1.植物のつくりと育ち方

(小学校第3学年 理科)

2.授業のねらい

 これまでに児童は,生活科や遊びをとして野外の自然に触れてたたり,季節に応じて成長している草花の変化に気がついている。
 本単元では,初めて理科の授業として観察を行うので,自然事象を比較していく見方を身につけさせたい。特に植物のつくりに目を向けさせ,植物への興味関心を高めていくことを通して視点を明確にした観察ができるようにさせたい。

3.利用ソフトについて

(1)利用ソフト名

「草花をさがそう」 埼玉県理科教育研究会
「TXTシステム」 初教出版 金井 清一

(2) 利用ソフトの概要

 本ソフトは,3年生に進級して初めて理科を学習する児童にも活用できるようにマウスの入力を基本にしている。生活科を1.2年生で学習してきた子ども達が初めて取り組む理科の授業として
1)自然から学んでいくことを援助すること
2)自分の感覚でとらえることを基本にしていること
3)学習の仕方を学ぶことができること
などを身につけさせるためには,よいソフトであるといえる。
 本ソフトを利用すると,タンポポ,ナズナ,カラスノエンドウを花と茎・葉の部分に分けそれぞれの組み合わせを作らせた上で実際の観察にいく指示がでる。児童は,自分の考えを持ち,実際の観察に出かける。花と茎・葉の状態が,提示されているので,観察にいく前に観察する植物の自分の予想ができる。そして自分が最初にもってっていた予想と観察を比べ植物のはのつき方を知る。教室に戻ってきてコンピュータに向かうとその違いをはっきりと確認することいができ,実際の観察とのずれがあるときは,観察の視点がよりいっそう明確にすることができる。
 扱っている植物が3種類と少ないのが難点であるが,オーサリングソフトで作成してあるため,児童の学習の状況や学習場面によって内容を書き加えたり,削除することもできるので,実態に応じて使い分けたい。

4.コンピュータ利用の意図

(1) 利用場面

 本単元は,植物の構成要素(根・葉・茎)が,植物の成長にともなって変化していく様子について観察する。さらにそれぞれの植物の形態(付きかた・形・大きさなど)について調べ,他の植物と比較しながら植物の種類によって形態や成長の仕方がちがうことにも気がつかせていく。そのため児童に観察の視点を与えてあげなければいけない児童もいる。それらの児童に,観察の技能を身につけさせるという観点から,本ソフトを利用することは有効であると考える。
 コンピュータを利用することで,児童の視点が絞られていき,観察により観察した植物の特徴を明確にしたい。

(2) 利用環境

1)PC−9801 DS,DX,RX,各1台
2)教室に分散配置

5.実践

(1) 指導計画(17時間扱い)

第1次 草花をさがそう 4時間 (本時2,3時間目)
第2次 球根や種子の発芽と成長 4時間
第3次 夏の草花 2時間
第4次 草花の挿し木 2時間
第5次 草花の開花と結実 5時間

(2) 本時の目標

 校庭や学校の周りの草花の観察を通して,草花のからだの作りは,種類によって違いがあるいがあるという見方や考え方ができる。

(3) 本時の展開

学 習 活 動 活動への働きかけ 備 考
1.前時をふり返り観察してきた草花を思い出す。 ○花や葉の形・色・つき方について思い出させる。 観察カー
2.本時 の課題を知る    
草花は,どれも同じような葉や花をしているのだろうか。
・色は似ているけれど,形は違っていた。
・葉の大きさやつき方が違っている。
・似ているものもある。
○名前や特徴を確認しながら話し合わせ,話題になっている植物をはっきりとさせる。  
3.自分が調べてみたい草花についてカードやコンピュータを使って予想をたてる。
T:この前調べなかった植物を選んで調べてみよう。

葉の形の選択図
○コンピュータを使って花や茎の組み合わせを提示する。
○自分の予想をカードに書いて確かめられるように助言する。
○前時の自分が書いたカードを基本として考えをまとめさせる。
○花・葉のつき方・葉の形についてはっきりさせる。
◎「草花をそう
◎ TXT
4.校庭や学校の周りに行って調べる。
○他の植物との違いについてまとめられるように観察の視点を花・茎葉のつき方・葉に絞る 大型TV
VTRコバータ
5.調べて分かったことについてまとめる草花の花や葉の形やつき方は,草花の種類によって違っている。 ○草花の種類による違い
をはっきりさせる。
○コンピュータやカードを使って調べた結果を提示させながらまとめる。
 

6.今後の実践のために

(1) コンピュータを使うことと実物の対比をしながら進める学習について

 今回に実践は,コンピュータだけを使うのではなく,実物や,子ども同士の対話を取り入れて進めていった。前時に子ども達が校庭や川の土手で見つけてきた植物の名前を手掛りに植物のからだのつくりについて学ぶことができた。
 提案の際に問題になった,植物を取ってきてコンピュータで調べる学習から入る場合と,限定した植物コンピュータ等で調べておいて,出てきた疑問や問題について調べていく場合とで比較をしてみたところ,多くの植物で調べたものを集約して一般性を導き出すことは難しかったように感じる。この学び方で取り組んだ学級では,調べていかなければならない植物が,33種類にも上り,かかった指導時数も3時間にものぼってしまった。児童の反応は,校庭・土手には多くの種類の植物があるという,植物集めになってしまった班もあり,植物の体のつくりに目が行き渡らないところもあった。様々な植物を調べたという点では,満足感は,高かった。
 一方少ない種類の植物のからだのつくりについて学んでから,他の植物の体のつくりに入った学級では,3ないし5種類の植物を丹念に調べることで,比較は容易にできた。タンポポ・ナズナ・カラスノエンドウ・カタバミ・ハハコグサの5種類であったが,葉のつきかた,根の張りかた,花のつきかたなど,1種類1種類形態が異なる ことがよくわかった。

(2) モンタージュ的手法を取り入れた効果について。

 花と葉のつきかたをばらばらにした提示を用いることによって,視点を絞ることができた。33種類の植物を扱った組では,葉のつき方にしても,大きく分けて3種類といわれる葉の付きかた(対生・輪生・互生)も,茎の形状によって子ども達は,さらに違ったとらえ方をして,仲間わけを行なっていた。その点からも,モンタージュ的活用法は,学習課題を明確にするという点で,効果があるといえる。

(3) コンピュータを使うことを通しての意欲の高まり。

 今回利用したソフトは,マウスの操作で利用できる点から,3年生にも簡単に使うことができた。表示できる色の能力により実物と異なった色であるか,特徴はとらえることができた。逆にあいまいな記憶を頼りにしてコンピュータとやりとりをした子どもは,積極的に外に出て実物を確認する姿が見られた。

(4) 学習形態について

 3台のコンピュータで実践を行なったが,3台で行なうには,様々な植物を扱って共通性を導きだす学習展開には,台数がたりない。少ない植物の種類を扱うことを考える実践の方が教室での実践には向いていると考えられる。
 しかし,観察に行く前に教室でタンポポについて児童が知っていることを中心に扱い,話し合ったうえで観察に行くといった形をとるならば,台数が少なくても実践は可能であると考える。
(実践者 狭山市立山王小学校 松澤 忠明)

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