1.プロジェクトのねらい




課題

 日本の小中学校にコンピュータネットワークが導入され久しい。その間,プロジェクト学習や電子黒板を使ったプレゼンなど様々な取り組みが展開されこれまでの授業スタイルの概念を覆す創造的な学習が行われてきた。
 しかし,一般の先生方の関心事である学力低下や学力の基礎・基本の定着に対応したIT教育の実践がほとんど見られないのが現状である。また,佐世保で起こった小6児童の悲惨な事件を受け,新聞やテレビでは「小学校でのコンピュータ教育には反対である」と報道されるなど,イベント的なコンピュータ利用でなく,教育の本質である学力向上に主眼を置いた教育がITで実現できなければ今後IT教育に対する批判が高まるばかりである。
 そこで,学力の向上のためのIT活用とその学力向上の成果を数値で測定するためのITを活用した評価方法の確立が,今,求められている。

有効性

(1)家庭学習支援システムについて
 学力向上のために学校だけでなく家庭から学習できるe−ラーニングシステムを導入する。これは,児童生徒1人1人の学習履歴がとれるため,苦手な学習を分析することができる。また,自分のペースで学習することができるため,確実に学習内容の定着を図ることができる。また,家庭でできるため不登校や病気で欠席する児童生徒の学力向上にもつながる。
(2)市内1000名による教員の人材バンクについて
 これまでも学習支援のための人材バンクはあったが,登録者が教員でないためきめ細かな指導ができないこともあった。そこで,校長を含むつくば市内全教員約1000名の専門性を登録した人材バンクを作成し,その全員にWEBメールアカウントを発行する。これにより小規模校の児童は,たとえ自校に天文学の専門の先生がいなくても他の学校のその専門の先生に質問することができ,学力を向上させることができるのである。
(3)家庭と教師を結ぶメール(掲示板)システムについて
 電子メールは,世界中誰とでも交信できる便利なものである反面,不特定多数の人と交流できるためトラブルに巻き込まれる危険性もある。そこで,児童生徒が教師としか通信できないシステムを開発利用することで安心してメール(掲示板)を使った学習相談が可能になる。
(4)ブログを使った学習支援について
 児童生徒と教師がメールでやりとりした内容のうち,教育的に意義のある内容をブログに公開する。ブログはいつでもどこでも気軽にアップできるため,これまでのホームページに比べ簡便性並びに即効性があり,教育効果が期待できる。

先進性

(1)ITを使った評価の数値化について
 児童生徒1人1人の学習達成状況を数値化するシステムを導入する。インターネットがある家庭とそうでない家庭の学力向上度を比較したり,家庭学習支援システム利用前後の学習の定着度を数値化して測定したりすることは,イギリスなどでは行われているが日本国内ではほとんど例がなく先進的と言える。
(2)先生にしか質問できない電子メールシステム
 児童生徒が市内の教師1000名としか送受信できないWEBメールを開発利用する。こうしたWEBはこれまで例が無く安心して利用できるメールのあり方として先進性が期待できる。
(3)ブログの教育利用
 多くの学校がホームページを作っているが,担当者に負担が集中し,なかなか更新されないのが現状である。ブログはFTPを使わず,操作も簡単であるため,平成16年に入って急速に普及し始めているホームページであるが教育界では,まだ,ほとんど利用されていない。

成果目標

(1)学力向上について
 平成16年9月現在の児童生徒の学力(小学校は国語・算数・理科,中学校は数学・理科・英語)の向上について,eラーニングシステムの学習履歴システムを使って調査,考察を行う。
(2)家庭でのインターネットの有無と学力との関係について
 家庭でインターネットを使って学習したりメールで先生に質問できたりする「家庭学習支援システム」の利用の有無と学力との関係について調査,考察を行う。
(3)メール(掲示板)による学習支援の効果について
 家庭からメールを使って市内約1000名の教師に質問できるシステムの利用と学力向上や児童生徒の変容について,メール(掲示板)の利用度や学習意欲,学習達成度などの調査,考察を行う。
(4)不登校や病気などで学校に登校できない児童生徒の学習支援の効果について
 何らかの理由で学校に登校できない児童生徒に対して,「家庭学習支援システム」「市内約1000名の人材バンク」を活用させ,その学習支援に関する調査考察を行う。
(5)ブログによるホームページの教育利用について
 更新がこれまでになく簡単なブログを使った教育利用について,アクセス数や教育効果について調査,考察を行う。


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