インターネットが普及し始めた頃、通信コストや設備の制限から、低帯域用の汎用的なテレビ会議システムの開発が進み、学校間の遠隔交流にも活用されている。臨場感のある対話や相互の連帯感をネットワーク越しに得るためには、できるだけ高品質の映像が要求されることは言うまでもないが、現実には多くの場合、満足できる映像品質で交流ができているわけではない。その結果、授業構成や遠隔交流の授業活用そのものが制限されている。ブロードバンド化が急速に進む中、高品質の映像伝送は近々身近なものとなるが、見慣れているテレビ品質の映像や音質が学校現場で利用できれば、学習にどのようなメリットをもたらすかを検討した例は少ない。また、学校現場において映像や音声を用いる広帯域アプリケーションを使用すると、どんな課題が生じるかについてもあまり検討されていない。
そこで昨年度に広島地域で独自に実施した「広島地域の学校における高度マルチメディア通信に関する研究」(愛称:「マメdeがんす」)の成果をふまえ、またこれらの検討を行うため、「高品質映像伝送による次世代型遠隔交流の実証実験」(以下本プロジェクト)では、ブロードバンドネットワーク(10〜100Mbps)の回線で接続された複数の学校や大学間でリアルタイムな双方向通信で臨場感のある遠隔コミュニケーションを高品質なマルチメディア通信で実現し、国内外との遠隔授業や遠隔交流の実証実験を行った。プロジェクト参加の学校間での遠隔授業、遠隔交流等に加え、参加校がすでに交流実績を持つ海外の学校とも同様の試みを行った。遠隔授業や遠隔交流に関する授業計画等については、本プロジェクト参加の学校関係者や有識者等の意見を参考に作成し実践した。一方、使用する高品質映像伝送システムは、主にプロジェクト参加大学で開発したものであり、大学関係者等がそれらのシステムを学校で利用するための支援にあたった。
昨年度の研究によりいくつかの課題も洗い出された。例えば、マルチメディア通信環境の問題(教室設備等)、教員のマルチメディア通信に関するリテラシー不足、遠隔地との授業・交流を実施するにあたってのコーディネート的な役割やその支援体制作りの重要性も認識された。これらの課題を整理しその解決方法について検討し、こうした先進的試みを現場の教員が行い、実施に関する技術的手順やノウハウの蓄積を行う。また、これらの授業・交流を通して、ブロードバンドネットワークを利用した授業のモデル例を構築し、あらゆる学校種・教科・単元へ還元することも可能することを目標とする。
以下のような児童・生徒、教員の掲げる成果目標に関して、いくつかの授業・交流に対してアンケートまたはヒアリングを授業実施後に行った。そこから得られたデータを主観的または客観的に単純集計を行った。その結果等より、アドバイザーの先生方に授業の在り方や効果について意見を求めながら、実施主体である現場の教員とともに実践実験について評価し、有効性を検証した。
本プロジェクトの実施体制は以下のようになります。
氏 名 | 所 属 | 役 割 |
前田 香織 | 広島市立大学情報処理センター 助教授 | プロジェクト統括 |
相原 玲二 | 広島大学情報メディア教育研究センター 教授 | プロジェクト統括 |
藤岡 哲 | 広島市教育委員会学校教育指導課 主任指導主事 | アドバイザー |
前原 俊信 | 広島大学大学院教育学研究科 教授 | アドバイザー |
染岡 慎一 | 安田女子大学文学部児童教育学科助教授 | アドバイザー |
杉浦 透 | 広島市立井口明神小学校 教諭 | 授業実践校担当者 |
前田 真理 | 広島市立白島小学校 教諭 | 授業実践校担当者 |
森保 尚美 | 広島市立南観音小学校 教諭 | 授業実践校担当者 |
難波 太 | 広島市立基町高等学校 教諭 | 授業実施校担当者 |
平賀 博之 | 広島大学附属福山中・高等学校 教諭 | 授業実践校担当者 |
玉井 基宏 | 広島県高田群吉田町立郷野小学校教諭 | 授業実施校担当者 |
大久保 昇 | 株式会社内田洋行教育システム事業部副事業部長 | 実験コーディネート |
