6.評価

6.1 システム評価(オペレーションに関する評価)

6.1.1 従来の学習手法との比較

教員が生徒の立てたテーマ・目標(問題の発見と解決)に至るプロセスにおいて、フィールドワークの充実度(操作性、情報精度、情報量の増大)や収集データの整理、加工・生成、発表といった一連のフローを計画通りに行えたかどうか等について実践授業を通じこれまでの総合学習(調べ学習・地図学習など)の授業推進と比較し、データの蓄積量や達成度がどの程度伸びたかを実践授業を行った教諭に評価を求めた。
※全く同じカリキュラムでの授業比較が行えていないため、担当教諭達の経験的、主観的内容での評価とした。

■情報の収集量・データの蓄積

<第2分科会>
たった4時間の調査で、多くのデータが写真付きで集まり、地図にプロットでき、それが1つの地図上に表示されたことが、いままでの手作業による作業とは時間的調査密度が大きくちがうと感じた。
<第3分科会>
簡単に情報収集できるので量的に多すぎるくらい格段に情報量がアップできた。蓄積も容易にできることが大変素晴らしかったです。ただ、事前の計画不足や指導不足もあり、逆に多すぎることがネックになり情報をしぼるのが大変になってしまいました。

■従来の学習との比較

<第2分科会>
畳2枚分の校区地図を展示用に住宅地図をもとに拡大コピーを作成するのに、6時間もかかってしまった経験から、今回のシステムは教師の授業準備にかかる手間と時間を圧縮することが可能と感じました。
<第3分科会>
手間と言う意味では飛躍的に簡単で効率的になっていっていると感じた。
従来の調べ学習では、収集してきたメモやスケッチや写真をもう一度加工して蓄積するという作業が必要であり、メモを書き写したり、形式を統一したりという作業を行っていましたが。今回のプロジェクトでは、撮影するとそれがそのままほぼ完成した形で蓄積されていきましたので、時間も手間もかからず、且つ精度は驚くほど高い結果となりました。従来は、地図を作り上げることだけでも大変な作業と労力をかけすぎてしまいがちでしたから簡単な作業で地図ができあがることに児童も喜んでいました。

■データの分析・考察

<第2分科会>
地図上の調査ポイントを分類する作業が、サイン表示の分類分けによって早くできたことで、その後の授業をじっくりとできたことでこれまでの学習と比べ大幅に学習効率があがり、分析能力が伸びたと感じた。
<第3分科会>
地図からの情報の読み取り、分析、考察については、機器ではなくアナログな部分によるところが大きいと思いました。表面的な部分は読み取れるのですが、なぜそうなのか、その先までは簡単には出てきませんでした。与える視点も大切だと感じました。また普段から見る目や情報分析力を育てる必要性を感じました。
ただ、地図と一体化したBBSを使うことで、共同学習を行っている他校の地図を読み取りアドバイスを加えていく中でサインの意味や情報分類の考え方、地域・生活環境の違いなどを感じ取っている児童が多く存在した。

■新たな研究

<第4分科会>
世間の大人は自分の言葉でいいなさいと言う。そのような大人は術語を用いて話をする能力に欠けている場合が多かった。しかし学習と経験を積み重ねて来た大人は自分の言葉で語ることができることも確かである。生徒が学習内容を自分の言葉で語ることはまずできない。経験から出てきた概念を駆使することができないからだ。
これまでそのような学習は特別活動において行事や学級活動の結果として作文を書かせることによって実現してきた。体験学習や調べ学習によってそのような指導をするテクニックがあるのだがなかなかそのことに言及した研究は少ない。本実践研究はそのような少ない研究のひとつになろう。生徒が無意識に意識していた身近な風景を物語性という切り口で生徒自身で切り取っていく。
その切り取った風景を物語づくりでつなげていく。分かり切った自分の風景へ文脈をつくることがいかに大変かは今回の実践によく現れている。
物語をつくりあうなかで、単語や単文になり、物語づくりに変化していく様子が時系列で見受けられる。この過程で生徒は恋愛なり学園でのドラマとは何か自問自答することになる。自問自答の結果として、物語を書き込むこととなる。創作活動には実生活で受け止めきれないことによる照れになって現れることもある。この変化を単に表現する字数で表すことも可能であるが、実態としての評価はやはり生徒の文脈から読み取ることしかないだろう。
結果の質的な評価が必要である所以である。最終的に完成した物語によって評価の対象となる。ただし完成した物語を評価することと生徒の学びを評価することには若干のズレが出てくる。

■プレテストにおける作業効率の検証

課題名: 進修小学校オープンスクール
日時: 10/12〜15の内10/14(木)実施
テーマ: 移動博物館「秋のトンボ調査」
参加者: 保護者47名/地域の方8名/ボランティア/10名/教員5名
講師: 嶽山洋志(人と自然の博物館学芸員)
対象者: 小学校5・6年生47名
エリア: 校区内の5カ所
準備物: 温度計/デジタルカメラ/GPS携帯電話(NTTdocomo、F505iGPS)10台
ねらい: ■ チョウとトンボの様々な特性を知る。
■ 地区における昆虫出現状況(日照や温度)とネットワークの実態についてを把握し、環境条件との対応関係について考察する力を身につける。
■ 新しい情報ツールへの適応をみる。
撮影数: 88枚(5班)
結果: 1)24名の児童から作文「題:移動博物館の勉強を終えて」を分析。
自由形式の感想文にも拘わらず、携帯電話と衛星の関係について記述した児童が5名(20.8%)にのぼった。さらに、衛星によって地球上の自分の位置が判ることが凄いと記述した児童が2名存在した。

2)第1段システム開発「データのサーバ送信プログラム」のプレテストとして、児童を対象に操作性・使用感を試した。結果、設計通りの性能が確認されたと同時に良好な通信状況で送信されてきた緯度経度付き画像データが数秒後(1秒)には、サーバー上のデータベースに的確に格納され、時間序列によりリアルタイムで表示される画像データのダイナミクスを実感した。また操作性や使用感に関しては、手順にして9回のアクションが必要であったが、児童達はガイダンス時に操作をマスターし、問題なく使用できた。

3)GISエンジン部は第2段システム開発の予定で進めていたことで、当プレテスト時は、調査マップを手作業で作成した。その際、プロのグラフィックデザイナー2名がのべ20時間で作成したが完成したシステムでは瞬時に地図を完成させるものであり、実質の教育現場における、地図を作るために消費される時間の圧縮が可能となる。