1.単元名 動物や人の誕生

(小学校第5学年 理科)

2.授業のねらい

 調べ学習を通して,人がどのようにお母さんのお腹の中で成長し,生まれてくるのかを考えたり,知ったりする。また,新たに調べたことをもとに友達に知らせる活動を通してより考える態度を養う。

3.利用ソフトについて

(1) 利用ソフト名

「TXT システム」著作:金井 清
・「赤ちゃんの不思議」大宮市立大谷小学校理科部制作
・「人の誕生」 高橋 幸夫制作

(2) 利用ソフトの概要

 実行システムTXTは,TEXTの略で,ワープロ感覚でテキストを作り,複数のテキストを構造的な学習ソフトとして実行するシステムである。このシステムの特徴は次のようである。
1)学習コースの見通しが良く,教材作成時間が短縮できる。
2)マウスを使う学習教材が簡単に作成できる。
3)1枚のTXTシステムに10人の学習者名を登録でき,マウスのクリックによって自分の学習コースを呼び出せる。
4)アドイン機能があり,教材ディスクに入っているシミュレーションソフトなどの実行ファイルを学習コースから簡単に実行できる。
5)黒板機能がありINSキーを押すとすぐにパソコン黒板のモードになる。
6)学習履歴の回収が容易にできる。
7)教員が制作したソフトなので価格が安い。
 このシステムソフトを使い大宮市内の先生方が自作した教材ソフトを利用した。
「赤ちゃんの不思議」は,赤ちゃんについての40問の疑問について,わかりやすい回答を示すデータベース型のソフトである。問題文が提示され調べたい問題文をクリックすると答えが表示される。必要な問題の答えだけが表示されるので余分な情報に影響されることが少ない。
 「人の誕生」は,お母さんのお腹の中の赤ちゃんの成長を段階毎に図で表したソフトである。調べたい月数を選択し,お母さんの図の中で赤ちゃんがいそうな所をクリックするとお母さんのお腹の中で成長している赤ちゃんの絵や説明が提示される。

4.コンピュータ利用の意図

(1) 利用場面

 お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんについての疑問を解決するために,本やビデオなどいろいろな資料を活用するわけだが,その中の一つとしてTXTによって作成された教材ソフト「赤ちゃんの不思議」「人の誕生」を用いた。赤ちゃんのことについては家庭で実際に母親らに聞くなどして,少し知識をもっているようだが,自分達の疑問を解決することはできなかった。また,本を調べても小学生向きに書かれている資料はごくわずかで,十分に調べ学習が展開できないことが予想された。
 そこで,大宮の先生方が作成したこの2本のソフトを授業に用いた。このソフトは児童の実態に合わせて問題文や答えが吟味されているので小学生に適しており,児童は,主体的に活用し調べていくと考えられる。

(2)利用環境

PC−9801DX 8台 (+マウス)

5.実践

(1)指導計画(10時間扱い)


(2)本時の目標

 お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんの成長の様子を調べ,生命の神秘さ,尊さを感じることができる。問題を解決するために必要な方法や資料を選び,調べることができる人は,お母さんのお腹の中で成長して生まれてくることがわかる。

(3)本時の展開

学 習 活 動 評 価 と 支 援
赤ちゃんは,お母さんのお腹の中で大きくなるまで,どのように生活しているのだろうか予想してみよう。
(前時に作った問題を思いだし予想する。)

