8.課題




各校で有効性の検証を行った結果明らかになった事柄がある。これの解決が今後の課題であり、更に検討を行う。

こどもの手や目の動き等から心理的背景を探る仕掛けについての継続研究。

 目と手の協応動作が、子どもの書字能力に強く関連していることは識者の一致するところである。従って、書字の前段階の能力として、直線や曲線を描く練習は欠かせない。今回の教材作成の仕様の中に、線つなぎ、迷路、点つなぎ課題を入れた理由はこれである。目と手の協応関係を子どもなりに認識することが、書字に対する心理的な不安やバリアーを除くのに有効であることが、今回の授業実践から判明した。今後、教材等を通して真理的背景を探れるような形にしたい。

タブレットのペン材質などハード要件についての調査

 今回の授業実践では、他のタブレット製品のペンを試行してみたが、使う上での感触 に大きな相違はなかった。それ以外のペンの材質を調査するのは時間的に困難であった。
 また、画面の手書きに適したカバーシートを提供を受けて、これを装着してみた。画面が見づらくなるが、画面の保護には役立った。

認知特性とのつながりをもっと前面に出した使い方の継続研究

 自らの言語表現や文字表現が困難な自閉症児などに対して、指導者が手を添えながら子どもの手や腕の動きを援助しながら運筆するやり方がある。この書字や描画による表現支援の方法は、ソフト・タッチ・アシスタンスと呼ばれる。このような運筆の支援で子どもの動きが生まれる背景には、(1)−触ったらできるといった機械的な技法の側面ではなく、子どもと指導者の身体を通した相互交渉、相互信頼が関与していること、(2)子ども自身が本来的あるいは潜在的に書字・描画の能力や意欲を有しているということが前提であるということが必要とされている。今回の授業実践でもこうしたソフト・タッチ・アシスタンスによる書字訓練をおこなった事例がある。こうした方法による書字練習によって、自分の名前を書いたり人の顔などを描画できる例が見受けられた。今後、こうした介助しながらの指導上の方略やより適切な方法を研究する必要があると本システムの利用範囲が広がるものと思う。



前のページへ 次のページへ