1 「すてきな光のおくりおもの」−デザイン−

(小学校第4学年 図工科)

2 本時のねらいと課題設定の理由

 児童は今までに,「ランチをどうぞ」「私の新せい品」などの題材を通して,主に工作との関わりでデザインの学習を経験してきている。いずれも,伝えたいもの,生活を豊かに楽しくするものなどを,用途の美しさ,作り方を考えて自分の目と手を十分に働かせて制作し,それらを使う楽しさも味わってきた。
 そこで,「すてきな光のおくりのもの」という題材を通して,児童の「こんなふうにとりくみたい」という思いやイメージを大切にして子ども達の思いや夢・願い等が自由に表現できるよう,次のような手だてを考えた。

(1) 主題・発想にせまる手だて

 それぞれの児童の主題を明確にする。無からの想像力は生まれないといわれるように,何も手がかりのないところから発想は生まれてこない。学校や家で遊んだこと,大切にしている動物や植物のことなど,暮らしの中から生き生きとしたドラマ性のある場面をとらえ,子ども達の体験をベースにしながら,どんな絵にするのか主題を決定させていきたい。
(例)・落ち葉の中から見つけた玉虫のこと ・けがをした野生の鳥を手当したこと

(2) 構想にせまる手だて

・形や線 主題が決まったら,特長を生かして形を単純化してデザインさせる。子ども達の主題が単純化された力強い線で表現できるよう,形のある部分が 強調されたり省略されたりすることで,デフォルメしてもよいことを知らせる。
・配色 一番強調したいものは何か。それに次ぐものは何か。それをどのような色調でまとめるなどについて考えさせる。

3 利用ソフトの概要

(1)利用ソフト名

Hyper Cube for Windows Ver2 (スズキ教育ソフト)

(2) 利用ソフトの概要

 Hyper Cube for Windows Ver2 は,児童が操作するには使いやすい統合型ソフトである。本時で使用したキューブペイントは256色のパレットを持ち,従来のソフトより豊かに表現したい色を表すことが出来る。

4.コンピュータ利用の意図

(1) コンピュータ利用の意図

 本時では,線や形,色などを構成する過程で,見通しを持って表現できるように,コンピュータによる学習を取り入れたい。コンピュータを用いた表現活動では,形や線を修正したりすることは,マウスを用いた操作で容易に出来る。また,配色を考える過程で,何度もセロハンを張り替えることは困難であるが,コンピュータの画面の中からセロハンに似た色を選択し,思いにせまる色の組み合わせを考えることは簡単に出来る。コンピュータによる美しい色と,透過光によるセロハンの美しい色がよく似ていることや,何度でもやり直しながら構成できることなどの利点がある。色の種類は256色あり,多いように思えるが,たくさんの色の中から必要な色を選択することも,情報活用能力として身につけたい力である。
 しかし,コンピュータによる表現はあくまでも疑似体験なので,実際の色セロハンを持たせ,本物の色と比較させたりし,色観によって色を選択するなどの感性を大切にしながら,初歩的なデザインの能力を育てていきたい。今までに学習してきたこと,経験してきたことなどを,融合させながら,表現することの楽しさや喜びを味わわせたい。

(2) 利用環境

1) 使用パソコン
NEC PC9821CX13 15台
29型TV ビデオコンバータ
イーサネット対応LANボード 12
ハブ2(10BASE-T ポート8)

5 本時の展開

(1) 指導計画

第1時 光で遊ぶことを通して,生活の中から主題を決める。
第2時 主題にそって絵を描く。
第3時 絵をもとに簡単な形になおして表現する。
第4時 黒い紙に模様を書く。
第5時 描いた線を残して切り抜く。
第6時 主題が伝わるようにどんな配色にするか考える。(本時)
第7時 裏からセロハンを張り作品を仕上げる。
第8時 作品を鑑賞し飾る。

(2) 目 標

 主題のイメージをふくらませ,透過光の色の美しさを考えながら,画面上に効果的な配色を構成することができる。

(3) 展開

学習活動 活動への働きかけ 準備・資料
1 参考作品を見て作者の思いや光を通した色の美しさを感じとる。 ○参考作品から伝わってくる作者の思いに気づかせるために発表させ,自分たちの作品への意欲付けをする。 ・参考作品
・スポットライト
2 提案を知る。     
提案 自分たちの気持ちが,よく伝わるような色の組み合わせを考よう。
3 思いが伝わるような色の組み合わせえを考える。


・イメージをふくらませながら効果的な色の組み合わせを考える。
行き
戻りする
・表現しながら,さらに構想を広げて考える。





カラーパンフレットと児童パンフレット
○二人一組で,自分たちの作品を見ながら話し合わせる。
・中心になる物の色について助言し,考えさせる。
○中心となるものを引き立たせるための周りの配色について考えさせる。
○全体をまとめる色についても考えさせる。
○だいたいの配色が決まったらコンピュータの画面で色の組み合わせを考えさせる。
○セロハンの色と比べながら作業するように助言する。
○配色の構想を練るために,コンピュータで配色の作業を何度でもできるように画面上にパレットを用意する。
○ソフトのカラーパレットから必要な色を選び出せるようにする。
○色彩が美しく視覚にうったえることにより,興味関心を起こしやすくする
・枠
・セロハン
・主題カード
・コンピュータ
・フロッピーディスク
4 作品を見合う。 ○友達の作品を見合うわさせ,良いところや工夫していると ころについて発表させる。 ・教室内LAN
5 次時へつなげる。 ○次時は,セロハンを張って作品を仕上げることを伝える。  
6 後かたづけをする。 ・ソフトの終了    

6 今後の実践のために

(1) 利用場面の評価

 セロハンの色彩を決定するためにカラーパレットを活用したことで実物とコンピュータ上の情報が結びつけられた。コンピュータの特性である繰り返しが出来る機能(アンドゥー)を有効に活用できたことで,表現力を向上させることができた。また,画面上にソフトのカラーパッレットとは別に色を試すパレットを用意させたことによって,大きなパッレトから色彩が近いものを比較しながら配色を決定することができた。

(2) コンピュータ利用上の成果

 本題材「ステンドグラス」は,黒色の画用紙とカラーセロハン紙を使って制作し,自然光や人工光を 利用して飾ることにより身近な生活を豊かにすることを目的としている。児童ひとりひとりの主題を光を通して表現したいという願いは,これらの材料を使った作品を完成することで叶えられる。しかしこのようなデザイン学習では,線や形,色などを構成する過程で計画的に見通しを持って取り組む必要性が出てくる。この構成段階で,コンピュータを活用することはとても有効であった。線や形,配色を考える過程で,マウス操作によって修正したり,自分の思いに迫るための試行錯誤を行うことが十分出来た。また,セロハンの光を通した色彩と,コンピュータ画面の光りを通した色彩がよく似ていることも,デザイン領域での色彩感覚をみがく手助けとなった。さらに,教室内LANの活用もみんなで干渉試合,それぞれの作品に対する意見を深める上で効果があると考えられるので,一層のリテラシーの向上を図りたい。
(実践者 埼玉県狭山市立狭山台南小学校 宮崎 京子 協力者 同校松澤 忠明)

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