今後の課題

 我々は,今回の実践を通じて,教育ソフトを授業に利用するにはさまざまな課題があることがわかった。その課題は,大きく次のように分けることができる。
 まず第1は,ソフトの活用に関する課題。(我々は,プログラマーではないのでプログラムに注文は付けるが,自ら変更することは,ここでは考えないこととしたい。)第2に,コンピュータを利用する環境とソフトに関する課題。そして第3は,コンピュータ自体,つまりハードと利用するソフトに関する課題である。それぞれに関する課題について以下に述べる。

1.ソフトの活用に関する課題。

(1) 授業のねらいに合わせてソフトを活用する。
 さまざまなソフトの中から,より有効なものを利用するには,授業のねらいに合っているものを選び出す教師の力が必要となる。また,一本のソフトに頼って行うことより個々の目標や目的に合わせて授業を行っていくことも必要である。今回の報告でも複数のソフトを活用する提案がなされているように,検討されていく必要がある。
(2) ソフトの機能を有効に活用する。
 グラフィックソフトや音楽ソフトはさまざまな種類のものが出されている。それぞれに特徴があって使ってみたい機能ばかりである。そこで,それらを有効に使いこなしていく助言や支援が必要となってくる。子どもたちのリテラシーを高めていくこともこのことに含まれると考えるが,さまざまなアイデアののもとに使いこなしていく発想を持ちたい。
(3) さまざまなの教材教具との結びつきに関する課題
 コンピュータと他の教材との結びつきをもたせて活用していくことができれば,問題を解決していくための支援を行うことが出きると考える。さまざまな視聴覚機器や実験器具などと合わせて使っていきたい。そうすることで,直接経験を通して問題の解決が図られるはずである。

2.コンピュータを利用する形態とソフトに関する課題

 コンピュータが設置される場所は,コンピュータルームだけでなく,教室やオープンスペースさらには廊下までおよぶ時代がすぐそこまできている。そのことを考えると,教育ソフトにもT.P.O.を考える時代であると思われる。特に
(1) あるソフトを使って学習をするときの学習形態。
 ソフトの内容とともに,個人で取り組むなどの学習形態が,学習の成果に与える影響は大きい。子どもが,ひとりでテレビゲ−ムをしているような学習を学校で行なうことについては,学習の効果とともに検討を要する。
(2) 学習の場所とソフトの関係。
 多くの学校にコンピュ−タを設置する時代になってコンピュータル−ムを設置しない学校が出てきている。コンピュ−タを利用する機会がふえるにしたがって,教室でコンピュ−タを利用することも考えなければいけない。コンピュ−タル−ムに入っていったコンピュータが教室にも戻ってくると考える。
(3) コンピュータをパソコン通信に利用する学習形態。
 コンピュータをパソコン通信に利用しようと考えている学校は多いように聞く。また,インターネットの教育利用が連日報道されているが,その割合は,非常に低い。ソフトは出回っていて電話回線も校内にあるが,そこからさきに手をつけられない学校がほとんどである。

3.コンピュータ自体(ハ−ド)と利用するソフトに関する課題

 コンピュータの導入は,平成11年をめどに全国で取り組まれている。昨今の技術の進歩はめざましく,現在活用されている機器も数年後には新しいものにとって変わられると考えてよい。そんな中で,同一学校内でも地域によっても機種等によって同一のソフトでもいかせる機能が違ってくる場合などは十分考えられることである。
(1) 機能の異なるコンピュータをどのように使っていくか。
 今年度導入されるコンピュ−タのほとんどは,Windows対応であることは確実である。今まで使われていたソフトの中には,DOS版でありながら授業には使いやすいものもある。それはたいした問題ではないが,これから出されるWindows版のものはDOS対応のハ−ドでは,使えないことは言うまでもない。まさに導入初期の数台で行なっていた状況に戻ってしまうこともあるわけである。そのことも含んでハ−ドを使っていく必要が出てきている。
 これらの課題一つ一つに対して,実践を通して授業のねらいに沿ったコンピュータの活用方法を検討していきたい。その中でもとりわけ,コンピュータと切り放すことのできないソフトの利用法という側面から検討を重ねていきたい。
 本活用事例集のまとめにあたり,実践理論面でご指導いただいた東京大学,市川伸一助教授並びに(財)コンピュータ教育開発センター,鈴木勢津子先生,教育ソフト利用研究会会員各位,さらに参考資料の提供等に便宜を図っていただいた各位に厚く感謝申し上げたい。
(教育ソフト利用研究会 事務局 狭山市立山王小学校松澤 忠明)

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