3.10 特殊教育におけるネットワークの活用

 

3.10.1 特殊教育の特徴と現状

 特殊教育とは、特殊な教育課程と教育方法による普通教育の一環であり、教育 課程編成に当たっては、基本的には小・中・高等学校に準じた教育が行われるこ とになる。しかし、心身に障害をもつ児童生徒の教育は、その障害の状態に応じ た柔軟できめ細かな指導計画と、適切な教育方法の工夫・検討が必要であること から、個に応じた教育課程を編成することができる。

 また、特殊教育の語源は、諸外国でいうところのSpecial Educationの直訳で あるが、我が国では一般的に、盲・聾・養護学校(以下、特殊教育諸学校)ある いは小・中学校に設置される特殊学級における特別な教育課程による教育のこと と解されている。しかし、最近では特殊教育を巡る国際的な潮流として、障害の 有無によって特別な教育を行うということではなく、障害も含めた個別の特別な 教育ニーズ(Special Educational Needs)に応じて柔軟に教育対応を「教育的 サービス」として展開していこうという考え方が主流になりつつある。しかし、 我が国では制度的な整合の問題などから、すぐにこうした形態に移行するという ことではない。

 我が国における特殊教育の形態について概略を述べると、まず特殊教育諸学校 にはその障害種別によって、5種類の形態がある。視覚に障害をもつ児童生徒を 教育する「盲学校」、聴覚に障害をもつ児童生徒のための「聾(ろう)学校」、 それに養護学校であるが、養護学校はさらに3種類に分類され、知的発達に障害 をもつ児童生徒のための「精神薄弱養護学校」、運動機能に障害をもつ児童生徒 の「肢体不自由養護学校」、病気により常時医療介護を必要とする病気療養児の 「病弱養護学校」以上合計5種類である。しかし、実際には障害の多様化によっ て、これらの各障害の二つ、あるいは三つを複合してもつ、いわゆる重複障害児 と呼ばれるものが多く在籍するようになってきている。

 特殊学級には、特殊教育諸学校に在籍する児童生徒よりやや軽い障害の子ども たちが学ぶものと規定されているが、その実態は地域によって様々である。現在 は、大きくは先に述べた5障害を含み7種類の特殊学級が設置されており、言語 や情緒障害など特殊学級の一部には、通常は一般の学級で他の児童生徒とともに 教育を受け、必要に応じて定期的にその学級に通って補助的な指導や訓練を受け る、通級指導という形態をとるものもある。

 以下に報告するネットワーク活用の概要は、主に特殊教育諸学校の事例を元に しているが、現在、学校教育で大きな課題になっている、いじめや不登校、ある いはLD(Learning Disabilities:学習障害)などの児童生徒は、従来の枠組 みでいえば障害児とは呼べないものの、特殊教育の特徴の一つといえる個別対応 性や、医療、心理などの専門分野と深く結びついて得られる専門性によって具体 的な援助が期待できるケースも想定できる。そうした流れを考慮すれば、特殊教 育におけるネットワ−クの活用指針と教育的効果は、通常の学級に在籍する、個 別の教育的配慮を必要とする児童生徒の教育に、直接・間接に応用できる要素を 多く含むと考えられる。

3.10.2 特殊教育におけるネットワーク活用の意義

 特殊教育では、その障害故の機能上の不利やそれによって引き起こされる社会 的不利益を補完するため、あるいは成長を促し、よりよい社会生活を目指した学 習を助ける道具として、コンピュータは教師の様々な創意工夫の元に活用されて きた。

 障害児は、どうしても移動に困難があったり、社会経験の幅が狭くなりがちな ため、情報過疎の状態に陥りやすい傾向がある。そのため、社会性を育てる上で も不利が多くなりがちである。また、こうした結果として、積極的な社会参加や コミュニケーションを図ろうとする意欲や生活力の獲得にも困難を生じやすい。

 特殊教育においては、様々な機会を利用して社会と関わる経験を持つことは重 要な教育課題であるため、交流教育など通常の学校・学級の児童生徒と接する機 会を積極的に設定して社会経験を豊かにしようと試みられてきた。しかし、こう した機会設定もどうしても近隣の地域に限定されがちでもあり、障害児・者に対 する理解が残念ながらまだ十分とは言い切れない現状では、対等な交流というよ り、かわいそうな対象として、一歩距離を置いた関わり方になりがちである。こ うした人間関係の中では、これまで障害児は「してもらう」経験は身につけても、積極的に自己発信していく経験を持つことは困難であった。

 インターネットをはじめとした広域ネットワークは、居ながらにして世界規模 の情報にアクセスできる機能を持ち、障害児の世界観を広げ、実際に自分が行動 を起こす前段階の情報収集や、実際には経験することが困難な代理体験を与えて くれる優れたメディアである。また、広域ネットワークで構築されているオンラ インの世界は人種、性別、年齢、社会的立場や、障害の有無なども一切関係のな い平等なフィールドである。そこに積極的に自己発信していくことは、障害児に とっての新しい社会参加の形態ともいえ、「生きる力」につながる意欲を育成し ていくには、今後絶好の学習の場となると考えられる。

