8.プロジェクトの評価について



(6)アンケートの実施

 これまで,本プロジェクトの実践授業評価部会は,県内の13の実践校での実証実験を通して,授業におけるIT活用を検討してきた。実践授業評価部会は,検討方法の一つとして,児童・生徒,保護者,教師から見た学習効果や問題点を探るために,実証実験に合わせてアンケート(質問紙法)による意識調査を行った。

図16:実証実験と意識調査のスケジュール


a. アンケートの目的と実施時期
 児童・生徒の意識調査は,3回のアンケートで行った(図16)。3回のアンケートにより,「力だめしプリントと楽しく学ぼう算数力だめしを使う前」,「力だめしプリントだけを使ったとき」,「力だめしプリントと楽しく学ぼう算数力だめしを使ったとき」の児童・生徒の意識の変化を調べ,学習者である児童・生徒の目から見た力だめしプリントや楽しく学ぼう算数力だめしの学習効果と問題点を探る。
 教師の意識調査は,2回のアンケートで行った。第1回アンケートは,コンピュータ活用や教材研究の状況,評価方法に関わる項目なども入れ,教師のコンピュータ活用状況の実態調査の意味合いが強い。力だめしプリントと楽しく学ぼう算数力だめしの実践評価の意味合いが強いのは第2回アンケートである。この2つの教材を活用してみて,実践した教師が感じる学習効果や課題などを探究する。
 保護者の意識調査は,2回のアンケートで行った。第1回アンケートは力だめしプリントについて,第2回アンケートは楽しく学ぼう算数力だめしについて,家庭での活用の様子や児童・生徒の様子をつかむことにより,保護者の目から見た家庭学習における学習効果と課題を明らかにする。

b. アンケートの対象と有効回答数
 アンケートの対象は,次の表27に示す通りである。
 教材は小学校算数のものであるが,中学校において小学校算数の復習としての活用方法も実践を通して探究するため,中学生も実践対象に入れている。ただし,中学校で実践を行う学級は,1年生に限定している。

表27:アンケートの対象
  第1回 第2回 第3回
児童・
生徒
実践校すべての学級 力だめしプリントを実践した学級 「楽しく学ぼう算数力だめし」を実践した学級
教師 実践校すべての教師 実践を行った教師のみ
保護者 力だめしプリントを実践した学級の保護者 楽しく学ぼう算数力だめしを家庭で活用した児童・生徒の保護者

表27のアンケート対象からの有効回答数は,次の通りである。

<児童・生徒>
表28:第1回アンケート有効回答数(人)
小学生低学年 小学生高学年 中学生 合計
小1 小2 小3 小4 小5 小6 中1 中2 中3
35 36 78 80 69 75 622 623 660
149     224     1905     2278
表29:第2回アンケート有効回答数(人)
小学生低学年 小学生高学年 中学生 合計
小1 小2 小3 小4 小5 小6 中1
    39 35 37 38 283
39     110     283 432
表30:第3回アンケート有効回答数(人)
小学生低学年 小学生高学年 中学生 合計
小1 小2 小3 小4 小5 小6 中1
    35 37 33 39 107
35     109     107 251

<教師>
表31:教師・有効回答数(人)
  第1回 第2回
小学校教諭 3 3
中学校教諭 56 4
合計 59 7
<保護者>
表32:保護者・有効回答数(人)
  第1回 第2回
小学生保護者 94 37
中学生保護者 177 0
合計 271 37

c. 児童・生徒アンケート結果と考察
ア.コンピュータに対する興味と家庭のコンピュータ環境
 第1回アンケートでは,コンピュータ活用に対する興味・関心や各家庭のコンピュータ環境について質問した(表33〜34)。

表33:コンピュータを使うことは楽しいか(%)
  楽しい やや楽しい あまり楽しくない 楽しくない
小学生低学年 81.6 13.6 2.0 2.7
小学生高学年 70.7 26.7 2.7 0.0
中学生 59.9 28.1 8.1 4.0
表34:家庭のコンピュータ環境(%)
  家にある インターネット接続できる インターネットを自分も使う
小学生低学年 77.7 48.6 27.0
小学生高学年 79.6 57.5 43.9
中学生 84.1 67.5 56.9

