん 2位数−2位数 3時間(本時1/3)

(2) 本時の目標

1) 繰り下がりのひきざんについて,理解する。
2) 繰り下がりのひきざんについて,図に描いて説明することができる。
3) 日常の具体物で,ひきざんの問題を作ることができる。

(3) 本時の指導

3学習活動 活動への働きかけ

ひきざんの学習を行うことを知る

お絵書きソフトで,物に置き換えて,学習する。
26コのおはじきがあります。その
うち19コを弟に貸しました。何コ
残っていますか。

おはじきを物のに置き換えて,題意と同じ事を行う。
・19個をまるで囲む。
・並べ替える。
・色を変える。等

式を立て,計算する。
26−19   26
       −19

マイコンドリルで,ひき算練習を行う。
・繰り下がりのできない児童は,1を選ぶようにする。
・1で70点以上取れたら,2に進む。
・一のくらいの誤答で,十のくらいがあっているのかどうか,判定の仕方を理解する。
[ヒント]
 あなたの答 44 
 せいかい  4* 
[ヒント]
 あなたの答 23 
 せいかい  *3 
ヒントが提示された画面

計算方法について,知る。
・繰り下がり
・暗算

二桁−二桁のひきざんの練習を行う。
・習熟度に応じたスタートを行う
1 18まで−1ケタ
2 2けた−1ケタ
3 2ケタ−2ケタ
4 2ケタ−2ケタ
5 2ケタ−2ケタ
マイコンドリルの[2]ひきざんメニュー
・ヒント画面の見方の指導。
・書きなおし方の指導。
・紙に書いて行いたい児童への指導

5の「2ケタ−2ケタ 」へ進み,100てんが確実に取れるように,練習する。

まとめ,反省をする。
 (どの画面が多かったのかを,見分けられるようにして,正解できない児童には,一桁−く一桁を別に行う。)
・早くできた児童には,確実に100てんが取れるように,次々のフレイズに進むことができるようにする。

5.今後の実践のために

(1) 利用場面の評価

(2) 成果

 ハードの関係から,学習活動の2は,プリントでつまづいていると思われる児童を呼んで,個別指導の形で行った。全員百てんとはいかなかったが,計算は達成できた。数の組合せによる計算の工夫を考えていた児童も出現し,考える場面が確保された。

(3) 課題

 授業の中でのつまづきを,マイコンドリルを使って,必要に応じて他の学習をさせることによる授業は,TTで行ってみると,より効果的な協力教授ができるのではないかと考える。次回は四十人学級で算数のTTをこのような形態で行ってみたい。
 かつて,「わかる授業」や「〜できる授業」といったタイトルをかかげて研究していたことがあった。もちろん「すべての児童に」が念頭にあったことは言うまでもない。では,担当学級の6年生が卒業前に全員「通分」ができるであろうか。たいへん難しい問題である。「全員がわかる」ことは,一人でもわからない児童がいた場合,達成されなかったことになる。では,何年生の何が「全員がわかる」が可能なのであろうか。このマイコンドリルを使うことによって,繰り下がりのあるひきざんは,達成可能である。つまづきのある児童は,ソフトの入れ替えなしにその前の段階のひきざんに,立ち返ることができる。
実践者 埼玉県狭山市立山王小学校 山口 哲司

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