新100校プロジェクト成果発表会
高等学校部会

インターネットを生徒の身近なものとするためには
−インターネット生徒会交流を通して−

宮崎県立延岡商業高等学校 松田 正弘

1.はじめに
 インターネットをもっと生徒の身近なものとするために,生徒の手で全校生徒にインターネットが普及することが一番良い方法だと考えた。そこで生徒が自由に参加できる「インターネットによる生徒会交流」を生徒会活動の一環として行うことにした。
 他校の生徒会や生徒とインターネットを通して,手軽に交流を行うことにより,情報交換と生徒会活動の問題解決や活性化がなされるのではないか。同時に校内の生徒と生徒会で意見や情報交換が行われれば,一人一人の意見が生徒会活動に反映され,関心を示すようになるのではないかと考えた。
 現在までの生徒会交流は,他校の活動状況を詳しく調べ,その中から訪問先を選択し,手紙や電話などで連絡や計画を密に立てることが必要であり,校内での手続き処理も時間がかかる。実際には3〜4校程度の訪問しか出来ず,校内見学や簡単な意見交換だけで終っていた。そこで,事前に交流や討議をしておけば実際の交流時には内容が充実し,生徒の手だけで自主的に交流の計画が立案できるのではないかと考えた。そのためには,素人同然の私と生徒会役員がインターネットの操作法を習得し,そこから普及させていこうというのがねらいである。以上のような理由により、本校にあるインターネットを活用し,手軽で楽しい生徒会交流や意見交換を始めることとなった。

2.インターネット生徒会交流の概要
 基本的には企画・運営は新旧生徒会役員の13名が中心に行っている。パソコン操作やインターネットの基礎知識だけを教え,「習うより慣れろ」を合い言葉に生徒自身が参考書や取扱説明を利用し,生徒自身で学習する形をとった。
 概要は,生徒会役員のコンピュータ研修を行い,インターネットや情報処理に関する知識を高め,ホームページを作成し,メールにより参加校を募り交流を始めた。参加校や生徒間でのE-mailの交換で親睦を深め,情報交換を行う。
本校生徒会役員が運営できるようになれば,その後は,決められた議題で意見交換をして,学校訪問を行いたいと考える。また,成果が上がれば,小・中学校や海外の学校との交流も行いたい。児童会等の指導助言ができれば,リーダーシップも養え,地域のリーダーとして,国際社会に対応できる生徒の育成ができるのではないかと考えた。

3.生徒会や本校の現状
 本校の生徒会役員の構成は,1年生5名(情報処理科2名)2年生5名(情報処理科3名)旧役員3年生3名(情報処理科1名)で,1・2年生の殆どはコンピュータに触れる機会がなく,情報処理科の生徒も教育課程上,COBOLの言語教育が中心でWindows95やインターネットにはやや不慣れな所があった。
 生徒会活動はここ数年,新しい行事を企画するなど活発に動き始めている。その一つ「桜華祭(文化祭)」では,「開かれた学校」として,地域と密着した商業高校の特色を生かせるような「商店街PR大作戦」を新たに企画し,地元の商店街の協力が得られ大成功に終った。詳細については,本校のホームページをご覧になっていただきたい。また、数年前までの生徒会役員改選は、クラスから嫌々ながらの立候補が多かったのだが,現在では、ほとんどの生徒が自ら立候補し,立会演説などにも力がはいり,意欲のある生徒が多くなってきた。しかし,運営や統率力はあるのだが,企画立案には不慣れで他校との交流も活発でない。このインターネット生徒会交流をきっかけに企画立案や運営・交流が自主的に行えるようになればと期待している。

4.活動状況
 交流を始める前に生徒が自由にコンピュータを扱えるように研修を行った。生徒の取り組みは非常に良く,積極的にホームページの検索や,一太郎等のソフトを利用して実施要項やオリジナルの賞状を作成して,自ら学習していった。我々教員側も,負けないように興味を引きそうなホームページやWindows95,インターネット関係の資料を探し,提供した。時間がたつにつれ興味は高まったのだが,施錠管理等の問題があり情報処理室の利用が不便なため,生徒が自由に使えるように生徒会室へコンピュータ(ネットワーク)を購入・設置した。
 9月に入ると,利用頻度・知識共に増した。本校の生徒会の活動状況を公開するために,また,このインターネット生徒会交流を他校に提案するためにホームページを作成することにした。すぐに,ソフトでホームページを作成するのは将来応用が利かず,後々自らホームページを構成する事につながらないと思い,基本的言語であるHTML言語の研修を行った。基本的なことだけを教えたのだが,我々職員の研修が追いつかなくなるほど生徒の理解は早く,参考書だけで次々と新しいホームページを作っていった。HTML言語の学習ができた段階で,生徒自身への研修も兼ね,ホームページ作成ソフト「Hotall4.0」のインストールも行わせた。生徒達は簡単にインストールできることに驚き,自信を持ったようである。この後も,様々なソフトのインストールや削除を覚え,ファイル管理等を自主的に行えるようになった。同時に,著作権についての厳しい指導も行い,操作面だけでなく,著作物に対する正しい知識を身に付けさせた。我々職員も生徒がE-mailを使えるように,UNIXのログインや電子メールID,パスワード発行等の研修を行い生徒同様に知識を深めていった。
 10月には,本県の高等学校総合文化祭が地元延岡で開催され,本校の生徒会役員は生徒会交流部門のテーマである「校則について」の討議の企画と運営を行った。そこで各校の校則の状況を調査することとなったのだが,生徒が県内の状況だけでなく,より広範囲な状況をインターネットを使って調査出来ないかと考えた。ホームページを検索し調査したが,あまりよい情報は得ることが出来なかった。その様なこともあり,初めてE-mailの必要性を感じ,直接学校に問い合わせるためにE-mailの研修を行った。また,10月の後半には生徒会のホームページも完成し,新たなインターネットの活用についての知識と自信をもち,身近なものにしていった。同時にネットワークでの情報セキュリティー問題やエチケットについての研修も行った。
 11月には,メールによる生徒会交流を行うためにホームページを検索し,システム管理者や各学校のメールアドレス一覧表の作成準備に取りかかった。ここで,生徒会だけでは作業が進まないので,情報処理部の協力を得て,メーリングリスト作成の準備をし,また,生徒会交流のためのアンケート内容についても討議した。
 12月には,メールアドレスの調査集計が終り,メーリングリストが完成した。生徒会役員はそれぞれにメールアドレスをもつようになり,生徒会ホームページに掲載し,1回目の更新を行った。その後,参加校募集案内の文書をみんなで話し合い作成した。
 1月には,案内文書も完成し参加校を募りはじめた。約120校にメールを出し,現在では10校からの参加のメールが届いている。
 
5.まとめ
 生徒会が企画・運営する行事などが1年間で約11も有り,それらの行事の準備に時間が費やされ,生徒への十分な指導をする時間がなかった。また、思った以上に生徒の興味関心は高く,理解もよく自ら学習できるようになった。諸行事の企画も資料だけ準備すれば自分たちで運営できるようになった。その他,以下のような反省点と成果があげられる。
 ・個人のメールIDの発行を研修当初に準備しておくべきだった。
 ・生徒会専用のコンピュータの購入・設置が遅かった。
 ・メールアドレスの調査に時間がかかった。
 ・インターネットやパソコンに関する知識と興味が高まった。
 ・積極的に活動するようになり、生徒にも少しは、普及したようである。
 ・交流の基盤を作ることができ、来年度は、スムーズに交流が行える環境が整備された。
 ・なによりも生徒に自信がついたのが一番の成果ではないかと思う。

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