 ところが、こうした広域ネットワークに取り組むためには、現在のコンピュー タをはじめとした機器が障害をもつものが操作することを十分考慮して設計され てはいないことや、障害児の機能上の問題があまりに個々において違いすぎるた め、適切なアクセシビリティ(情報にアクセスできるようにすること、転じて障 害児・者がコンピュータ操作をしやすくするための入出力デバイスの工夫や付加 装置のこと)の研究と適用が急務となっている。

 さらに、これまで日常生活や直接的な体験学習を重視してきた特殊教育の教育 課程に、どのように情報教育を位置づけるか、どう教えていくかなど、課題は山 積している。

3.10.3 特殊教育担当教師の新しい実践力

 インターネットをはじめとした広域ネットワークを活用した教育を行うには、 まずコンピュータ機器の操作やネットワークに関する基本的な知識は必要である。 しかし、そういった知識・技能より、今後教師に求められる素養はインターネッ トによって構成されている新しい世界に障害児をどう参加させ、そこで何を学ば せていくかといった、社会的・文化的な幅広い教育観であろう。これらの確たる 展望と広い世界観を持っていないと、安易に子どもの興味や思いつきに迎合して 個人に属する情報を流出させたり、また逆に管理的な対応や一方的な倫理を持ち 込むことによって、せっかくの子どもたちの自発性や発見の目をつぶしてしまう ことになりかねない。基本的にインターネットでもたらされている世界は、誰か が管理してくれるものでも、与えてくれるものでもない。参加するすべての人々 が平等であると同時に公平に責任を背負い分けているといえる。従って、単に情 報を引き出すだけでなく、自分の持つ情報を発信することによって「参加」して いくメディアなのである。ところが、これまで教室という閉鎖された社会で教師 から児童生徒へという一方向に教えることを学んできた教師には、なかなかこう したグロ−バルな世界観を持って双方向の情報共有の指導ができるようには、意 識を切り替えられないように思う。急速に変化し、高まっていくメディア社会へ の教師自身の適応を意識的に促進していく方策を考えないと、21世紀を生きる子 どもたちにとって大切な学習の機会を教師自らが奪う結果ともなりかねない。

 特殊教育においても、それぞれの障害種別ごとに伝統的な指導の専門性や積み 重ねてきたノウハウがある。しかし、今後の特殊教育は冒頭に書いたように、閉 ざされた特別な分野の教育・訓練ではなくなってきている。すべての子どもたち と同様に、やはり21世紀を生きる障害児の豊かな社会生活(QOL:Quality of Life 生活の質)の実現のために、今後教育に求められる新しい流れを積極的 に受け入れていく必要がある。

3.10.4 特殊教育における新しい学力観

 特殊教育は、明治5年の学制施行以来の我が国の近代学校教育の歴史の中でも とりわけ歴史が浅く、盲・聾学校が義務教育になったのが昭和23年から、養護学 校の義務制実施に至っては昭和54年度からである。1981年の国際障害者年を契機 として、障害児・者に対する福祉政策も具体化して少しずつ理解推進もなされて きたが、様々な無理解や認識不足によって、まだ多くの誤解や偏見が残っている のは残念なことである。特殊教育における児童生徒の学力観も、こうした社会背 景の急速な変化によって、揺れ動いてきた。特に、これらの変化は人権思想の変 化によって大きく影響を受けてきたと思われる。

 かつて、厳しい社会の偏見の中で生きるためにひたすら従順であることを求め られた時代もあり、あるいは「他人の世話にならない」ことを目標としてひたす ら生活自立の技能が要求された時期もあった。しかし、障害をもつ人々も、同じ 人間として平等な人権と尊厳を持つという当たり前のことがようやく一般にも浸 透してきたため、特殊教育における学力観も、基本的には一般の子どもたちと同 様、国際化、情報化の流れをふまえ、中教審第一次答申でいうところの「生きる 力」を目指して、個性を伸ばす方向に向かっている。ただし、その目標を達成す る上で乗り越えなければならないバリア(障壁)が多くあり、そのために様々な 教育方法を工夫する必要があるのが特殊教育である。

 インターネットをはじめとした広域ネットワークの登場は、「参加していくメ ディア」として特殊教育における心身に障害をもつ児童生徒への学力観、障害児 観を大きく変容させるだけの影響力を持っていると考えられる。

3.10.5 特殊教育におけるネットワーク活用実施体制と指導形態

 特殊教育諸学校に対するコンピュータの導入は、障害種別により差はあるが、 ほぼ80%〜100%に近い導入率となっている。しかし、その導入形態は特殊 教育における情報教育の進め方について各設置者間で十分なコンセンサスが得ら れていないためか、障害児が利用できるようなアクセシビリティ機器が未整備で あったり、ネットワークの利用が考慮されていないなどインフラ面での課題は多 い。