 小学生は95%以上の児童が,中学生は85%以上の生徒がコンピュータを使うことが「楽しい」,「やや楽しい」と回答している(表33)。また,約80%の児童・生徒の家庭にコンピュータがあり,インターネットを家庭で使う児童・生徒は,小学生低学年でも約4分の1,中学生では半数以上である(表34)。

イ.実践場面
 力だめしプリントと楽しく学ぼう算数力だめしの活用場面を表35に示す。
 力だめしプリントの実証実験は12〜1月に行ったため,小学生の活用場面は授業中での活用が多く,中学生の活用場面は主に冬休みの宿題として家庭での活用が多い。力だめしプリントは印刷して利用しており,授業中に活用する場合は,教師があらかじめ印刷して渡す場合と,児童・生徒が必要な問題を印刷して利用する場合がある。冬休みの宿題として利用する場合は,教師が印刷して児童・生徒に渡した。

表35:実践場面(%)
  力だめしプリント 楽しく学ぼう算数力だめし
授業中 休み
時間
授業の
宿題
冬休み
宿題
自主
学習
その他 授業中 休み
時間
授業の
宿題
冬休み
宿題
自主
学習
その他
小3 87.2 23.1 0.0 94.3 42.9 5.7
小4 77.1 17.1 91.4 2.9 31.4 0.0 94.6 27.0 10.8 5.4 29.7 0.0
小5 97.3 2.7 78.4 8.1 29.7 0.0 90.9 12.1 24.2 12.1 48.5 0.0
小6 78.9 10.5 15.8 42.1 31.6 0.0 89.7 7.7 7.7 17.9 33.3 5.1
中1 1.6 0.8 5.5 81.5 15.7 1.2 89.7 0.9 0.9 7.5 1.9 1.9

 楽しく学ぼう算数力だめしは,小学校も中学校も授業時間の中での実践が主である。家庭のコンピュータがインターネットに接続されている児童・生徒は,家庭においても活用をしている。

ウ.評価1 〜解答〜
 「解答を見ると,自分が間違えた理由は分かりやすいか」について尋ねた(表36)。

表36:解答を見ると間違えた理由は分かるか(%)
  力だめしプリント 楽しく学ぼう算数力だめし
分かりやすい まあまあ
分かりやすい
ちょっと
分かりにくい
分かりにくい 分かりやすい まあまあ
分かりやすい
ちょっと
分かりにくい
分かりにくい
小3 51.4 48.6 0.0 0.0 39.4 51.5 3.0 6.1
小4 26.7 60.0 6.7 6.7 27.0 51.4 2.7 16.2
小5 29.7 62.2 8.1 0.0 9.1 39.4 39.4 12.1
小6 20.0 51.4 25.7 2.9 12.8 46.2 15.4 15.4
中1 8.8 56.6 22.1 12.4 25.7 53.3 13.3 7.6
 力だめしプリントでは,小3〜小5の児童は「分かりやすい」「まあまあ分かりやすい」という肯定的な回答が多く,小6と中1は「ちょっと分かりにくい」「分かりにくい」の割合が増えている。この理由として次のものが考えられる。
・今回の実践では,小3〜小5は授業での活用が主であり,小6と中1は既習事項の復習としての活用が主である。
・学習したばかりで授業の記憶が多く残っている場合はそれほど詳しい解説を必要としないが,期間をおいて既習事項の復習として活用したときには詳しい解説があった方が理解しやすい。
・学年があがるにつれて,問題の内容が難しくなり,間違いの種類が増すため,丁寧に説明する必要がある。
 このことから,力だめしプリントの解答は,授業での活用においては概ね適切に作られているといえるが,既習事項の復習も視野に入れて考えると,解答のページを準備するだけでなく,問題の解き方を説明しているテキストや教師へのヘルプ機能,児童・生徒の学習履歴の蓄積等が必要である。
 楽しく学ぼう算数力だめしでは,力だめしプリントと比較して,中学生は「分かりやすい」「まあまあ分かりやすい」という肯定的な回答が増え,小学生では逆に肯定的な回答が減っている。この理由として次のものが考えられる。
・解答は,途中の考えが詳しく書かれているのは「楽しく学ぼう算数力だめし」の方である。
・解答が詳しく書かれていても,それを読みとる力が育っていないと,かえって問題などが難しいという印象を与えてしまう可能性がある。
・中学生は小学生に比べて長い文章に慣れていることから,詳しく書かれていた方が分かりやすいという割合が増えている。
・小学生の中には力だめしプリントの画面操作は実践前までにもやったことのある児童もおり,楽しく学ぼう算数力だめしの画面操作は実践校の全児童・生徒がこの実践で初めてやった。
・画面の操作に不慣れな小学生の方が,中学生に比べて慣れるのに時間がかかったという操作性の面の理由もある。
このことから考えると,解答は学年の発達段階に応じた詳しさが必要とされると同時に,前に述べたような教師へのヘルプ機能,児童・生徒の学習履歴の蓄積等は有効であると思われる。

