2.1 対象校の選定

2.1.1 対象校の公募

 小・中・高等学校、特殊教育諸学校等に対して、都道府県市区町村の教育委員 会などを通じて、ネットワーク利用の利点を活かした利用企画の例案を提示し、 提案書を提出してもらう形で対象校を公募した。このため「ネットワーク利用環 境提供事業募集要項」を作成して、平成6年8月に文部省の指導の下に全国の教育 委員会に配布した。

 募集要領では、ネットワークの教育利用について以下のように説明した。

 「全国100箇所程度の小中高校、特殊教育諸学校等において、ネットワーク を活用した教育・学習や交流を可能とする技術的環境を提供します。つまり、小 中高校、特殊教育諸学校等にハイエンドパソコンを設置して、それらとセンター とをネットワークで結び、センターのデータベース等へのアクセスを可能としま す。また、それとともに国内外の学校などとの写真や絵などの画像も交えた手紙 のやりとりや情報受発信、世界各地の情報資源(データベースなど)へのアクセ ス、遠隔地の学校と共通のテーマで行う調査や研究の相互比較が可能となります。」

 募集の内容は、Aグループ(30校)、Bグループ(70校)に分けて募集し た。

・Aグループ:30校
 特に先進的で教員の技術力・実績のある学校。ネットワーク利用・企画に 積極的に立案・参加できる学校。回線速度は、64kbpsを想定。
・Bグループ:70校
 ネットワーク利用・企画に積極的に立案・参加できる学校。回線速度は、 3.4kHz帯域品目を想定。
 公募を行った当時は、インターネットという言葉はまだ耳慣れないものであり、 ネットワーク環境やサーバ/クライアントなども、それまでの学校でのコンピュ ータ利用の中では想定されていない先進的な情報技術であったが、1,543校から の応募があり、内容もレベルの高いものが多く提案された。

応募の内訳は以下のとおりであった。

・Aグループへの応募総数:708校
・Bグループへの応募総数:835校

2.1.2 対象校の選定

 対象校の選定は、Aグループ、Bグループに分けて実施した。まずAグループ の選定を行い、Aグループの選定に漏れた学校をBグループの応募校に加えて、 Bグループの選定をおこなった。

 IPAとCECで行った第1次選定結果を、文部省、通商産業省で審議し、主 催者案を作成し、先の「教育ソフト開発・利用促進センター推進協力者会議」の 審議を経て111箇所の対象校などを決定した。

 対象校は各都道府県に1校以上を配置し、校種は小学校、中学校、高等学校、 盲学校、聾学校、養護学校、インターナショナルスクールの他に、病院内で長期 療養している子供たちのいる院内学級も対象とした。また、先進的な取組みが期 待される3カ所の視聴覚センター、教育情報センター、教育総合センターも対象 とした。

 選定の結果は、平成6年12月に各都道府県の教育長などを通じて各学校など に通知した。対象校などの内訳は以下の通りである。

○小学校 18校(7校)
○小・中学校 1校(0校)
○中学校 29校(7校)
○中・高等学校 10校(5校)
○高等学校 40校(16校)
○特殊教育諸学校 8校(2校)
○インターナショナルスクール2校(1校)
○視聴覚センターなど 3ヵ所(3ヵ所)
注) ( )は内数でAグループを表わす(LAN接続4校を含む)。

2.2 システムとネットワーク

2.2.1 システム構成

 選定した全ての対象校に対してクライアントコンピュータ及びサーバ機を設置 して、対象校が独自の情報発信ができる環境とした。

 実験環境は、IPAの情報基盤センターに大容量サーバを配し、対象校と地域 ネットを専用線で接続するという自立システムとした。

2.2.1.1 システムの搬入とネットワークの接続

 平成7年2月から対象校に対して、順次、回線、通信機器、クライアントPC /サーバマシンの設置、ネットワークへの接続を開始した。平成7年6月時点で、 対象校へのシステムの設置、並びにネットワークへの回線接続がほぼ完了し、サ ーバの稼働が確認された。

 この間、平成7年3月には対象校の担当教師、並びに地域ネット関係者に対し て「100校プロジェクト説明会」を開催した。

 ネットワークの構成を図1に示す。

Network Structure
図1 100校プロジェクトネットワーク構成

2.2.1.2 学校システム

 通信回線は、Aグループ校が64kbpsデジタル専用線、Bグループ校は 3.4kHzアナログ専用線である。

 基本的なハードウェア構成は、サーバマシン1台及びクライアントPC(学校 側の希望により、WindowsまたはMacintosh)1台である。(シ ステム導入後、学校独自の拡張によりクライアントPCを追加している例が多 い。)

 サーバマシンにはUNIXを搭載し、ドメインネームサーバ(DNS)、メー ルサーバ、POPサーバ、FTPサーバ、WWWサーバ等を動作させた。  クライアントPCは、メールリーダ、WWWブラウザ等のインターネット用ア プリケーションを動作させた。また、この他に情報発信用のソフトとして、HT MLエディタ、画像・図形編集用ソフトウェアを導入した。

 なお、システムの調達にあたっては、全国を6つのブロックに分け、各ブロッ ク毎に一般競争入札による調達を行い、システムの納入が並行して速やかに行わ れるよう配慮した。各ブロック毎の納入担当企業を、表1に、対象校に導入され たシステムの共通的な仕様を表2に示す。

