■主催した教育機関 |
市教育委員会 主査
鼈甲という地域の産業と結びついた学習を体験させることは、充分「生きる力を育む」ことにつながることが実証できた事業であったと考える。特に、実施した小学校の5年生の児童にとって、デジタルコンテンツを活用した授業だけでなく、鼈甲協会の専務理事の方や鼈甲職人さんと直接交流し、芸術的な鼈甲工芸品を鑑賞し、制作途中の鼈甲に触れる等の体験的活動の場があったことは、特筆すべきことである。疑似体験やビデオでの紹介で、ややもすると深みのない学習に陥る可能性の高いこのような学習内容を、子ども一人一人が身近なものとして捉え、鼈甲細工というすばらしい伝統工芸に対する理解を深めていくことができたことが本事業の最大の成果といえるであろう。
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■授業実施者
(産業界講師) |
日本べっ甲協会 専務理事
今回の授業で、べっ甲産業のことについて、子どもたちが興味をもってくれたことを大変うれしくおもいます。みんなよく勉強して立派な発表をしてくれました。これをきっかけに自然・環境問題などにも興味をもつ子どもたちが増えることとおもいます。ご家族でべっ甲工芸館を訪れてくれるなど市民全体がべっ甲産業のことを考えるきっかけになることを期待しています。
こうした活動は協会としても、機会があれば継続していきたいと感じました。
べっ甲職人さん
子どもたちは好きなので、楽しく授業を行うことができた。工芸品は本物に触れ合うことが大切なので、今回プレゼントした物をひとりでも大切にしてくれればいいと思う。自分の話の中が、子どもたちが生き方やものの考え方などを考えるきっかけになれば幸いである。
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■担任の先生 |
今回のような授業を学校内部の人材だけで実施するのは不可能である。産業界の方がそれぞれの特色を生かし、それらが高いレベルで融合したからこそできた学習である。授業の目的も十分に達成できた。子どもたちも貴重な体験ができて、たいへん有意義だったと思う。今後も今回のような産業界から講師の方を招いての授業を行いたいと考える。あとは今回学んだことを、どのように今後の学習に生かしていくかが課題である。
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■生 徒 |
べっ甲について、今まではほとんど知らなかったけど、今回の学習でいろんなことを詳しく知ることができてよかった。
職人さんのすごい技におどろいた。わたしも努力すればああなれるのかなぁと思った。
今までは長崎の特産品といえばカステラとかちゃんぽんなど食べ物のことしか頭にうかばなかったけど、べっ甲というすばらしい伝統工芸があることを知ることができてよかった。
職人さんの仕事を目の前で見たり、べっ甲工芸館に見学に行ったりして、とても勉強になった。タイマイが輸入できるようになってほしい。
ワシントン条約の意味がよくわからなかったが、調べていくうちにだんだんわかるようになってきた。サボテンやインコなどが保護されているとは知らなかった。
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■教育関係の立場から |
大学教授
子どもたちは調べ学習で得られた結果や意見を、専門家の前でプレゼンするなど、普段の授業では得られない素晴らしい成果が得られたと思う。なにより、子どもたちは、一連の作業をやってのけた達成感が得られ、自信を持てたのではなかろうか。
次に産業界の人材について言えば、教壇に立ち、次代を担う子どもたちと思いをともにし、文化を伝え、未来をともに考えていくためのより有意義な授業を行うためには、専門的な知識の伝授以外に、いくつか乗り越えなければならない課題がある。今回の授業の中でも部分的に、子どもたちの言葉を用いて伝えること、子どもたちに合った話の進め方、間の取り方など、さらに工夫して行かねばならないところも見受けられた。こうした外部の講師の活用には、子供たちの発達段階に合わせて、産業界の講師の人選、講義内容の確認、わかりやすい教材の準備、授業中における教師との連携の必要性の協議など十分な準備期間が確保されることが不可欠である。
以前と異なり、子どもたちが生産現場から隔離された環境で育っている現代では、後継者が育たない、技術の空洞化が起こるなど深刻な事態が発生している。産業界と連携した授業は、十分な授業準備が必要なことから学校単独や教師個人の努力だけで継続していくことは難しい。教師の相談受け、授業をコーディネートする部署があれば、もっと日常的にこうした授業実践がおこなえるだろう。産業の後継者の育成のためにも是非この種の事業は続けて欲しい。
この事業で培われた経験が実り豊かな教育と、こどもたちの創造力豊かな未来へと続いていくことを願ってやまない。
県教育庁 課長補佐
小学校では、児童の発達段階に合わせた具体的でかつ体験的な活動の中で、情報活用の実践力の育成を図ることを基本としながら、機器操作の習得や情報モラルの育成を図ることが大切である。要は、将来の「情報の科学的な理解」及び「情報社会に参画する態度」の獲得に役立つ「豊かな体験」をいかに積ませるかである。
そう言う意味では、今回の取組は、問題解決や表現方法の手段としてIT機器をグループ活用から個人活用へ、さらに、課題に手段を選択する段階への移行期であるという児童の発達段階を十分に踏まえた適切な指導展開といえる。
また、「視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図る」観点からも、地域教材のデジタルコンテンツ化は、従来からの視聴覚教材をより発展させるなど、教育の情報化を目指した取組と考えられる。
できれば、これからは3年生から総合的な学習の時間を利用して特色ある情報教育が展開できるので、5年生のみならず学年段階に応じた情報活用能力の育成全体計画を添付できれば、本学習でねらう情報教育の視点がより明確になるのではないと考える。
実施小学校 校長
講師の方の確たる人生観を聞かせていただくことで、子どもたちの心にもしっかり響いたようでした。
また、職人さんのすばらしい技術を実際に披露していただいたことで、子ども達の将来の進路に希望が抱けたのではないかと感じました。
ゲストティーチャーを導入しての授業で、これだけ時間をかけたことはこれまでなかったことなので、これからの研究に値するものと考えます。
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