1 ふしづくりをしよう −「はなうたくん」で作曲を−

(小学校第6学年 音楽)

2 本時のねらいと題材設定の理由

 音楽ほど技能の面において個人差の大きい教科もない。特に楽典や絶対音感などは長い間学習している児童との差は著しい。そのため音楽の時間が高学年になるほど苦痛になってしまうことが多い。しかし,そんな児童も偶然吹いたリコーダーの節が気に入り何度も吹くことができるが譜面に表せない場面がある。そこで,そんな場面の支援としてコンピュータ「はなうたくん」の利用をしてみたい。今回の「ふしづくり」の場面で自分でつくったふしが,曲としてできあがり,譜面として残ったらどんなにすばらしいことだろう。
 コンピュータを利用し児童の技能の差を埋めてやることにより自信を持たせ自分の「曲」としてみんなの前で自由に発表させることは児童にとってこの上もない喜びになるのではないかと思う。

3 利用ソフトの概要

(1)利用ソフト名

    「はなうたくん」(Roland)

(2) 利用ソフトの概要

 「はなうたくん」はマイクでひろった音をCP-40(Pitch to MIDIコンバーター) でMI −DI信号に変換し,「はなうたくん」のソフトでそのMIDI信号がそのままレコーディングできる。マイクでひろう音とは,単音であればどんなものでも可能であり子どもの持っているリコーダー,鍵盤ハーモニカなど,あるいは口笛,音声まで変換が可能である。ただし音程に変化がなくはっきりしたものがよい。また,CP=40 にはマイク・ギターの入力切り替えができエレキギターによる入力も可能である。変換されたデータは「ミュージ郎・バラード」と互換性があるので読み込んで細かい調整ができる。

4 コンピュータ利用の意図

(1) 利用場面

 まず,CP-40 のマイクにリコーダー等の音(単音)を入力するとリアルタイムでMIDI信号に変換できる。さらに「はなうたくん」のソフトでそのMIDI信号をそのままレコーディングすることができる。そのため楽器などで演奏はできても楽譜に表すことのできない子の支援として使うなど応用が広い。リコーダー以外の音源でも安定した音程であれば色々な楽器を使うことができ,音声による入力は子ども達に人気を呼んでいる。音源データは「ミュージ郎・バラード」と互換性があるため読み込んで,細かな修正をした後に楽譜を印刷することもでき,自分のつくった「ふし」が楽譜として残すことができる。

(2) 利用環境

1) 使用パソコン NEC PC9801RX2 1台
2) 使用ソフト はなうたくん・バラード (Roland)
  機器
Pitch to MIDI コンバーター CP-40 (Roland)
MIDIプロセッシングユニット MPU-PC98U (Roland)
MIDI音源 MT-32(CM-64) (Roland)
ラジカセ(YAMAHAステレオ・カセットデッキ)

5 単元の指導計画 (6時間扱い)

第1次 星空はいつも 2時間
第2次 山田耕筰の歌曲 2時間
第3次 いろいろな演奏形態 2時間(2時間目本時)

6 本時の展開

(1) 目 標

詩のもつ言葉の感じを生かして,ふしづくりをする。

(2)展 開

学 習 活 動 活 動 へ の 働 き か け 備考
1 本時の課題を知る。    
詩をよく読んで,言葉の感じを生かしたふしづくりをしよう。
2 もとになる詩をよく読む。 ・詩の内容まで考えて読ませる。  
 
3 手拍子をうちながら読み,リズム符をつくる。  ・手を打ちながら言葉のリズムを まとめさせる。  
4 言葉のリズムに,好きな音を選んで,ふしをつくる。 ・音が分からずに譜面にできない子にはコンピュータを使い,自由に笛で吹かせて,ふしをつくらせる。 電子オルガンコンピュータ
(T2コンピュータ)

リコーダを使って入力
 
5 楽器を使って練習する。 ・何度も練習をして,自分で演奏できるようにする。
・楽器の苦手な児童はコンピュータの演奏をよく聞き練習をさせる。
楽器コンピュータ・ミュージ郎
(T2コンピュータ)
6 つくったふしを発表する。 ・つくったふしを一人づつ楽器を 使って発表させる。  

(3) 備考

1) マイクからひろったばかりの楽譜
2) バラードで修正を加え,途中の楽譜
3) 修正の終わった楽譜

7 今後の実践のために

(1) 利用場面の評価

 「ふしづくり」は子どもにとって興味のある場面であるが,個人差のもっとも激しい所でもある。そのために子ども達に,コンピュータを使った作曲として何度か作らせていたが,それでも個人差を埋めるにはさらに工夫が必要であった。今回は,子どもの持っている曲を作り出す能力をそのまま楽譜にできるということであり,最初はいやがっていた子ども達も,次々とマイクの前に立ち,入力をしていた。特に,自分の声がそのまま楽譜になるという驚きは相当なものがあり,子ども達も意欲的に取り組んでいた。これから考えると,子ども達は支援されることにより,自分の持っている力をより発揮できるものであると確信した。

(2) コンピュータ利用上の成果

 音楽の中にコンピュータを使うことに違和感がある人もいるだろうが,今回の実践では子ども達の興味を引き出すことには成功した。しかし,コンピュータで音程を判別するために,微妙なところまで判別してしまい,修正に時間がかかってしまった。
(実践者 栗橋町立栗橋西小学校 T1:佐藤 陽子 T2:青木 博)


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