 特殊教育諸学校の教育課程には、編成上の特例事項により教科・領域をあわせ て総合化したり、生活的活動を軸に単元化するなど、多様な教育課程を採用する ことができる。ネットワークを活用した指導も、また教育課程の様々な場面で展 開できるというメリットがある。共同利用企画に参加した各特殊教育諸学校等で は、クラブ活動(特活)、社会、美術など、様々な場面でネットワークを利用し ている。しかし、大きな成果が見られた指導場面は、特殊教育独自の領域である、 養護・訓練といった個別の教育課題で指導する時間を利用して実施した例が多い。 その場合の指導体制は、担当教師の個人的な努力や資質に依存する部分が多く、 学校としての総合的な指導体制にまで昇華していないケースも見られた。よって、 特殊教育のどの部分にネットワークを利用した活動を位置づけるかは、今少しの 試行錯誤も必要であろう。

 また、一部の先進的な試みをしている学校では、情報教科を教育課程に位置づ けて積極的に指導体制を整えている例も見られるようになってきた。今後、幾分 かの試行錯誤を経て特殊教育における情報活用やネットワークを利用した教育に ついての共通理解が深まる中で、よりよい指導体制が見出されていくと思われる。

3.10.6 指導の評価について

 特殊教育における教育評価は、定量的なものにはなりにくく、個別の教育目標 に対する極めて定性的な評価となる。ネットワ−クを活用した指導によってもた らされた最も大きなものは、自己発信することによって得られた社会観・世界観 の拡大と、積極的に社会に関わろうという意志・意欲の喚起であったように思わ れる。これらは、広域ネットワークを通じてはじめて障害をもつ児童生徒が自ら 気づいた事である。こうした心の成長は、障害児の生涯にわたる生き方、社会へ の関わり方に大きな影響を与えることになる。

3.10.7 実践に関する客観的指標
     (企画数、対象教科・参加人数、利用形態)

 100校プロジェクトに参加した全国111校のうち、特殊教育諸学校は8校 である。その内訳は盲学校2校、聾学校3校、精神薄弱養護学校、肢体不自由養 護学校、病弱養護学校が各1校である。障害種別が異なると教育の進め方も大き く異なり、他の障害種別の学校とは共通基盤が見いだしにくくなる傾向が強い。 一方、各学校によってその指導課題に差が生じるため、その障害種別で1校しか 参加校がない場合、その学校における実践が他の多くの同種別の学校の代表例と も言い難い状況がある。

 8校の研究校のうち、聾学校3校(東京都立太田ろう学校、大阪市立聾学校、 兵庫県立神戸聾学校)は、相互の学校同士の交流やメーリングリストで研究を進 めたが、盲学校(筑波大学附属盲学校、福島県立盲学校)及び肢体不自由養護学 校(東京都立光明養護学校)においては、対象児童生徒の障害の状態にあわせて、 必要と考えられるアクセシビリティ機器をネットワーク設置時に導入し、その効 果の検討も行った。知的障害(福井大学附属養護学校)、病弱(都立光明養護学 校そよ風分教室)の養護学校は、独自の活動実践を進めると共に、東京都立光明 養護学校における共同利用企画に積極的に参加した。

 共同利用企画は、平成8年度は主に前述都立光明養護学校を中心に行い、9年 度は福島県立盲学校、都立光明養護学校の2校で実施した。その概要は以下のと おりである。

○肢体不自由養護学校における指導実践

(1)共同利用企画名称「特殊教育」(東京都立光明養護学校)
(2)内容
(3)対象
特殊教育諸学校・特殊学級ほか
(4)活動場面
(5)評価方法
(6)共同利用企画の実践経過
 9月共同利用企画のためのメーリングリストの立ち上げ
Webサイトコンテンツデザインの検討
10月個人情報の取り扱いについての検討
各地の接続状況の情報交換
11月インターネットを経由して参加可能な校内ネットワー ク(滋賀大学付属養護学校のチャレンジキッズ)上で の交流開始
シリアルキー・インターフェイスの検討を開始
インテリキー・キネックスを七尾養護に貸し出し、利 用開始
自作教材ソフトFTPサーバーの検討を開始
テレビ会議システムの利用の検討開始
12月生徒自身がWebサイトコンテンツの改訂作業を開始
個人情報の保護と情報発信の問題について検討
 1月知的障害児のインターネット利用について検討
 2月共同利用企画のまとめ
(7)まとめ
 共同利用企画のためのメーリングリストで情報交換・意見交換をしなが ら、研究・実践を進めたが、その検討の中で多くの教員、関係者から寄せ られた意見を集約すると次のようになる。「インターネットは、特殊教育、 中でも知的障害を伴わない肢体不自由児には非常に大きな教育的効果を持 つ」ことが分かった。しかし、知的障害を伴った児童生徒への実践及びそ の自己発信については、彼らをとりまく社会的背景などの問題を含め、肖 像権などのデリケートな問題もあり、未だに大きな課題として残されてい る。とはいえ、インターネット利用の知的障害児への教育効果及びそのア クセシビリティについても、少しずつ研究・実践が進んできている。引き 続き研究を深めながら実践をすすめていく必要がある。また、在宅学習支 援などのためのCu-SeeMeやテレビ会議システムの利用についても検討を加 えてきたが、回線の太さなどの制約などもあり、検討課題として残されて いる。

