新100校プロジェクト成果発表会
小学校部会

地域ネットワークを利用した共同学習の試み


相模湖町立千木良小学校
 元山 雅治

1.はじめに

 96年に「こねっと・プラン」に参加、インターネットが本校に入ってきてからすでに3年目に入った。はじめは、職員室に端末が一台ということで、本格的な利用がなかなかはかれなかったが、児童用のPCのネットワーク化とダイヤルアップルーターの導入により、子どもたちがインターネット環境を利用する機会も増えてきた。しかし、情報を収集すると行った点では利用が増えてきたものの、自分たちから情報を発信したり、他地域の友達との交流という場面はほとんど見ることができなかった。そんなときに、「ケナフという植物を通して交流しませんか」と言うメールでの誘いを受け、他校との交流に一歩を踏み出した。

2.県内共同学習の展開

(1) 共同学習のきっかけ
 こうした交流を何度かくり返すうちに、4年生の社会科で行う、県内の調べ学習に、この交流を生かすことができるのではないかと考えた。きっかけは「ケナフの観察」を通して,交流を続けてきた横浜市立本町小学校からの「県内のダムのことについて調べているので教えてほしい」という依頼である。この依頼を受け,地元相模湖の相模ダムについて調べ,テレビ会議で本町小に伝えた。と同時に、学校のホームページに「相模ダムについて」を作成した。

(2)県の調べ学習へ
 10月に秋の遠足で訪れた横浜『みなとみらい』の開発について,本町小学校の児童とテレビ会議による意見交換を行った。双方の学校で「開発全面賛成」・「開発には賛成埋め立てには反対」・「開発に反対」のそれぞれ3 グループに分かれ,お互いのグループが意見を発表し合う形を取った。最初は,それぞれの考えを主張し合うだけであったが,時間をおいて二度行った意見交換の中で,次第にお互いの住んでいる地域の違いに気がつき,そのことを考えに入れた発言が見られるようになった。
 このことをきっかけにして,神奈川県の調べ学習において,それぞれの地域のことを調べ,互いに教え合い,一緒にまとめを進めることを提案した。

(3)「県内の調べ学習」共同学習の展開
 11月4日のテレビ会議で「県内の調べ学習」を共同で進めようと話がでた。次の週から具体的に活動を開始した。子どもたちは自分たちの住んでいる『津久井地区』について調べることにし,どのような内容でまとめるかを話し合った。
 11月14日,千木良小学校のホームページ上に「調べ学習の部屋」を開き,他地区の子どもたちへの呼びかけを行った。同時に横浜の本町小学校・川崎の桜本小学校にもメールで連絡。
 11月16日にメーリングリストを利用して県内の学校へも協力依頼を行った。
 子どもたちは自分のテーマに基づきグループを作り,資料を集めると同時に児童用プレゼンテーション用ソフト「楽習くん」を利用してまとめを始めた。11月末ホームページ上に一部公開を開始した。
 (調べ学習の部屋) http://www4.justnet.ne.jp/~tigira2/newpage121.htm
 それまでに交流のあった一部の学校から,すぐに取り組んでみるとの返事をいただいたのだが,そのほかの地域からなかなか反応が無く,個人的なつてを頼って再度メールで依頼した。その結果,県内4地域から子どもたちの資料が届いた。

3.テレビ会議システムを利用した交流

 1学期より「ケナフの栽培」を通し,横浜市立本町小学校との間でテレビ会議交流を行ってきた。これは『全国発芽マップ'98 』に一緒に参加し,互いの学校のケナフが成長する様子を情報交換しあうといったものである。
 それまで本校のテレビ会議システムはあまり活用されていなかったので,4年生の子どもたちが実際に体験するのは初めてであった。しかし,「ケナフ」という共通の話題があったこともあり,意識を持って定期的に交流を行うことができた。また、当番制で担当を決め、毎日生長の様子を観察し、記録を続けられたのも、伝えようとする相手を意識していたからといえよう。
 さらに10月からは川崎市立桜本小学校も交流に加わるなど交流に広がりも見られ始めた。

4.オフラインによるふれあい

 秋の遠足は横浜方面を計画した。この機会を利用し,本町小学校とのオフラインミーティングを計画した。帰りの時間の都合もあり,ほんのわずかの間ではあったが一緒に昼食をとりながらの交流を持った。最初は少々ぎこちなかったが,テレビ会議を通して話をしたという気安さからか,すぐうちとけて楽しそうに会話していた。
 また,川崎市立桜本小学校とは「かながわ・ゆめ大会」に合わせて,オフラインによるふれあい集会を企画した。
 11月7日横浜で行われた「全国身体障害者スポーツ大会」開会式の場で顔合わせをし,自己紹介を行った。どちらの交流も子どもたちにとって良い刺激となると共に、交流を積極的に進めて行こうという意欲付けにつながった。3月16日には本町小の子どもたちが相模湖訪問を予定しており、両校の実行委員が交流会の計画を進めている。

5.実践による子どもたちの変化

(1) 交流を通して子どもたちの世界が広がりを見せ始めた
 特に,単学級で1年生からずっと一緒(中には幼稚園から)の子どもたちにとって,全く環境の違う地域に住んでいる本町小学校の子どもたちと知り合ったこと。さらに,一緒に学習を進めたり,近況報告をしあったりすることがとてもよい刺激になったようである。

(2) 情報を伝える相手が見えること,情報の双方向性のもたらすもの
 子どもたち自身が,伝えたい相手を意識することで,調べ学習に積極的に取り組む姿が見られるようになった。自分たちのテーマを追求していくうちに
1) どのような情報を伝えたら良いか考えるようになり
2) 本当に必要な(役に立つ)資料が少ないことに気づき
3) どうしたら必要な情報が手にはいるか考え
4) 自分たちで計画して行動する姿が見られるようになった。
 次に変化したのは,「自分たちの発信する情報に対しての責任感」であろう。他の学校の友だちと分担しながら調べ,一緒にインターネット上のホームページに公開するという目的を持つことで,あやふやなものではなく「正確で・より新しい情報」を入手し,発信していこうと意識する子どもが増えてきたように思われる。

6.交流の発展へ

 こうした一連の活動を通して、他の場面へも活動の場が広がってきた。厚木市の清水小学校の4年生とは、調べ学習の資料を送っていただいたことから交流が広がり、3学期の国語教材「ごんぎつね」の共同学習に取り組んだ。相手校の事情から、FAXを使ってお互いの考え、意見等の交換を続けてきた。さらに、途中からは、お互いの意見をホームページ上に公開しながら、情報の交換を進めていた。
 また、こうした意見交換の途中で、「相手グループの友達の顔や名前を知りたい」と言う要求が子どもたちの中から出てきた。意見交換用の用紙を通して「ニックネームでも良いから名前教えて」とさらに相手との交流を深めようと言う意識が高まってきたようである。グループごとの写真の交換や、ビデオメールの交換に発展している。

7.まとめと今後の課題

 この実践では,当初の目的にあった,「インターネットを活用して神奈川県内の交流網の組織化を図る」という点では,まだ十分ではないものの,同じ県内ながら環境の違う地域同士の児童間が意見交流を進めることができたと言う点では,一定の成果を見たように思われる。また,実際に会って交流をしたことも,子どもたちの意欲付けには大変効果的であった。テレビ会議システムやインターネットを利用することで,子どもたちの学習の中に一方的ではない双方向性が見られるようになってきた。こういった面で遠隔地はもちろんのこと,実際に交流可能な地域間における学校同士においてもこうしたメディアの有用性が認められる。
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