エ.評価2 〜理解度〜
 教材活用として最も重要なことは,「児童・生徒が理解を深められたか」である。
第2回アンケートでは,力だめしプリントを授業で活用した児童には「授業内容が分かるようになったか」,既習事項の復習で活用した児童・生徒には「学習した内容は分かるようになったか」について調査した(表37〜38)。
 「やってみたら間違いもあっていい復習になった」と「分からなかったことが分かるようになった」の合計が,表38の小5を除いて50%を超えている。小5は「既に理解していた」が58.3%であるため,力だめしプリントの活用が復習に役立っていると児童が感じていることが分かる。「まだ理解できない」という児童・生徒が,小5〜中1におり,中1では5.9%である。

表37:授業は分かるようになったか(%)
   すでに
理解していた
間違いもあり,
いい復習に
なった
分かるように
なった
まだ理解
できない
小3 37.5 50.0 12.5 0.0
小4 48.4 41.9 9.7 0.0
小5 41.7 33.3 22.2 2.8
小6 15.4 69.2 11.5 3.8
表38:学習した内容は分かるようになったか(%)
   すでに
理解していた
間違いもあり,
いい復習に
なった
分かるように
なった
まだ理解
できない
小3 35.3 58.8 5.9 0.0
小4 47.1 35.3 17.6 0.0
小5 58.3 20.8 20.8 0.0
小6 15.6 75.0 6.3 3.1
中1 17.2 48.3 28.6 5.9

 第3回アンケートでは,「A.両教材をやる前」「B.力だめしプリントだけやった後」「C.両教材ともやった後」の3場面において,「算数がよく分かる」「算数が分からない」を質問した。この質問は,10が「算数がよく分かる」,1が「算数が分からない」として,10段階での回答とした。表39は,A,B,Cそれぞれで回答された値をもとに,B−A,C−B,C−Aをそれぞれ計算したときの結果である。

表39:算数の理解度の変化(%)
   -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6
小学生
低学年
B−A 0.0 2.9 2.9 8.6 5.7 34.3 (17.1) 11.4 17.1 11.4 5.7 0.0 0.0
C−B 2.9 0.0 0.0 2.9 2.9 28.6 (8.6) 25.7 17.1 8.6 5.7 5.7 0.0
C−A 2.9 2.9 0.0 2.9 0.0 29.4 (8.8) 11.8 17.6 8.8 5.9 14.7 2.9
小学生
高学年
B−A 1.9 0.0 1.9 0.9 56 41.7 (24.1) 32.4 12.0 1.9 0.9 0.9 0.0
C−B 0.0 0.0 0.0 0.9 2.8 40.2 (19.6) 20.6 17.8 13.1 1.9 2.8 0.0
C−A 1.9 0.0 0.0 0.9 1.9 31.8 (12.1) 18.7 16.8 15.9 6.5 6.5 0.0
中学生 B−A 0.0 0.0 0.9 3.7 4.7 43.0 (33.6) 33.6 10.3 1.9 1.9 0.0 0.0
C−B 0.0 0.0 0.0 1.9 2.8 45.8 (32.7) 25.2 15.9 4.7 1.9 1.9 0.0
C−A 0.0 0.0 0.0 0.0 1.9 38.3 (27.1) 20.6 15.9 15.0 4.7 2.8 0.0

