新100校プロジェクト成果発表会
高等学校部会
自発的学習環境の構築
− 「四択問題作成ツール」の開発とその応用 −


茨城県立岩井高等学校
理科 入江 利明 国語 石塚 照美 英語 白仁田 満美

irie@iwai-hs.iwai.ibaraki.jp

1.はじめに

 本校にインターネットが導入されて3年以上が経過し,インターネットがいつでも使えるという意識が生徒や教員に浸透してきた。このような環境の中で,生徒がブラウザを通じてネットサーフィンをするような感覚でCAI教材も準備できれば,生徒たちが自主的にゲーム感覚で学習できるのではないかと考え今回の企画を思いついた。ブラウザ上で動くインタラクティブなCAI教材を作るには,ある程度のプログラミングの知識が必要になる。そこで,問題のデータのみ用意すれば,誰でも簡単にHTMLに変換できる支援ツールを開発した。今回は四択問題を作成する支援ツールを作成し,これを先生方に活用していただき自発的な学習環境の構築を目指した。国語と英語で実際にこのツールを用いた教材で授業を実践した結果,ほぼ期待どおりの結果が得られた。

2.実践の準備


図1 四択問題作成ツール
(1) 四択問題ページの試作
 今回はCAI教材として四択問題を作成することにした。FORMに入力されたデータの処理は,サーバに負担をかけず,クライアントサイドで処理するJavaScriptを使用することにした。JavaScriptならプログラムもHTML内に記述するため,利用者がプログラムを書き換えることも可能である。まずは,実際に四択問題を作成し,基本的なページのデザインを決定した。

(2) 支援ツールの作成
 四択問題のようなWEBページを作るには,多少のプログラミングの知識が必要となる。そこで,問題のデータさえ用意すれば誰でも簡単に教材が作れるように,支援ツール「四択問題作成ツール」(図1)を用意した。プログラムは,PerlスクリプトによるCGI で,問題のデータを入力すれば,JavaScriptを含むHTMLを出力するようにした。
 ブラウザから問題と選択肢のデータを入力する方法としては,図1のような大きめのテキストボックスを用意し,そこに問題と選択肢を羅列したテキストデータを貼り付ければ済むようにした。このようなデータ形式なら,オフラインで自分のパソコンでゆっくりデータを用意することができ,問題や選択肢の修正も容易になる。また,選択肢はページがロードされるたびにランダムに順番が入れ替わるようにプログラムしてあるため,問題作成者は選択肢の順番を考える必要もなく,純粋に問題作成に没頭できる。

(3) 内部公開によるデバッグを経て一般公開へ
 こうして作成した支援ツールを自分なりに何度もテストを重ねた上で,まず校内からのみアクセスできるようサーバに置き,何人かの先生方に使っていただいた。しばらくすると,「ここはこうして欲しい」とか「こんな機能があるといいな」という要望が出てきた。こうした要望などを参考に,さらに解説文をつける機能や,1問ごとに正誤の判定ができる機能などを追加した。
 こうして,バグ出しと機能の追加が一段落した時点で,支援ツールをWWW 上で公開し,複数のメーリングリストでアナウンスした。また,校内においても多くの先生方に使っていただけるよう,校内研修会の際に紹介し,ようやく実用化にこぎつけた。四択問題作成ツールは以下のURLから参照できるので,ぜひ使ってみていただきたい。
  http://www.iwai-hs.iwai.ibaraki.jp/~irie/javascript/4taku/

3.実践事例1 国語T「和歌の流れ」 石塚 照美

(1) ねらい

図2 和歌の四択問題
 「万葉集」「古今和歌集」「新古今和歌集」の和歌集から,2首ずつ計6首の理解を深め,また,コンピュータを利用することによって,目新しさ,ゲーム感覚で学習・復習に取り組ませ,興味をより一層喚起する。

(2) 資料・準備
 6首の和歌,それぞれ1首に対して,10問の選択問題,加えて,それぞれの和歌集関連の文学史の選択問題を15問,計7ページ75問の問題を作成する。(図2)チャレンジ回数,その度ごとの点数及び感想をを記載する用紙を用意する。

(3) 学習の展開
 「和歌」の授業でどの程度理解できたか,自分の理解度を振り返らせる。ホームページ上からのドリルページの呼び出し方,操作方法等を簡単に説明した後,各自取り組ませる。この際,80点以上を合格とし,合格点に到達した場合のみ次のページに進むという条件にした。また,1回ごとに得点を所定の用紙に書き込まる。

(4) 実践の評価
 7ページ用意したため,50分を有効に使うことができた。中には最後の問題まで行けない者もいたが,大半の者が,楽しみながら学習できたようである。生徒の感想も「コンピュータを使いながら授業をするのは楽しい」「自分のペースでできたし,何回もやりなおしたからよく分かった」など,ねらい通りになったように思われる。

4. 実践事例2 英語I 「受動態」 白仁田 満美


図3 英文法の四択問題
(1) ねらい
 様々な応用問題を解くことにより,受動態の定着をはかる。また,四択問題,E-MAILを通してインターネットの活用範囲を広げる。

(2) 資料・準備
 ツールを使い四択問題を作成(図3)

(3) 学習の展開
 ホームページの開き方,インターネットでの四択問題の解き方を再確認する。四択問題の画面にしたがって,各自解き進み,採点し,正答を各自のノートに書き写す。各自,得点,誤答箇所の正答をメールで授業担当者宛てに送信する。

(4) 実践の評価
 文法の習得は,構文等を暗記した上で,いかに多くの問題をこなすかにかかっていると思う。そういった意味で,この四択問題を使った授業は,非常に多くの問題を短時間にこなすことができる。また,個々の生徒が各自のペースで学習を進めることができるという点,各自解いた問題に対して即座に解答,解説が得られる点も有益である。ともすれば単調になりやすい文法という科目に悩まされていたが,ツールに従って容易に作成できるこの四択問題が1つの大きな解決法を与えてくれた。生徒の評判もとてもよく,「いつもこんな授業がいい」「Grammarがものすごくおもしろく感じられた」との意見が,授業最後に送らせたメールの中に多数聞かれた。

5.実践の評価

 四択問題作成ツールを用いて2人の先生方に教材を作ってもらい,それぞれホームページ上で公開したり,実際に授業で使っていただいた。授業での生徒の反応も好評であり,今回の目的はある程度達成することができた。また,2人の先生方のページには,他にも楽しい四択問題が数多く掲載されているので,ぜひトライしていただきたい。

6.まとめ

 授業で四択問題を活用された先生方から,得点を記録したり,結果をメールなどで通知できる機能,目標点に達しなければ先に進めない機能などを追加して欲しいという要望があげられた。こういった機能にも早急に対応するつもりでいる。さらに,このプログラムの応用として,記述式の問題作成の支援ツールも提供する予定でいる。
 また,インターネットを介して,共通のテーマで他校の先生方や生徒たちと共同で問題を作成するようなプロジェクトを是非立ち上げてみたいと考えている。
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