本プロジェクトでは、不登校児童生徒の家庭学習を支援し、無理のない教室復帰を目指すe-ラーニングシステムの開発を行う。
開発されたシステムの実証実験は、松原第七中学校、松原市教育支援センター(チャレンジルーム)、「心の窓にアクセス」事業実施児童生徒をはじめ松原市内全ての不登校児童生徒を対象に実施を予定している。具体的には不登校の生徒を対象に、家庭での学習時にe-ラーニングを採用し、オンデマンドで利用できる授業ビデオをネットワーク配信することで在宅の状態で学校での学習と連携させる。授業ビデオでは学習理解の補助としてデジタルコンテンツを利用し、それらはすべてネットワーク上で閲覧・ダウンロードできる状態にする。授業ビデオ、デジタルコンテンツは教科の担当教員が生徒の学習実態に即した必要内容(つまずきやすい単元や項目)を提案し、デジタルコンテンツ開発の専門家が作成する。e-ラーニングシステムは学習履歴のログ分析を可能なものにする。利用にあたり不登校の生徒にはリサイクルパソコン(Linux
OS)を貸し出し、自宅にパソコンのない生徒でもe-ラーニングを利用した家庭学習に取り組めるように配慮する。これは将来的に、安価な情報機器の一般普及を目指すという観点からも実施し、使用に際しては要件調査を行う。
不登校以外の生徒についても、教科学習の中で利用できるデジタルコンテンツを学習の理解の助けとして使用する。授業外の家庭学習ではe-ラーニングシステムを活用させ、学習履歴結果に応じた教員からの指導、自主学習に利用できるようにする。
その他、すでに所有しているデジタルコンテンツを無償で提供することで、授業における学習に広がりを持たせる(先進的教育情報環境整備推進協議会作成コンテンツ)。提供方法については、e-ラーニングシステムと連携を取る。
運営システムの構造や授業ビデオ、デジタルコンテンツの内容については教員へのヒアリング調査を随時行い、修正・追加を加える。実施経過やその効果などは速やかにホームページで公開し、教員や学識経験者、専門家などから幅広い視点での意見を受け付ける。収集した意見を統計学的に分析し、それをもって実証実験の評価とする。
本プロジェクトにおける実践では、以下のような教育的効果が期待できる。
- 小学校、中学校での不登校児童生徒支援の場で活用する。家庭学習における教科教育を支援する。
- e-ラーニングを利用した効率的かつ丁寧な家庭学習を支援する。利用する児童・生徒の学習履歴を分析することで学習者の学習実態を調査する。
- 算数・数学科を中心に理科、英語科において児童・生徒がつまずきやすい単元のポイントをビデオ教材化することで、家庭での自主学習を支援する。また、授業ビデオでは実際の教員が授業を行い、家庭においてでも教室で授業を受けているような感覚を味わう。
- オンデマンドで配信される授業ビデオを活用することで、学習理解の個人差や、不登校児童・生徒の生活リズムの乱れにも対応できる。授業ビデオは学習者の要求に応じて繰り返しランダムに視聴することが可能なため、余裕を持った学習の機会が持てる。
- 授業ビデオを追加していくことで、さらに多くの単元に対応していく。
- 授業で利用する教材をデジタル化し、授業ビデオと共にネットワークで配信することにより、家庭での学習時に学校の授業と同じ教材で学習することができる。
- 学習履歴に応じて教員や訪問指導員が不登校児童・生徒の学習の遅れを補助し、教室復帰のきっかけ作りを行う。
本プロジェクトの有効性は、以下の4点を踏まえて検証する。
- 不登校児童・生徒や担当教員が利用することで、児童・生徒の教室復帰に進歩がみられたかどうか調査する。
- 家庭学習が成立しているかどうかをe-ラーニングサイトへのアクセスログ、学習履歴等の調査を行う。
- 児童・生徒、教師などへのヒアリング調査を行う。
- 評価の際の調査データは、統計学の専門家から指導を受けながら分析を行う。