 表39で,変化0の( )内の数字は,理解度の変化が0である児童・生徒のうち,対象としている場面の両方共に10(算数がよく分かる)と答えて変化が0であった児童・生徒を除いた場合の割合を表す。
 表39から,±0〜+2の間に人数が集中していることが分かる。対象場面の両方を10と回答している児童・生徒を除くと,特に小学生では,+1〜+2で回答している児童が多い。理解度の変化を見ると,概ね理解が深まったと感じている児童・生徒が多いが,理解度がマイナス傾向にある児童・生徒も若干いる。これは,表37〜38で表された「分かっているつもりだったが,やってみると間違いもありいい復習になった」と回答している児童・生徒が影響していると考えられる。
 中学生において,表39の「算数の理解度の変化」と表38の「学習した内容は分かるようになったか」を関連づけて分析すると,表40の通りである。表40から,第3回アンケートで「算数の理解度」をマイナス傾向で回答している生徒は,第2回アンケートで力だめしプリントを「分かっているつもりだったが,やってみると間違いもありいい復習になった」と回答している生徒に多い。これは,それまで自分では理解していると思っていた内容について,予想外に間違いが多くて理解できていなかったということを自覚することができた結果と考えられる。
 また,力だめしプリントを「分かっているつもりだったが,やってみると間違いもありいい復習になった」「それまで分からなかった問題が分かるようになった」と回答している生徒は,算数の理解度をプラス傾向で回答している割合が高い。「すでに理解していてほとんど正解だった」「まだ理解できない」と回答している生徒は,算数の理解度の変化が小さい。
 これらのことから,「力だめしプリント」も「楽しく学ぼう算数力だめし」は,学習してきた内容の再確認として活用すると有効である。「分かっているつもりだったが,やってみると間違いもありいい復習になった」「それまで分からなかった問題が分かるようになった」と児童・生徒に感じさせてやることが,基礎的・基本的な内容の確実な習得につながると考える。

表40:算数の理解度と力だめしプリントの効果の関連(中学生・%)
  -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6
B−A すでに理解 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 53.8 38.5 7.7 0.0 0.0 0.0 0.0
いい復習 0.0 0.0 2.9 2.9 5.9 38.2 41.2 2.9 2.9 2.9 0.0 0.0
分かった 0.0 0.0 0.0 3.4 6.9 58.6 17.2 6.9 3.4 3.4 0.0 0.0
理解できない 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 88.9 11.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
C−B すでに理解 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 81.8 18.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
いい復習 0.0 0.0 0.0 2.7 2.7 43.2 21.6 16.2 8.1 2.7 2.7 0.0
分かった 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 51.7 24.1 17.2 3.4 0.0 3.4 0.0
理解できない 0.0 0.0 0.0 0.0 11.1 88.9 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
C−A すでに理解 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 53.8 30.8 7.7 7.7 0.0 0.0 0.0
いい復習 0.0 0.0 0.0 0.0 2.9 34.3 20.0 14.3 20.0 2.9 5.7 0.0
分かった 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 50.0 21.9 9.4 9.4 3.1 3.1 3.1
理解できない 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 100.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

オ.評価3 〜継続の意欲〜
 各教材を継続して活用したいという意欲に関わって,第2回アンケートでは力だめしプリントを,第3回アンケートは楽しく学ぼう算数力だめしを対象として,小学生には「これからも続けたいか」,中学生には「数学でもこのような教材があればやりたいか」という質問をした(表41)。
 力だめしプリントでは,小学生は「ぜひ続けたい」「あるなら続けたい」といった前向きな回答が65%以上を占め,半分以上の児童は今後も力だめしプリントを使って学習したいと考えている。

