新100校プロジェクト成果発表会
中学校部会

ガイアに集え、子どもたち
−ガイアプロジェクト平成9年度実践−

上越教育大学学校教育学部附属中学校 藤田賢一郎

1.はじめに
 ガイアプロジェクトは、NASAの火星探査計画にたずさわったJ.Eラブロック博士らが提唱した「地球ガイア説」から名前をいただいた。博士は、「地球は緑の生命体として生きている。そして、人間を含めて全ての動植物がそこに共生している」と唱え、ギリシャ神話の大地の女神の名を用い、地球をガイアと呼んでいる。
 ガイアプロジェクト(以下ガイア)は「地球・こども・未来 〜21世紀の向けて私たちは今〜」をテーマに、子どもたちにオンライン交流の場を提供したり、インターネットの教育利用の可能性を探ったりすることを目的に1995年より活動している。
 この2年半あまりの活動の中で、試行錯誤を繰り返し実践してきたガイアの活動を、今年度(平成9年度)の実践を中心に紹介したい。

2.ガイアワーキンググループとワークショップ
 ガイアは、メーリングリスト(以下ML)wshop(インターネットワークショップ)の中で提案、論議され生まれた。
 子どもたちのコミュニティー(以下ガイアコミュニティー)の中にもMLgaeaが機能しているが、wshopはその下層に位置し、gaeaに送信された子どもたちのメールやガイアのWWWを訪れた一般利用者からのメッセージは、全てwshopに配信される。
 また、wshop参会者はそれぞれがガイアの運営にボランティアとしてかかわり、作業負担の軽減を図ると共に、コラボレーションの一端を担っている。
 MLwshopは1995年5月に「インターネットの教育利用の可能性について、ディスカッションや実践発表、フリートークなどを行う」ことを目的に設立され、現在(1998年2月)106名の参会者からなる。参会者は、小中高の教育関係者をはじめ、大学、大学院、研究センターの研究者や学生の他、報道やビデオ制作、英語塾、都市開発、行政に関わる方々や環境保全活動の代表者など多分野にわたる。
 平成9年度は新100校プロジェクトの自主企画に選定され、wshopの中で、ガイアにかかわること、特に総合的、横断的な学習を、インターネットを利用した多校間コラボレーションによって構築していくことに関してのワーキンググループの活動を行ってきた。
 参加者は新100校プロジェクト事務局より提供していただいた、ガイアワーキンググループMLに登録し、そこでできた案をwshopに提案するシステムとした。
 また、ガイアや総合的な学習を考え、アドバイザーを募集し、MLに参加していただいている。

3.ガイア誕生〜平成8年度の試行錯誤から
 ガイアは1995年9月、上越教育大学学校教育学部附属中学校、千葉大学教育学部附属中学校の生徒間で自己紹介を電子メールで交換し合うことから始めた。回を重ねるごとに平和や福祉、環境問題についてなど、互いのテーマに沿った意見のやりとりや、前橋市立前橋第四中学校の生徒も加わり、アンケート活動による情報の収集が行われた。
 その後、三重大学教育学部附属中学校の生徒も加わり、MLにより、電子集会を行ったり、WWWにより、こどもたちの詩や作文、音楽作品、HTML作品等の展示を行ってきた。
 現在はWWW上でCGIを用いてゴミ問題に対する対処法をランキングの手法で意見交流したり、自動画像転送、自動HTML化システムを構築し、バリアフリー写真データベースを構築したりするなどの活動(インターネットを利用した多校間コラボレーション)を中心に行っている。

4.平成9年度実践中および、立案中の企画
 今年度は以下のような実践を行っている。または、ガイアワーキンググループで企画を練っている。

(1)ごみ処理問題の対処法をランキングの手法により意見交流を行う。
 平成8年度より継続的に実践している企画である。
 ガイア上ではCGIを用い、学習者がWWW上で9つの提言をダイヤモンド型にランクする。ランキングの結果はデータベースとしてサーバに蓄積され、学習者はその場で自分のランキング結果を確認したり、他の学習者のランキング結果に意見を書き込むことができる。これによって、学習者の意見交流や継続的な学習が可能になっている。
学習者の交流例:ガイアWebページより
「まずごみを減らすことが大切だから、企業が商品の過剰包装をやめたり、リサイクル可能な製品をもっと作るべきだ」「いや、企業は営利を追求して当然、自治体が法で規制しなければ・・」

(2)バリアフリーにかかわるデータベース作りと、滑り台ランキングによる意見交流を行う。
 平成8年度より継続的に実践している企画である。
ガイアプロジェクトのバリアフリーのページには、「画像がポン(画像等ファイルの自動転送、自動HTML化システム)」が用意されており、学習者はFTPツールやHTMLを意識せずに画像等のデータベースづくりに参加できる。また、その場で送信した作品を確認できるので、リアルタイム、インタラクティブな情報通信を体験することができる。
 平成9年度は、多様なものの見方や考え方に触れ、自分が最良であると思った考え以外にも多くの考え方があることに気付くようにするため、4枚の滑り台の写真を自分が考えるバリアフリーの観点でランキングし、意見交流する活動を位置付けている。

(3)Think Quest(世界中の中高校生が参加して行なわれる教材Webページ制作コンテスト)への参加。
 現在、ガイアワーキンググループで立案中の企画である。
コンテストに参加するための、Webページのコンテンツ収集、作成自体が総合的な学習活動となりうること、学校単位ではなく「チームガイア」として参加者を募ることにより、ガイアのポリシーであるコラボレーション活動となりうることなどが論じられており、準備が出来次第「チームガイア」のメンバーを募集する予定である。

(4)「変化」をキーワードとしたフォトランゲージによる総合的な学習。
 現在、ガイアワーキンググループで立案中の企画である。
 年代の違う2枚の写真(例えば100年前の東京駅前と現在)を用意し、「 2枚の写真の間にどのくらい時間が経過しているか? 」「 変化の原因は?」「変化の結果は」「 変化は、一時的?普遍的? 自然?人工的? 故意?不本意? よい?悪い?」などをフォトランゲージする。自動車、人の服装、建築物等、多くの変化の中から環境とエネルギーや福祉、人や物資、情報の交流などが出てくると予想される。
そして、「これから○○年後に3枚目の写真を撮りたい。 どんな写真になるか? (どんな未来に、都市にしたいか?)」をみんなで提案する。
 さらに、2枚の写真のうち現代のほうをライブカメラ映像にしたり、地球の衛生写真を利用することも検討している。
 
5.まとめ
 現在、いくつかの学校で「平和、環境、情報、国際理解、人権、福祉・・」などの学習を従来の教科枠を越えて実施している。しかし、総合的、クロスカリキュラム的に展開されるこれらの活動は、既存の教科のような評価や発表の機会がなかった。ガイアコミュニティーはこれらの活動の発表、他校間での相互評価の場になったと考える。また、子どもたちはコンピュータやインターネットを情報の発信や情報を収集するための道具として有効に活用し始めた。
 成果も多いが課題も見えてきた。参加校のカリキュラム(実施時期)の違いが、コラボレーションを行う際、大きく影響するのである。実施時期が違っても柔軟に対応できるようなシステムも構築してきたが、実施時期を柔軟に対応できるようにするとガイアへの投稿頻度が減るというジレンマに陥っている。今後の課題として検討していきたい。

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