新100校プロジェクト成果発表会
中学校部会

総合学習教科「学び方」とインターネットの活用

宇都宮大学教育学部附属中学校 金橋 寛明  齋藤 雅大

1.はじめに
 本校は,平成7年度から今年度までの3年間,「100校・新100校プロジェクト」の参加校として活動してきた。特に本校では情報教育の一環として,インターネットの教育利用(道具としてのコンピュータ及びインターネットの活用)とネットワーク利用環境の整備(LAN・データの共有化など)に取り組んだ。また時期を同じくして,文部省研究開発学校(総合学習教科「学び方」を位置付けた教育課程の編成)の委嘱を受けていたので,この研究開発にも「100校・新100校プロジェクト」の参加校であることを最大限に生かしてきた。

2.総合学習教科「学び方」の概要
(1) 学び方のとらえ方
 柴田義松著「学び方を育てる先生」では,学力を「学んだ力(基礎的知識・技能)」「学ぶ力(自ら学ぶ力,学び方)」「学ぼうとする力(学習意欲)」ととらえ,学ぶ力である学び方に二つの側面を与えている。それらはもの の見方・考え方である論理的側面と,ノートの使い方・書き方などの技能的側面とである。
 本研究では,上記の考え方を尊重し,学ぶ力を将来にわたって自己の問題を解決できるような学び方としてとらえた。これに課題設定や追究・発表の方法を決定する場面で必要とされるであろう思考・判断の能力を加えて,学び方を育てる三つの柱とした。
a.学び方の論理的側面・・・ものの見方・考え方・学習のプロセス
b.学び方の技能的側面・・・基礎的学習スキル(ノートの取り方・追究方法の選択)
c.問題解決の思考・判断・・課題設定・追究の過程における自己評価の能力
 さらに,学習を進めていくには欠かせないものとして,学び方を支えるいくつかの要素を考えることができる。
a.学ぶ意欲や態度
b.既習事項の知識・理解
c.広い視野と豊かな感受
 これらを常に意識し,本校で考える学び方を育てる研究を進めてきた。
(2) 「学び方」を構成するコース・科目
 「学び方」の授業として,第1学年から第3学年にわたり「基礎コース」「課題研究コース」の二つのコースを設定した。さらにそれぞれのコースを二つに分け,「基礎T」「基礎U」「課題研究A」「課題研究B」の計四つの科目によって「学び方」を構成した。
 「基礎コース」では,問題解決の技能・表現(学習スキル)を身に付けさせるための学習過程を設定した。「課題研究A」では課題設定及び研究計画の立案をさせ,「課題研究B」では「基礎コース」で学んだ諸技能を活用させ,課題解決のための追究活動及び発表を行わせる。
 このような構想に基づき,総合学習教科「学び方」を教育課程の中に位置付け,実践を行ってきた。そして,「学び方」と各教科との連携を図りながら,自ら問題を発見し,適切な課題を設定し,追究・解決し,表現する態度や能力を育成していこうと考えた。

3.インターネットの活用事例
(1) 問題解決型学習に必要とされる諸技能
 本校では次の四つの能力を取り上げ,これらの要素を学習過程の中に取り入れることで,技能的側面が育成できるのではないかと考えた。そしてこれらの四つの能力が,互いに関連し合って身に付いていくと考えた。
a.言語リテラシー:読み・書き・聞くことに関する技能で,図書・文献の読み・報告書作成・聞き取り調査を行う
b.メディアリテラシー:コンピュータ及び各種情報メディアの活用の技能
c.情報活用能力:情報の収集・選択・加工・発信の技能
d.コミュニケーション能力:会話・発表・質疑応答などの技能
 これらの能力は,従来は必修教科等個別に育成されてきたものであるが,本校では問題解決に必要な技能として改めてこれらを「学び方」を通して系統的に育成しようと試みた。
(2) 「基礎T」でのインターネット活用例
 「基礎T」では生徒を取りまく状況や今日的な話題,また生徒の興味関心から考え「健康・環境」というテーマを設定し,その学習を通して諸技能を習得させようとした。以下に「基礎T」の内容を述べる。
・教師の指導・支援のもとに,学習スキルを体験的に学ばせながら,課題の追究・解決,自己評価に取り組ませる。
・コンピュータ・ソフトウェアの活用等を通して,メディアの特性や活用方法をふまえた,情報の収集・選択・加工 ・発信に取り組ませる。
○「基礎T」の授業例
 【題材3】「インターネットを体験しよう」 (第7時〜第8時)
 この授業では,「基礎T」で学ばせる学習スキルから「機器の操作」及び「情報の収集」を中心に取り上げ,学習活動を行わせる。情報収集の有効な手段として,インターネットから効率的に情報を収集する方法を体験させることがねらいである。
 ここでは,インターネットを情報収集のための一つの道具として活用させる。特に,検索サービスの利用方法を理解させ,キーワード検索による情報の収集の仕方を習得させる。その後,目的のホームページの内容を資料として活用させていく。

4.各教科でのインターネット利用状況
 本校では,以前から各教科で視聴覚機器の利用が盛んに行われてきた。最近では各教科の学習内容に応じ,情報や資料を得るための手段としてのインターネット(Eメールも含む)が注目されている。次にその一例を示す。
 <国語科> 方言しらべ:第1学年
 <社会科> 課題学習のための資料の収集:第2学年
 <理科> 「地震」の資料の収集:第3学年
      「太陽」の資料の収集:第1学年
 <技術・家庭科> 学級のホームページつくり:第3学年
 <外国語科(英語)> ディスカッションのためのテーマに即した資料の収集:第2学年
 <学級活動> 修学旅行の目的地の情報収集:第2学年


5.まとめ
 本校は,校内に約60台のコンピュータを設置し,そのすべてをネットワーク上に置いている。そして,それらのすべてをインターネットへ接続可能としている。視聴覚室には生徒用として40台のコンピュータを置き,視聴覚室を終日開放し,生徒が自由に使用することができるようにしている。これにより,生徒のコンピュータへの苦手意識が薄まり,以前よりもコンピュータを学習の道具として認識する傾向が強まってきている。
 本校の教育活動において,インターネットの存在は生徒・教師の両方にとってなくてはならない存在となってきた。今後も,インターネットをさらに効果的に取り入れた教育活動を行っていきたいと思う。そのことにあたっての今後の課題を以下に示しておく。
a.生徒がコンピュータを扱う時間の確保
b.情報モラル,プライバシー,セキュリティーの概念等の指導の充実
c.生徒一人一人に,ネットワークを活用する者としての意識や自覚を高める

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