表41:教材活用継続の意欲(%)
   力だめしプリント 楽しく学ぼう算数力だめし
ぜひ続けたい・
やりたい
あるなら
続けたい・
やりたい
あまり
続けたくない・
あまり
やりたくない
続けたくない・
やりたくない
ぜひ続けたい・
やりたい
あるなら
続けたい・
やりたい
あまり
続けたくない・
あまり
やりたくない
続けたくない・
やりたくない
小3 55.3 39.5 5.3 0.0 45.7 45.7 8.6 0.0
小4 32.4 35.3 17.6 14.7 35.1 40.5 21.6 2.7
小5 51.4 45.9 2.7 0.0 36.4 60.6 3.0 0.0
小6 13.2 63.2 15.8 7.9 28.2 56.4 7.7 7.7
中1 8.4 38.2 37.5 15.9 21.5 56.1 16.8 5.6

 しかし,力だめしプリントの活用が復習に役立っていると感じている児童・生徒が多い(表38)にもかかわらず,力だめしプリントを続けることに消極的な児童・生徒(表41)がいる。その理由を考えるとき,表38,41の結果を第1回アンケートで得られた「算数・数学は好きか」という質問と重ね合わせる(表42〜43)と,その要因として考えられるものの1つが浮かび上がる。
 表42に示すように「算数・数学が好き」という児童・生徒ほど「すでに理解していて,力だめしプリントはほとんど正解だった」の割合が高い。それに対して,表43に示すように「算数・数学が嫌い」という児童・生徒と同様に,「算数・数学が好き」という児童・生徒の中にも「力だめしプリントは続けたくない・やりたくない」の割合が高い傾向がある。「続けたくない・やりたくない」理由には,「プリントをやっても理解できない」や「操作が面倒くさい」があり,これらの理由は「算数・数学の嫌いな児童・生徒」に多いと思われる。

表42:学習内容は分かるようになったか(%)
  すでに理解していた 間違いもあり,
いい復習になった
分かるよう
になった
まだ理解できない
小学生
(高学年)
算数好き 46.9 37.5 12.5 3.1
算数少し好き 40.9 43.2 15.9 0.0
算数少し嫌い 20.0 70.0 10.0 0.0
算数嫌い 0.0 100.0 0.0 0.0
中学生 数学好き 51.4 40.0 8.6 0.0
数学少し好き 14.7 61.1 21.1 3.2
数学少し嫌い 9.8 45.9 39.3 4.9
数学嫌い 5.6 27.8 50.0 16.7
表43:教材を続けたいか(%)
  力だめしプリント 楽しく学ぼう算数力だめし
ぜひ続けたい・
やりたい
あるなら
続けたい・
やりたい
あまり
続けたくない・
あまり
やりたくない
続けたくない・
やりたくない
ぜひ続けたい・
やりたい
あるなら
続けたい・
やりたい
あまり
続けたくない・
あまり
やりたくない
続けたくない・
やりたくない
小学生
高学年
算数
好き
41.7 30.6 19.4 8.3 44.7 36.8 15.8 2.6
算数
少し好き
28.3 56.6 7.5 7.5 27.8 63.0 5.6 3.7
算数
少し嫌い
28.6 57.1 14.3 0.0 30.0 50.0 20.0 0.0
算数
嫌い
0.0 100.0 0.0 0.0 20.0 60.0 0.0 20.0
中学生 数学
好き
24.4 26.8 26.8 22.0 47.4 36.8 15.8 0.0
数学
少し好き
9.2 48.0 34.7 8.2 16.7 69.4 11.1 2.8
数学
少し嫌い
0.0 38.1 47.6 14.3 14.7 61.8 11.8 11.8
数学
嫌い
5.3 31.6 36.8 26.3 20.0 33.3 40.0 6.7

