1.「空気や水と力」

(小学校第3学年 理科)

2.授業のねらい

 ビニル袋に閉じこめた空気に力を加えたり,ボールを使って空気の詰め方と手応えの違いについて調べたりして,空気の存在や圧し縮められる性質を体感を通してとらえさせたい。そして,注射器などを使ってかさの変化を定量的に調べて水についても性質を比較しながら調べて水と空気の違いを調べさせたい。さらに,学習したことをもとに水や空気の性質を利用してものを動かす道具を作ったりさせたい。

3.利用ソフトについて

(1)利用ソフト名

理科アニメパック3年 (学研)

(2) 機能から考えられる利用場面

 本ソフトは,目に見えない空気の存在を単純化されたアニメーションで説明しているものである。操作もスペースキーを使うだけと,この時期の子ども達にも容易に使うことができる。実際に空気が押し縮められた様子は,なかなかみることが困難なことから,子ども達の仮説を導き出す支援の一つに利用できるのではないかと考えた。3年生の理科では,遊びの要素を取り入れ,自然の事象を実際に目で見て,触れて確かめていくことが望ましいと考える。ところが,それができない場合においては,支援の一つの方法としてコンピュータを活用することができる。
本ソフトは,
1)目に見えない現象を視覚的に表示できる
2)実験のポイントを見つけられる
3)自分の考えをより確かなものにできる
4)何度でもくりかえし見られる という利点を持っている。
実際に空気でっぽうを使った実験に入っていくときに,その視点がより明確になると考える。
理科アニメパック

3.コンピュータ利用の意図

(1) 本時の利用場面について

 本単元は,身近な空気や水を扱い,それらの性質を比較しながらとらえられるようにすることがねらいである。また,生活科の学習を通して育ってきた子ども達の豊かな発想や願いを引き継ぎ,その願いの達成に向けて,試行錯誤を重ねながらやり遂げる喜びを生かした活動にする必要がある。
 子ども達にとって,空気はたいへんなじみの深いものであるが,その性質についての理解はほとんどない。そこで,それらの子ども達に,実験をして確かめていく観点を明確にし,仮説をしっかりもたせるために本ソフトを利用することにした。
 本時では,空気でっぽうの前玉が飛び出す現象を,空気の仕業ではないかという疑問からスタートさせている。また,はっきりとした問題意識を持てない子ども達に対して,その手がかりをコンピュータのシミュレーションから導き出すことをねらいとしている。ある程度の手ごたえを持っている子ども達に対しては,より明確な実験における視点を提示できると考えた。

(2) 利用環境

1) 使用機種 PC−9801UX

4.実践

(1) 指導計画 (9時間扱い)

第1次 空気や水あそび 4時間
第2次 空気と水を比べよう 3時間(本時1時間目)
第3次 空気や水で動くおもちゃをつくろう 2時間

(2) 本時の目標

閉じこめられた空気は,押されるともとに戻ろうとする性質があるという見方や考え方ができる。

(3) 本時の展開

学 習 活 動 活動への働きかけ 備考
1.前時を振り返り,空気でっぽうの前玉の飛び出す様子を思い出す。 ○空気でっぽうを実際に打ち,その様子を見させる。  
2.本時の課題を知る。    
空気でっぽうの玉は,空気に押されてとびだしたのではないだろうか
3.玉が飛び出すときの空気の様子について考えたことを確認する
・後玉が前玉を押したんだよ。
・空気が縮まってから,我慢できなくなって飛び出したんだよ。
・棒の力に関係はないのかな。
○空気でっぽうの玉が飛び出すわけについて子ども達が考えたことを発表させる。
○コンピュータを使い,子どもの考えを確認する。
◎理科アニメパック
スキャンコンバータ
モニターTV

水の中に玉を打ち出し空気の様子を調べる ゆっくり押す
4.実験の方法を発表する。
・押し棒を押したときの手の感じで調べる。
・ゆっくり押して飛ぶか調べる。
・前玉が飛び出した時の後玉の位置を調べる。
○どのような実験方法を考えたか発表させる。
○自分の考えをカードに記入させる。
  
5.実験をする。    
6.実験の結果を発表する。
・後玉に押された空気が,筒の中に一杯になって飛び出した。
・筒の中の空気が縮まって,我慢できなくなって玉が飛び出した。
○自分の言葉で発表させる。  
7.分かったことをまとめる。    
空気でっぽうの前玉は,空気に押されたのではなく,筒の中の空気が縮まって,空気が我慢できなくなって飛び出させた。

5.今後の実践のために

(1) 市販ソフトを利用した学習について

 本来,教科における教材開発は,子ども達の実態や単元のねらいに即して,それを指導する教師が制作していくことが望ましい。ところが,コンピュータソフトは,TPシートを制作する感覚とは違い,ある程度のコンピュータに対する知識と技能が要求される。また,制作にかかる時間もそれとは比べものにならない。そこで,それらの条件を満たした市販ソフトを利用することになる。
 市販ソフトの利点は,購入した時点からすぐにそれが利用できるところにある。ソフト制作にかかる時間を,研修に回し,様々な使い方を考えることができるのである。
 今回は,「空気でっぽうの筒の中に入っていた空気が前玉を飛ばしたのではないか」という子ども達の考えを明確にするために利用した。この他にも,実験で前玉が飛び出す瞬間の筒の中の様子に視点を当てるための利用法や結論を導き出す際の支援にも利用できる。
 反面,価格が必ずしも安くはないので,まとまった本数を購入するのは難しい。そこで,利用形態の工夫が重要なポイントになる。

(2) 利用形態の工夫について

 今回の実践では,コンピュータの画像をスキャンコンバータを使ってモニターテレビに映し出し,全体で見ることにした。これは,話し合い活動の中から,問題を全体のものにしていくときなどには有効な手段となる。しかし,個々の問題を解決していく活動では,自由に検索できるコンピュータを数台用意しておく方が,深まりが出るのではないかと考える。
(実践者 相模原市立大野台中央小学校 井村勉)

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