1 学校の回りの植物 −TXT学習ソフト作成システムによる教材作成−

(中学校第1学年 理科)

2 本時のねらいと題材設定の理由

 ここでの学習は,中学校に進学して,初めての理科の学習である。まだ,ほとんど未知の中学校の回りを探索し,自然観察での理科学習の楽しさ,新しい発見の驚きを味わわせたい。学校の回りで普通に見られる植物は,それぞれの異なった環境に適した植物の種類が見られ,植物のすぐれた仕組みに気づくことができる。普段見慣れた身近な自然でも,科学的に見ようとする態度によって,自然のルールを発見できることを体験を通して,気づかせたい。

3 利用ソフトの概要

(1)利用ソフト名

     「TXT学習ソフトの作成」 初教出版

(2) 利用ソフトの概要

 フレーム型CAIの教材作成システムである。複線型の学習コースを構造的に動作することができるために,同様の教材作成システムに比べ,短時間で作成できる。また,記述式言語であるために,複雑な動作を行う教材の作成が可能となっている。

(3) 学校の回りの植物

TXT教材作成システムによって,10日ほどで,制作されたCAI教材である。
対象:中学1年理科,1学期の「学校の回りの植物観察」
1) 学校の回りで普通に見られる植物の環境に適した植物のつくりを理解できる。
2) 葉の面積測定,地図の作成など,実際の観察活動を喚起する内容を加えている。
3) フロッピーディスク1枚だけで構成され,ディスクをセットすればいつでも利用可能。
4) 学習者の操作が簡単。5) パレットコードの最適化による,分かりやすい画像。

4 コンピュータ利用の意図

(1) 利用場面

 自然観察など,体験を通した理科学習では,場合によっては,本来の科学の学習とは関係ない体験に終始してしまう危険性がある。そこで,自然観察の学習を支援して,科学的な視点をもって,自然学習が行えるように,自然観察の学習を支援するためのソフトを開発することにした。「学校の回りの植物」は,生徒が実際に植物の葉を採集してきたものをイメージスキャナーで撮り,その葉の画像の面積を測定したりするなど,実際の学習活動を考えて作成している。学校のパソコンの利用は,複数の人間がそれぞれのソフトやそれぞれの環境で利用する。使用後に元通りの環境になっているとは限らない。理科の学習指導では,理科室にコンピュータを置いての利用。あるいは,コンピュータ室での利用が考えられる。いずれにしろ,いつでも電源を入れたら,すぐに利用が出来るパソコンソフトとなるように開発した。

(2) 利用環境

1) 使用パソコン NEC PC-9801DX 6台

5 本時の展開

(1) 指導計画

1) 学習活動の計画を知らせる。
学習計画書を配布し,学校の回りの植物を観察して歩く。
1株分の古新聞にはさんで持ち帰り,イメージスキャナーで読みとり,教材写真ディスク「学校の回りの植物」に保存する。
2) ソフト「学校の回りの植物」を使いながら,理科レポートを作成する。(本時)

(2) 目標

 学校の回りで普通に見られる植物には,それぞれの生育している場所によって,生育の様子が異なることに気づかせ,植物が環境に適した仕組みをもっていることを理解させる。

(3) 展開

学 習 活 動 活動への働きかけ 準備・資料
1 学習課題をつかむ
・コンピュータにソフトをセットして電源を入れる。
・コンピュータと会話するようにして問題を考える。
○学校の回りで普通に見られた植物にどのような自 然のルールがあるか考えさせる。
・理科レポート用紙
・ソフト「学校の回りの植物」
2 課題の解決に取り組む
・学校の回りの植物地図をつくる
・植物の葉の面積を測定する。
○見つかった自然のルールが分かりやすくなるような地図にさせる。
○葉の面積が上にいくほど小さいことに気づかせる
○理科レポートを完成させる。
・自分なりの考察が書けるようにする。
 