 これらの理由と同時に,表43から,「すでに理解していて正解ばかりだと,力だめしプリントをやる必然性が薄れる」という理由もあると思われる。これは,「力だめしプリントに対する希望」の欄に記載された「もっと応用問題が欲しい」「文章題をもっと多くしてほしい」「他教科のプリントも欲しい」に表れている。
 楽しく学ぼう算数力だめしでは,表41から,力だめしプリントよりも「ぜひ続けたい」「あるなら続けたい」といった前向きな回答が増えている学年が多い。特に中学生では,30%以上の割合で前向きな回答が増えている。
 小学生では力だめしプリントと同様に前向きに捉えている児童が多く,表43でも「算数が好き・嫌い」に関わらず前向きな回答が多い。「楽しく学ぼう算数力だめしに対する希望」の欄にも,「英語や漢字など,他の教科もあるといい」「5択問題を増やして欲しい」等の前向きな記載がされた。
 中学生では力だめしプリント以上に前向きに捉えている生徒が多く,「楽しく学ぼう算数力だめしに対する希望」の欄には「中学校版も作って欲しい」「1問だけでなく,2〜3問ずつあった方がもっと力になると思う」等の意欲的な記載が多くあった。中学生に前向きな回答が多く見られたのは,力だめしプリントの時に課題として挙げた「応用問題・発展問題への対応」について,楽しく学ぼう算数力だめしでは帯分数の計算などの発展的な学習内容(チャレンジ問題)が含まれていたことも一因に考えられる。これは表43において,「数学が好き」「数学が少し好き」の生徒が前向きな回答を大幅に増やしていることに表れている。

カ.評価4 〜教材比較〜
 第3回アンケートでは,「A.力だめしプリント」「B.楽しく学ぼう算数力だめし」「C.学校で使っている計算ドリル」について,「やる気になる順」「分かりやすい順」「使いやすい順」の3つの観点でそれぞれ順番をつける質問をした(表44)。

表44:教材比較をしたときの順番(%)
  AB AC BA BC CA CB AB+AC BA+BC CA+CB AB+BA AC+CA BC+CB
小学生
低学年
やる気 32.4 26.5 17.6 5.9 14.7 2.9 58.8 23.5 17.6 50.0 41.2 8.8
分かりやすさ 29.4 14.7 11.8 20.6 20.6 2.9 44.1 32.4 23.5 41.2 35.3 23.5
使いやすさ 32.4 38.2 2.9 5.9 14.7 5.9 70.6 8.8 20.6 35.3 52.9 11.8
小学生
高学年
やる気 12.3 5.7 21.7 36.8 3.8 19.8 17.9 58.5 23.6 34.0 9.4 56.6
分かりやすさ 6.0 5.0 23.0 34.0 5.0 27.0 11.0 57.0 32.0 29.0 10.0 61.0
使いやすさ 7.5 4.7 14.0 21.5 26.2 26.2 12.1 35.5 52.3 21.5 30.8 47.7
中学生 やる気 13.3 7.6 38.1 18.1 12.4 10.5 21.0 56.2 22.9 51.4 20.0 28.6
分かりやすさ 15.7 4.9 37.3 18.6 15.7 7.8 20.6 55.9 23.5 52.9 20.6 26.5
使いやすさ 16.5 22.3 17.5 14.6 21.4 7.8 38.8 32.0 29.1 34.0 43.7 22.3

 表44の1行目のアルファベットは,順番に並べたときの1番と2番を表す。例えば,ABは1番がA,2番がBであることを表している。
 学年で見ると,小学生低学年では,3観点に共通して力だめしプリントが肯定的に受け止められている。これは特に,AB+ACの数値の高さとBC+CBの数値の低さに表れている。
小学生高学年では,「やる気」「分かりやすさ」の2点については,AC+CAの数値の低さから,楽しく学ぼう算数力だめしが肯定的に受け止められていることが分かる。これに反して「使いやすさ」では,普段から使っている計算ドリルが肯定的に受け止められている。これは,AB+BAの数値の低さとCA+CBの数値の高さに表れている。
 中学生では,「やる気」「分かりやすさ」の2点について,力だめしプリント・楽しく学ぼう算数力だめしの両方,特に楽しく学ぼう算数力だめしが肯定的に受け止められている。これは,AB+BAの数値の高さとBA+BCの数値の高さに表れている。これに反して「使いやすさ」では,力だめしプリントと計算ドリルの紙ベースの教材,特に力だめしプリントが肯定的に受け止められている。これは,BC+CBの数値の低さとAC+CAの数値の高さに表れている。
これらのことから,発達段階や観点によって,効果的と考えられる教材は異なることが分かる。そこで,表44をもとにしながら発達段階・観点別に最も効果的と考えられる教材を◎,2番目に効果的と考えられる教材を○で表すと,右の表45のようにまとめることができる。

