1 図形の面積

(小学校第5学年 算数科)

2 本時のねらいと題材設定の理由

 本単元では第4学年で学習した長方形と正方形の求積の方法をもとに,平行四辺形,三角形,台形,ひし形などの基本図形の面積の求め方を工夫し,導き出した公式を用いて面積を求めることを学習する。
 三角形や四角形などの基本図形のほとんどは,変形により既習の図形に着目して求積することができる。従って,具体的な操作活動や念頭操作を通して,子ども自身で求積公式を導き出していくことが数学的な見方・考え方を伸ばすために特に重要であると考える。

3 利用ソフトの概要

(1)利用ソフト名

「さんすうワールド 5年」(ぶんけい)

(2) 利用ソフトの概要

 「さんすうワールド 5年」は,各単元の内容に即したショートプログラムで構成されている。プログラム自体に強制した流れがなく,設定状況の変更がある程度行えるため,児童の多様な試行が可能である。
完全マウス対応で,キーボードなしでも操作できるので,初めての児童でも容易に利用することができる。

4 コンピュータ利用の意図

(1) 利用場面

 本単元の第4〜6時における自力解決の時間,教室にある2台のコンピュータを使用する。
使用プログラムは「さんすうワールド 5年」の中の「平行四辺形の面積の求め方(1)」「平行四辺形の面積の求め方(2)」「三角形の面積の求め方」「台形の面積の求め方」である。プログラムの内容は,それぞれの図形を分解,合成し,既習の図形に変形するシミュレーションである。操作の自由度はあまりないが,図形の倍積変形や等積変形が視覚的にとらえられるので,求積方法の見通しが持てない児童に対する支援として有効であると考えた。ただ,市販ソフトであるため,子どもたちが本単元の第2時に作った問題の図形とは必ずしも一致しない。そのため,求積のための考え方のヒントとしての有効性以上の期待はできない。
 本時では,求積のための変形は,できれば念頭操作で行わせたいと考えるので,全ての児童に使用させることはせず,ヒントを必要とする児童が自分から情報を求めるために使用するようにした。

(2) 利用環境

1) 使用パソコン
NEC PC9801 UX 1台
NEC PC9801 RX 1台
2) 周辺機器 トラックボール(2)
  児童数 男子12名 女子7名
  利用教室 5年1組教室
・パソコンは教室の前後に壁に向けて配置し,児童机はコの字型に並べ,教室中央は広く空いている。
・ヒントを必要とする児童が,交代で自由に使用。

5 本時の展開

(1) 指導計画 (16時間扱い)

第1時 いろいろな平面図形を変身させよう
第2時 平行四辺形の面積を求めよう〜面積を求める問題を作ろう
第3時 問題を仲間分けし,学習の計画を立てよう
第4,5,6時 いろいろな図形の面積を求めよう(本時5/16)
第7時 平行四辺形の面積の求め方をまとめよう・・・平行四辺形の求積公式
第8時 三角形の面積の求め方をまとめよう・・・三角形の求積公式
第9時 台形の面積の求め方をまとめよう・・・台形の求積公式
第10時 公式を使って面積を求めよう
第11時 ひし形,五角形,六角形などの多角形の面積の求め方をまとめよう
第12時 複雑な図形のおよその面積をもとめよう
第13時 いろいろな図形の面積を求めよう
第14時 練習
第15時 チャレンジ−−−台形の面積の公式と三角形の面積の公式の関係
第16時 まとめ,評価

(2) 目 標

・既習の図形を用いたり操作したりして,三角形や四角形の面積を求める。
・学習計画に基づき,主体的に学習に取り組む。

(3) 展 開

学 習 活 動 活動への働きかけ 準備・資料
1.本時の課題をとらえる。      
・学習計画表
・ワークシート
・コンピュータソフト
「さんすうワールド5年 」
い ろ い ろ な 図 形 の 面 積 を 求 め よ う
2.いろいろな図形の面積を求める
1) 問題を選択する。
2) 面積を求める。
C1 等積変形で平行四辺形を長方形に帰着する。
C2 倍等変形で三角形を平行四辺形(長方形)に帰着する。
C3 等積変形で三角形を平行四辺形(長方形)に帰着する。
C4 等積変形で台形を平行四辺形(長方形)に帰着する。
C5 倍積変形で台形を平行四辺形(長方形)に帰着する。
C6 その他

2)’コン ピュータのシミュレーションをヒントに考えさせる。

3) わ か っ たこと,気づいたこと

4) 教師に見せ,助言を受ける。

5) 計画を見直す。

5)' 計画を修正する。

   1) に戻り、繰り返す
・本時の学習計画を確認する。
・学習計画に基づいて問題のワークシートを選択し取り組ませる。
・友だちと自由に交流しながら活動できるようにする。
・コンピュータを自由に活用できる場(コーナー)を設定し,解決の見通しが立たない児童にはコンピュータのシミュレーションをヒントに考えさせる( 2)’)
・学習計画表
・ワークシート
・コンピュータソフト
「さんすうワールド5年 」
・自分が解決した問題での考え方が生かせる問題はないか考えさせる。
・必要に応じて計画を修正しながら進めるように助言する( 5)')。
・全ての問題を解決した児童には,新しい問題を作らせるようにする。
 
3.本時の活動を振り返り,次時の見通しを持つ。    

6 今後の実践のために

(1) 利用場面の評価

 自力解決の場での個への支援として,ヒントカードがよく用いられているが,教師が診断した上で与えるといった形が多く,子どもの主体的な活用はあまり行われていない。
 また,子ども自身の判断で活用する場合でも,主に情報を受け取るためのものとしてであり,子どもが直接働きかけて学習に生かすようなものはあまり用いられていないのではないだろうか。
 今回,コンピュータを個への支援として2台設置し,必要とする子どもに自由に操作させたところ,授業者の予想に反して子どもがコンピュータの前に行列になる姿は見られなかった。ソフトにある図形が必ずしも本時の問題の図形に一致しなかったためもあるだろうが,必要以上に子どもがコンピュータに頼っている様子が見られなかったのは,情報を選択して活用するという意味でもよかったのではないかと考える。何よりも,子どもが自ら情報め,“操作”という働きかけを通して問題解決に役立てるという支援は,一人一人の能動的な学習を保障する上でとても有効であったのではないか。

(2) コンピュータ利用上の成果

 求積公式を導く上で,図形の変形は最も重要である。しかし,図形の変形を紙の上で再現することは大変難しい。実際に切ったり貼ったりという作業は時間や手間がかかる割に,やり直しや修正ができないという点で活動の自由度が小さい。
 コンピュータのシミュレーションの場合,変形の様子がアニメーションで再現され,何度でもやり直したり修正したりできる。そのため,求積公式の手がかりとなる倍積変形,等積変形を子どもたちが容易に理解でき,問題解決に生かすことができたと考える。
(実践者 三宅村立阿古小学校 前田武彦)


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