1.おもりのはたらき−ふりこ−

(小学校5学年 理科)

2.授業のねらい

 この単元では,おもりの重さ,振れ幅や糸の長さを変えて,ふりこの動きを往復する時間の変化に目を向けながら調べ,興味・関心を持って追究する活動を通してふりこの1往復する時間は,ふりこの糸の長さによって変わるという見方や考え方を養う。
 今回は,導入でブランコの動きを調べることから「ふりこ」が往復する時間の変化について問題を持たせ,「ふりこ」が往復する時間が速くなったり遅くなったりする条件について予想し,それを確かめるための実験計画をたてさせた。その実験計画に基づき,様々な方法で確認のための実験を行うことを授業のねらいとしている。

3.利用ソフトについて

(1) 利用ソフト名

「キューブセンサー」 スズキ教育ソフト

(2) 利用ソフトの概要

 キューブセンサーは,コンピュータにセンサーをつなぎ,それぞれの条件を設定し,計測し,グラフ,表等にデータを表示するものである。今回は,光センサーを用い,センサー部に光を当てておき,ふりこが真下を通過するたびに光量が変わることを利用してふりこの半往復ごとの時間を10秒にわたり計測し,その結果をグラフ表示した。この場合最初に教師が機械やソフトのセットをしておけば,後は,簡単な操作で結果が見られる。計測のスタートは,最初に光量が少なくなったときで終わりは,10秒後に自動で終わるようにセットした。このセンサーは,他に温度変化なども同じ様に計測できる。

4.コンピュータ利用の意図

(1) 利用場面

 ふりこの1往復の時間が何によって変わるのか,振れ幅,おもりの重さ,糸の長さ,と3つ考えられ,それぞれ5往復の時間を計り,その平均を求めて比較する。このとき用具などの工夫は,いろいろ考えられ,様々な方法で行えるが必ず計時が必要であり,この時センサーを利用できる。ストップウォッチだと測定誤差が大きく,児童もタイミングがうまく合わず何度もやり直すことが多く,授業時間のロスも多くなる。今回残念ながら1台しかセンサーがなかったため,グループごとの結果にバラ付きがみられたことや糸の長さでまったく結果が違うところで確認のためにセンサーを用いた。

(2) 利用環境

1)利用機種 PC9801DA
2)周辺機器 光センサー,A/Dコンバータ「サンゴ」

5.実践

(1) 指導計画(12時間扱い)

第1次 ふりこのはたらき 5時間(本時3時間目)
第2次 おもりで物を動かそう 5時間
第3次 つくる 2時間

(2) 本時の目標

 ふりこが往復する時間は,振れ幅,おもりの重さ,糸の長さのどれに関係するのか,自分の予想について調べ,それぞれの結果をもとに話し合い,糸の長さの違いによりかわるという見方や考え方ができる。

(3) 本時の展開

児 童 の 活 動 活 動 へ の 働 き か け
1.課題を発表する。 ・課題があいまいになっている児童がいないよう確認する。
ふりこが往復する時間が変わるのは,何が原因なのか調べよう。
2.グループごとの予想と実験用具,方法を確認する。
1班 重さ   2班 重さ   3班 重さ 
4班 振れ幅 5班 振れ幅 6班 振れ幅
・振れ幅を一定にする方法をグループごとに確認させる。
・5回ぐらい測定することを確認する。
・交替で協力して実験することを確認する。
3.実験の準備をする。 ・正確な実験のために,細かいところがきちんと準備できるよう援助する。
4.ふりこが往復する時間が変わる理由をグループごとの予想のもとに実験する。
・変えてはいけない条件をグループごとに確認する。
・実験結果はグループごとに,記録用紙に記入するよう指示する。
・納得できないときは,もう一度実験させる。
・結果がはっきりしないとき実験方法に問題点がないか確認する。
・重さを変えて実験するときおもりを縦につなげないよう指示する。
5.結果を個人,グループでまとめる ・結果について考えたことも書くよう指示する
・自分のグループについてまとめる。
・児童に操作をさせる。
6.グループごとの結果について発表する。
・おもりを重くしても変わらない。
・振れ幅をかえても往復する時間は変わらない。
・糸の長さを長くするとゆっくり往復し短くするとはやく往復する。
   
7.コンピュータで確認の実験をする。
実験の様子
・児童に操作をさせる。
・糸の長さの違いについては必ず実験を行う。
画面の様子
8.気付いたこと,考えたことを書き,発表する。
・重さで変わると思った。
・本当にそうか自分でも調べてみたい。
・予想と全然違った。
・予想に対してどうだったのか,自分で思ったことを書くように指示する。
9.次時の学習内容を確認する。 ・7の話し合いをもとにやっていない実験についても調べてみることとする。
ふりこの往復するのにかかる時間は,糸の長さによることを確認しよう。

6.今後の実践のために

 実験計測やデータ処理にセンサーを接続したコンピュータを利用することで実験観察が容易になり,科学的見方や考え方を深めるのに役立つ。この時,児童が簡単に操作できる(コンピュータ,センサー共に),結果の表示がわかりやすい,正確な結果が出る,壊れにくいなどが条件となる。具体的には,ふりこの周期の測定,水の暖まり方(対流)などが時間や温度など測定誤差も出やすく,結果の処理などの面からもセンサーとコンピュータを利用して,科学的思考の援助にしたい。この際,グラフ表示をさせ,細かい具体的な数値は意識して扱わないようにした。中学校やかなり細かくデータにこだわる必要がある時を除いて,簡単なグラフ表示のみで児童の視覚に訴えるだけで利用の目的は十分に達成されると考える。児童の感想を見ても,・ふりこをふらしただけで計れてすごい。・コンピュータはいろいろできてすごい。・簡単にできて分かりやすかった。・自分でやってみたい。・すぐに結果がわかった。・見ただけでわかった。などと大変好意的な反応であった。ここまで好意的な反応がでたのは,グラフ表示にでき,視覚にうったえられわかりやすかったこと以外に開始条件等設定しておけるので実験計測が簡単にでき,平均を求める作業やストップウォッチ等の計測ミスが減り,短時間に期待した結果をえやすいことも一因としてあった。このため児童からも好評であったと考える。又,A/Dコンバーターは,RS-232C端子に接続するだけでよいので比較的簡単である。そして,マウスだけで操作でき,児童でも短時間の指導ですぐに使えることからコンピュータに慣れ親しませ,道具として使うことに適していると考えられる。
 今後の課題としては,光源が明るすぎたり,光が拡散が大きいと測定できないので,測定に合った光源装置を用意したいのと,今回は10秒で計測が終るようにセットしたが,計測の終了の設定を工夫したい。又,初めてのソフトの設定は,光量や1往復の時間などの関係で以外と手間取った。この他,この装置が何台学校で準備できるかも問題となる。やはり最低8台は準備したい。そして,今回は,光センサーを用い,使った用具も比較的小さく持ち運びが容易なものばかりだったが,例えば,ものの暖まり方の単元で温度センサーを水入りのビーカーに入れ,下からアルコールランプなどで熱した場合などを想定するとどうしても実験を理科室で行いたい。従って,コンピュータを移動する必要がでてきてしまうことも考えていかなければならないことである。
 また,センサーでの計測でもデジタルストップウォッチでの計測でも同じだが,測定の精度が大変良く,振れ幅などの場合でも多少1往復の時間に違いがあることを正確に測定してしまい,どのように説明していくかという問題が生じてくる。活用には,このようなことも考えておく必要があるだろう。
(実践者 狭山市立広瀬小学校 仲川 隆雄)

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