9.まとめ




 従来の野外学習や体験学習では,「調べる・見つける」「調べる・まとめる」「まとめる・学ぶ」場は独立しており,場と時間を隔てて各「場」での学習活動が展開され,野外学習での調査結果やリアルに感じたことなどが教室では捨象され,児童生徒の意識は分断されていたと考えられる。
 一方,野外で児童が調査した位置情報付きの地図データを表示したり,デジタルカメラ等の画像やタブレットPC上で作成した絵図,メモ等をタブレットPC上に表示したりして話し合いを行う学習では,「調べる・見つける・まとめる・学ぶ」ことの統合化が可能となる。このことにより,野外や学校で自由に他の調査チームの結果を呼び出して比較したり,話し合ったりする活動を行うことができ,「調べる・見つける・まとめる・学ぶ」場の統合化による学習活動統合型の学習環境では,児童生徒の探究活動自体の価値・意識の変革が行われると考えられた。
 本プロジェクトでは学習活動統合型の学習環境実現のためGISchoolを開発し,実証実験でその有効性を検証した。本プロジェクトが開発したGISchoolによりタブレットPC,GIS,GPS,カメラを連動させ,これらの情報機器をTabletパレットに固定して野外学習に活用することで,野外での「調べる・見つける・まとめる・学ぶ」場の統合化による学習活動統合型の学習環境を実現することができた。そして,学習活動統合型の学習環境で学習を行うことで,その場で話し合って調査計画を修正したり,方法を変えて調査したり,話し合いから生じた新たな疑問を解決するための調査を行う姿が見られた。このような児童生徒の活動の背景には,児童生徒の探究活動自体の価値・意識の変革が行われると考えられた。以上のことから,GISchoolを活用した野外学習の有効性が確かめられたと考える。
 今後の課題として,ハードウェアでは,タブレットPCの野外でのみやすさ,可搬性の向上が必要であることがわかった。また,ソフトウェアではタブレットPCに保存されたデータの管理方法の簡略化,高さデータを加えた地図情報の提示等があり,研究を進める必要があると考える。

 最後に,本プロジェクトの推進にあたって,指導・助言をいただいた経済産業省の皆様,IT活用教育推進プロジェクト評価・改善委員会の先生方,財団法人コンピュータ教育開発センターの皆様,実証実験に協力していただいた実践校の校長先生をはじめ先生方,保護者と児童生徒の皆様,大変ありがとうございました。



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