高校には美術部や美術専攻のコースがある。しかし「彫刻」については 完成した作品を見ることはあるが、実際に高校生が金属や石彫などの彫刻作品を作る実習が行われていることは少ない。そのため、高校から美術学部への進学などを考える学生にとって、彫刻に対するイメージがつかみにくくなっているのが実情である。広島市立大学の彫刻専攻で学生の作品製作過程を見ながら、教官の説明を聞くことにより彫刻専攻のイメージをつかむことを目的とし、本授業を実施した。実施後、参加した生徒にアンケートを実施した。
実施日時 | 平成14年11月28日(木)授業終了直後 |
実施場所・対象 | 広島市立基町高等学校音楽室1創造表現コース2年生35名(男6名、女29名) |
調査内容 | 基町高等学校アンケート【添付資料31】 |
<1.今回の授業の音声や映像についてお尋ねします。各項目について、満足度を次の5段階で記入してください。>[人]
項目 | 大変満足 | 満足 | ふつう | やや不満 | 大変不満 |
講師の声 | 11 | 20 | 4 | 0 | 0 |
映像の画質 | 9 | 19 | 7 | 0 | 0 |
映像と声のズレ | 5 | 15 | 13 | 2 | 0 |
質問などのしやすさ | 4 | 7 | 16 | 8 | 0 |
<2.授業はわかりやすかったですか。>[人]
1 | 分かりやすかった | 13 |
2 | どちらかといえば分かりやすかった | 17 |
3 | どちらともいえない | 5 |
4 | どちらかといえばわかりにくかった | 0 |
5 | 分かりにくかった | 0 |
<3.授業は面白かったですか。>[人]
1 | 面白かった | 20 |
2 | どちらかといえば面白かった | 10 |
3 | どちらともいえない | 5 |
4 | どちらかといえば面白くなかった | 0 |
5 | 面白くなかった | 0 |
<4.彫刻専攻では、どのような授業があるのか分かりましたか。>[人]
1 | よく分かった | 14 |
2 | まあ分かった | 20 |
3 | どちらともいえない | 1 |
4 | どちらかといえば分からなかった | 0 |
5 | 分からなかった | 0 |
<5.制作過程の臨場感が伝わりましたか。>[人]
1 | よく伝わった | 12 |
2 | まあ伝わった | 22 |
3 | どちらともいえない | 1 |
4 | どちらかといえば伝わらなかった | 0 |
5 | 伝わらなかった | 0 |
<6.このような遠隔授業の回数・時間が増えたらいいと思いますか。>[人]
1 | そう思う | 17 |
2 | どちらかといえばそう思う | 12 |
3 | どちらともいえない | 4 |
4 | どちらかといえばそう思わない | 1 |
5 | そう思わない | 1 |
<7.今回の授業で、どのようなことが印象に残りましたか。印象に残ったことを3つまで書いてください。>
1 | 1.鉄で骨格をつくってよう接する制作風景。 2.石を削る作業。 3.先輩。 |
2 | 1.生徒さんの制作していた作品。 2.制作していたところ。 3.校舎の風景。 |
3 | 1.画像を見つづけていると気分が悪くなった。 2.はきそうだ。 3.1時間くらいにしてほしい。 |
4 | 1.クレーン。 2.先輩。 3.ほうとうむすこ。 |
5 | 1.先輩。 2.学部長の帽子。 3.金属彫刻のところの女性が制作しているというヨロイ。 |
6 | 1.学生のみなさんが制作をしていた風景。 2.彫刻を基礎から学べるところ。 3.先生方の授業風景。 |
7 | 1.広い工房。 2.大きい石。 3.先輩の御姿。 |
8 | 1.制作に必要な道具。 2.制作中の作品。 |
9 | 1.先輩がテレビに出たこと。 2.彫刻の制作過程を見れたこと。 3.巨大な石を扱っているということ。 |
10 | 1.映像が大変綺麗だったこと。 2.大学の授業の様子がつたわりやすかったこと。 3.授業であつかう石の大きさ。 |
11 | 1.ふだん金属や石というかたい物質をつかわないから新鮮だった。 2.スケールが大きいと思った。 3.たん金でのマスク制作とかおもしろそうでした。 |
12 | 1.道具を自分で作っていること。 2.とてつもなく大きな作品(特に石)がすごい。 3.映像と声がほとんどあっていた。 |
13 | 1.巨大な石を割っている所。 2.ずらりと並ぶ顔の彫刻。 |
14 | 1.鉄でトルソーを作っていた所。 2.石を割ったり、面を作ったりしていた所。 3.先輩へのインタビュー。 |
15 | 1.基町高等学校の先輩がいたこと。 2.彫刻はむずかしそう。 3.先生たちは親切。 |
16 | 1.とても大きな石があちこちにあってびっくりした。 2.学生がつくった作品。 3.実際制作をしている様子。 4.やっぱり、テレビでスムーズに会話ができたこと。 |
