1.大地のつくり

(小学校6学年 理科)

2.授業のねらい

 本単元では,大地が水のはたらきや火山の働きで地層になっていることと,その特徴を学習する。しかし,近くに露頭が見られない地区などは,ビデオや本などに頼って授業を進めているのが現状である。従って,児童の意欲的な活動を促すことが非常に難しい。そこで,身近などこにでも落ちている石を活用し,大地のつくりの学習に意欲的に取り組ませ,地層はどこにでもあり,自分の住む地域の地層について興味を持って意欲的に調べることをねらいとしている。
 この授業では,身近な川原や地層などで拾った石の特徴から石の名前や水,火山の働きのいずれの働きによってでできたものか調べたり,それが埼玉県内のどのあたりで多く見られる石か調べたりし,身近な大地のつくりに興味をもたせることをねらいとしている。また,日頃どちらかというと扱いにくい大地のつくりの学習に意欲を持って児童が自然から学んでいくことができるようにすることをねらいとした。

3.利用ソフトについて

(1) 利用ソフト名

「岩石分類ソフト(身の回りの石から地層のでき方や石のできた場所を調べるソフト)」 埼玉県理科教育研究会
「TXTシステム」 金井 清 初教出版

(2) 利用ソフトの概要

 本ソフトは,マウスでの選択入力を基本として自分が見つけてきた石を観察したり,硬さを調べたりの活動をしながら活用するソフトであり,ソフトで指示されたことを観察し選択入力するだけで石の種類とその石のでき方,埼玉県内での分布が分かるようになっているソフトである。従って,このソフトでは,石を拾ってくれば何度でも活用できる。具体的には,まず色を入力し,次にルーペで見た粒の様子を入力し,3番目に,くぎで傷つけた様子を入力する。そうすると,その石の特徴の確認があり,その石は,どんな石か表示される。このとき,これだけでは判別が不可能かどうか表示される。そして,石灰岩,砂岩,泥岩については,更に詳しく様子を観察したり,岩石標本と比較したり,教師に確認したりするようになっている。そして,どの石か判別できた後,その石が見られる代表的な露頭,次に大まかな分布図が表示され,その後どのような場所でできたのか表示される。表示される岩石の種類は,約10種類で教科書に載っているもので県内で見られるものが含まれている。従って,埼玉県で見られない安山岩,玄武岩については,教科書には,見られるが含まれていない。

4.コンピュータ利用の意図

(1) 利用場面

 基本的には,まとめの場面で活用することになる。このソフト利用のための前提条件として,水の働きによる地層のでき方,火山の働きによる地層のでき方を理解していることが必要である。しかし,自分の拾ってきた石は,どんな名前の石でどんなできたかをしたのか調べたり,身近な石に興味を持たせるための導入での利用も可能である。この場合,最後の部分を利用しないよう変更することになるだろう。今回は,基本的な使い方のまとめの部分で自分で拾ってきた石を調べる活動に利用した。

(2) 利用環境

1)利用機種 PC9801DS PC9801DX PC980DA
2)周辺機器 マウス

5.実践

(1) 指導計画(12時間扱い)

第1次 地面の下はどうなっているか 1時間
第2次 水によって大地はどのようにしてできるのか 4時間
第3次 火山によって大地はどのようにしてできるのか 4時間
第4次 私達の住んでいる大地はどのようにしてできたのか 3時間(本時2時間目)

(2) 本時の目標

 学校の近くを流れる川で拾った石の観察やその石のでき方調べを通して,身近な地域のつくりについて意欲的に調べることができる。

(3) 本時の展開

学 習 内 容 活 動 へ の 働 き か け 備 考
1.前時を振り返り観察した川の様子や見つけた石について思い出す。
2.本時の課題を知る。
・川の様子,まわりの土地の様子石などについて思い出させる。 観察カード
拾った石
川で見つけた石は,どのようにしてできたのだろうか。
  ・自分の見つけた石がどのようにしてできたのか興味を持たせる  
3.自分が拾ってきた石についてどのようにしてできたのか石の様子を見て予想を立てる。
・色々な石があったが水のはたらきでできた地層の石が多いだろう。
・火山のはたらきでできた石もありそうだ。
・これまでの学習内容をもとに石の様子を観察させ,石のでき方を予想させる。  
4.コンピュータを使って石のできについて観察する。 ・コンピュータの指示に従って作業等を進めていくよう指示する ◎岩石分
分類ソフト
◎TXT
児童選択画面
該当する岩石の表示画面
 
5.調べてわかったことをまとめる  

6.今後の実践のために

(1) 利用場面の評価

 グループでの利用を行ったが,グループ内で色や傷のつき方について協力してコンピュータを操作したり,実験したりしていた。いくつかの石を実験したが,興味をもって実験していた。このソフトは,簡単な実験をいくつか積み重ねながら進んでいき,機械の操作や選択枝も比較的簡単なため,出来るだけ少人数で行うのが良いと思う。
 このソフトは,単元の最後の部分でまとめ的に使う様にできており,それ以外の使い方をするためには難しいが,ソフトの中の後半の地層の出来方の部分を除けば導入などでも利用することが出来るだろう。いずれの使い方でも岩石の名前を調べたり,その岩石が見られる代表的な場所が表示されたりして,身近な岩石や地層について興味を持たせるというのがねらいになるだろう。
 本来は,石のでき方を調べるソフトだが子供達は,石の分類(名前)の方が興味があったようである。しかし,自分が拾った石がどんな場所でできたのか,画面に写真で表示され興味を持ったようでもある。これは,近くに実際に地層が見られる場所が無く写真やVTRでしか地層を見ていないことにもよるだろう。

(2) 課題

 この「岩石分類ソフト」の操作はマウスで行えるようになっていて,簡単にできる。また,子ども達は,自分が拾ってきた石から地層の出来方が分かることから興味をもって取り組むことができ,大地のつくりについて興味を持たせるために良いソフトである。そして,自分達が住んでいる埼玉県に限っているところが大変おもしろく,身近で有効なソフトである。
 しかし,このソフトは,埼玉県内でみられる代表的な石の10種類あまりについて検索できるが,すべての石を網羅しているわけでないのが残念である。もう少し石の数を増やしたいのと地域も近くの都県にまで広げられると良い。また,石を拾ってくるときによそから運ばれていない河原や地層から掘り出した石を持ってこなけらばいけないところが難しい。例えば学校の校庭などでも石が拾えるが,本校の場合,もともとが田んぼだった場所に建てられた学校であるので拾える石はずべてよそから運んできた石であることに注意しなければならない。つまり,石はよく落ちているが,その場所から見つかった石である可能性は低く,子供達がどこで石を拾うかが重要なポイントである。もう一つ色の選択枝などどれを選ぶか児童の主観に任せる部分が多く,ソフトにある解答になかなか到達できないこともあり,実践を重ねながら変更していく必要があるだろう。この他,分布図が大まかすぎるのでもう少し細かくしたり,主な地名や川の名前など入れると使っている児童により身近になると思う。
(実践者 狭山市立広瀬小学校 仲川 隆雄)

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