おわりに



 総合的な学習の時間等を中心に、外部の専門家を学校に招いて、子どもたちが話を聞き、より理解を深めていく授業は以前からよく目にしてきた。専門家の考えに触れるということは、確かに意味があることだが、「1回きりの関わりではなく、ITを使うことによってもっと継続的・発展的に関わることができるのでは?子どもたちはそれによってもっと学びを深めたり広げたりすることができるのでは?」という思いがどこかにあった。そして、その思いをいつかは実現してみたいと考えていた。

 本プロジェクトは「博物館」作りを目的としながらも、実は、「準備室」の中で、子どもたちと学芸員との交流を継続的に実践してきた。博物館での「展示室」とは、公開の場であるため、多くの人が訪れる。校内や地域では当然のように理解されている事柄でも、地域から外れれば、全く環境は異なる。こういったことは校内ではなかなか気づきにくい。外からの指摘なり、質問があって初めて気づくことも多い。実際に子どもたちは、外部からの指摘を見て、初めて気づき、表現し直したことも数多くあった。また、子どもたちの反応を見ていると、リアルタイムでのアドバイスが、驚きから、やがて楽しみへと変わっていく様子が伺えた。単にまとめて、Webで発信するだけの学習では得ることができなかったであろう。
  一方、このプロジェクトでは、鳴門教育大学の学部生も学芸員として加わった。子どもたちに手直しを指示するのではなく、子どもたち自身の「気づき」を促すアドバイスには、将来、教員を志望している学生たちもかなり悩み、勉強になったと伺った。

 現在、地域センター等を設立し、地域内の学校を高速回線化する事業が行われている。総務省が実施している地域イントラネット基盤整備事業では、学校だけでなく、
地域の公共施設もつながっている場合が多い。様々な「知恵や知識」がイントラという空間に点在しているのである。本プロジェクトでは、ITを活用した外部からのアドバイスが子どもたちの興味・関心や学びに少なからずとも効果を与え、こうしたツールは有効であることを検証した。地域の内外を問わず、子どもたちの学習を支援できるシステムにできれば、という課題は残るが、今後、この成果を普及させ、地域の人が学習に関わることができる新しいスタイルを提案できればと考えている。

 最後に、このような「異能者集団によるチームワーキング」という研究機会を与えていただいたEスクエアアドバンスを始め、本プロジェクトに多大なご協力をいただいた高知市立大津小学校、旭東小学校、第四小学校、萩市立明倫小学校、芦屋市立精道小学校にお礼を申し上げ、本事業の報告といたします。

                          ((株)JR四国コミュニケーションウェア 森田 雅祐)



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