17 | 1.芸術学部長?の人がとてもかわいらしかったです。 「好きだったらいらしてください」と何度も言ってましたが本当にその通りだと思いました。 2.大学には大きな敷地があってとても便利そうでした。 3.先輩が頑張っている姿には勇気付けられました。 |
18 | 1.工房のこと(大きな石がたくさんあった)。 2.生徒の作品。 3.授業の内容。 |
19 | 1.生徒の作品。 2.先輩ががんばっていたこと。 3.学部長。 |
20 | 1.テレビ中継を見ている様な感じがした。 2.彫刻の様子がよくわかった。 3.工房の様子がよくわかった。 |
21 | 1.先輩の話。 2.市立大学の先輩の作品。 3.授業風景。 |
22 | 1.先輩。 2.建物のデザイン。 3.リアルタイムに制作過程を見られたこと。 |
23 | 1.今まで授業内容を詳しく知ることができなかったけれど授業風景まで見られたこと。 2.たん金の制作過程を見られたこと。 3.学年により段々と作っていくものの難易度を上げていくこと。 |
24 | 1.大学の工房などを見れたこと。 2.制作過程などを見れたこと。 |
25 | 1.制作物の大きさ。 2.色々な用具。 3.石の彫刻。 |
26 | 1.離れているところとこんなに早く映像や音声の交換ができていたところ。 |
27 | 1.先輩が変わっていた。 2.もっと多くかつアップで作品が見てみたかったのに見れなかったのでムカついた。 |
28 | 1.彫刻の学長。 2.先輩。 3.石を切る所。 |
29 | 1.先輩と生で話ができたこと。 2.工房の中継で大学の授業内容が見れたこと。 3.学生さんの制作作品。 |
30 | 1.先輩の話。 2.溶接作業をしているところ。 3.20tのクレーンで石を運んだり、石を割るのを自分でやっていたこと。 |
31 | 1.鍛金の制作における手順の多さ。 2.学部長(黄色のぼうしの)の人柄。 3.先輩の登場。 |
32 | 1.鍛金の授業。 2.1年生の基礎的な彫刻。 3.作品。 |
33 | 1.とてもおもしろそうで自分もやってみたいと思った。 2.生徒の作品がとてもうまくて驚いた。 3.先輩!!! |
34 | 1.たくさんの大きな石がたくさん積んでいるのを見たこと。 2.スクリーンの中の方々と会話できること。 3.学部長の方。 |
35 | 1.現場を見れたこと。 2.作り方を見たこと。 3.先輩や先生方からいろいろな話がきけたこと。 |
<8.今回の授業についてもっと知りたいと思う内容や、遠隔授業でこんなことをしたい等、自由に書いてください。>
1 | 制作作業は大変ですが頑張って下さい。 鉄で骨格をつくるのがおもしろそうだけど大変そうでした。 |
2 | どんな職につくのか。 どうゆう風に創作活動をしていくのか。 |
3 | デザインはどんな授業をするのかが気になります。 |
4 | デザインや油絵についてもっとやって欲しい。 卒業生や現役生の作品をもっと見たいし、意見も聞きたい。 |
5 | 日本画もしくはデザイン(CGではない)の授業をしてほしい。 場所は音楽室じゃない方がいいと思います(寒い、空気悪い)。 |
6 | 就職先にはどんなところがあるのか。 屋内の授業風景。 |
7 | リアルタイムの大学生の授業を生中継で。 |
8 | 道具についての説明や彫刻ならではの利点などの思い入れをもっと語って欲しかった。 たしかに今回の授業はそれなりに楽しかったが、それはめずらしいからで、あんまり本当の意味では楽しくなかった。 わざわざ遠隔でやる必要あるのか分からない。 視野が支配されていて楽しくない。 授業を見る状況が悪く、視点がずっと同じなので(弱点だと思う)気分が悪くなった。 |
9 | もっと他の授業について知ってみたい。 完成した作品はどうするのか知りたい。 ずっと大学においておくのかどうか知りたい。 卒業した生徒のその後の映像、大学のいいところをもっと知りたい。 |
10 | 芸術学部の他の学部の授業も今回のような方法でやってほしいです。 |
11 | ちょうこくの分野も楽しかったけど、他の分野の授業についての授業もしてほしい。 あと、作品のちょっとした評価もしてほしいなと思いました。 |
12 | 日本画の授業や講評風景。 |
13 | 音楽祭をやりたいです。 |
14 | 鉄でトルソー作っていた場合があったのですが、完成作品が見てみたいです。 石彫の作品。 進路や就職先などの相談。 デザインや絵画の授業、作品制作の風景。 |
15 | これから先、こういう授業を開いてほしい。 遠隔授業で大学案内などもしてほしいと思った。 自分の作品を(絵画など)講評してほしいと思う。 |