 教員支援システムとしてのインターネットの活用については、特殊教育 においては、特に、周囲からの情報収集が困難な状況に陥りやすい地方に おいて、ニーズが高いようである。その意味で、共同利用企画のためのメー リングリストが果たした役割は大きいと思われる。

 特殊教育におけるインターネット利用は始まったばかりである。特殊教 育諸学校のインターネット担当者には、一般的な技術的支援が必要な事は 言うまでもないが、肖像権の問題・各種障害のアクセシビリティの検討な ど、一般的な問題とは別に、特殊教育特有の問題もあり、その負担は非常 に大きい。ハード・ソフトの面からだけでなく、人的な環境整備も強く望 まれる所である。

○盲学校における指導実践
(1)共同利用企画名称「特殊教育関連Webサイトコンテンツの作成」
(福島県立盲学校)
(2)内容
盲学校の生徒が利用しやすいWebサイトコンテンツの検討と作成を 行う。
Lynxを用いて盲学校の生徒のインターネット利用を図る。
(3)対象
盲学校の生徒および視覚障害児
(4)活動場面
授業や特別活動の中で、生徒が意欲的にWebサイトコンテンツにアクセ スし、自ら情報収集を行う。また、Lynxを自ら操作し利用する。
(5)評価方法
生徒が積極的にインターネットを利用し自ら情報収集を行ったか。
(6)共同利用企画の実践経過
平成8年 9月 盲学校の生徒が利用しやすいWebサイトコンテンツの検討
Lynxのインストール
10月 盲学校の生徒が利用しやすいWebサイトコンテンツに関連する 情報の収集
Lynxの操作方法を習得
11月 Webサイトコンテンツの作成
Lynxを教師が操作し生徒にWebサイトコンテンツを閲覧させる。
12月 Webサイトコンテンツを利用しての不具合の調節
Lynxを生徒が操作してWebサイトコンテンツを閲覧する。
平成9年 1月 Webサイトコンテンツの生徒利用
Lynxを生徒が操作してWebサイトコンテンツから情報収集を行う。
 2月 共同利用企画のまとめ
(7)まとめ
 共同利用企画をとおして、盲学校の生徒がインターネットを利用するた めの基礎的技術を養うことができた。しかし、盲学校の生徒のインターネッ ト利用は始まったばかりで利用できるインターネットの機能は少ない状態 である。今後はこの機能が一つでも多く利用できるように機器の整備を図っ ていかなくてはならない。また、学校現場でのインターネットの利用は進 んでおらず、これからの実践の積み上げが必要である。さまざまな課題は 残されているが、インターネットの利用が盲学校の生徒に及ぼす影響は大 きく、更にインターネットの活用を深めていく施策が不可欠である。

3.10.8 コスト面での評価

 もとより特殊教育は少人数の児童生徒に対して、様々な専門性を持つ教師集団 やスタッフによって教育が行われる。従って、児童生徒一人当たりにかかる教育 予算は一般の小・中学校徒とは比較にならない。また各種のアクセシビリティ機 器はほとんど手作りの特注品に近いものとなるため、そのコストも膨大である。 しかし、それは需要と供給のバランスの問題や、開発体制の問題でもある。よっ て、特殊教育においては、コストの多寡で評価を加えると言うことは適切ではな い。ただし、このことはいくらかかってもよいと言うことをいっているのではな い。アクセシビリティ機器の開発と流通を効率的に進めることによってコストそ のものが低減されることが大切である。これらのコスト面のしわ寄せが、様々な 形で児童生徒の学習の機会をスポイルしていることもまた事実である。

3.10.9 ネットワーク実践でのキーパースンとその資質

 指導にあたる、最重要なキーパースンはもちろん教師である。教師が今後身に つけるべき素養としては、コンピュータやネットワークに関する専門的知識・技 術もさることながら、前述したとおり総合的な世界観、教育観を持って教育計画 立案にあたることが大切である。しかし、こうした視点を一人ひとりの教師が持 つには、これまでの教員養成の大幅な見直しと共に、適切な人材確保、人材育成 の手だてが必要である。