児童が作った疑問と予想

胎児の秘密
・空気を吸ったり吐いたりしているのかな。
・今必要ないから,していない。
・食べ物は,どうしているんだろう。
・口があるから,食べている。
・うんちやおしっこは,どうしているんだろ
・食べていないから,しない
・なぜ,動くんだろう。
・めだかの卵もよく動いていた。動く練習だろう。
・どのぐらいの大きさなのかな。
・50cmで生まれたので,5cm位かな。
羊水の秘密
・水の中で,なぜおぼれないのかな。
・えらがあって魚みたいに呼吸している。
・なんのために羊水があるのかな。
へその緒の秘密
・へその緒の役割は,何かな。       
・長さは,どれぐらいかな。
・こんがらないのかな。
その他の秘密
・胎児のもとは,何だろう。
【関心・意欲・態度】
人が,母胎内でどのように成長していったのか追究しようとする。
○自分の追究しようとする問題が,はっきりしない児童に支援する。
(T1、2)
お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんの心音を聴いてみよう。
・ぼくのお腹に聴診器をあてても心音は聴こえない
・赤ちゃんの心音が聴こえた。
・赤ちゃんが動いているようだ。
○妊産婦の方を補助する。(T2)
実際に,自分達の問題を調べてみよう。
○調べ方の相談にのる。(T2)
○機器操作の補助をする。(T1)
・はじめに,パソコン通信(電子メール)に疑問についての返事が来ていないか見てみよう。
・調べ方がわかった。活字だけでは,わかりにくい所があるから,もっと絵や写真のある資料で調べてみたいな。
・コンピュータを使って調べてみよう。
・レーザーディスクで調べてみよう。
・ビデオで調べてみよう。
・本で調べてみよう。
・体感してみよう。
(羊水:水の中で卵がわれるのか。)
(成長:生まれたばかりの赤ちゃんの人形を抱いてみよう。)
・調べたけどわからない事があった。助産婦さんに聞いてみよう。
○一人一人が問題を解決しやすいように,資料等の準備や,個に応じた支援をしていく。
【科学的思考】
胎児の成長に必要なへその緒や羊水などの働きを,総合的に考えることができる。
調べたことを友達に分かりやすいように知らせよう。
・友達だけでなく,電子メールをくれた人にも、わかったことを知らせたいな。
○生命の神秘さに着目させ,生命を尊重する態度ができるように支援していく。

6.今後の実践のために

 自ら課題を見つけ,答えを予想し,予想したことが正しいかどうか調べ学習を進めていった。調べ方の一方法としてコンピュータを活用した。
 埼玉県の高橋先生の「赤ちゃんの成長」や大日本図書の「動物や人の誕生」ソフトでは,胎児の身長など成長の段階を的確に表現してあるので視覚的にとらえることができた。
 また,埼玉県の大谷小学校理科部制作の「赤ちゃんの秘密」のソフトは,小学生が疑問に感じることをあらかじめ予想し40の問題に対する答えが入っているデータベースで,調べたいことや答えがやさしい言葉で書かれており,どの児童にもわかりやすく満足感があったようだ。
 コンピュータを使ったことで,調べ学習がスムーズに展開できたので,赤ちゃんが生きていることを感じるために,妊産婦の方にご協力いただき赤ちゃんの心音を聞かせていただく活動や助産婦さんのお話を聞くなど,活動を広げることができた。
 TXTシステムがあればこそ,2本の教材ソフトが有効に活用できた。とくに,教師が短時間で自作できるということは,児童の実態がよくわかっている者が作成したということで有効であった。また,マウスを使って操作できることで,コンピュータへの抵抗がなくなりどの児童もデータ検索に利用できた。
 教材作成ソフトTXTは,教育現場で手軽に教材を自作できるソフトで,制作者の許可を得てクラスの実態に合わせて変更や追加も大変しやすい。今回の2本の自作ソフトは制作者の好意により自由に使わせていただいた。特にマウスが自由に教材作成者の意図にそった使い方ができることが他の教材作成ソフトと大きな違いがあるようだ。
 調べ学習をする際,いろいろな資料を使って調べるが,それらが必ずしも小学生の問題意識や,答えのわかりやすさという点で,ふさわしい内容かどうかわからない。せっかく調べたのに「難しくてわからなかった」「出ていなかった」というようなことをなくし,わかった,なるほど,もっと調べたいというような意欲の高まりがみられるように,児童がより積極的に調べる意欲をもてるようなデーターベースを用意することが必要である。
 そのためには,データベースが,文字情報だけだったため,子供によっては理解しにくいところもあったので,図やビデオなどを挿入したマルチメディア的なデータベースにする。(ビデオデッキの機種によっては,TXTシステムでビデオのコントロールができる)または,今後,調べたことを入力して子供達自身がデータベースを作りあげる活動を通して調べ学習を発展させていくことが求められる。
 教員間で情報交換をし,よりよい教材ソフトを作っていくことが今後大切であり,それが可能な教材作成ソフトTXTであると考える。
(実践者 東京都目黒区立中目黒小学校 大川原幸生)

CEC HomePage平成7年度市販ソフト実践事例集