表1 ブロック別納入担当企業
ブロック 納入担当企業 サーバ機種
北海道・東北 日本電気株式会社 NEC PC−9821Xn/C9W
関東 日本電気株式会社 NEC PC−9821Xn/C9W
北陸・東海 株式会社内田洋行 FUJITSU S−4/5
近畿 株式会社河合楽器製作所 IBM 6860−J
中国・四国 日本電気株式会社 NEC PC−9821Xn/C9W
九州 富士通株式会社 FUJITSU S−4/5
表2 学校側システムの主な仕様
ハードウェア/ソフトウェア 主な仕様
通信機器
(1)CSU
  Aグループ校(デジタル接続)
広域側:Iインターフェース、64K
端末側:V.35またはRS449 
 モデム
  Bグループ校(アナログ接続) 
専用線・一般線に接続可能
V.35 V.42Bis またはMNS Class5
(2)ルータ IEEE802.3、SNMPエージェント機能
(3)HUB
IEEE802.3、10BASE/T4ポート以上
サーバ機
(1)CPU Pentium(90Mhz)またはMicroSPRC2(70Mhz)
(2)メインメモリ 32Mbyte
(3)ハードディスク 1Gbyte
(4)ディスプレイ 15インチカラー(1023×768ドット)
(5)補助装置 光ディスク装置、CDーROM装置
(6)OS 日本語UNIX、Xウィンドウ(R5)
(7)インターネットサーバ DNS、メールサーバ、POPサーバ、FTpサーバ、WWWサーバ、 Delegateサーバ
クライアント機(パソコン)
(1)CPU 80486(66Mhz)または68040(33Mhz)
(2)メモリ 32Mbyte
(3)ハードディスク 200Mbyte
(4)ディスプレイ 15インチカラー(800×600ドット)
(5)音声・画像 PCM録音再生機能、ビデオキャプチャボード
(6)OS Windows3.1またはMacOS
(7)インターネットアプリケーション telnet、メールリーダ、ニュースリーダ、Mosaic、FTP
(8)情報発信用ハードウェア デジタルカメラ、イメージスキャナ
(9)情報発信用ソフトウェア HTMLエディタ(WordToWeb)、画像編集ソフト(PhotoShop)、 描画ソフト(FintArtist/SuperPaint)、図形ソフト(Canvas)、 表計算ソフト(Exel)

2.2.1.3 ネットワーク利用環境の自主的な拡張状況

 対象校では、本プロジェクトで提供したシステム(サーバマシン1台、クライ アントPC1台)に学校の既存の機器などを接続して利用環境を独自に拡張して いく活動も進行している。

 平成8年7月時点での各校のクライアントPCの台数分布は以下の通りである。 ほぼ8割の対象校が利用環境の拡張を行っている。

○ 51台以上13校
○ 41台以上13校
○ 31台以上 4校
○ 21台以上10校
○ 11台以上 9校
○ 10台以上52校
○ 未回答 10校

2.2.2 ネットワーク

 対象校がネットワークに接続する形態は、大きく2種類に分かれる。

 1つの形態は、既にネットワークに接続されている組織のLANに直接接続、 または専用線によりLAN間接続をした。大学の附属学校など4校がこの形態を 採っている。

 上記以外の対象校は、2つの広域的なネットワーク(WIDE、SINET)および1 3の地域ネットワーク(NORTH、TiA、RIC-Tsukuba、FITnet、FAIRnet、 TRAIN、WIDE、HINT、TIC、NCA5、ORIONS、CSI、KARRN)のご協力を得て、それぞ れのNOC(ネットワークオペレーションセンター)と専用線で接続した。

 各NOCには、その地域の対象校と接続するために必要な数の通信回線(64 kbpsまたは3.4kHz専用線)、通信機器(CSUまたはモデム)およびルータの設 置を行った。設置したルータについては、各NOCが希望するメーカのルータを 導入することにより、それまでの運用経験を生かせるよう配慮し、モデムについ ては各学校と同じものを導入して対向の通信の確保を図った。

 各地域ネットワーク毎の接続状況を表3に示す。

表3 地域ネットワーク毎の接続状況
ブロック地域ネットワーク協議会等NOC※1Aグループ校 Bグループ校LAN接続
北海道・東北 北海道地域ネットワーク協議会(NORTH) 11 2 
東北インターネット協議会(TiA) 13 7 
関東 つくば相互接続ネットワーク(RIC-Tsukuba) 1 1 2  
東京地域アカデミックネットワーク(TRAIN) 6 1017 2
WIDEプロジェクト(WIDE) 3 1 6  
国立小児病院 0 0 0 1
北陸・東海  北陸地域情報ネットワーク協議会(FITnet) 5 1 5  
福井地域学術情報ネットワーク協議会(FAIRnet) 1 1 0 1
浜松テクノポリス推進機構(HINT) 1 1 2  
東海インターネット協議会(TIC) 1 2 4  
近畿 第5地区ネットワークコミュニテイ(NCA5) 1 3 1  
大阪地域大学間ネットワーク等連絡協議会(ORIONS) 5 5 7 
中国・四国 中国・四国インターネット協議会(CSI) 2 3 8  
九州  KARRN協会 115 9  
※1 附属学校へ接続等を行っている大学の数を含む
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