 今一つの観点は、特殊教育におけるネットワークを活用した教育には、繰り返 し述べているように、アクセシビリティ機器のフィッティングを含む広域な知識 や専門性が必要となる。こうした専門性をも現場教師に求めても、その負担を過 重にするだけであり、多様な実態の障害児への適用のノウハウを持つ専門的支援 機関と専門家の介在が望まれる。具体的には、各地域のリハビリテーションセン ターや、コンピュータメーカーのアクセシビリティ担当窓口などが考えられるが、 より教育的観点からの支援を期待するならば、特殊教育センター等がこうした機 能が設置されることがより望ましい。ところが現状では、全国的に見ても情報教 育部門を業務として持っている特殊教育センターはほとんどなく、行政の速やか な対応を期待したいところである。

3.10.10 特殊教育における教育ネットワークの心理的・社会的問題

 インターネットを含む広域ネットワークに教育の一環として参加すると言うこ とは、見知らぬ相手とのコミュニケーションを図ることがそのベースとなる。

 どうしても他者と関わる範囲が狭くなりがちな障害児にとって、社会との関わ りの障壁を乗り越えて世界観を広げ、ありのままの自己を表現し、発信すること による心理的解放など、これまでの特殊教育諸学校の中で行われていた教育だけ では得られなかった学習の機会がもたらされた。

 しかし、その反面で、これまでこうした学習形態に児童生徒も、教師側も、ま た社会全体も併せて不慣れであるため、過渡期には次に示すような検討課題が生 じ、試行錯誤が続いている。

  1. 障害児の自己発信と肖像権あるいは人権擁護との関連
  2. ネットワークに関わる場合のネチケットや態度の学習
 これまで、受け身に「してもらう」経験の方が多くなりがちだった障害児が、 自らの意志で自己を表現し、ネットワーク上に発信していくことで他者との関わ りを求めたり、自己主張をしていくということは、障害児の積極的な社会参加の 一形態として大きな意義を含んでいる。ありのままの自己を表現して社会に問い かけたいという意志を持った場合、その自己決定を妨げるべきではないし、そう した意欲によって得られる生きる意志や勇気といった心理的影響はほかでは得難 い教育成果である。

 ところが、ありのままの自分といった場合、個人の顔写真や氏名などをWeb サイトコンテンツ上に発表していくことが適切かどうかについて、本企画にあわ せて設置されたメーリングリスト上でも繰り返し討論されている課題である。

 人権保護や個人情報保護は重要な配慮事項であり、一般社会がまだ様々な誤解 も含めて障害児の自己表現に慣れていない現状では、必要以上に過敏になるケー スも見られる。しかし、これは社会側の意識変革が必要な事柄であり、積極的な 障害児・者の自己発信により社会側の意識を変えていくことによって解決しうる 問題といえる。

 どこまでの個人情報をどの程度発信していくかについて、教育的観点から本人、 保護者ともに十分な合意形成が必要である。ネットワークを一つの社会参加の場 としてとらえ、教育活動の一環として取り扱う場合は、児童生徒の自己決定を最 大限尊重した扱いを心がけるべきで、安易に「障害は隠す方がよい」といった誤っ た観点で規制したりしてはならない。

 ただ、メーリングリストでも討議され、さらに検討を要する問題として残るの は、知的障害児の自己決定をどのように尊重していけるかと言うことである。こ れらは、受け入れる社会そのものが知的障害児・者の人権をどうとらえ、受け止 めていくかという社会的な共通理解の課題でもあり、引き続き検討を進める必要 がある課題といえる。

 今一つの課題である、ネットワークへの参加態度育成の問題は、学習機会を拡 大することである程度改善されるといった、それこそ過渡的な課題ともいえるが、 他者との能動的で積極的なコミュニケーションの経験がこれまで乏しかった障害 児には、当面いろいろな面での支援も必要である。

3.10.11 特殊教育におけるネットワーク活用の技術的課題

 障害児がインターネットをはじめとした広域ネットワークを利用するにあたり、 検討すべき技術的な課題としては、次の3点が考えられる。
  1. 障害を補完し、機器の利用の負担を軽減するアクセシビリティ機器の開発と適応
  2. ネットワーク環境、あるいはサーバー等のメンテナンスのシステム化
  3. Cu-SeeMe等のマルチメディア環境を押し進めたシステムの開発と応用
 アクセシビリティ機器の開発や児童生徒への適応について、各障害種別に応じ たアクセシビリティのあり方の概要を以下に述べる。

<視覚障害児に対するアクセシビリティ>

 視覚障害には、視力の低下、視野の狭窄などのために生じる「弱視」と、視力 を全く持たない「盲」という状態に分けられる。弱視の場合は、単に視力のレベ ルが低いと言うことだけではなく、見え方、視覚情報の伝わり方は千差万別であ り、大きなディスプレイに大きな文字ということだけですべて解決すると言うも のではない。ケースによっては、かえって小さいディスプレイで視線移動を少な くした方がよい場合や、色使いや文字フォントへの配慮が必要な場合などが考え られる。

