5.プロジェクトの評価




5.1 評価観点

プロジェクトの評価は以下の観点を中心に行なう。
  ・Webコンテンツとデジタルペンを活用した英語授業の有効性
  ・デジタルペンシステムの適性


5.2 評価方法

 評価については、実践授業終了後に行った教師に対するヒアリング調査、生徒に対するアンケート調査、により評価を行なう。
生徒アンケート実施概要は以下の通り。

実施対象:文京学院大学女子中学校(略称:文京学院) 1年栗組
実施日時:平成15年12月18日
回収数  :16名 

実施対象:墨田区立文花中学校(略称:文花) 2年選択授業
実施日時:平成15年12月9日
回収数  :17名

実施対象:都立墨田川高等学校(略称:墨田川) 1年 E組 英I
実施日時:平成15年1月16日
回収数  :25名

生徒アンケート用紙、生徒アンケート結果、教師ヒアリング結果詳細については付録を参照


5.3 評価の結果


5.3.1 教師 ヒアリング調査の結果

ヒアリング調査結果は 以下のような結果となった。


5.3.2  生徒 アンケート調査の結果

共通アンケート
(1) 『デジタルペンの使い方は簡単でしたか?』という質問に対し、以下のような結果となった。

(人)
(表1.デジタルペンの使い方は簡単でしたか?)
  とても簡単 少し簡単 少し難しい とても難しい
文京学院 11 3 1 1
文花 9 7 1 0
墨高 13 10 2 0
全体 33 20 4 1

 全体で見ると、91%の生徒が『とても簡単、少し簡単』と答えており、ほぼ全員が「デジタルペンの使い方は簡単だ」と感じていることがわかった。
  とくに文京学院大学女子中学校では中学1年生での活用であったが、小テストを行ったり、16色を使い分けたりと、様々な活用法を行ったにもかかわらず、88%の生徒が『とても簡単だった、少し簡単だった』と回答している。


(2) 『デジタルペンに使いづらいところはありましたか?』という質問に対しては、以下のような結果となった。

(人)
(表2.デジタルペンに使いづらいところはありましたか?)
    ある     ない  
 文京学院  9 7
文花 11 6
墨高 18 7
全体 38 20

 具体的には、『デジタルペンが太いこと』が最も多く、『重いこと』、『書いたものが消せないこと』の順となった。
  生徒は、『デジタルペンに使いづらい点はあるが、操作はとても簡単である』と感じているといえる。


(3) 『デジタルペンは英語学習に役立つと思いますか?』という質問に対しては、以下のような結果となった。(英語科で普通授業、小テストなど複数の活用法を行った文京学院大学女子中学校と都立墨田川高校の生徒に対し、学習効果についてアンケートを行った。)

(人)
(表3.デジタルペンは英語学習に役立つと思いますか?)
  とても思う 少し思う あまり思わない 全然思わない
文京学院 7 6 2 1
墨高 5 16 3 1
全体 12 22 5 2

 全体で83%の生徒が英語授業にデジタルペンを活用することの有効性を感じている。


(4) 『(思うと答えた人に質問)それはなぜですか?』という質問に選択肢から選んでもらった。結果は以下の通り。

(人)
(表4.それはなぜですか? 複数回答(全員))
  楽しく学習 参考になる 先生に確認してもらえる 単語に触れられる 発表することになれる きれいに書くことを心がける その他
文京 12 8 10 3 3 0 0
墨高 17 11 7 0 1 2 2
全体 29 19 17 3 4 2 2

 最も多かったのは『楽しく学習できるから』で、次に『みんなの書く内容が参考になるから』『先生にすぐ内容を確認してもらえるから』がほぼ同数で多かった。


(5) 『感想・意見を書いてください(自由記述)』という質問に対しては、以下のような意見があった。

    1. 「授業が楽しかった、おもしろかった」「他の授業でも使いたい」など“楽しさ”に関する意見
    2. 「デジタルペンはすごいと思った」「将来の教育はこういうものを使うのだろうと実感した」など“技術に対する驚き”に関する意見
    3. 「とても便利」「簡単で使いやすい」など“デジタルペンの使いやすさ”についての意見。
    4. 「すぐに採点や平均点が出るのがよい」「新たな間違いに気付くことができた」「書いた内容が見られるのはよい」など、“学習効果”に関する意見
    5. 少数ではあるが、否定的な意見もあった。
      「もっと機能をよくしてほしい」「間違えたところが消せない」「書いたものが修正できない」「ペンが少し使いづらい」「表示されるまでが遅い」「配線が多い」


