新100校プロジェクト成果発表会
中学校部会

中学校におけるインターネットの活用
−教科と総合学習での実践を中心に−

福岡教育大学教育学部附属福岡中学校 花田 武美

1.はじめに
 本校は100校プロジェクトに福岡県で選ばれた2校のうちの1校である。平成9年度より,パソコン教室に9台のクライアント(インターネットができるコンピュータ)を設置することができ,実際の授業の中での活用に向けて取り組んできた。教科におけるインターネット活用のありかたを探る取り組みと平成7年度から研究開発学校の指定を受け総合学習に取り組んできた中での活用のありかたを探る取り組みを中心に報告します。

2.教科における取り組み
・英語科(第2学年)
 年間カリキュラムを検討し,それぞれの題材の特徴を生かしインターネットを活用するために,単元構成や場の工夫を中心に実践した。
○題材を大きく3つのタイプに類別した。(SUNSHINE ENGLISH COURSE)
情報収集型 「アボリジニって何」「ペレってどんな人」 ホームページを見せ題材に関わる質問を電子メールで行ない意欲づけや興味・関心を持たせる。
表現習得型 「電子メールで世界に」 実際の電子メールを利用し手紙文で良く使う表現や英語特有の表現を習得させる。。
情報発信型 「私のボランティア活動」 実際に行った活動から自らの考えを英語のホームページで発信し,外部(交流相手)から感想や評価をもらう。。
○電子メールによる海外との交流
 最初は海外と日本の教師が仲介して行っていたが,現在は生徒全員がキーパルを持ちメールの交流を行っている。電子メールを行う時間は週1時間の英語の授業と昼休みや放課後の時間に行っている。

・美術科「視覚伝達デザイン」(第3学年)
 視覚伝達デザインの学習ではポスターを取り扱うことが一般的であるが,ホームページという最も新しく注目されていてしかも視覚的な情報伝達手段を取りあげ,その制作を行わせることを通して,視覚伝達デザインにおける形や色,文字を工夫し構成する構想力を育てることをねらいとした。インターネット活用の視点としては次の3点を考慮して実施した。
○視覚伝達デザインの題材をホームページにする。
○電子メールによる専門家からのアドバイスをもらう。
○制作したホームページを発信することにより,外に向かって開かれた鑑賞会を行う。

・技術・家庭科「木材加工の導入におけるインターネットの活用」(1年)
 技術・家庭科で木材加工の学習における導入段階で「森林環境の問題を調べて,ホームページで発信しよう」という単元を設定した。森林環境に関する疑問を近くの西公園や営林署などで探究し,その結果をホームページで作成し発信した。この作成したページに対する感想や意見を外部から電子メールでいただきそれを活動の評価とした。
○探究成果をまとめホームページを作成し外へ発信する。(情報創造・発信)
○専門家や興味のある方から電子メールで感想や評価をもらう。(外部からの評価)

3.総合学習における取り組み
 本校では「豊かな人間性」の育成を図る教育課程の創造するために豊かな「生き方」と豊かな「学び方」ができる資質や能力を重視し,現行の教育課程を教科,総合学習,特別活動へと改め,総合学習として「生き方学習」 「WORLD TIME」「卒業研究」を設定している。においては,各自のテーマに沿って,主体的に学習していくという特徴をふまえて,主にインターネットを探究のための情報収集の場と自分の考えを発信する場に取り入れている。インターネットを利用することで,主体的に情報を求め新たな表現の手段として活用していくことが可能となっている。ここでは,「卒業研究」「生き方学習」でインターネットの活用を例に説明する。
(1)探究のための情報収集の場での活用 −総合学習「卒業研究」−
 「卒業研究」では,中学校3年間のすべての学習(教科,「生き方学習」,「WORLD TIME」)や個人的に取り組んできた趣味や特技,部活動などを振り返り,それらの中から更に学びたいことを深めさせるとともに,これからのの自分の生き方を探らせることをねらいとしている。その探究の過程での調査活動,情報収集にこれまでの教科や「WORLD TIME」「生き方学習」でのインターネットの活用を生かすように教師から助言している。
(2)自分の考えを発信する場での活用  −総合学習「生き方学習」−
 生き方学習では,現代的な教育課題への対応として,「仲間」,「福祉」,「環境」,「伝統文化」,「国際理解」の5主題を3年間の中で設定し,自然や文化,人や社会との共生をめざした豊かな生き方の育成をねらいとしている。ここでは問題把握,問題解決のための方法を探る,解決に向けて実践するという三つの段階を設定し,体験活動を核にしながら知識や心情にとどまらず,自分はどうかかわればよいのかといった行動や実践をめざしている。この解決に向けて実践する段階で学んだことをホームページで発信することを一つの解決の手段として選んで行っている。
 総合学習は教科の枠にとらわれない問題解決的学習のため,主体的に情報を収集・発信できるインターネットは学び方をより豊かに広げる道具となる。また,時間的にも空間的にも,これまでの教室の枠を超えたグローバル学びの場を与えることができ世界的な視野に立った思考や表現を可能にし,コミュニケーション能力を育成することができる。

4.まとめ
 教科や総合学習でのインターネットの活用を行うことで,学校の中でもインターネットが位置づきつつあり,生徒の意識も変化が見られてきた。これまでの取り組みの成果としては次のようなことがあげられる。
○教科ではインターネットでの情報発信を活用することで従来の教室の枠にとらわれない広がりのある授業が実現できる。
○総合学習ではインターネットを情報収集と情報発信の場に活用することで,より主体的で問題解決的な学習が実現できる。
○生徒の学習においてインターネットが情報収集,発信の手段の一つとして日常的になってきた。
 また,インターネットの活用の実践を行っていくことで実際に活用する際の課題も明らかになってきた。
●ハードウェア,情報通信ネットワーク,ソフトウェアの整備の問題
 接続台数や回線速度によっては活動が制約を受ける。また,サーバーのメンテナンスはまだ教師では難しく,専門家の支援が必要である。さらに,生徒が使いやすいソフトウェアの開発も必要である。
●必要な情報を得るための主体的な方法や,自分が良い情報を発信することの必要性への理解
 生徒の問題解決に本当に適した情報は実際には少なく,生徒がその情報を得るために主体的に電子メールや電子ニュースや掲示板などでで問い合わせるまでには至っていない。また,自分が必要な情報を得るばかりでなく良質の情報を発信することが大切であることに気づかせるまでには至っていない。

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