10.終わりに




 障害児を対象とした教育研究実践では、保護者と本人の個人情報に関する扱いが微妙となる。また、学校での実践も通常の授業と平行して続けなければならないという困難が伴う。本プロジェクトの推進過程でも、上記のような困難さにしばしば遭遇した。報告書でも授業実践の学校名や教師名を本人らの希望で公開できなかったのは残念であった。

 しかし、研究分担者の熱心な取り組みや教材開発者の地道な努力によって、タブレットPCと教材を使った授業実践が続けられてきた。当初予定した漢字やひらがな学習や点つなぎ課題,迷路課題,線なぞり課題などの協調運動を促進する教材なども開発できた。さらに、それらを使った指導の方略や指導方法が分担者の中で頻繁に討議され、その討議結果が教材の改良に反映された。教材開発過程での予期せぬ開発用ハードディスクのクラッシュ、教材改善の要望とそれへの対処などで遅れ気味となったこともあった。

 研究分担者の意見や討議内容は、85号にわたるニュースレターの発行、討議のホームページ、メーリングリストの利用などによってプロジェクトの推進に反映された。また、ビデオと音声によるネット上の会議は、分担者の研究協議の開催に伴う地理的な懸隔や時間的な制約を解消するのに多いに役立った。

 CECからの授業実践の現場視察は、一度ではあったが、適切な助言を受けることが出来たのは幸いであった。ただ、プロジェクト責任者らが研究分担者の学校を頻回に訪ねて指導することの工夫が必要ではあった。

 最新の教材の配信に関しては、学校によるセキュリティ関連の異なったネットワーク状況がときにネックとなった。教材のダウンロードなどを許さない環境もあって、最新教材を自宅や他の人にダウンロードしてもらい、USBメモリーなどで配布しなければならないなどの問題が生じた。

 最後に、タブレットPCを利用した書字、読字困難を示す子どもへの支援は、今後も続けていくことになっていることを報告しておく。また、本プロジェクトの成果を平成17年9月15日から17日まで金沢大学で開催される第 43回日本特殊教育学会大会の自主シンポジウムで発表を行う予定である。

 



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