1 ふしあそび

(小学校第4学年 音楽科)

2 授業のねらい

 音楽ほど技能の面において個人差の大きい教科もない。特に器楽演奏になるとその差は著しく感じられる。そのため音楽の時間が高学年になるほど苦痛になってしまう。この「ふしあそび」で自分でつくったふしが,曲としてできあがったらどんなにすばらしいことだろうか。この技能の差をうめるために,コンピュータを使っうことにした。自分でつくった「ふし」がコンピュータから曲として流れる。それを聞き,修正し,自分で器楽で演奏できるように練習をすることにより,自分でつくった「ふし」が,自分の「曲」としてみんなの前で発表できたら児童にとってこの上もない喜びになると思う。

3 利用ソフトについて

(1) 利用ソフト名

MUSIC PRO−98 FM(MIDI)   Musical Plan Ltd
(MUSIC PRO−TOWNS FM(MIDI)   〃     )

(2) ソフトの概要

 本ソフトは,ディスプレイ上に楽譜として書くことで,コンピュータで曲を演奏できるものである。そのため,器楽演奏の技能に差があっても,マウスの扱い方さえ理解すれば使うことができる。また,FM音源内蔵の機種ならば,特別な装置を使うことなくコンピュータを移動させるだけでどこでも使うことができる。
 プリンターを使うことで,楽譜を印刷することもできるので,自分のつくった「ふし」が曲と楽譜の作品として残すことができる。
本ソフトの流れ

MUSIC PRO-98の画面説明

“MUSIC PRO-98”を起動すると左記の画面になる
1ブロックをどんなパート構成にするか決める
メロディ,コードネーム,リズム,和音や各種記号を画面上の五線に書き込んでいく
正しく入力できたか演奏操作で実際に鳴らしてチェックする
新しいブロックを用意して楽譜を入力する
曲ができたら全曲演奏機能で演奏させる
│                 │
作りかけの曲,または完成した曲を保存する
完成した曲を印刷する

4 コンピュータ利用の意図

(1) 利用場面

 授業に入る前に子どもたちに「ふしづくり」を行うことを知らせると,まだ経験したことがないことなので驚きの反応を示した。特に音楽のにがてな子の中には,作るのはおもしろそうなのだが,演奏ができそうにないといやがる子もずいぶん見られた。そこで,今回はコンピュータを使った「ふしづくり」を行うことを知らせると,安心をしたようであった。このクラスでは4月から音楽の授業の時にコンピュータを使って学習を進めてきたので,「自分にもできそうだ」と思っているのだ。このように音楽の最大のネックは,自分の作ったものを演奏する力に差が大きいということである。今回の授業では,その演奏をコンピュータが肩代わりをしてくれると言うことである。利用場面は,自分で作った「ふし」を演奏する場面である。このとき楽器演奏のできる子は,どんどん練習にとりかかり先へと進むことができる。にがてな子にはコンピュータを使って,自分の「ふし」がどのような曲か知ることができ,またその曲を耳によって聞き取り自分で楽器での練習のきっかけにすることができる。また,得意な子にも自分の演奏の確認として使うことができる。
 今回はコンピュータが教室で1台しか使えないのだが,譜面の入力は外のコンピュータでもできるので,音楽の授業以外の時間も使って行っていきたいと考えている。

(2) 利用環境

1)使用コンピュータ
PC9801LV21 1台
PC98DO+ 1台
2) 音源等
MIDIプロセッシングボード MPU−PC98U
音源(ローランドLA音源) MT−32
PC98DO+ 内蔵FM音源
3) 使用教室
教室 (PC9801LV21+MT−32

音楽室 (PC98DO+)児童用電子オルガン20台(40人分)

5 実践

(1) 指導計画 (8時間扱い)

本教材は副教材なので主教材の中で少しづつ分けて進めた。
第1次 山の朝(曲全体の特徴を感じ取らせる) 2時間
第2次 白鳥 (響きの美しさを感じ取らせる) 3時間
・「短い言葉」を作りその言葉のもつ抑揚を調べる
第3次 まきばの朝(曲想や情景を想像しながら表現の工夫をさせる)3時間(2/3本時)
・言葉の持つリズムを調べ「ふし」を作り,楽器で演奏の練習をする

(2) 本時の目標

自分で作った「ふし」を元に,楽器で演奏できるように練習する。

(3) 本時の展開 (毎時間10分づつ5回に分けて展開した)

学 習 活 動 活 動 へ の 働 き か け 備 考
1 本時の課題を知る。   1)
短い言葉をもとにして,ふしづくりをして演奏しよう。
2 もとになる言葉をつくる。 ・短い言葉をつくらせる。
・考えつかない児童もいるので,一例として言葉を出す。
「小川にかかった」
3 言葉の抑揚を調べる。 ・何度も声を出し,自然な抑揚を調べさせ,メモをさせる。
お が わ に  か か っ た
2)
4 言葉のリズムを調べる。 ・拍打ちをしながら,声に出して読ませ,リズムを調べさせる。
・朗読 おがわにかかった
手拍子
3)

5 自由にふしをつくる。
T:ふしができたらリコーダーか鍵盤ハーモニカで演奏ができるように練習しましょう。
・楽器を使ったり,コンピュータを使い,ふしづくりを行わせる
・何度も練習をして,自分で演奏できるようにする。
・楽器の苦手な児童はコンピュータの演奏をよく聞き練習をさせる。
4)本時
楽器コンピュータ

「ふしづくり」入力中
6 つくったふしを発表する。 ・つくったふしを一人ずつ楽器を使って発表させる。 5)

6 今後の実践のために

(1) コンピュータ利用の成果

 音楽というとピアノが弾けないのでと二の足を踏む人もいるかと思うが,コンピュータを使うことにより誰もが簡単に扱えるということがわかった。特にこのソフトは自分の希望する音符を五線符の上に張り付けるだけで簡単に音が出せるため,作ってきた「ふし」を入力しては一喜一憂していた。そして,普段は音楽など練習もあまりやらない子まで休み時間にも入力していた姿と考えられないだろうか。自分の作った「ふし」が「曲」になるというすばらしい経験ができたものと思う。
 次に,音楽の得意な子が,「ふしづくり」も得意かというと,すこし違うということである。音楽の得意な子は,楽譜はきれいに書き楽器も演奏するのだが,その楽譜通りにコンピュータに演奏させると,本人が演奏したものと全く別のイメージの曲になってしまうということである。つまり譜面通りに演奏していないということだった。そんな中,今までは目立たずおとなしくしていた子や,音楽の不得意な子でもまとまりのある「ふし」に仕上げみんなから拍手を浴びる場面もあっで,十分に活躍できた。
 音楽に限らず創作活動は楽しいものであり,低学年の児童でも喜んで取り組む。そこで国語科との合科学習として積み上げていき,小学校卒業までに発表できるように持っていければ,児童の創作活動が一つの作品として仕上がり,より思い出深い活動になると思う。

(2) 問題点

 譜面を入力している時に気づいたのだが,一小節の中に音符がいくつも入っていってしまうことである。初めて「ふしづくり」をおこなうのならば,むしろ小節を考えなくてもいいので大変便利なのだが,高学年になり小節の機能を学習した後では少し気になる点である。ソフトの中に小節が自動的に増えていく機能があるとよかった。
(実践者 栗橋町立栗橋西小学校 青木 博)


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