新100校プロジェクト成果発表会
高等学校部会

ネットワーク通信を通した地域社会との交流

愛媛県立新居浜工業高等学校 宇佐美東男
usami@niihama-ths.niihama.ehime.jp

1.はじめに
 我が国も、いよいよ教育改革が始まろうとしている。教育の情報化や国際化の分野において、初等・中等教育に変革が訪れようとしている。これに関連する科目の新設や、選択科目から必修科目への変更、コミュニケーション能力の育成を低学年化するなど、教育内容に具体的な改革が盛り込まれるようである。また、この教育改革は、先頃の文部省アナウンスのように、ネットワーク通信をすべての教育現場へ導入するなど、具体的なアクション・プログラムも含まれている。これは教育の情報化に弾みをつけ、教育現場と地域社会との新たな関係を創造するものでもある。
 これまで3年間に渡って教育の情報化・国際化に大きな力となってきた100校・新100校プロジェクトも、より普遍的な教育活動の一部として進化を辿っている。現在は、様々な分野での教育実証を試みようとしている。本校でも、教科指導、地域交流、国際理解教育、新しい教育システムの研究開発などを企画し、新しい時代にふさわしい教育のあり方について、多角的な視野から取り組みを行っている。ここではその一環である、インターネットを通した地域社会との交流、今後の課題等について紹介する。

2.地域社会と共に歩む学校教育
 地域社会と学校教育の関係は、直接的には、生徒たちの将来の進路や地域社会の中での日常生活、家庭との協力、地域と連携した教育活動などがある。また、今日の生涯教育の推進といった視野から、地域社会と学校教育の役割分担など、広範囲な関係を持っている。しかも、それらはすべて補完関係にあり、共に歩み、共に発展することが教育目標の大切なひとつでもある。このようなことを踏まえて、地域社会を対象としたインターネット研修会の開催や様々な研究会への参加、創設に取り組み、地域社会との交流を積極的に進めてきた。研修会・研究会の成果は、当然、インターネットが学校と地域社会とのコミュニケーション・チャンネルとして機能し、様々な教育活動において、地域とのコラボレーションも日常的になるなど、大きな成果を生みだそうとしている。

(1) インターネット研修会・研究会の実施
ア)地域社会市民対象インターネット研修会
★名称:平成9年度 高等学校開放講座「インターネット研修」
★対象:地域社会の方々(2市2町村)
★受講者数:30人
★開催期日:平成9年5月13日(土)〜8月2日(土) 合計10回30時間
★カリキュラム:高度情報化社会について、情報通信ネットワークの発展と将来、インターネットの仕組み、ネットワーク・コンピューティング、インターネットサービスの利用法、ホームページ作成、ファイル転送、リモート・ログイン、ホームページ作品発表会
イ)平成9年度全国情報化月間講演
★テーマ:「インターネットと社会」
★開催日:1997年全国情報月間5月31日新居浜市
ウ)愛媛県下高等学校教員インターネット教育利用研修会
★名称:平成9年度産業実技講習「インターネット教育利用研修」
★対象:高等学校産業教育担当教員
★受講者数:30人
★開催期日:平成9年7月30日〜8月1日合計3日間18時間
★カリキュラム:高度情報化社会について、インターネットサービスの利用方法、情報通信ネットワークの発展と教育の関係、インターネットの導入方法、ホームページ作成、ファイル転送、リモート・ログイン、ホームページ作品発表会
エ)近隣高校生インターネット研修会(学校間交流学習)
★テーマ:各校ホームページ作成学習会
★開催日:一昨年〜9年8月(数回開催)
オ)新居浜市市制60周年記念イベント参加
★テーマ:ホームページ・コンテスト
★開催日:11月3・4・5日に審査委員として参加
カ)環境問題討論会:Cu−SeeMe利用(テレビ会議)
★テーマ「学校から焼却炉が消える・・・ゴミをどしたらよいのか。」
★開催日:11月10日〜17日
キ)インターネット家庭クラブ研修会(市内5高校家庭クラブ員&指導員40名)合計3時間
★テーマ:家庭でのインターネット利用
★開催日:11月1日
ク)西条市「こどもインターネット教室」の開催
★テーマ:インターネット体験
★開催日:小学生は通年(毎週土曜日・日曜日)、中学生は夏休み中(5日間)
ケ)環境問題コラボレーションの計画
★テーマ:過剰包装を考える。
CU−SeeMeを利用して学校、地域社会との意見交換を行う。
★開催日:1998年春休みか1学期中に実施予定
コ)愛媛県工業教育研究会教育ソフト研究委員会
★テーマ:インターネット導入ガイドラインと利用規則の策定
地域社会とのコミュニケーションのあり方等についても研究協議を行う。
★開催日:11月20日
サ)愛媛県東予地域新入社員研修講演
★テーマ:「インターネットと企業活動」
★開催期日:1998年4月3日「東予産業創造センター」予定
シ)情報ボランティア構想の実現
子供たちや高齢者、学校等のインターネット利用に対して、講習会やコンサルティングを行うボランティア団体を設立する方向で準備中である。生徒や教師、一般社会人がメンデーである。
ス)「新居浜インターネット研究会」を組織。定期的に地域対象研修会・研究会を実施(1996年〜)

