2.プロジェクトの概要




2.1 プロジェクトの全体像

 ディジタルコンテンツとの関わりに有効になるシステムの研究とその活用カリキュラムの開発を進めると同時に,その活用推進に不可欠となるインストラクショナル・デザイナーの養成を進め,授業実践を通じて,有効性の検証を行う。

ビデオクリップ機能付きの電子掲示板および交流学習のシステムおよびカリキュラム開発
 総社市立総社東小学校4年生の理科の授業において,相手校である岡山大学教育学部附属小学校とビデオクリップ機能付きの電子掲示板を活用した交流学習を行う。
 心も育つ理科コンテンツとして開発済みの「草花たんけん隊」のコンテンツを拡充して学習素材として活用を行い,児童が地元の草花を観察して得た,草花の様子・生育状況・感想・願い等をビデオクリップにまとめ,伝え合うことで,教科教育,心を育てる教育および情報教育の推進を図る。
 推進に必要となるシステムの開発を行い,授業実践を通じてその有用性を評価する。
 開発するシステムは次の通りである。

タブレットPCを活用したビデオクリップ作成ツールの整備
 児童が草花を観察して得た内容を伝えるために,タブレットPCを活用してリアルタイムでビデオクリップが作成できるシステムを構築する。タブレットPCにディジタルビデオカメラもしくはPCカメラを取り付けた機器を活用して動画の撮影・キャプチャー・ディジタル化の操作を簡略化し,直感的で容易なインターフェースで用意する。細かな操作を隠蔽・省略し,分かり易い表現のボタンを配置するとともに,電子掲示板上への情報発信を前提とした均一的なクオリティのコンテンツが生成できるシステムとする。

ビデオクリップ機能付きの電子掲示板の整備
 交流学習を行う児童同士が同じ掲示板上に,ビデオクリップや文字・静止画等を活用して,それぞれの思いを伝え合うことのできるシステムを整備する。電子掲示板への書き込み時に,同時にビデオクリップ等のコンテンツを付加することで,発信内容が何かを容易に確認できるシステムとする。電子掲示板は,誰が発信したかと,そのコンテンツの存在がひと目で分かり,ワンクリックで再生ができるものとする。

 交流学習で相手の顔や動作,願いを容易に読み取ることができる電子掲示板の活用により,バーチャルなディジタルコンテンツの関わりが,実物との出会い・交流へ,より現実に近いものと捉えることが可能になる。交流校が同じ電子掲示板でメッセージを交換することで心の通った交流学習を行うことが可能になる。

インストラクショナル・デザイナーの養成
 ディジタルコンテンツやIT活用授業に明るく,教師の授業設計時にそのアイディアの提案が行え,教師のIT活用スキルの向上にも積極的に取り組める人材を養成する。
 岡山県内のインストラクタが,充分なスキルを身につけたインストラクショナル・デザイナーの指導を受けながら,校内研修・ティームティーチングおよび補助教材作成等のパッケージ化した学校支援メニューを実践するとともに,現場の教師の授業設計および授業実践について学ぶ。
 教師の仕事の理解とITニーズおよび教授の型・教科による特性等の把握を図り,また,ディジタルコンテンツの持つ特徴や教育的な意義,活用方法を身に付ける。

 教育にもITにも明るい人材が,教師を助け・授業を推進することで,ITを活用した授業が,教科の目標,情報教育の目標を達成し,更には豊かな心を育てる教育につながる。教師と一体となり,共に補完・強調しながら授業を推進するスタイルが,IT活用教育推進に有効となる。

2.2 有効性の検証

ビデオクリップ機能付きの電子掲示板および交流学習のシステムおよびカリキュラム開発
 ビデオクリップ機能付きの電子掲示板および交流学習のカリキュラム開発により,その授業実践を通じて,システムの有効性を評価する。
 自作アンケートと児童の作品(ビデオクリップ)の中から,表現力・コミュニケーション・意欲・態度の質的な変容を掴む。また,授業の初期と後期の作品を比較分析することで,その有効性を検証する。

 システムの操作に時間を取られることなく,本来の教育(教科・道徳・情報教育の目標)を推進できるだけの容易なインターフェースを兼ね備えたシステムであることを,授業の推進状況から判断する。

 また,ビデオクリップ等の内容を分析し,状況説明のみに限らず,感覚的な表現の多様性,感情表現の豊かさの現れ方を,授業の初期段階と実践後に比較評価する。
 アンケートの内容については,選択肢と自由記述で児童のメディアを活用した表現力の向上の程度を分析する予定である。

IT活用を教育に浸透させるための手法の具現化
 育成カリキュラムに従い育成したインストラクショナル・デザイナーの活用により,実践校のIT活用教育が行える学校への変遷内容を検証する。自作アンケートをもとに児童の変容を評価したり,教師に対してのアンケートを通じて,その教育効果を確かめる。

 インストラクショナル・デザイナーの支援を受けた学校の教師に対して,支援前と後での意識的且つ教育的な変化を,アンケートを通じて収集・分析する。



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