表45:各教材の効果
  A.力だめし
プリント
B.楽しく学ぼう
算数力だめし
C.計算ドリル
小学生
低学年
やる気  
分かりやすさ  
使いやすさ  
小学生
高学年
やる気  
分かりやすさ  
使いやすさ  
中学生
やる気  
分かりやすさ  
使いやすさ  

 表45から,普段から計算ドリルに慣れており,計算ドリルの効果的な活用の仕方が身に付いている小学生高学年にとっては,計算ドリルの効果も高いといえるが,特に小学生低学年や中学生にとっては,力だめしプリントも楽しく学ぼう算数力だめしも,学習者の意識としては学習において非常に効果的であると受け止められていることが分かる。楽しく学ぼう算数力だめしは,発達段階に関係なく肯定的に受け止められているといえる。

d. 教師アンケート結果と考察
ア.力だめしプリントと楽しく学ぼう算数力だめしの学習効果・メリット
 第2回アンケートでは,実践を終えて実感している力だめしプリントと楽しく学ぼう算数力だめしの学習効果・メリットを質問した(表46)。この質問は以下の19からの選択式とした。

1 児童・生徒に,各自のペースで練習させることができる
2 Word版のものは,教師が自分で編集できるので便利である
3 つまずいている児童・生徒に,より関わることができるようになった
4 コンピュータを使わせることで,児童・生徒の意欲が向上する
5 児童・生徒が与えられたものだけでなく,自分で問題を探して学習するという姿勢が身に付く
6 家庭でも使うことができ,保護者との連携をとることができる
7 既習単元や前の学年の学習内容を,簡単に引き出すことができる
8 同じ問題を繰り返し練習させることができる
9 その他
表46:学習効果・メリット(人:有効回答7)
力だめしプリント 楽しく学ぼう算数力だめし
1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 2 3 4 5 6 7 8 9
5 2 2 3 4 1 3 4 1 6 0 3 4 5 1 6 3 1

 どちらの教材も,教師は児童・生徒個人のペースで学習させるには有効な学習教材だと感じている。また,児童・生徒が与えられたものだけでなく自分で学習を進めるという自学自習に有効であるとも感じている。のその他では,「自己選択できるので意欲的に取り組むようになった」「プリントの蓄積が自信につながった」等が記載されている。

イ.力だめしプリントと楽しく学ぼう算数力だめしの問題点・デメリット
 学習効果・メリットと同時に,問題点・デメリットについても質問した(表47)。この質問は,以下の16からの選択式とした。

1 児童・生徒ごとにやっている内容がバラバラになるので,対応しきれない
2 プリントが単元によって,枚数の多い単元・少ない単元がある
3 クラス全員がプリントアウトしようと思うと,プリンタが対応しきれない(プリンタの台数が足りない)
4 家にコンピュータのある児童・生徒とない児童・生徒で差ができる
5 紙やインクなどに費用がかかる
6 その他           
表47:問題点・デメリット(人)(有効回答7)
力だめしプリント 楽しく学ぼう算数力だめし
1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6
1 1 5 2 3 0 1 0 0 4 0 1

 表47から,実践した教師が感  表47:問題点・デメリット(人)(有効回答7)じている問題点は,コンピュータやプリンタ,インク等の設備面の問題が大きい。
 ア.とイ.から,両教材は自学自習の支援を主とした学習効果は実現しているため,その学習効果をより高めるための設備の充実が待たれる結果となった。

ウ.個に応じた学習の実現
 第2回アンケートでは,力だめしプリントと楽しく学ぼう算数力だめしが個に応じた学習を実現しているかについて質問した。それぞれの教材について10段階で評価し,その理由も書いていただいた(表48)。
 表48から,児童・生徒が自己選択でき,各自のペースで進めることができるといった点で高く評価されている。今後は,この自己選択を児童・生徒が自分の力に合った選択を的確に行えるように,難易度を示すなどして段階に応じた問題の充実が期待されていることが明らかになった。

