新100校プロジェクト成果発表会
小学校部会

遠隔共同学習での情報交流と表現活動


輪之内町立大薮小学校
4年担任 林 美幸

1.はじめに

 平成10年12月4日視聴覚研究大会(松下視聴覚教育財団) において遠隔共同学習テレミーティングシンポジウムが行われました。交流校は,北海道札幌市白楊小学校,新潟県佐渡郡八幡小学校,宮崎県西米良村村所小学校と岐阜県安八郡大薮小学校の4校です。日本の北と南と遠く離れた各地のくらしを共同で学習しました。
 テレビ学習でのねらいは,(1) 地形や気候の条件から見て特色ある地域であることを理解する。(2) その土地の環境に適応しながら生活していることを理解する。(3) 他地域との比較から自分の地域社会の生活を考え,見つめ直す。です。
 学校紹介,VTRによる報告,子どもによる発表,子供同士の協議,授業のまとめが各校毎に1時間半にわたって行われました。
 VTRや各校の発表から,子供達はそれぞれの地方にくらしに特徴があり,長所や短所を生かしながら生活していることをつかみ,テレビ会議による学習にとても楽しく取り組みました。

2.情報交流について


(1) 各校(各地) の様子を調べる学習
 交流する各校の様子をインターネットのホームページで調べました。遠い各地の様子がすぐ分かるインターネットのよさを少しずつ理解している子供達でしたが,実際に交流をすることになった学校のことはさらに意欲的に調べることができました。
 また事前に各校から送られてきた資料を教師が調べました。子供達の調べ学習のもととなる資料で研究会当日のビデオや発表の予想ができました。

(2) 各校の進度をインターネットで交流
 12月4日の研究会に向けて,事前の交流,VTRの作成方法や質問事項などの準備が ありました。 その進度を電話や手紙だけでなくEメールで行いま した。研究大会の掲示板も各校の書き込みができ,他校の意見も読むことができとても便利なものでした。

(3) 2校間で交流
 11月16日八幡小学校の子どもたちと自己紹介をしあいました。学習内容だけの交流と思っていた子どもたちは習い事や遊びの話の交流に距離的には遠く離れた新潟県の八幡小学校が,すぐとなりの教室のように感じ,楽しく話しかけれました。

(4) 自己紹介の交流
 村所小学校から,自己紹介が郵送されてきました。一人ずつの名前と写真があり,紹介の文面も地域の内容を盛り込んだ楽しいカードでした。さっそく,大薮小でも,グループごとに写真を撮り紹介文を書いて各校に送りました。自分たちの生活が地域の特徴であることが少し理解できたようです。

3.表現活動について

(1) 調べ学習
 4年生では「総合的な学習」の試行として,社会科をベースに「ふるさと学習」を計画しました。見学,聞き取り,体験学習を行い,低地の様子,施設,低地に住む人々の工夫を調べました。校区の中を自転車で見学して回り,地域の人々に話を聞きました。また,役場のバスを借りて,町内の水を揖斐川に排水する排水機場を見学しました。社会見学でも,同じ低地の海津町の三川公園,歴史民俗資料館を見学しました。また,地域の消防団の方に教えていただいて水防訓練で行われる土のう積みを体験しました。実際に自分たちの目で,耳で,肌で感じる体験はその後の表現活動に大きな意欲につながったと思います。
 また,本校の今までの4年生が作った輪中新聞(ホームページ) もおおいに参考になりました。また,平成7年度の町の研究大会に作られた輪之内町のCDーROMも貴重な映像がたくさんはいっており役にたちました。
 図書の本,岐阜県小学校社会科研究会の輪中の資料なども参考にしました。
 インターネットの長島町の「輪中の郷」のページも小学生向きで,子供達がそのまま使う資料となりました。

(2) 資料作り
 調べ学習をして,資料作りをしました。大薮小学校では,ハイパーキューブ(スズキ教育ソフト) を使って,表したいことを絵と文で表す学習を低学年から行っています。子どもたちは,たくさんの調べ学習から,一番心に残ったことを表現しました。31人の子どもたちが,それぞれに選んで資料を作るため,見学場所も様々となりました。 うまく表現している子を選びA4サイズ4枚にまとめました。自分たちの考えを自分たちの言葉で表現できました。

(3) VTR作り
 見学・体験の様子を写真やVTRで記録しておきました。それを編集して,輪中のくらしの説明VTRを作りました。たくさんある写真や長時間のVTRの中から,3分間にまとめるのは大変でした。子どもたちの資料は,心に残ったことの箇条書きのような形でしたが,VTRは作文のようにつながりが必要です。子どもたちの資料をつなぎながら,教師が中心になって進め,ナレーターは子どもたちという形にしました。音声と映像を合わせるのが難しかったです。

(4) 発表作り
 他の学校の資料が届きました。自分たちの作ったコンピュータの絵と文ではなく,写真やグラフを使っての資料は分かりやすいと考えたようです。他の地域と自分たちの地域をくらべることで,自分たちに地域がより特徴のある地域と感じることができたようです。自分たちも写真や実物を使って分かりやすく話そう,説明しようという方向になりました。土のう積みの体験を実際にやってみせようと,土のう用のふくろやスコップなどを準備しました。

(5) 質問に答える準備
 各校から送られてきた資料を見て,質問したいことを出させました。どの資料も,とてもうまくまとめられているのですが,説明してある言葉が分からなかったり,簡単なことが意外に分からないのです。自分たちへの他校の質問も,こんなことが分からないのかと自分たちの思いこみに地域の違いを感じました。堤防の高さは何メートルですか。という質問に,「いつも見ているけどそういえば知らないねえ。測ってみよう。」となりました。自分たちにとって当たり前のことが,他の地域には分からないものなのです。他校の質問を受け,自分たちの地域をもう一度見直し,分かりやすい答え方を考えることができました。農具など,低地では当たり前の道具も,くわひとつとっても違うことが分かりました。家にある農具を借りて,写真をとってきてくれる子もでてきました。教師が事前に調べたこと以上の資料を子どもたちが集めてくるとは,なんという学習意欲かとうれしくなりました。水屋の写真も教師が予想した場所とは違うところへいって,写真をとらせてもらってきました。子どもたちの前向きな姿勢に感心しました。

3.まとめ

 遠隔共同学習によって,子どもたちの表現力は大きく高まったと思います。自分たちの学習のまとめもうまくできましたが,他地域からの資料を見て,よりわかりやすい資料を作ろうと,相手を意識して作ることができました。自分たちで描いた絵と写真の使い分け,グラフや表の大切さなどを学びました。
 共同学習を行うために,期日が決められ,資料の提出日が迫ります。体験学習,見学学習など天候や行事の関係で,予定通り進まないことがあります。そんなとき,子どもたちにあわてさせ十分考えをまとめさせることなく,どんどんつめこませる形になります。十分なゆとりをもち,子どもたちの課題決めを十分待ち,課題解決をさせる時間も確保する計画をたてたいと思いしまた。そうすることで,子どもたちの表現意欲も高まります。まとめをコンピュータで行うため, ワープロでの文字入力,写真や音声の取り込みなど,コンピュータを操作する技能を十分時間をとって高めておきたいと感じました。
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