 視覚情報をもたない盲児の場合は、福島県立盲学校で実践研究を進めている Lynx( Webサイトコンテンツ画面の情報をLynxシステムのあるサーバーに送っ て、メールの形式で返送してもらい、そのテキスト文書化したものを合成音声化 する)をはじめとした、視覚情報を音声情報に変えるシステムの研究が進んでい るが、GUIであることが大きな特徴として発展してきたWebサイトコンテン ツ画面の読みとりについてはまだ課題も多い。今後、テキストのみのページを付 加することや、項立てにおいて、行頭に番号を振るなどの配慮によって、音声化 した場合の理解のしやすさに配慮が欲しいものである。

<聴覚障害児に対するアクセシビリティ>

 聴覚に障害をもつ児童生徒がネットワークを利用する場合、聴覚的な情報の受 容ができないため、音声データの含まれたWebサイトコンテンツ画面等では不 便が生ずる。現時点では音声データは補足的な情報となっていることが多く、大 きな問題になってはいないが、マルチメディア環境の進展に従って、「今こうい う音声データが出ている」と言ったことを表示するような配慮が必要になろう。 これらはWebサイトコンテンツの作り方のガイドラインを検討する機会があれ ば取り入れたい課題である。

 また、これはアクセシビリティの問題では必ずしもないが、聴覚障害児の場合、 往々にして発語や言語による思考が困難であるために日本語表現そのものの習得 が遅れがちであり、テキストによるメッセージ交換を通じた交流でも表現が未熟 であったり、相手に対して失礼な表現になってしまったりする場合もある。そこ で、総合的なコミュニケーション能力を伸ばす指導を心がける必要があるが、ネッ ト上のエチケット(ネチケット)も含めた指導を行うには、広域ネットワークの 利用は学習の場として最適なものの一つである。

<知的障害に対するアクセシビリティ>

 知的障害児は、その障害の状態や程度の幅も大きく、一概に必要なアクセシビ リティを述べることは困難である。年少児、あるいは障害の比較的重い児童生徒 の場合は、機能的な補完と言うより、操作系列の単純化や理解しやすい配慮の方 が大切である。キーボードやマウスによる操作は児童生徒によっては適切な操作 が困難な場合もあり、手の操作と画面上の情報が一致することによる理解のしや すさをねらって、透過型のタッチスクリーン等の導入が効果的と考えられる。ま た、これも技術的課題と言うよりは画面の作り方の問題ではあるが、画面情報を 読みやすく、理解しやすくするよう、整理した表現にすることや、わかりやすい 画面構成をはかる必要がある。特に、図と地の関係を十分に配慮し、背景に目的 図形や文字がとけ込まない配慮は重要である。脳に器質的な障害をもつ障害児に は、往々にして図と地の関係について認知が混乱するなどの症状があるが、これ らの認知の未成熟や混乱は障害児ならずとも幼少児や高齢者にもあり得ることで ある。障害児にとって使いやすいものは、すべての人にとっても使いやすいもの となることを理解しておくことが大切である。

 一方、軽度の知的障害児にとっては、アクセシビリティの機器構成の工夫が有 効か、教育的効果によって習熟してしまうことが先行するか、十分に検討した上 で取り組みを考える必要がある。得手不得手はあるものの、多くは多少の練習に よって機器の操作を確実に習得することができるようになる。

<肢体不自由児に対するアクセシビリティ>

 肢体不自由児には、手、足と言った四肢に障害をもつ場合と、体幹すなわち身 体の保持が困難な場合とがある。さらに重度な肢体不自由児は、立位(立ってい ること)や座位(座った姿勢)をとることができず、身体を横にした状態でパソ コンを操作するケースも考えられる。このように、個々の肢体不自由の状態に応 じて、適切な入力デバイスを適用する必要があり、多くの研究と実践が報告され ている。

 マウスなどのポインティングデバイスによるオペレーションが一般的であり、 その扱い易さに特徴があるWWWブラウザなどには、肢体不自由児はかえって困 難が大きい。そこで、Windows95がもつシリアルキーやキーボードナビゲーショ ンの機能を利用してスイッチやセンサーでマウスオペレーションを代替えするよ うな工夫や機器の開発が検討されている。

 また、肢体不自由児のアクセシビリティはスイッチ類等だけの問題ではなく、 体幹の支持の仕方や姿勢など、総合的な養護・訓練的な配慮のもとに計画してい く必要がある。

 さらに、最近の肢体不自由養護学校で多くを占めるようになってきた脳性まひ 児等の中枢神経的な障害をもつ児童生徒の中には、知的障害を併せ持ついわゆる 重複障害児も多い。こうした児童生徒には、入力操作等に関するアクセシビリテ ィへの配慮とともに、知的発達の状態に応じた様々な配慮があわせて必要となる と考えられる。