5.4  総合評価


(1)IT操作を意識せずに、ITを活用した「質の高い」授業の実現。

○優しいインターフェィス

 中学校一年生の実践授業においても、デジタルペンの使い方は簡単な操作説明のみで十分であった。教師も「他のIT機器と比べ、容易に授業に取り入れられる。」(小出教諭)と、デジタルペンに対する抵抗感が少ないことを挙げている。“紙とペン”という従来のスタイルで誰でも簡単に扱えるデジタルペンは、教師にとっても生徒にとっても、優しいインターフェィスであるといえる。

○普通教室における IT活用

 従来の普通教室の設備や授業スタイルを大幅に変えることなくデジタルペンとパソコン1台およびプロジェクタ内蔵の電子教卓1台があれば、わざわざパソコン教室へ行く必要がなく、ITの有効活用として学習効果や作業効率を向上させることが出来る。
  教師や生徒のアンケート、ヒアリング等を通し、デジタルペンが普通教室で行なう授業に違和感なく馴染んでいることが読み取れる。普段と同じ環境での何気ないIT活用こそが、「ユビキタス時代」を迎えるこれからの教育現場が目指す授業展開の形のひとつといえる。


(2)IT活用による生徒の積極的な授業の参加と、「わかる」授業の実現。

○積極的な授業の参加の促進

 生徒のほとんどが「楽しい授業であった」と感じており、教師は「いつもよりも積極的に参加していた。」(丸山教諭)、「ペンのお陰で集中力が持続した。書くことへの抵抗感が薄くなったようだ。」(門松主幹)、「学習意欲を高める強力な動機付けになる。」(小出教諭)と評価している。デジタルペンの活用が生徒の興味・関心や学ぶ意欲を引き出すきっかけとなり積極的な授業の参加を促したといえる。こうした積極的な授業の参加は当初予定していなかったクラスから、自分たちも利用したいとの強い要望で追加授業を行ったことでもわかる。

○双方向の学習

 実践授業について、教師は「普段の授業では自分のノートを皆に見せること、またその逆もほとんどない。生徒は他の生徒の記入例をみることができるので、解答のバラエティーから新しい内容を学ぶことが出来る。」(丸山教諭)、「人の英語と自分のものとを見比べる中で、正しい知識が身につくだけでなく、自分の間違った理由なども考えさせることができ、学習が深まった。」(門松主幹)と生徒がお互いに学びあうことができたことを挙げている。
  また、生徒全員の解答をその場ですぐに確認できることは、授業中に個々に応じたきめの細かい指導を行なうことができるという点で、教師にとっても生徒にとっても有効であった。
  デジタルペンを活用することで、“生徒と生徒”或いは“教師と生徒”の間に新たなコミュニケーションが生まれ、双方向の学習が行なえたといえるのではないか。

○時間・作業の効率化

 墨田川高校における定期テストでは、生徒全員のテスト結果をパソコンに入力する作業なしに、データの集計ができ、忙しい教師にとって非常に有効であった。高等学校など、複数のクラス、生徒を受け持つ教師にとって、大人数のテストデータを入力することは負担となりうる。テストやアンケートといった場面ではデジタルペンシステムの集計機能が有効的に活用できた。
  小テストの授業では、グラフ表示機能によりクラス全体の理解度を即時に把握できるため、限られた時間の中で効果的な指導を行なうことができたといえる。

○情報科授業の実践

 本プロジェクトの適用範囲を広げるよう評価委員の方からのご指示もあり、私立小学校における情報科の実践授業を新たに推進中である。しかし、本報告書ではその実践授業が終了していないため報告できないが、「誰でも簡単に使える」というデジタルペンの良さを体験し、ITを身近な道具の一つとして捉え活用する情報科の授業を予定している。



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