9.まとめ



 本プロジェクトでは、従来の学習活動の中で、子ども達一人一人が使用してきた教具、例えば、鉛筆、消しゴム、筆箱、ノート等と同様な感覚で普及可能な新しい IT教具「USB学習帳」を開発した。そして、その新しいIT教具を、学校を中心とした様々な学習活動の中で日常的に活用した。また、それらを手軽にそして機能的に活用できるための仕組みとして「無線LAN構築キット」と「USB教務手帳」を開発し、それらの有効な活用方法について実践授業を通じて評価した。

 一般に、「ユビキタス」とは、「いつでも、どこでも、手軽に情報が引き出せ、共有化できる環境」と定義される。そこで、本プロジェクトで提案する「ユビキタス学習」とは、「ユビキタスな学習環境下での 学習形態(学習スタイル) 」と定義する。
 今回の USB学習帳は、eラーニングソフトを具備したインテリジェントなノートであり、「いつでも、どこでも、ただコンピュータに装着するだけで、学校で勉強した内容を復習できる、学習を継続できる」ことを実現するユビキタスな学習環境である。
 そして、その USB学習帳を活用した学習形態、今回の実践授業の中で得られたIT活用事例は、ユビキタス学習の一例である。

 昨今の社会の急激な情報化の影響により、これまでの教科書を中心とした発達段階に応じた段階的な学習機会に加え、「ユビキタス」という言葉で表現される「時間と場所に制約されない」学習者主体の新しい学習形態や学習スタイルが試行されている。そのような状況において、本プロジェクトの中で検討を行ってきた「ユビキタス学習」は、今後学校の普通教室の中で実践されていく ITを活用した学習スタイルの先進的な事例として、有効活用できるものと考えられる。
 特に、「ユビキタス」という表現の中で意図されている時間は「いつでも」というニュアンスが強いと思われる。学校教育の中での「時間」というものを考えてみた場合、発達過程にある子ども達を指導していく上で、子ども達が、学んだことを理解し、気づき、知識(生きる力)として獲得していくには、個人差があり、時間がかかることを意識しておく必要がある。つまり「継続的な時間」である必要があり、子ども達のペースで、子ども達が過去につまずいた学習内容にもさかのぼって学習できることが、「ユビキタス学習」の有効な活用方法と思われる。

 ユビキタス学習環境は子ども達の継続的な学習機会を生み出す仕組みである。そして、「 7.プロジェクトの評価」の中でも報告した通り、学習活動の中での教師、友人、家族とのコミュニケーション機会を創出する手段でもある。また、教師が個に応じた学習をコーディネートできる環境であり、そして子ども達にとって身近な教具である必要がある。
 今回の実践授業では、 USB学習帳が、「学校と家庭をつなぐユビキタスな学習環境」として、有効に機能したと評価できるのである。

 

 最後に、本調査研究を実施するあたり、多大なるご支援を頂いた、兵庫県揖保郡新宮町立新宮小学校の木南校長先生はじめ教員の皆様、 3年生の皆様、3年生の保護者の皆様、国立兵庫教育大学附属中学校の松浦校長先生はじめ教員の皆様、2年生の皆様、兵庫県立須磨友が丘高等学校の井尻校長先生はじめ教員の皆様、1年生の皆様、兵庫県立御影高等学校の伊東校長先生はじめ教員の皆様、3年生の皆様、兵庫県立教育研修所情報教育研修課の皆様、兵庫県西播磨教育事務所関係者様、兵庫県揖保郡新宮町教育委員会様、(財)コンピュータ教育開発センター様、経済産業省様、eスクエアアドバンス委員の皆様に御礼と今後のご支援のお願いを申し上げ、本事業の報告とさせて頂きます。


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