新100校プロジェクト成果発表会
テーマ部会

ラベルビューロを用いたプロキシ型フィルタリングシステムについて


(財)ニューメディア開発協会 国分 明男

1.はじめに

 インターネットはオープンなネットワークであり,誰もが自由かつ簡単に情報を発信することができ,誰もが自由にインターネット上の情報を利用することができる。オープンさと自由さによって膨大な情報が集積し,教材となりうる教育上有用な情報も多数存在するが,18歳未満の青少年には見せてはならないアダルト情報や薬物に関する情報など,教育上問題な情報もまたわずかながら存在する。
 インターネット環境を利用する教育関係者にとっては,生徒に有用な情報を自由に検索し閲覧させることが望ましいと考えた場合に,サーチエンジンを利用した授業を行うと偶発的に問題サイトにつながってしまうことや,放課後ということでインターネットを自由に利用させると問題サイトを見てしまう,といったことが危惧され,その対策が必要であると考えられている。
 当協会は,通商産業省からの出資を受けて,平成9年にクライアント型のフィルタリングソフトを開発し,国際的に広く使われている基準(RSACi)を参考にしたレイティング基準に基づくラベルデータベースを構築し,学校現場で利用してもらっている。そこでは,教師の安心感のためにフィルタリングシステムを使っていきたいという評価があったが,学校現場ではフィルタリングシステムの導入,設定や運用管理を行う時間があまりないため,パソコンが複数台数設置されている現場において効率がよい,一括した設定/管理を行えるようにしてもらいたいという要望も挙げられていた。
 そこで,今回は,学校現場の状況に適合するような,「導入,設定から一括管理までの一連の利用における容易さ」等といった特徴をもつ,プロキシ型フィルタリングシステムを開発した。

2.開発したプロキシ型フィルタリングシステムの特徴について

 フィルタリングシステムは,インターネットにおける情報発信を制限することなく,情報発信者や第3者機関等があらかじめ行う格付け(レイティング)を用いて,受信者が設定するレベルに合わせて選択的に受信することを可能にするシステムである。フィルタリングソフトには,設定/管理を各クライアント毎に行うタイプ(クライアント型)と,ネットワークで接続されたパソコンのプロキシサーバで一括して行うタイプ(プロキシ型)がある。一般的にはフィルタリングシステムは,情報発信者以外の第3者機関として行ったレイティング結果の情報を管理するラベルデータベースもあわせて構築される。処理を行うことができるようになる。
 本開発では,プロキシ型フィルタリングソフトとラベルデータベースの他に,受信者が設定するブロックするレベル等の情報(プロファイル)の参考値を管理するプロファイルデータベースもあわせて開発し,プロキシ型フィルタリングシステムを構成する。プロキシ型フィルタリングシステムは「導入,設定から一括管理までの一連の利用における容易さ」等といった具体的な利用場面における特徴がある。具体的な利用場面は,図に示す通り,フィルタリング環境の設定/管理場面とWebブラウザ利用者のWWWの利用場面という2つの場面に分けられる。フィルタリング環境の設定/管理場面(図上半分)においては,アクセス管理者がプロファイルデータベースを利用してブロックするレベル等のプロファイルを設定し,プロキシ型フィルタリングソフト内に第3者レイティング機関等のラベルデータベースを利用してラベルをダウンロードするなどの準備をしておく。それらによって,Webブラウザ利用者のWWWの利用場面(図下半分)では,プロキシ型フィルタリングソフトが,参照しようとしたインターネット上のホームページ情報の表示/非表示について,その情報に対応するラベルをプロファイルと照らし合わせて判断
 図中の1)から7)は,「導入,設定から一括管理までの一連の利用における容易さ,柔軟さ,共通利用」等の,本プロキシ型フィルタリングシステムの7つの特徴を示している。これは,平成9年度の教育用レイティングシステムの運用実験で利用したクライアント型フィルタリングソフト(IFS)の利用者からニーズとしてあげられた,容易に一括管理したいということを踏まえたものである。具体的には以下の7つの特徴がある。
  1. 導入の容易さ:インストールはプロキシサーバに行うだけでよく,端末パソコンではプロキシサーバの設定を変更するだけで導入を完了できること。
  2. 導入環境の汎用さ:Webブラウザ利用者のパソコンはインターネットを利用できさえすれば,フィルタリング用に新たにメモリ拡張等を行う必要はないこと。また,インストールするプロキシサーバの対応OSはニーズの高かったLinux及びSolarisであり,今後FreeBSDに対応することも予定している。
  3. 設定の容易さ:
  4. 設定の柔軟さ:
  5. 設定の共通利用:各プロキシ型フィルタリングソフトでカスタマイズしたプロファイルは,プロファイルデータベースにアップロードできる。プロファイルデータベースを活用すると,教育現場利用者は校種別,学年別,教科別といった授業に応じたプロファイルについて共通利用することができること。
  6. 管理の容易さ:
  7. 管理者としての状況把握の容易さ:「いつ」「誰が」「どのURLにおいて」「どんな理由で」でブロックされたのか,というブロックした際の詳細な情報やブロックの傾向を把握できること。現在の状況だけでなく,過去の情報や傾向も把握できること。
※仕様,基準の汎用性:本プロキシ型フィルタリングソフトは,W3Cで作成された国際的に標準的な仕様であるPICSに準拠しており,当協会が提供するラベルデータベースの他に,PICSに準拠したラベルデータベースであれば使用することが可能である。また,レイティング基準としては国際的に広く使われているRSACiをベースにしたSaftyOnline等を選択できる。なお,当協会のラベルデータベースは,自動更新機能を持っており,平成11年夏までには20万件を達成する予定である。

図 プロキシ型フィルタリングソフトの利用場面と特徴

3.まとめと今後

 平成10年度はプロキシ型フィルタリングシステムを開発,構築した。平成11年度に教育現場における利用実験を行い,教育現場の状況に適用できる,さらには教師を含む教育関係者のインターネット利用における安心感を向上させることに有効か,といったことを評価する計画である。
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