このシステムは個人履歴を扱うため,児童の履歴はその児童とその児童の担任,児童の保護者からのみ閲覧することができるようにするとともに,学校と家庭での学習を結びつけるため,システムで必要な機能要件を次のように定めた。
- 児童に問題を提示し,一問一答で正答と誤答の判定を行う。
- 解き方が分からないとき教師へ連絡できる。
- Web上で学習者の学習履歴が収集できる。
- 収集した学習履歴を教員が確認でき,学習履歴をもとに状況に応じた学習者への指導ができる。
- 家庭からのログインができる。
- 教師・児童の機能が明確に区分されている。
- システムでの学習を支援する算数テキストを小学校1〜6年対象に100枚以上作成する。
上記の機能要件を利用者別に記述する。
○児童用
- ID,パスワードを入力してログインする。
- いつでも,どの学年の問題も利用できるよう学年選択,問題選択ができる。
- 家庭のコンピュータでも問題を印刷できるよう問題はPDFファイルで提供する。
- 結果表示画面は,児童の意欲化につながるよう,絵図を使って正答・誤答を表示する。
- 教師に直接メールを送ることができるように,メインページの下に「先生にメール」リンクを設ける。
- 教師に説明してほしい場合は,児童の要求が教師に伝わるよう「先生おしえて」ボタンを設ける。
- できた問題を視覚的に分かりやすく示して,児童の意欲化につなげるよう,できた問題が明確になるようなアイコンを付ける。
○教師用
- 担当教師が児童の履歴管理ができるよう,ID,パスワードを設定して,児童のデータの閲覧・登録・訂正・削除ができる。
- 担当教師は,「先生おしえて」ボタンを押した児童の記録を見ることができる。
- 教師は問題を登録・追加・訂正・削除できるように,問題登録・問題一覧画面を利用できる。
○保護者
- 保護者は,児童のID,パスワードでログインして,履歴を閲覧することができる。
システムは上記の機能要件を満たすことにより,以下のことを可能にする。
- ○学校での指導
- 学習履歴を収集することにより,教師は児童が学校や家庭で行った学習の様子を早期につかむことができ,教師は児童の学習履歴や児童のノートなどを参考にして,一人一人の児童の実態に応じて支援を行うことができる。
- ○家庭での学習
- 学習履歴を収集することにより,保護者は児童が学校や家庭で行った学習の様子をつかむことができる。保護者は学習履歴や児童のノートなどから,児童のつまずきをみつけて,児童に助言したり,教師と連絡をとったりすることができる。
- ○学校と家庭間の連絡
- 教師や保護者は学習履歴から児童の学習の様子をつかむことができるため,つまずいている児童を早期にみつけることができ,教師と保護者は必要に応じて連絡を取り合うことができる。学校と家庭との連絡を密にとれるため,教師や保護者は児童に必要な支援を効果的に行うことができる。また,学校と家庭で連続した指導や支援を受けることができるため,学習内容が十分に定着していない児童は基礎的な学習内容の定着を図ることができ,基礎的な学習内容が定着している児童は児童の興味や関心に応じた発展的な学習を行うことができる。
- ○児童から教師への連絡
- 「先生にメール」により,先生に直接メールを送ることができる。また,評価問題で誤答の場合に表示される「先生おしえて」ボタンにより次のことができる。
- 家庭学習で問題が解けなかったり,問題の解き方が分からなかったりした児童は,翌日,解けなかった問題の解き方を学校で教師に尋ねる場合がある。このような場合,児童は「先生おしえて」ボタンで教師にそのことを伝えることができる。教師は早期に児童の要求を知り,児童に適切に対応できる。
- 児童が学校の休み時間や放課後に自主的に学習を行い,分からない問題については「先生おしえて」ボタンで教師に連絡することができる。教師は早期に児童の要求を知り,児童に適切に対応できる。
- ○児童の学習意欲の向上
- 児童が解いた問題は,問題番号にアイコンが付加される。解くことができた問題がアイコンにより視覚的にとらえることができ,解けた問題が増えていくことで,児童の意欲化につなぐことができる。また,保護者からも児童の学習の実績が視覚的に分かりやすく示されるため,保護者から児童への「認め」「励まし」につなぐことができる。
本システムは,必要なコンテンツをWWWサーバに格納しておき,ユーザがサーバにアクセスして必要に応じてデータベースから問題情報や学習履歴情報等を抽出・挿入することで,小学校の算数の問題を児童に提供し,学習者への指示を提示することを可能にしている。本システムを構築するにあたり,児童,教師,問題管理者に提供される画面及び機能は異なる。以下では,各々の動作の流れをフローチャートを用いて説明する。
図1に児童用画面のフローチャートを示す。図中で,矢印はその方向に画面が遷移可能であることを示している。以下では,児童が本システムを利用する際に表示される画面について順を追って説明する。
