1.研究の概要




1.1 研究開発の目的

 総合的な学習の時間の実施とともに、地域や野外にでていっての学習活動は、ますます広がるようになってきた。しかし、子ども達が野外で調べ、体験している情報を、リアルタイムに集めたり、分担した役割を即時に整理し、一覧したり、比較したりする支援ツールはなく、せっかくの情報が共有できないという事態になっている。特に小学校では、総合的な学習の時間などの活動において、実際に野外や現場に出て行って見聞きしたり、経験すること機会が増えてきており、そこでの気づきを記録したり、あとで見直して学習を深めるような活動が今後もますます求められるようになる。この場合、活動を写真で記録したり、表示したり、整理するような支援システムが、日常的に利用できるようになると、これらの学習は、広く普及するようになるだろう。
 本システムでは、子ども達の情報収集端末として「携帯電話」をとりあげ、携帯電話によって収集した情報をwebページに自動編集し、学習に必要な教材資料として表示するシステムを開発することによって、この問題を解決することにした。ここで端末として携帯電話を利用するのは、写真や映像が簡単に送れることのほかに、電話番号による端末認証が行えるという利点に注目したからである。
 また、開発したシステムの教育現場での活用を実証するために、4つの小学校に依頼し、数ヶ月間さまざまな場面で利用し、評価する。具体的な、活動の場面としては、以下のようなものが考えられる。

  1. 野外の調べ学習の際に、グループに分かれた子どもたちが携帯電話を持って出かけ、随時写真やデータを入力し、教室に戻ってからまとめ学習をする。
  2. 調べ学習の結果をホームページに発信し、それを題材としてパソコン討論などを企画し、学習を深める。
  3. 調べ学習の結果を持ち寄り、共同学習を行う。

1.2 システムの概要

 本システムは携帯情報通信端末(主としてカメラつき携帯電話)とWWWを組み合わせた、新しい学習支援システムである。具体的には、携帯電話を、子ども達の情報収集端末と考え、携帯電話に搭載のカメラやメッセージ入力装置から収集された情報をWebページに自動編集し、学習に必要な教材資料として表示する機能を実現する。野外では子どもが1人1台携帯電話を持ち、写真やデータ、意見などを入力する。携帯電話からの入力はリアルタイムで教室のパソコンに表示されるが、その位置は日本のどこにあってもよく、広域での共同学習に向いている。教室では、プロジェクターで投影したパソコンの画面を皆で見つつ、発表やまとめ学習をすることもできる。また、携帯電話として、迷惑メールなどの受信を回避するため、教師側から、情報転送要求(指令と呼んでいる)を発信し、その携帯情報通信端末からの返信だけを受理できるように工夫している。
 本システムは、大別すると、次の3つのプログラムから成り立っている。

  1. 自動送受信システム(写真とデータの送受信システム)
  2. 入力データの整理・蓄積機能(データベースサーバ)
  3. 学習用表示システム(子ども向けインタフェースのWebページ)

 自動送受信システムは、インターネットのメールサーバと連動しており、携帯電話から送られてきた写真やメッセージをPOPサーバから受信し、区分けしてデータベースに自動登録する。学習用表示システムは、ブラウザから利用できるWebページであり、教師側からの指令を携帯情報通信端末に送信するとともに、データベースサーバに返信されてきたメッセージや写真を、学習に役立つ(さまざまな)レイアウトで表示する。また、収集された情報の多様な活用に対応できるために、必要な情報を整理して、表形式にまとめ、クライアントに一括ダウンロードする機能も有している。
 これらの関係を図で示すと次のようになる。





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