6.課題




 “ペンで紙に書く”という従来のスタイルを保つことで、パソコン等のIT機器を使った授業をスムーズに行うことができ、IT機器を使った有効的な学習効果が実証できたと考える。しかし、課題もいくつか摘出された。


(1)デジタルペンシステムの課題

 デジタルペンシステムには、データ送信を有線で行う方式と無線で行う方式と2通りある。無線方式は授業準備や生徒の操作の点から、有線よりも学校環境に適しているといえるが、パソコンへデータ転送するスループット時間が5〜6秒と長く、また複数のペンから同時にデータを受け取ることができないので、今後マルチ処理をできるよう検討する必要がある。使い勝手として、サイズの軽量化(大きさ、持ちやすさ)や、書いた内容を消せないことに対する意見が多くみられ、学校での利用に合わせた今後の改善を開発元へ提言する。


(2)授業前の準備

 教室での機器のセッティング、専用紙の準備、専用紙と連動したツール開発という授業前の準備はプロジェクト側で実施をした為、実際に多忙な教師が全て準備できるか、また、教師に過度な負担をかけず準備できるようにするためにはどうすればよいか、という検証までは実施するに至らなかった。本システムを普及させるためには、どこまで教師に負担をかけずに準備できるかが大きな鍵となることから、この点の検証を続けていきたい。


(3)Webコンテンツの活用

 今回開発したWebコンテンツは、授業の一部に活用されるに留まった。しかし、制作したコンテンツはリアル性や画像に動きがあり生徒の注意力を喚起するデジタル教材として先生からの評価は高く、このようなデジタル教材の必要性を強く感じた。今後は、コンテンツを充実させるだけでなく、授業で使いやすく体系化(カリキュラム化)し、さらには、活用事例を充実させるなど工夫を行い、先生方に広く使えるようにしていきたい。


(4)英語教科以外の活用

 本プロジェクトは、当初英語教科に限定して実施した。しかし、評価委員の方々からも英語以外の教科で活用し実践事例を増やすようご指摘もあり、途中から協力実践校として大乗淑徳学園淑徳小学校 に参画いただき、情報科の実践授業を2004年2月実施予定で準備をすすめている。


(5)汎用的な授業ツールと利用システム

 本プロジェクトで開発・使用した授業ツールを他教科でも利用できるよう、多種多様な専用紙のデータを一元的に取り込むための汎用的な授業ツールとして整備する。機能としては、専用紙の共通的な処理部分をベースとして、各教科に特化した専門的な処理部分をモジュール化した構造を想定している。また、専用紙をテンプレートとして一元管理し、教師間で共同利用できる利用システムの開発を行うことで活用の幅を広げられるようにする。


(6)デジタル教材や他のIT機器との連動を視野に入れた総合的な活用方法

 デジタルペンと専用紙だけでの活用に限定せず、デジタル教材の入出力デバイスとして活用方法や、電子黒板等のIT機器と連動した活用方法を検討する。
 デジタルペンシステムとWebコンテンツは、英語に限らずどの教科にでも活用できる可能性が高い。個別の教科対応のみならず、学習活動全てに活用できる学習システムしての開発を目指していきたい。また、デジタルペンは先生の教務活動(出欠席管理や成績管理等)にも役に立てると考えられ、学校の総合システムとして開発すれば、非常に有効なIT機器として普及すると思われる。


(7)空き教室( 子どもの居場所づくり新プラン )での活用

 文部科学省は平成 16 年度予算で、「子どもの居場所づくり新プラン −地域子ども教室推進事業−」と題し、放課後や休日に学校の空き教室などを利用して「子どもの居場所」をつくり、地域の大人たちの協力を得てパソコン教室やスポーツ、文化活動などを実施する計画である。デジタルペンシステムは、ペンと紙という手軽さからパソコン教室での活用だけでなく、絵画などの文化活動や地域の交流活動などにおいても活用できる可能性が大きく、継続して検討をすすめていきたい。



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