3 学習のまとめ
・コンピュータと対話するようにして評価問題を行う。
   

(4) 備考

<学習活動計画書>

学習活動1 学校の回りの植物観察活動
<準備>
・理科の教科書,または,グラフィック資料集。
・ルーペ。
・メモ帳,または,理科ノート。
・筆記用具。
・ピンセット。
・古新聞の1日分。(採集した葉をはさんで教室に持ち帰る)
(このフローッピーディスク)

<外での活動内容>
・先生といっしょに学校の回りの植物を見て歩きます。
・学校の回りで普通に見られる植物の観察の仕方を説明します。
・1株分の葉を採集(グループごと)して古新聞にはさんで,教室に戻ります。

<教室に戻っての活動>
・採集した葉を並べて縮小コピーします。
・葉のコピー用紙をパソコン室のイメージスキャナで読み取り,このディスクにベタファイルで保存します。
・葉は,古新聞にはさみ,学習活動2まで保存します。

学習活動2 理科レポートの作成
<準備>
・教科書。
・グラフィック資料。
・このフロッピーディスク。
(学習活動1で葉の画像を保存してあると良い。保存してないときは,保存してあるサンプルを使う。)
・学習活動1で古新聞にはさんだ葉

<パソコン室,または,理科室での活動>
・パソコン室,または,理科室でのパソコンに,このディスクをセットして,パソコンの画面の内容を使いながら「理科レポート」を作成します。

<理科レポート>

<「学校の回り植物」の構成と使用方法>

6 今後の実践のために

(1) TXTの利用と「学校の回りの植物」の利用場面の評価

 実際の学校の回りで普通に見られる植物の観察の為のソフトであるということが自作の良さである。TXTシステムを利用するこによって,およそ10日間という,きわめて短期間にソフトの作成ができた。MS−DOSで動作する教材であるので,古い学校のコンピュータを理科室に移動して利用することができた。提示される植物の画像は,256色中から最適化された16色を使うことによって,どんな植物か分かりやすい画像であった。コンピュータの変化は,激しく,少し前に作成した画像ファイルやプログラムが新しいパソコンになって使えなくなってしまうことが多くなった。さらに,学校現場のコンピュータは,古い機種と新しい機種が混ざった状態になることが多くなった。理科の教材という視点から見たときに,どのような機種でどのような機能が必要なのだろうか。どうも,最新の機種が便利であるとは言えそうもない。コンピュータ,ソフトを教材としての視点からとらえて,教材化することが大事なようである。MS−DOSの環境は,時代遅れでもあるようだが,現場の状況によっては,まだまだ利用価値が高いようである。
 コンピュータの教材では,画像の価値が高い。しかし,時代とともに,精密さが変わったり,画像形式が変わったりで,完璧な互換がとれる画像形式が見つからない。コンバートができるといっても,色化けしたりで,調節に手間がかかる。今後のことを考えると,オリジナルの画像は,写真の形で残しておくことが良さそうである。

(2) コンピュータ利用の成果

 理科レポートの作成が中心的な学習活動であったが,コンピュータの画面と対話するようにして学習することによって,学習課題が明確になり,科学的な活動が支援されていたと考える。特に葉の面積の測定では,従来の学習では,植物の葉のように不定形の面積を測ることは行っていなかった。それが,コンピュータを利用することによって,簡単にできるようになったことは,生徒に,コンピュータが価値ある科学の道具であるという認識を持たせることに役だったと考えたい。
 コンピュータの入れ替えによって,不要になった旧式のコンピュータの利用ということもあって,グループ1台の利用になってしまったために,個人のペースで利用することが難しかったのが残念であった。コンピュータの管理に問題がなければ,休み時間,放課後など,繰り返し,コンピュータの利用ができる環境にすることによって,さらに深い課題追求の楽しみが味わえるようになるだろう。
(実践者 大宮市立八幡中学校 金井 清)


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