伊藤 博康 | 株式会社内田洋行教育システム事業部CAIサポート部教育情報化推進課課長 | 実験コーディネート |
柴田 賢史 | 株式会社内田洋行教育システム事業部CAIサポート部教育情報化推進課 | 実験コーディネート |
協力学校・団体 | 米国ウィルキルソン小学校 |
タイバンコク市立プラチャニウェット小中学校 | |
Asian Institute of Technology | |
和歌山大学 | |
佐賀大学 | |
佐賀大学文化教育学部附属中学校 | |
広島県高田群吉田町立可愛小学校 | |
広島大学附属中・高等学校 | |
フルブライトメモリアル基金マスターティチャーズプログラム | |
協力者 | 清水欽也、西村浩二、田島浩一、岸場清悟、月山智子、近堂徹、 藤田貴大、藤原裕久(以上広島大学) |
河野英太郎、岸田崇志、新谷和司、松浦友彦、川上貴宏 (以上広島市立大学) |
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渡辺健次、大谷誠、冨永勇一(以上佐賀大学) |
本プロジェクトの計画スケジュール、実施スケジュールは以下のようになります。
実施内容 | 実 施 校 |
遠隔授業 遠隔ディベート(国語) |
広島県高田郡吉田町立郷野小学校 |
広島県高田郡吉田町立可愛小学校 | |
遠隔授業 高大連携遠隔授業 I (理科) |
広島大学附属福山中・高等学校 |
広島大学附属中・高等学校 | |
広島大学 | |
遠隔授業 高大連携遠隔授業 II(美術) |
広島市立基町高等学校 |
広島市立大学 | |
国内交流 隣接学校間交流(クラブ活動) |
広島市立白島小学校 |
広島市立基町高等学校 | |
国際交流 国際遠隔授業・交流 I (総合的な学習の時間) |
広島市立井口明神小学校 |
米国ウィルキンソン小学校 | |
国際交流 国際遠隔授業・交流 II (総合的な学習の時間) |
広島市立南観音小学校 |
タイバンコク市立プラチャニウェット小中学校 | |
遠隔音楽交流 遠隔合唱(音楽) |
広島市立南観音小学校 |
佐賀大学文化教育学部附属中学校 | |
遠隔音楽交流 遠隔合唱(クラブ活動) |
広島市立南観音小学校 |
広島市立白島小学校 | |
広島市立基町高等学校 | |
遠隔音楽交流 遠隔金管合奏 (クラブ活動) |
広島市立南観音小学校 |
広島市立基町高等学校 |
本プロジェクトの実験環境は以下のようになります。
以下の4つの授業・交流については、新聞等に掲載され、全国への情報発信となった。
<高大連携遠隔授業 I(理科)>(平成14年10月2日実施)
・NHK広島放送局平成14年10月2日18:00・20:45のニュースにて放送
・中国新聞平成14年10月3日に掲載
・朝日新聞平成14年10月3日に掲載
・読売新聞平成14年10月3日に掲載
・読売教育メールに掲載
<隣接学校間交流>(平成14年10月16日〜11月11日実施)
・Justsystem&School 1月号に掲載
<遠隔金管合奏>(平成14年11月19日実施)
・中国新聞平成14年11月20日に掲載
・読売新聞平成14年11月20日に掲載
・広島ケーブルビジョン平成14年11月19日〜24日放送
・チャンネルU平成14年11月19日〜25日にて放送
・読売新聞広島総局に掲載
<遠隔合唱 II>(平成14年12月16日実施)
・NHK広島放送局平成14年12月16日のニュースにて放送
・佐賀新聞平成14年12月17日に掲載
また、今後以下のURLにて情報を公開していく。
Eスクエア・アドバンス用ホームページ
http://www.csi.ad.jp/activity/2MAMEdeGansu/e-square/
「広島地域の学校における高度マルチメディア通信に関する研究プロジェクト2(以下「マメ de がんす2」プロジェクト)のホームページ
http://www.mame.csi2.net/2MAMEdeGansu/
そして、「マメ de がんす2」プロジェクトの独自の成果発表会を実施し、普及活動を行う予定である。