(2) 学校情報の提供
 ホームページを通して、生徒たちの日常的な学校生活を、地域社会に紹介している。
 この情報発信は、生徒たち自らが取り組んでいるものと、教職員が行っているもの、また双方の合作によるものもある。今後は情報公開等にも活用できないか研究に取り組む

(3) 地域社会と学校(生徒・教師)のコミュニケーション
 本校の場合、卒業予定者の内、就職希望の多くの者が地元就職を希望している。幸い地元にはかなり多くの産業があり、企業数も多い。このような環境で求人活動や求職活動が行われているが、この際、インターネットやパソコン通信を利用して、企業との情報交換が行われている。
 最近では、生徒達は企業や大学・専門学校のホームページから就職・進学情報を収集したり、メールによる情報交換を行っている。教師も学校のホームページを通して、またメール等を利用して企業情報の収集や情報交換を行っている。これらはネットワーク通信が利用できる環境にあって実現したものであり、新しい学校教育の一つの方向性を示したものとして捉えることができないだろうか。

(4) 地域産業の情報化に関する研究会
  ・ 地場産業(工業・農業・漁業等)の情報化問題研究会を準備中

3.今後の課題
 ネットワーク社会は速いテンポで発展している。教育における利用形態も設備も、そこに携わる者のリテラシーも、社会の実態に即し、対応できるものでなくてはならない。
 (1)地域防災システムとの連動を研究する。
 (2)ネットワーク通信利用形態の進化に対応する。
 (3)設備の高度化を進める。現職教育のシステム化を期待する。

4.まとめ
 現在、インターネットは、社会インフラとして完全に認知されるようになってきたが、教育を取り巻く環境は充分整っているとはいえない。これまで海外の先進国と比較し、少し遅れ気味ではないかと感じていたが、最近、文部省から、すべての小・中・高等学校・養護学校にインターネット利用環境を整備することが、アナウンスされた。これは大きな前進である。しかし、現実には多くの問題が残されている。例えば、すべての教育現場にインターネット教育利用に関するノウハウを持った人材の配置(養成)、教育利用におけるガイドラインや利用規則の策定、教育現場にとっての有害情報排除対策、ネットワークの維持・管理に必要とする技術や経費の問題などが山積している。今後は、教育行政も学校サイドとしても、社会的ニーズとして、これらをクリアして行く努力が求められる。
 また、これからの情報社会では、教育利用、ビジネス・個人利用等を問わず、ネットワーク利用全般に渡って、そこに流されている、あるいは流す情報の質の問題をどうするかが社会的課題となってくる。現状では、情報発信に制約をかけることは、米国の通信品位法の例からも、かなりの困難を伴うと想像される。インターネットを健全に発展させるためには、学校教育や社会教育においても、情報モラルに関する教育に取り組むことが、より効果的かつ現実的と思われる。その上で法的対策が期待される。

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