<病弱児に対するアクセシビリティ>

 病気療養児のために必要な配慮として、たとえば「筋ジストロフィ症」のよう に機能上の制限が出てくるようなケースでは、肢体不自由児に対するアクセシビ リティの工夫がそのまま応用できる。一方、ベッドサイドで教育を受けている児 童生徒については、とりうる姿勢の中で操作ができるスイッチやセンサー等を個 別に検討していく必要がある。

 運動制限や随時治療が必要ではあるが、特に機能的な支障のない児童生徒は、 疲労や健康安全などに対する配慮を十分にすることが大切となろう。

 次に、各学校におけるネットワーク環境やサーバー等のメンテナンスについて は教員が行うのではなく、可能な限り専門機関や支援機関が定期的に行うことで、 各学校の担当教員の負担やストレスを軽減するシステムを作ることが必要である。

 コンピュータ等の機器を用いた指導では、どうしても専門的知識や時間が必要 になりやすく、それらを学校内で管理するシステムをとっている場合は担当教員 の負担が大きくなりすぎる傾向にある。ましてや、インターネットサーバーのメ ンテナンスやWebサイトコンテンツの更新、メールの管理など、ネットワーク 環境の整備は技術的、時間的な負担が大きい。

 さらに障害に応じたアクセシビリティなどに至っては、相当の知識と経験が必 要となり、とても教員個人の抱えきれる範囲ではない。

 このように自治体や国レベルでも情報教育担当教員の授業時間の軽減や専科配 置などの人材面での可能性を検討すると共に、福祉機関やリハビリテーション機 関等とも連携を深め、適切な支援機関を緊急に設置する必要性をもっと認識する べきである。

 マルチメディアシステムの開発と応用については、回線速度やパソコンの処理 速度の問題など、純粋に今後の技術の進歩を待つ部分も大きい。しかし、 Cu-SeeMeなどの技術の進歩によって、必要に応じて顔を見ながらのコミュニケー ションができたり、在宅児や近隣に通級学級等が設置できない場合の対応などに おいて、遠隔教育の一形態として活用の可能性は高い。技術の進歩は多様な教育 形態を生み、その選択肢の豊富さが個別に対応する必要のある障害児にとって、 教育の可能性を広げることになるのである。

3.10.12 ネットワーク運用の支援

 これまでにも述べたように、特殊教育においてインターネットをはじめとした 広域ネットワークを活用していくためには、機器のメンテナンスといった技術的 な支援だけではなく、アクセシビリティ機器の開発、適用、メンテナンスといっ た極めて専門的な対応が必要となる場合が多い。こうした対応を各学校の担当教 師だけで行うのは不可能に近く、医師、OT(Objective Therapist:作業療法 士)、PT(Phygical Therapist:理学療法士)などの専門分野の意見を聞きな がら、リハビリテーション機関等の支援を受けられる体制を整備することが望ま しい。

 また、教師の研修や研究開発支援など、教育的側面からの支援も重要であり、 各都道府県等の特殊教育センターなどが、こうした情報教育対応の機能を持ち、 各学校を支援することが必要となる。願わくば、特殊教育センターは、リハビリ テーション機関、福祉機関、医療、労働等特殊教育を巡る関係諸機関のコーディ ネータとして、各学校で指導にあたる教師のストレスを可能な限り軽減するよう に努める機能を持つべきである。

3.10.13 特殊教育を巡るネットワーク環境の現状と課題

 特殊教育諸学校に対するネットワーク環境は、平成7年度に国立大学附属養護 学校に一斉に導入されたが、その例を除いてはまだこれからの取り組みといえる。

 いくつかの先進的な自治体では、教育センター等がプロバイダーの役割を果た し、各学校は無償で回線利用ができるようにしている例もある。

 特殊教育では、往々にして児童生徒の操作に時間がかかったり、利用したい時 間帯が制約されることも多い。そこで、安定して接続でき、利用料金等で制約さ れることのない環境が必要である。国立大学附属養護学校では大学からの専用線 が利用できるため、学校生活の様々な場面での利用が可能であり、こうした設置 形態が理想である。障害児の利用に対しては専用線接続にしろダイアルアップ接 続にしろ何らかの減免措置を設け、利用料の負担を軽減することが是非必要であ る。

 各学校におけるネットワークに接続した機器の設置等の現状は、校舎の設計・ 建築当時、当然ながら電話やネットワーク回線接続を想定していないため、コン ピュータの学習室と電話回線等の引き込まれている場所が離れていて、接続も困 難となっているケースが見られる。今後建築される校舎等については校内ネット ワークも含めて将来を展望した設計を期待する。一方既存の校舎については、コ ンピュータ等を導入するにあたり、回線接続のための設備も併せて導入するなど の措置も必要である。

