新100校プロジェクト成果発表会
高等学校部会

グループ研究におけるホームページの制作とプレゼンテーション


神奈川大学附属中・高等学校 小林 道夫

1.はじめに

 本校は中学高校の6カ年一貫教育を行っており,中学1年-高校3年の情報教育カリキュラムの実践を行っている。コンピュータ教室には45台の生徒用パソコンが設置され,専用線(3Mbps)でインターネットに接続されている。教室は朝7時30分-午後6時まで開放しており,生徒は自由に使うことができる。このような環境から生徒のコンピュータ,インターネットに対する興味・関心は高く,多くの生徒がコンピュータをもっと使えるようになりたいという願望を持っている。また,授業では,ソフトウェアの使い方の説明やインターネットに関する情報を熱心に聞くとともに,得意な生徒はすすんで他の生徒に教えたり手伝うといったことも自然にできている。このことから,生徒の学びたいという意識が高く,それだけ授業での課題設定が重要であると認識している。
 今回は,家庭科「生活技術」の「家庭生活と情報」の単元での実践で,グループ研究を行い,その成果をホームページにまとめプレゼンテーション(発表会)を行うというものである。生徒たちは,テレビ,ゲーム,雑誌を中心としたマスメディアから情報を与えられることに慣れている。学校教育においても自分で考えて意見を述べるということよりも,教師からの情報をインプットし記憶するということが中心となっている。このことから脱却し,生徒自ら考え,課題を設定し自主的に学習を進めるということが今回の課題のねらいである。

2.準備

 高校2年前期までに,インターネットのしくみ,ホームページ検索,HTMLを使ってのホームページ制作を行った。生徒はホームページで情報を検索しレポートにまとめることや,簡単な画像処理,HTML言語を使ってのWeb制作もできるようになった。今回は10月-3月までの約17時間を使い2-3名のグループを編成しての研究である。
 研究テーマは自由とし,人から与えられたものではなく自発的に問題意識を持ち,取り組ませることとした。インターネット,書籍,現地での取材,街頭でのインタビュー,クラスでのアンケートなどの情報収集手段の中から最適な方法を見つけ,研究,調査を行った。研究成果はホームページにまとめ,テキストをはじめ画像,アニメーション,映像,音声といったマルチメディアWeb作品としてまとめる。
 研究テーマの決定,ホームページの構成,係り分担,活動計画など,グループ内で決めなくてはならないことがたくさんある中で,グループリーダーがいかにリーダーシップを発揮し,グループ内での協力を得ることができるかが研究活動を進めるうえで重要なポイントとなる。また,グループ活動をリーダーに任せることのないよう,生徒ひとりひとりに活動を意識させ,協力した活動ができるようグループ研究計画書を提出させ,毎時間自己評価チェック表の記入をさせることとした。授業計画は以下の通りである。

 10月 グループ研究の説明,グループ分け(1時間)
サーチエンジンを使ってのホームページ検索の方法(2時間)
 11月 インターネット,書籍,取材での情報収集,情報の整理(4時間)
 12月 情報の整理,ホームページの制作(1時間)
中間発表(1時間)
  1月,2月 ホームページの制作(6時間)
  3月 プレゼンテーション(発表会)(2時間)

3.内容

 情報収集手段としては,ホームページ,書籍,アンケート,百科事典CD-ROMなどが主なものであった。ホームページを活用する場合,検索する時間や正確さが問題となる。そこで,Yahoo,InfoSeek,gooといったサーチエンジンの使い方を習得させ,次の点に注意させた。
1) 調べる内容,キーワードをはっきりしておくこと
2) 官庁,研究所,大学など公式ホームページを検索し,正確な情報を見つける
3) 必要なキーワードから,より詳しく書かれているホームページを探す
4) 該当するホームページが数多くに見つかった場合,キーワードの条件を絞っていく
 グループによってテーマが異なるため,情報収集のために利用するホームページは様々であったが,注意しなくてはならないことは,ホームページに公開されている内容は制作者に著作権が存在するということである。ホームページの内容や,他人の論文をそのまま使ったり,写真やイラストをそのまま持ってくることはできない。このことは,インターネットや書籍を使った研究活動を行う上で最も重要な部分となる。そこで,生徒たちの活動で,他人のホームページを引用する場合やリンクをはる場合,以下の点に留意させた。
1) 文章,写真,イラストを引用したい場合,またはリンクをはる場合,ホームページ制作者にメール,電話,手紙で連絡をとり承諾を得る。承諾が得られない場合は引用しない。
2) ホームページを参考にした場合は,最後に参考文献と同様にホームページ名,制作者名,URLを明記する。
3) 書籍,雑誌にある写真,イラストも同様の扱いとし,メール,電話を使って生徒各自で責任を持って許可を申請する。

