新100校プロジェクト成果発表会
テーマ部会
国際教室とKIDLINK
大和市立林間小学校 島崎 勇
1. はじめに
1995年、アメリカのデルマー小学校のパッティー先生とWWFAXプロジェクトという「絵」を交流の中心にすえた取り組みを始めた。それは、1996年も続き、1997年には、スペイン語を使う子ども達の参加も得て発展していった。これらはKIDLINKという世界的なネットワークの仲間との交流である。
一方、日本の国際教室というのは、外国籍で、日本語がまだ不十分な子ども達が通ってくる教室である。日本の学校の授業についていくためには相当の日本語理解力が必要である。そこで取り出しをして日本語を教えるのが主な役割となる。
今回一つの柱として、この国際教室の日本語学習の様子を「絵」を使ってKIDLINKの仲間に紹介していくことにした。そして一方で、英語、日本語、スペイン語と普段使う言葉が違う者同士が「どう言葉の壁を乗り越えて理解し合えるか」という共同研究として取り組む事にした。
ここではこの「言葉の壁に橋をかける」一つの方法として「絵」を使った交流の様子を紹介したい。
2. 国際教室の日本語指導
国際教室には子ども達が自分のIDとパスワードで自由に使えるマッキントッシュを用意した。それを使って日本語学習に活かそうというのだ。昨年は、日本語の分からない子ども達に媒介語を使わない方法で日本語を教えてきた。しかし、本年、インターネットの活用を考えて、彼らの母語であるスペイン語の理解力をも活かしつつ日本語の指導をする事にした。
- ・国際教室での日本語学習--------->外国語としての日本語学習の資料になる
- KIDPIX で絵を書き、それに文字を加え、更に声を録音する。
- (ひらがな、漢字学習、作文、絵日記)
- 慣れてきた子どもは、作文を書くとき、まずスペイン語で文を作り、KIDPIXでそれを書きセーブして、今度は日本語の文にし、更にそれを説明する絵を書いて完成させている。(KIDPIXは、英語・日本語・スペイン語の三ヶ国語が使えるお買い得なお絵かきソフトである。)
3. KIDLINKの仲間との交流
交流のメインは、電子メールにデータとして上の作品を添付、相手に届ける方法であった。アメリカのパッティー先生が各国から届けられるお手紙や絵を自分のホームページにて紹介してくれたり、自分の所でプリントアウトして掲示板に掲示したりしてきた。本校の国際教室の廊下にもその掲示板が作ってある。そこがちょうど音楽室への通り道になっていてほとんど全校の子ども達が目にしている。時には、紹介してあったメッセージを声を出して読んでいるのが、聞こえてきた。
パッティー先生のホームページでは、
・Self introduction from Delmar elementaryから始まって、
・「ぼくのねこがどこかにいっちゃった」
・ Drawings from Peru
・Christmas drawings from Brazil
・What do I like best about school?
と逐次、話題が整理され掲載されて行った。
日本からもこのプロジェクトを記念して六年生の「ねこの絵」を送った。
4. まとめ
今回の課題である、
・言葉の壁を乗り越える方法として「絵」を使った交流
・国際教室の日本語学習においてスペイン語の理解力を活かすという方法
についてまとめてみると、確かに「絵」があれば、書かれた内容に関する意図が伝わりやすい事は分かった。そして交流が進んでいく中で、まだ理解出来ない言葉ではあるが、交流相手が日頃使っている言葉に対する興味も序々に出てきた。パッティーさんが、自分のホームページに英語・スペイン語・ポルトガル語・日本語の一覧表を作ってくれたりした。また私たちの取り組みの発展として簡単な「絵」入りの辞典を共同で作ることも話題になっている。
私自身も、最近では、英-西・西-英辞典を片手に子ども達に日本語を教えている。子ども達も私がスペイン語が分かると判断しているようで、スペイン語でまくしたてる場面も出てきた。私がけげんな顔をしていると、他の子がちゃんと日本語で通訳してくれるのにも参ってしまう。日本の学校なんだけれど、スペイン語を使ってもいいという安心感が出てきて、日本語の勉強にも弾みが出てきた。
日本語を覚えると反比例にスペイン語を忘れていくのが普通であろう。今回の取り組みで、スペイン語を忘れる事なく日本語を覚えていくためにも、常時スペイン語の使える環境が必要である。その場としてインターネットの交流の場は、まさしく願ってもない出会いの場、学びの場を提供してくれた。
インターネットでつながることにより、国際教室の日本語学習が、教室だけで終わらず、世界のKIDLINKの仲間にも役立つと思う。また、子ども達の母国であるペルー等の学校ともインターネットでつながり交流することが出来た。こういう実践を校内の掲示板等で紹介していく事で、いわゆる国際理解教育もその広がりを見せることが出来た。今後もインターネットを活用したこういう「言葉の壁に橋をかける」実践を続けていきたい。
平成9年度 新100校プロジェクト成果発表会