児童はまず,ログイン画面において,教師によって割り当てられたIDとパスワードを入力して本システムにログインする。この際,ID及びパスワードが誤って入力された場合にはエラー画面が表示される。
ログインした児童は,学年選択画面において問題にチャレンジしたい学年をクリックする。なお,この画面には「教師にメールを送る」ためのリンクがあり,何かわからないことがある児童は担任の教師にメールで問い合わせをすることができるようになっている。
ここでは,2)で選択された学年の単元ごとに,練習問題,確かめ問題,チャレンジ問題のタイトルが表示される。このうち,確かめ問題,チャレンジ問題は五者択一の問題となっており,児童ごとに学習履歴(正誤)を蓄積することができる。この情報により,児童は一目で自分の成績がわかるようになっている。なお,一度解いた問題は繰り返し解くことが可能であり,間違えた問題だけを復習するといった使い方もできる。
画面上部には問題選択画面でクリックされた問題が表示される。確かめ問題,あるいはチャレンジ問題が選択された場合には,画面下部に選択肢が表示され,児童は問題を解いて「解答」ボタンをクリックする。また,練習問題が選択された場合には,画面下部には解答PDFへのリンクが表示される。
児童の回答に対して,答えあわせが自動的に行われ,正誤の判定結果,正解・不正解ごとのコメント,解答PDFへのリンクが表示される。特に,不正解だった場合には,「テキストのどこを見ればよいか」という情報も併せて表示される(後述の問題管理者による登録が別途必要である)。それでもわからない場合には,児童は教師にヘルプを求めることができるように,「先生おしえて」というボタンも表示している。
児童が「先生おしえて」ボタンをクリックすることで,担任の教師がこの児童がどの問題でつまずいているかを知ることが可能となる。教師側の画面の説明については後述する。
図8に教師用画面のフローチャートを示す。教師のID及びパスワードはシステム管理者によって予め設定されたものを用いる。
教師は教師用ログイン画面においてIDとパスワードを入力して本システムにログインする。この際,ID及びパスワードが誤って入力された場合にはエラー画面が表示される。
教師は,自分が受け持つ児童が本システムを利用できるようにするために,児童の登録を行う。その際に,児童の姓名,性別,ID,パスワードを入力する。登録した児童は,「登録済み児童一覧」をクリックすることにより,一覧表示することが可能である。児童情報を誤って登録した場合,あるいは児童情報を削除したい場合には,登録済み児童一覧ページの修正,削除ボタンから行うことができる。
教師は,登録済み児童一覧ページにおいて,児童氏名をクリックすることにより,自分が受け持つ児童の学習履歴を閲覧することが可能となる。これにより,教師は各児童の学習状況,理解度等を把握することが可能となる。
前述したように,問題を解いていてわからなくなった児童は,担任の教師にヘルプを求めることができる。これにより,担任の教師は本画面において,日時,児童氏名,問題PDFへのリンク,児童の回答,削除ボタンの一覧を閲覧することができる。どの児童がどの問題でつまずいているかを教師が判断することができ,適切な指導を行うことができる。指導が終わったら「削除」ボタンをクリックすることにより,ヘルプ一覧から削除することができる。
図13に問題管理者画面のフローチャートを示す。問題管理者は,本システムの管理者によって設定されたIDとパスワードを用いて本システムにログインする。
問題管理者は,本システムで利用する問題の情報を登録する必要がある。登録する情報を以下に示す。
- 対象学年
- 大分類ID
- 小分類ID
- 問題の種類(練習,確かめ,チャレンジ)
- 問題タイトル
- 問題PDFファイル名
- 解答PDFファイル名
- 正解時に表示されるコメント
- 不正解時に表示されるコメント
ここで,大分類,小分類とは,章の名称と単元の名称を表しており,IDと名称は1対1で対応している。これらの情報はデータベースに予め設定しておく必要がある。必要事項を記入し,「登録」ボタンをクリックすると,その問題に関する情報がデータベースに格納され,また問題PDF,解答PDFファイルがサーバにアップロードされる。
本システムに既に登録された問題の一覧を見ることができる。ここで,問題タイトルと解答ファイル名には,それぞれ問題PDF,解答PDFへのリンクが設定されている。また,問題情報を誤って登録した場合には,「削除」ボタンから問題の削除を行うことができる。削除が実行されると,問題情報を格納するデータベースからそのデータが削除されるとともに,サーバに既にアップロードされている問題PDF,解答PDFの各ファイルがサーバから削除される。