16 | 彫刻を勉強するのと他の学部を勉強するのにどれくらいのお金がかかる差があるものなのか気になりました。 他の学部との交流などがあるのかどうか知りたかったです。 他の学部とのコラボレーションをしたりするのか、他の学部の先生と親しくなれる機会があるのかなど。 遠隔授業ではどちらかが聞いていることしかないので、お互いに自分たちのことを言い合ったりしたいです。 (高校同士などで)大学の話ばかりなので他の高校の生徒はどんなことをしているかなど知りたいです。 |
17 | 初めて遠隔授業をやったけど楽しかった。 だからこれからもやってほしい。 今度はもっと授業のことが知りたい。 |
18 | 学校の内部。 |
19 | これからも、どんどん知らない所から授業をしてほしいです。 通信で、作品等を大学の先生に見ていただいて講評していただけたりしたら、面白いかなと思ったりもしました。 |
20 | 3、4年生では、どんな授業をするのか。 卒業後の進路はどうなるのか。 どんな職に就くことができるのか。 |
21 | 学生諸子の作成のようすをもっと見られたらよいと思う。 木彫も見たかった。 |
22 | 彫刻などだけでなくもっと多くの科の授業風景を見たいと思う。 |
23 | 絵画のことも学べたらよいと思った。 他の芸術系の大学の授業もうけられるようになればよいと思った。 |
24 | 今まであまり知らなかった彫刻や鍛金のことがよくわかったし、実際の大学の風景を見ることができたので、こういった遠隔授業がこれらどんどん増えていくと良いと思いました。 大学生の作品はすごいと思いました。 もっと見てみたいと思いました。 |
25 | 大学の教授に作品を見ていただいて、生で批評してもらいたい。 大学の授業をうけてみたい。 次は市大(デザイン)のをおねがいします。 |
26 | もっと多くの作品を見せて欲しいです。 お疲れ様でした。 |
27 | もっと作品を見せてほしかった。 今度は他の学部も見てみたいです。 |
28 | 実際の現場をみせてくれて、せつめいしてくれたりするのは、すごくわかりやすく、おもしろかった。 大学のいろんな科などみてみたい。 |
29 | 今回は彫刻だけだったけど、デザインや油絵や日本画の工房も見たかった。 |
30 | とくにありません。 でも石をつかって作品を作るのは興味深いと思った。 |
31 | 自分たちの作品を大学の先生方に講評してもらいたいと思った。 たまには、違う先生の講評も自分の作品向上につながると思う。 とても面白かったです。 |
32 | 学校の内部がみたい。 |
33 | 自分の絵などを見てもらいたい、批評してもらいたい。 |
34 | 作品を制作する風景をもっとたくさん見たかった。 (もっとアップで)大学生のいろいろな話を聞きたい。 |
本授業で、教室内での授業と、野外での工房棟の紹介という2種類の映像を生徒にみせたが、画質について「不満」と回答している生徒はいなかった。特に野外の映像については作品に関する感想も多くあげられ、また、「テレビ中継を見ている様な感じがした」という感想もあり、非常に細かなところまで見られた画質に満足していることもうかがえた。音声については、音楽室での実施ということもあり講師の声は満足のいく聞こえであったようだ。しかし、質問等のしやすさについて不満を抱く生徒がおり、これは音声と映像の遅延が原因と考えられる。
授業に関しては、8割以上の生徒が「分かりやすかった」「どちらかといえば分かりやすった」と回答している。これは、専門家の実習風景(ビデオ)による説明と実際の作業している現場を見せたことにより専門的な授業ができた。また、同様に授業が面白かったかという質問に対しても8割以上が「面白かった」「どちらかといえば面白かった」と回答している。これは普段触れることのできない彫刻の実演等が見れたこともあるが、多くの生徒が基町高等学校の卒業生と実際に会話ができたことを取り上げている。また、制作過程の臨場感が伝わった生徒がほとんどで、これは高品質な画像ならではの回答結果であると考えられる。
また、35人中29人が遠隔授業の回数・時間が増えることに期待している。彫刻の授業に対する要望や、その他の講義、また他の高校等との交流を希望している。
今回の交流で生徒の多くが、彫刻の制作過程や大学での芸術学部での授業についての感想を述べており、生徒にとって新鮮かつ充実した授業ができたと考えられる。また、途中に基町高等学校の卒業生と会話ができ、生徒にとっては現実的な話を聞く機会も持てよかった。2時間連続という長時間な授業であったが、途中で質疑応答を入れたりリアルタイムの制作中継により、集中力が切れることなく授業が進行した。また、教授に自分の作品評価を希望する生徒も多く、専門家による授業の傾向が顕著にあらわれたと考えられる。しかし中には、長時間画面の見続けたため気分を悪くしてしまったという生徒もおり、カメラワークや生徒の位置の配慮は今後の課題と言える。また、芸術の作品を見る際に人によって見る観点は違うので、視野が支配されてしまい楽しくなったという意見もあった。事前にどのような内容の実施を希望しているのか生徒にヒアリングする配慮も必要であろう。