9.おわりに



 院内学級の支援システムを構築するにあたって、各方面からいい取組である、是非成功して欲しいとの声、また教育委員会の方のお話しや意外な方から院内学級への思いを聞き大変勇気づけられた。
 また院内学級に携わる先生方や児童・生徒を見ているとこちらも何とか力となりたいという気持ちを強くした。その中でeラーニングはどうあるべきか、何をしなければならないかを考えて実施していたが、残念ながら全ての先生のニーズや子ども達のニーズを適えることができたとは言いがたいのも事実である。
 また院内学級をとりまく様々な問題を聞くにつれ、自分達の力の無さを痛感した。我々は当初、院内学級の児童・生徒は外の世界との交流を望んでいるとの一面しか見ることが無かった。しかしながら院内学級に来ている子どもは色々な状況下で、自分の置かれている立場を時には真正面に、時には逃げる気持ちで受け止めている。昨年・今年と実施した国際交流でもそうであるが、みんながみんなこのような状況下で必ずしも相手と話をしたがっているわけではないのだ。院内学級の先生方を過剰に美化するつもりはないが、そのような子どもたちと向き合って指導されている先生方にはただただ脱帽するばかりである。そのような先生方に、そして少し何かやってみようと思った子どもたちに、このeラーニングシステムが少しでも皆さんの力になれればという気持ちです。そのためにも我々は今回の実験で得られた課題に関して、修正するところは修正し、伸ばすところは伸ばして十分に活用できるようなシステムとして成長させていきたい。
 さらに述べるとすれば、今回eラーニングシステムとして弊社のi-collabo Learningを利用した。これは高等教育において学生間、または先生も巻き込んでお互いに協調し学習を進めていこうというものである。だが今回の院内学級においては今までつながることが無かった、またはつながっていても細い糸でしかつながることができなかった人々を、このeラーニングシステムを活用することにより新たなcollaborationが達成できたのではないかと思う。院内学級の先生同士、原籍校の先生・児童・生徒、本校の先生・児童・生徒・・・様々な人々がこの輪に入り、院内学級にいる児童・生徒、そして先生方と共に進むことができたのは本当にITのおかげであると考える。このITは決してバーチャルだけでとどまることは無く、リアル(退院後等)の世界との架け橋なのである。
 これは不登校の児童・生徒とのcollaborationにもあてはめることができるのではないだろうか。不登校の児童・生徒は様々な状況に置かれており一概に何が正解とはいえないが、その子供たちを支えたいとの人々そしてその輪をネットワーク化し全体で子供たちを支えていくことが必要となる。このようなリアルとバーチャルを組み合わせた別の意味でのブレンディングによる学習環境、児童・生徒・先生を支援する環境構築を将来実現化したいと考えている。
 この院内学級のシステムをご覧になった方が、「ITというのは冷たいという印象がありましたが、このシステムを見て変わりました。ITの裏には人間がいていて本当はあったかいものなのですね」とおっしゃっておられました。この言葉をお聞きした時には本当に涙が出る思いだった。このような温かみのあるITシステムをこれからも提供できることができればという思いを更に強くした。

 最後になりましたが、今回の実験に参加していただきました皆様、至らない点がありご迷惑をおかけしました。またそれにも関わらずご協力いただきましたことを感謝いたします。

 この報告書が全国の院内学級に携わる皆さまの一助となれば幸いです。


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