4.結果

 研究テーマは,自然・科学,文化に関するものが多く,環境,食料,国際情勢,経済,情報産業,スポーツといったテーマを中心として考えるグループが多かった。テーマの選定は,情報の集めやすさ,関心の高さ,アピール度といった様々な観点から考え,グループ内で議論を重ね決定したようだ。
 情報収集としてほとんどのグループはホームページを活用した。サーチエンジンを使っての情報収集は,最初は手間取っていたが慣れてくるにつれキーワード設定のコツ,参考になりそうなWebページのみつけ方といったものが身についてきた。また,学校内でのアンケートは多くのグループが採用していた。アンケートの設問を考え,用紙の制作,印刷,配付,回収,集計,表計算ソフトへの入力,グラフの作成,グラフをgif,jpgファイル形式に出力し保存するといった作業をこなしていった。現地への取材も多くのグループが実施していた。生徒から申込みがあれば,ノートパソコン,デジタルビデオ,デジタルカメラを貸し出し,取材にもたせた。
 デジタルカメラのデータはそのままjpgファイルにし,プリント写真はスキャナで読み込んだ。デジタルビデオの映像はRealVideoでエンコードすることによって,軽量なファイルに圧縮することができた。生きた情報を集めるという意味で取材で見聞きした内容をまとめ,画像や映像を取り込むといった作業はどの生徒も楽しそうに実施していた。
 百科事典CD-ROMも早く正確な情報を集める手段として有効であった。キーワードだけでなく年表や地図から検索できることも大きな魅力である。CD-ROMの枚数が少ないため順番待ちが起きていた。
 予算の都合でホームページエディターを購入することができず,本校の生徒が使っているパソコンのOSが古いため,最新ブラウザーに付属するエディターも動作せず,HTMLで記述する方法しかなかった。前期中に基本的なコマンド(命令語)を学習してあるので,あとはコマンドの解説用プリントを配り,解説本を貸し出すこととした。どのグループもこの部分で最も苦労していたが,生徒同士で教えあったり,質問があれば答えるという形をとった。多くのグループがテーブル,フレーム,クリッカブルマップル,JAVA Scriptといった技術も取り入れて制作を進めた。
 この実践では全体で62グループを編成しているが,そのなかの6グループがThinkQuest@JAPANというホームページコンテストに申込んだ(http://www.thinkquest.gr.jp)。ThinkQuest@JAPANは,生徒が制作する教材ホームページコンテストで,今回の授業で制作した作品を応募することとした。今回制作したホームページ作品は本校のホームページにて公開予定であるが,昨年度製作した生徒作品はhttp://www.fhs.kanagawa-u.ac.jp/projects/5thgroup/index.htmで公開している。

図1 研究作品「Sight」 図2 研究作品「Medicine」 図3 研究作品「LOVE」

5.まとめ

 今回の課題目標である,「生徒自ら考えて活動して研究を行う」は,おおまか達成されたと言える。コンピュータ,インターネットといった新しい技術,手段を使って生徒たちの自主的な学習がどれだけ展開できるかは,私自身楽しみであると共に不安であったが,予想以上に生徒の活動が活発であり成果をあげてくれた。学校教育でこのような実践を行うには,技術,設備,予算,時間など,クリアしなければならない問題が多いのだが,その反面,生徒たちが十分学習成果をあげてくれることは今回の実践で実証できたといえる。
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