3.10.14 特殊教育におけるネットワーク活用の今後のあり方と課題

 インターネットを含む広域ネットワークの導入により、児童生徒にもっとも変 化があったことは、自ら社会に関わろうという意欲が引き出されたことである。 どうしても受け身的な生き方になりがちな障害児に対して、自ら世界を広げよう とする気持ちを育てることにより、「生きる力」をのばしていくことに成功して いる。広域ネットワークは、適切なアクセシビリティ機器の適用により、これま で周辺の狭い社会との交流にとどまっていた障害児に、新しい広域な社会参加の 機会を与える効果があった。そして、地域の格差を埋め、学校や個々の障害児が 外の世界に向かって自己発信をし、その過程で世界に向けて心が開かれていくこ とによって、社会の構成メンバーとしての自分を自覚することになり、外の世界 をたえず意識することで、良い意味の緊張感を持って学校生活を送ることができ るようになった。このことは、これまでの特殊教育が積み重ねてきた教育理念の 根底を変えうるほどのインパクトのある成果である。

 障害児には、もちろん実体験の積み重ねや、直接的な人やものとの関わりは重 要である。しかし、そうした経験にとどまらず、障害の有無などを超えたバーチ ャルな関わりによってもたらされる「世界観」の形成は、障害児の社会生活の質 (QOL:quality of life)の向上に大きな意味を持っている。

 このように、広域ネットワークの利用は、単なる情報収集の技術習得や国際理 解のきっかけというレベルにとどまらず、障害児にとって、もっとも大切な生き る勇気と社会生活に直結する学習機会として、ますます注目と期待を集めていく ことになると考えられる。

 一方、今後の課題としては、別項で述べた技術的課題のほかに主に次の4点が 上げられる。

  1. 教育課程上の課題
  2. 施設・設備的課題
  3. 教員の意識改革・研修等の課題
  4. 行政、学校体制の課題
 教育課程上の課題は、こうしたネットワークを利用した教育を、どの教科・領 域に位置づけるかということである。特殊教育においては、教育課程編成の特例 事項により、異なる教科同士、あるいは教科と領域をあわせた、合科・統合とい う指導形態をとることができる。さらに、指導方法として生活単元学習のように、 総合化・単元化した指導展開を柔軟に行うことができる。こうした中にネットワー クを活用した授業を効果的に取り入れることが可能であると思われるが、従来か ら中心的に行われてきた「生活」「経験」主義的な教育課程編成と、こうした新 しい教育内容・方法を、どう組み合わせていくかが大きな課題となる。社会の変 化と多様化にあわせて、特殊教育における教育課程編成も、大きな転機にさしか かっている。「新しい学力観」と言われる、教育の見直しの観点は、特殊教育に おいても、21世紀を生きる障害児の幸福の追求をめざして、議論を尽くさねば ならない課題である。

 次に、施設・設備的な課題では、特に回線の利用形態の充実が望まれる。どう しても操作等に時間がかかったり、健康状態、身体状況等からネットワーク利用 時間が限定されることになりやすい障害児には、高速で、かつ安定して接続でき る回線環境が必要である。授業を始めようとしたら回線が混んでいてつなぐこと ができないなどと言うことがないよう、事情が許せば専用線によって常時回線接 続ができることが望ましいが、その場合はサーバーメンテナンス等で担当教員に 過大な負担がかからないような配慮が大切である。

 また、技術的、費用的な基盤の充実に加えて、欠かすことができないのは、人 的な環境整備である。教員に対しての研修の実施や人材育成は当然のことである が、単に技術の習得だけではなく、社会学的に今後の教育をどう考えていくかな ど、広域にわたる見識とメディアリテラシーを持つ人材の確保と配置が大切であ る。保守的な傾向の強い我が国の学校教育においては、こうした新しい教育内容・ 方法はなかなか受け入れられにくく、情報教育というたえず新しい概念が形成さ れ、情報が流通しているような分野においては、よほどの知識と、柔軟な姿勢を 持つ人材の育成が最重要課題と言うことができる。それには、従来の技能優先の 研修カリキュラムではなく、大学教育、現職教育両面から、教育関係者の意識改 革をめざしたアプローチの研究に着手する必要があると考えられる。

 最後に、行政や学校の体制の課題であるが、情報および、それによってもたら される教育的意義についての認識の不足などにより、主体的な情報発信を極端に 制限しようとしたり、インターネット等の設置を忌避したりする傾向が一部に見 られるのはまことに残念なことである。

 インターネット等の広域ネットワークは、学校や障害児が社会と具体的な関わ りを持つための窓であり、その窓は基本的には両方向から素通しであるべきであ る。個人情報の管理や保護と言うことに対する配慮は当然なされなければならな いが、インターネット等の広域ネットワークは、情報を双方向に受信、発信する こと、すなわち相互に情報を流通させることによって、その意義と価値を維持し ているものといえる。

 今後、ますます特殊教育ではネットワークを活用した教育が取り入れられ、障 害をもつ児童生徒の社会参加を支援するものとなっていくことだろう。そのため のインフラ整備や人材育成など、早期に対応しておくべき課題もまた明らかにな ってきつつあるのではなかろうか。


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