表48:個に応じた学習の実現(有効回答7)
 教材
 \
評価
主な理由 主な理由 主な理由 主な理由
力だめしプリント 1
自己判断できない生徒もおり,個に応じるというところまでは至っていないように思う。
2
自己評価できる児童には有効である。
周りにつられて実力以上のものを選択することもあった。
4
自己選択でき,能力に応じた進度で学習できて良い。
問題が基礎・基本を踏まえた精選されたものなので良い。
パソコンの活用例として優れていると思います。
0  
楽しく学ぼう算数力だめし 2
自己判断できない生徒もおり,個に応じるというところまでは至っていないように思う。
1
教師1人では,トラブルに対してなかなか個に応じてやれない。
3
画面と相対するので周りにつられることも少なくなり,自分の力に合わせて進められた。
段階に応じた問題が用意されてくると,さらに個に応じた学習といえる。
2
自己選択して取り組める。
自宅からでも学習できる。
チャレンジ問題があるのが良い。
判定してもらえることで,生徒の意欲を高められる。




e. 保護者アンケート結果と考察
ア.算数の理解度
 第1回アンケートでは,力だめしプリ 表49:算数が解けるようになったと感じるか(%)
ントをやることによって,算数が解けるようになったと感じるかを質問した(表49)。「変わらない」「分からない」の回答が多いが,全体の5分の1程度の保護者は「感じる」と回答している。
 表50は,子どものやったプリントを見るかという質問の結果である。中学生の保護者よりも小学生の保護者には見てもらえている割合が高い。
 表49では算数が解けるようになったと「感じる」という回答は小学生の保護者に多く,これは,表50で示したように普段から子どもの学習の様子を保護者が見ることによって,実感する割合が高くなることが明らかになった。

表49:算数が解けるようになったと感じるか(%)
  感じる 変わらない 感じない 分からない
全体 19.7 35.6 4.9 39.8
小学生保護者 31.5 33.7 2.2 32.6
中学生保護者 13.4 36.6 6.4 43.6
表50:プリントを見るか(%)
  見る 必要に応じて見る 見ない
全体 7.7 15.0 77.3
小学生保護者 20.8 22.2 56.9
中学生保護者 1.4 11.5 87.2

イ.親子の会話
 親子の会話の変化についても質問した(表51)。表51から,「増えた」という回答は小学生の保護者に多い。この親子の会話の増加も,表50の「プリントを見る」ということに関連づいていると考えられる。教師と保護者が連携して児童・生徒の学習を支援することにより,児童・生徒の学習効果を高めるだけでなく,親子のよい関係づくりも支援することができることを示している。

表51:親子の会話(%)
  増えた 変わらない 減った
全体 6.9 93.1 0.0
小学生保護者 14.4 85.6 0.0
中学生保護者 2.9 97.1 0.0

ウ.教材活用継続の希望

表52:今後も続けてほしいか(%)
   続けてほしい どちらとも
いえない
必要ない
力だめし
プリント
全体 76.0 19.8 4.1
小学生保護者 84.9 12.9 2.2
中学生保護者 70.5 24.2 5.4
楽しく学ぼう
算数力だめし
小学生保護者 66.7 33.3 0.0

第1回アンケートでは力だめしプリントを対象として,第2回アンケートでは楽しく学ぼう算数力だめしを対象として,今後も続けてもらいたいかを質問した(表52)。どちらの教材についても高い割合で「続けてほしい」の回答があり,学習を支援する教材の活用は保護者には肯定的に受け止められている。中学生の保護者にも,小学校の復習は大切であるという意識の強さが表れている。
 力だめしプリントでは,「必要ない」の回答が若干あるが,そのほとんどは中学生の保護者からである。その理由としては次のものが考えられる。

・プリントの内容が今学習している数学ではなく,小学校算数であった。
・実施時期が,中学校に入学して8か月以上経ってからであった。
・中学生は冬休みの宿題としての実践がほとんどで,冬休みは他教科の宿題や塾の学習などと重なった。



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